とある原石の神造人形(エルキドゥ)   作:海鮮茶漬け

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もう無理寝る


113.木原幻生の策略

「お、おおう……。流石のお姉さんもちびっちゃいそうだよ」

 

 そう言ったのは警策(こうざく)看取(みとり)

 彼女は水銀を操る能力者にして木原幻生の手下である。頭の横で結わえたツインテールと、ピンク色がベースとなったナース服の亜種のようなコスプレ染みた格好をした彼女は、目の前の光景を見てそんな感嘆の声を上げた。

 

「まさか、ここまで大きな雷を片手間で撃てるだなんて思わなかったよ。……でも、これでアレイスターは…………ッ!?」

 

 

 

 街の中央に建てられたその建造物は御坂美琴の深層心理に干渉し攻撃させた雷撃を受けても尚、傷一つ付けることは叶わなかったのだ。

 窓の無いビルは依然無傷。

 

 

 

「ち、ちょっとどういうことッ!?話が違うんだけど!!」

 

『最近の子は堪えることを知らないねぇ。僕が弾き出した事前の計算によると御坂くんは完全な絶対能力者(レベル6)到達まで二パーセント程度しか進んでいない。まだ成長途中なんだよ。あれを破壊したければもう少し待つことだね。分かったかい?』

 

「……はーい」

 

 警策はその言葉を聞き大人しく引き下がる。確かに窓の無いビルを破壊することは出来なかったが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。同じ大きさの他の建物ならば丸ごと消滅してもおかしくない雷である。

 

「(まあ、最後には窓の無いビルを破壊できるならなんでもいいかな。どうやら天野ちゃんの方も上手くいってるみたいだし)」

 

 手元の端末から送られてくるカメラの映像には不自然に動かなくなっている天野倶佐利がいた。

 

「(悪いね……妹達を生み出す原因を作ってしまった美琴ちゃんとは違って、あなたは今回の騒動に全く関係無いけど、統括理事長のアレイスターを窓の無いビルごと消すのなら、美琴ちゃんの絶対能力者《レベル6》への進化は必須。

 勝手で悪いけどそこで人柱になってちょうだい)」

 

「僕は外装代脳(エクステリア)から出力される心理掌握(メンタルアウト)の確認作業をしなくてはならなくてね。何か聞きたいことがあれば片手間になってしまうけど、できるだけ答えよう」

 

「ふーん………………あ、そうだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 幻生からしてみれば能力の確認など慣れていることのため、誰かと話しながら作業をするなど労力という労力ではない。だが、警策からすぐに話し掛けられるとは思ってはいなかった。

 

『まあ、私としちゃあ美琴ちゃんが計画通り進んでくれればそれでいいけどぉ。何であんなオモチャを用意したの?お爺ちゃんならもっと優れた兵器の二つや三つは持ってるんじゃない?』

 

 電話の向こうに居る警策(こうざく)は時間潰し程度の認識で、大して自分と関わり無いため聞かなかったその疑問を幻生に尋ねていたのだろう。その疑問を幻生はなんでもないように答える。

 

「ああ、もちろんそうだとも。僕としてもあれほど退屈な時間もなかったけど、計画というのは少しでもおざなりなところがあると、そこから(ほころ)んで瓦解してしまうからねぇ。無駄でも無価値でもない以上はやらなければいけない。

 彼らの駆動鎧(パワードスーツ)は学生レベルもいいところの拙劣(せつれつ)な物だ。品質で言えばそれこそ価格を付けるのも(はばか)られる程に。でも、そこに重要な価値を生ませることもてきる」

 

『重要な価値……ってあれのこと?牢屋に居る「スタディ」とかいう連中が聞いたら顔真っ赤にして怒り出しそうだよねぇ』

 

 どこか小馬鹿にしつつも同情するような声音で警策は言った。

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 劣っているからこそ意味がある。そんな科学に殉ずる者の口からは到底出ないような理由だった。

 

「天野くんを攻略する上であれが一番効果的だった。彼女の能力の長所短所や思考回路から分析してね。これは君には既に言ったと思ったんだがねぇ」

 

『あのねえ、私のこと馬鹿にしてる?それは聞いたけど、だったら別にあのガラクタじゃなくてもよくない?「木原」なんだから他に方法なんていくらでもあるでしょ』

 

