とある原石の神造人形(エルキドゥ)   作:海鮮茶漬け

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トールとか書きたいなぁ……なんて思いつつ、115話です


115.雷神招来

 大覇星祭。

 学園都市で開かれる全校の生徒が競い合う運動会。この期間は外部からの保護者も入ることを許された特別な行事である。

 その学園都市中がお祭り騒ぎの中で上条当麻は誰よりも全力で走っていた。それも、競技とは一切関係無い場所で。

 

「うわああああああああああああッッ!?!?!?」

 

 ドガガガガッ!!と飛んでくる瓦礫から、上条は尻尾巻いて全力で逃げている。異能に対して絶対的な効力をもたらすその右手も、異能では無い攻撃を無効化することはできないのである。

 

「……ッ!!」

 

 瞬間、身に覚えのある感覚に背筋が震え、上条は勢いよくその場で振り返りその右手を振るうと、

 

 パキィィン!!と砕けるような音と共に、上条の背中に迫っていた高圧電流が打ち消された。

 

「……イケる!威力はヤバいけど打ち消せるのなら防ぎきれる!」

 

 上条当麻がたった一人でこの様な死地に何故居るかというと、あれは少し前のこと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 佐天と別れたあと、上条は御坂美琴の事件に介入するため

 

『はあ~い♡こんなところで会うなんてやっぱり上条さんとは運命力(りょく)を感じるわぁ♪』

 

「のわっ!?な、なんだ!?」

 

 ピッとリモコンのボタンを押したかのような音と共に、その声は突然上条の頭の中に流れてきた。

 

「ま、まさか、()()か!?」

 

『上条さんならきっと私の名前を言わなくても気付いてくれるって信じてるから、わざわざ名前を言うのは時間の無駄だから省きますね♡もし、気付いて無かったらトラウマになる何かを送信しちゃうゾ☆』

 

「物騒ッ!?」

 

 乙女の心は何が切っ掛けで砕けるか分からないのである。そして、その中身が可愛いものだと思っているのは、楽天的な馬鹿な鈍感野郎だけだと彼女は思っている。

 彼女の恋心を察っすることができない時点で、上条当麻は落第も良いところだが。

 

『ちなみに、この送信は一方通行で全部情報を入力したあとだから、右手で頭を触らないように。それじゃあ、なんかヤバいことになっている御坂さんの状況を説明するわぁ』

 

「やっぱり御坂なのかッ!?」

 

『あの御坂さんはミサカネットワークから送られたエネルギーが、御坂さんに流れ込んだことによる影響みたいだけどぉ。そのエネルギーがとある科学者が打ち込んだ、ウイルスによって生み出されたものらしいんだけどぉ。

 そのウイルスがなんなのかまでは分かってないから、そのエネルギーがなんなのかは不明。現状そのエネルギーを送り続けている科学者をこっちで打倒するのが、事件解決の近道ってところねぇ』

 

「……そうか、こっちの声は聞こえないんだっけ。食蜂も悠長に話してられる状況じゃないってことか?」

 

『上条さんにはその御坂さんの周りで動いてもらうことで、御坂さんの成長?進化?を邪魔することができると思う……多分……おそらく……きっと……』

 

「あやふやだな!?」

 

『まあ、他に思い付かないし、取り敢えずレッツチャレンジ☆』

 

「………………マジ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……最初はどうなるものかと思ったけど、これなら持ちこたえられる」

 

 打ち消すことができたいつもぶつけられる電撃とは、比較にならないほどの電撃が消えるのを確認しながら、上条は右手を握り締める。

 どこに居るかも分からない食蜂からのメッセージを聞いた彼は、今の自分にできることを身体を張って実践しており、今の攻撃を受けて任された役目を遂行することが可能であると確信した。

 だからこそ、生まれた安堵。しかし、彼は忘れている。あの第三位はその火力などよりも汎用性が自らの長所だということを。

 

 電撃を打ち消して覆っていた粉塵が晴れたその先には、鉄材を磁力で固め巨大な岩石にした雷神がそこに居た。

 

「いやいや、それはちょっと反則……」

 

 その異能とは違う単純な質量が上条の頭に落下してくる。異能を打ち消すしかできない上条にその塊が落ちるとどうなるかなど、言葉でわざわざ言う必要も無い。上条はその攻撃を受け入れるしかなかった。

 ──他に登場人物が居なければ。

 