 まるで理解できないとでも言いたげな声が通話越しに聞こえてくる。木原幻生は子供をあやすかのような言い方で答えた。

 

「言ったはずだよ警策くん。一番効率が良いってね。天野くんをあの状態にしておくのはあれが一番確実で効果的だった。それこそ、僕の自慢の兵器を出しても不可能な可能性が高い。警策くんも今回の天野くんが請け負う役目を知っているんだから、実はなんとなく想像付くんじゃないかな?」

 

『それを確かなものにしたいから聞いてるんだけど……』

 

 物覚えが悪い子供に教えるように幻生は一つ一つ話すことにした。

 

「ふむ、それじゃあ、警策くんが察している部分であろう『全く同じ規格の大量生産』から考えてみようか。何故僕がそんな無駄なことをしたと思う?」

 

『大量生産を無駄って……まあ、いいや。大方、同じ戦い方で同じアルゴリズムをする敵が立て続けに現れたら、ゲームなんかと同じで同じ戦法かつ楽して倒したいってとこかな?』

 

「うん、正解だね。自分の能力と相手の能力を比べたときに、自らの能力が高ければわざわざ試行錯誤をして色々試す必要性はない。

 ならば、その考え方を使えば『天野くんを御坂くんに変身してもらい続ける』という僕の狙いは簡単に達成できるということだよ」

 

 つまり、今回の無人駆動鎧は『天野倶佐利を御坂美琴に変身させ続ける』という一点のみの理由で幻生に採用されたのだった。

 

「何故『スタディ』の駆動鎧かと言えば、天野くんが相手にして簡単に薙ぎ倒せるという点と、(かつ)て戦いその戦闘パターンを既に知っているという点の二つの要因だよ。

 最新鋭の兵器を出してしまうと、彼女は攻略しようとして彼女自身が持つ能力を多く使おうとするはずだ。そうなれば、彼女を御坂くんの姿で居させることは不可能。天野くんには最初から最後まで御坂くんの姿で居てもらわなくてはいけなかったからねぇ」

 

 オリ主はその能力の豊富さから攻略方法が無数にあると言ってもいい。だからこそ、攻略方法をあらかじめ知っているあの駆動鎧が必要だったというわけだ。

 

『まあ、そんなとこだろうとは思ってたけどね。……いやはや、お爺ちゃんもラッキーだねえ。倶佐利ちゃんが偶然『スタディ』製の駆動鎧と戦っていてさ』

 

 その小生意気な返答を聞いた幻生は先程までの好々爺然とした振る舞いを止め、不敵な笑みを浮かべた。

 

「──警策くん。それが本当に偶然だと思うかい?」

 

『え?』

 

 その言葉に警策は呆気に取られる。幻生は続けてこう言った。

 

「全て僕の計算通りだよ。若い子相手に大人気ないと思わなくはないけど」

 

 その衝撃的な事実を幻生は本当になんでもないように言ってのけた。そう、恐るべきことにあの場に居た全ての人間から存在を隠し通した妖怪が居たのだ。暗躍し表舞台から一番遠い舞台から眺めていたこの老人は誰よりも漁夫の利を掴み取っていたのである。

 しかし、学園都市の闇を生き抜いてきた彼からすれば、こんなことは大したことではない。

 

「『スタディ』の彼らが僕のことを敵視していたのは知っていたよ。彼らは取るに足らない存在ではあるが、学園都市の闇に幾星霜の日々を生き抜いてきた僕からすれば、何が原因で足を引っ張られることとなるのか分かったものじゃないからねえ。

 彼らのことは特別注意してはなかったが、頭の隅に入れとく程度の認識はしていたよ」

 

 それは、彼らの存在は丸っきり眼中に無いという意味に他ならない言葉だった。

 

「そして、彼らが起こした騒動に天野くんが関わったと知って、僕は今回の実験に彼らの計画が使えるのではと考えた。でも、それにはサンプルが余りにも少なかったんだ。天野くんにとっても僕にとってもね。

 だからこそ、二度目の無人駆動鎧との戦いが必要だったということさ」

 

 それが残骸(レムナント)争奪戦。

 あの騒動の裏にはこの老人の影があったのだ。

 

『……私もアンタ経由でその騒動は知っていたけどそれにも関わっていたっていうわけ?』

 

「まあね。黒夜くんが行動するなら彼女が考えているだろう展開は僕には簡単に分かるんだ」

 

 そう断言する幻生に警策は、先ほどまでとは違ってどこか警戒するように尋ねた。

 

『それは暗部に長年属してきたから?』

 

「それもあるが一番の理由は、彼女が『暗闇の五月計画』の被験者だからってところかな」

 

 学園都市の闇を象徴する実験の一つ。その主導者は他でもないこの木原幻生である。

 

「彼女の演算パターンは僕も既に確認済みだ。一方通行(アクセラレータ)くんの攻撃的な側面の演算パターンを組み込まれた彼女は、他の能力者の子供よりも幾分か分かりやすい。

 一方通行くんほどの絶対的な力もなく権力も無い彼女が暗部でのし上がるには、能力の出力を外部の力を借りて上げるか、手下を増やすかしかないからねぇ。

 散り散りになった『暗闇の五月計画』の被験者の子供を黒夜くんに気付かれないよう誘いやすい状態にするために、色々動いたのは懐かしいねえ」

 

 木原幻生は科学の重鎮。

 彼が電話を一本かけるだけで、科学者の管理下に置かれている子供を一時的に彼らの目から離させることや、別の施設に移動させるための許可を取ることなどは朝飯前なのである。

 

『……』

 

 通話越しに語られるその言葉は能力者である以上、警策も無関係ではない。まるで解りきった方程式を一つ一つ説明するかのようなその言葉に、彼女は背筋が寒くなってくる。演算パターンを把握される恐ろしさをこの時警策は強く認識した。

 

 もちろん、演算パターンを知っていたとしても、ここまで察することができるのは一重に学園都市の闇を生き抜いてきた老骨だからである。

 

 そんな警策の様子を知ってか知らずか木原幻生の口調は止まることはなく、つらつらと説明を続けていく。

 

「そして、彼女が天野くんに対して『スタディ』から得た駆動鎧を稼働させる状況。つまりは、食蜂くんとのコンビを意図的に作り出す。

 こればかりは、樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)の残骸が二つ分できたことに感謝しなければね。そうでなければ、嘘の情報を流すしかなかったよ。

 もし、そんなことをすれば僕も表舞台に名が上がっていたかも知れない。運が良かったとしか言いようがないねぇ」

 

 これは幻生の偽らざる本音であった。もし、そういう事態にならなければ計画を見直していたか、雲隠れして潜伏するしかなかっただろう。

 

 だが、こうして運を味方につけ木原幻生は誰よりも優位に立った。

 

「黒夜くんはよく働いてくれたよ。無人駆動鎧に対する天野くんの戦闘データの補強。天野くんの性格から取るだろう行動パターンのサンプルデータの確保。

 そして、追い込まれたときに現れる物理法則では説明できない──オカルトの有無の割り出し。

 どれも価千金の価値だよ。そのお礼を込めてちゃんと僕の(つて)を使って、統括理事会の一員に黒夜くんの紹介などの根回しをしたからね。まあ、残念ながら結局は予想通り意味は無くなったみたいだけどねぇ」

 

 残念などとは一切思っていないだろう声音で言われたその内容に、警策はこの通話の相手は本当に妖怪なのではないかと考えていた。しかし、彼女には完璧に納得できていない点があった。

 

『その黒夜って子がどういう行動を取るのか分かってることに加えて、アンタが倶佐利ちゃんの能力開発の担当であっても、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 その馬鹿げた能力のストックの多さは凄まじく、既に千の能力をコピーしているという噂を知っている警策は幻生を言葉を訝しむ。幻生がしていたのは建物の入り口に大量の駆動鎧を用意しただけ。話で聞いた黒夜が行ったという、能力の長所短所を的確に突いた方法と比べてしまうと、随分と手抜きがあるように見える。

 

「それで充分だという話だよ。わざわざ無駄なことをするのも馬鹿らしいだろう?」

 

 それは必要最低限の手数で相手の攻撃を捌く、棋士に近いのかもしれない。合理的な手段を選んでいけばそれが最小のコストを生むようなものだろうか。

 黒夜と幻生では経験してきた場数の多さが全く違う。二人の埋まらない差はここにある。

 

「建物の中には外装代脳《エクステリア》があるから、強い衝撃を生み出す能力は使えず、一方通行くんの反射はずっと立ち止まらなくてはならないから、天野くんではなく入り口に殺到してくる駆動鎧にそんな受動的な行動は取れない。

 空間移動(テレポート)は目視しなければならず、囲まれている中で使うには不適格だ。この時点で彼女がいつも優先的に使う能力の多くは完璧に封じられる。

 そして決定的なのが、天野くんは『スタディ』が用意した駆動鎧を御坂くんが薙ぎ倒す瞬間を目にしているということだ。これが天野くんが御坂くんに変身して戦う大きな理由の一つでもある」

 

『なんで?別に戦う姿を見なくちゃいけないなんて言う縛りはなかったはずだと思うんだけど……。経歴を見ても色々なシチュエーションで能力を使い分けてるから、そんなデータどこにもなくない?』

 

「いや、実はそうでもない。『スタディ』の彼らが起こしたと言う未明革命(サイレントパーティー)で最初に確認された変身した姿は、白井黒子という空間移動能力者(テレポーター)だったらしい。

 話によればあの区域を守っていたのはその少女だったようだねぇ」

 

『それがなんなの?偶然選んだ高位能力者がそこに居たって話なんじゃないの?』

 

「では、君ならわざわざ大能力者(レベル4)の能力を使うかい?空間移動は便利ではあるけど、超能力者(レベル5)である御坂くんか食蜂くんの能力の方が魅力的に見えないかい?」

 

 そう、普通に考えれば強力であり、自身が安全な位置に居続けられる力を求めるのが普通の考えだ。

 目視では数秒の空白の時間と周囲の状況確認で時間を取られるが、御坂美琴の電磁レーザーで周囲の策敵をわざわざする時間は無いに等しいし、高速の速さで動くことも可能な磁力で移動すれば、空間移動の代わりにはなるはずだ。

 そして、食蜂の能力を常日頃から使うようにしていれば、正確に相手の考えが理解できるようになる。幻生達は当然知らないが原作知識があろうとも正解がすぐそこにあるのに調べない人間が、果たしてどれくらいいるのだろうか。

 

「彼女にはそう言った癖のようなものがある。元の使用者を尊重して同じ様にその状況を乗り切ろうとする癖がね。もちろん、能力が劣化していて使えない状況になれば、別の能力で補う柔軟な思考は持ってはいるとも。

 しかし、駆動鎧を文字通り一人で一掃した御坂くんの姿を見た天野くんは、『本家がそうしていて最大の実績を上げているなら自分もそうするべき』という考えが無意識にあるのだよ」

 

 警策はその話を聞き天野倶佐利について考える。

 

『「(……誰かの能力をコピーする能力者だからこそのコンプレックスってとこ?能力が劣化する以上は本家よりも上に行くことはない。その考えは他の能力との連携の組み合わせることに繋がったり、コピー元の能力者だからこそ長年使ってきた先達としての意識か。

 初めての敵に関しては目の前で戦う能力者の能力を、無意識にコピーしてなぞろうとするのはそこら辺が影響しているのかもね)」』

 

「そして、それで成功した戦闘経験から考えても、天野くんは他の能力を使うという思考回路にならない。つまり、天野くんは確実に御坂くんに変身して戦い続けるのさ。

 まあ、黒夜くんはあの戦力で打倒しようとしていて、僕はあくまでも足止め。そもそも難易度で言えば僕の方が遥かに下ではあるから威張れやしないけどね」

 

 ここまで他人を利用してできたのが足止め。これを知った人は幻生に失望するかもしれないが、警策は知っている。この足止めの意味が。

 警策は幻生に対する恐れと共にその理由を告げた。

 

 

 

『まさか、美琴ちゃんと一緒に天野ちゃんにまで、あの黒い稲妻を落とそうだなんて誰も想像できないって』

 

 

 

 あの場でミサカネットワークにウイルスを注入されて生み出された、黒い稲妻が落ちたのは御坂美琴だけではなかったのだ。

 

「もし、ミサカネットワークから生み出されたエネルギーが、『御坂美琴』の(もと)に向かってくるならば、当然御坂くんの姿をした天野くんにもそのエネルギーは降りかかる、というわけさ」

 

 これが計算を下に弾き出した結論だった。 

 

「天野くんの能力は元の能力より劣化して、なおかつコピー元の髪色にならないという、全てのステータスが一歩足りないという能力ではあるけど、その体質だけはコピー元のものと全く同じだ。

 それは彼女がミサカネットワークに割り込めたことからも分かる。もし、体質まで劣化するならばノイズだらけで返信応答などそう簡単にできるはずない。天野くんの体質が変わらないのなら当然、御坂くんが無意識に生み出す電磁波のチャンネルも全く同じと見ていい。

 ならば、御坂くんにエネルギーを落とせば、同じ様に連動して天野くんの頭上にもエネルギーは落ちる。まあ、その力の大部分は御坂くんに流れるだろうけどね。でも、出力の違いがあることで新しい役目ができる、というわけさ」

 

『それが万一、美琴ちゃんの進化が予想外の事態になったときの安全弁。電子負荷装置としての天野ちゃんの役割ってことね』

 

 もし、仮に進化の成長スピードが乱れても、同様の電波を有しているオリ主を媒体にし介入すれば、絶対能力者(レベル6)に至るまでの道のりにすら干渉できるという、余人が考え付きもしなかった大発見である。

 

『これって天野ちゃんの変身能力があってこそって感じだから、学会じゃあ発表できないかな?まあ、ここまで来てアンタがそんなことを気にしているとは思えないけどさ』

 

「僕としては絶対能力者(レベル6)を生み出せるならそれでいいけどね。これもまた、科学の発展に繋がるだろうさ」

 

 心からそう考えているからこそ警策には理解できない。いや、理解できないままでも利害が一致すれば彼女は手を組む。それをするためのドグマが彼女の中にはあるのだ。

 

「──ふむふむ、なるほどなるほど。つまりは、リミッター解除コードが必要となってくるわけか。僕はこれから食蜂くんとの追いかけっこのようだねぇ。では、敵性の排除を頼んだよ警策くん」

 

『はいはーい。それじゃあ、あとは私に任せて行って──……って、はあああああッッ!?何これ!何でこんなことが起きんのッ!?意味がわからないんだけど……!?』

 

「──……ッッ!!!!」

 

 その言葉を聞いて外装代脳同様に、脳波を調律し能力者達の能力を勝手に引き出す技術、多才能力(マルチスキル)を使い、幻生は千里眼を宿した瞳でその方向を見る。

 その瞳に映る光景を目視し、幻生の興奮は一気に上昇して最高潮になった。

 

「──やはり!やはり!やはり!やはりッッ!ああ、そうだろうとも!そうでなければつまらん!それでこそ実験の意義があるというものッ!!」

 

 その瞬間、木原幻生は長い人生で最高の興奮を抱いていた。感じる興奮は果たしてどのくらいか。幻生は今までの実験は全て知識欲を満たすため行ってきた。それは今回も変わらない。

 今回よりも莫大な資金を用意して行った実験もあった。今回よりも多くの根回しをした上で実行した実験もあった。今回よりも自分の研究に沿ってきた楽しい実験もあった。

 

 しかし、今回の実験はその今まで行ってきた数百の実験よりも最も興奮しているのだ。

 それは何故か?

 

 

 

 今回は明確に今までの路線と外れたからである。

 

 

 

 それは単純に自分の得意分野だとかではなく、もっと広い意味での外れた。レールがどこか全く違う場所に切り替わったこの様な感覚。

 これを一流の科学者は自然と目にするようになる。しかし、それを理解できないとブラックボックスに容れられてしまうのが、ほとんど当たり前だった。しかし、彼は今回の実験で本来の流れから外れてしまうだろうことをあらかじめ察していたのだ。

 

 今ある興奮をそのままに、幻生は世界に訴えかけるような気迫で、曇が覆う空に向かって宣言するように言葉を投げ掛けた。

 

 

 

 

「ありきたりで分かりきった科学の範疇で終わる実験などつまらんよなあッ!?理解不能なオカルトまで足を踏み入ってこその科学じゃろうッッ!!!!」

 

 

 

 




寝不足なのでどこか誤字があるかもです

幻生のヤバさが表現できてたらいいな
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