 シュタタッ!っと、後方から駆けるような足音と共に、自信に溢れた声が上条の耳に聞こえてくる。

 

「ハイパーエキセントリックウルトラグレートギガエクストリーム、もっかいハイパー……」

 

 上条の真後ろから大きく飛び上がった人影は、何故か落ちないジャージをはためかせながら、人を簡単に押し潰す塊に突っ込んで行く。そんな馬鹿げた存在が生み出す結果も馬鹿げていた。

 

 

「すごいパーンチッッ!!!!」

 

 

 その言葉と共に繰り出された拳が、巨塊に当たった瞬間凄まじい破壊音と共に何故か特大の大爆発が巻き起こる。その瞬間を目にした上条は突然の事態に口を開けて放心してしまうのだった。

 その結果を生み出した張本人はなんでもないかのように上条に振り返り言った。

 

「大丈夫か?」

 

「え……?あ、ああ。わりぃ助かった」

 

「うしっ!だったらここを早く離れな。ここは俺に任せろ!」

 

「へ?……いや、あんなことになってるけど俺の知り合いなんだ。他人には任せられねーよ」

 

「つってもあれは只者じゃねーぞ?悪いことは言わねえからさっさと避難しとけ。角生やしてる時点でとんでもねえ根性持ってる奴だからな!」

 

「……どういう基準なんだ?」

 

 そんな会話をしている二人に向かって電撃が向かってくる。上条は右手で打ち消し、突然現れた彼は左手で叩き落とす。

 その結果にそれぞれの男は驚愕する。

 

「(電撃を叩き落とした!?)」

 

「(電撃を掻き消した……?)」

 

 本来ならば絶対にあり得ない現象を生み出す相手を見て、彼らは同じことを考えた。

 

「「(なんだコイツ……?)」」

 

 奇怪な現象を生み出す相手が突然現れれば警戒することが自然だが、根性を心に持って行動する男にはそんな雑念は一切浮かばない。

 ただ一つ彼に分かったことは、目の前の男が共に戦場を駆ける相応しい力を持っていることだけだけ。しかし、それで充分だった。

 

「へっ!俺の名前は削板(そぎいた)軍覇(ぐんは)。お前は?」

 

「上条当麻……」

 

 削板は背中を預ける男の名前を聞き、片方の掌に拳をぶつけながら上条に対して挑発するように言い放った。

 

 

「足引っ張んなよカミジョー!」

 

「俺のセリフだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先ほど上条を視認した場所よりも更に進んだ場所まで来た食蜂は、これからのことを考えながらも足を変わらず進めていた。

 

「はあ……っ、はあ……っ、上条さんに必要なことは伝えたからあとは私は私のことに集中すればいい。逃げることぐらいしかできないけどねぇ……」

 

 上条に対して必要な情報を伝えた食蜂は、幻生を倒す方法を考えながら先に進む。彼女とて彼らと変わらず窮地にいるのだ。しかし、実を言うと彼女には幻生を倒すまではいかなくとも、状況を五分五分にするくらいの手札はあった。

 

「……それにしても、天野さんはどこに行っちゃったのかしらぁ?」

 

 彼女がこの戦場で信じられる人間の一人。本来ならばいの一番に隣に居て欲しい強者だ。

 

「御坂さんがダメになった以上、私同様に心理掌握(メンタルアウト)が効かない天野さんなら幻生相手でも心強いのにぃ。一体どこで何をしているのよぉ……」

 

 自分の心理掌握のリミッターコードが奪われればチェックメイト。この状況で安全地帯に居て欲しいなどと馬鹿なことを言うつもりは無い。

 おそらく、幻生が企みが成功すれば学園都市がただでは済まないのだ。最悪な結果をなってしまうのならば背に腹はかえられない。

 

「……もしかして、上条さんの方に行っちゃったとか?…………あり得るわね。天野さんってそんな態度は普段の生活で一切見せないけど、ちゃっかり上条さんの隣に居座るように水面下で行動してるのよねぇ。

 澄まし顔でいるから気付かないけど、実は私達の中でも相当愛情(りょく)が重いんじゃない?」

 

 人知れず勝手に愛が重い設定を付け加えられているオリ主である。

 

「……天野さんの公平さを重んじる理性が弾けた瞬間、果たしてどうなるのか。人間の中身なんて基本的にアレだけど、あの天野さんのドロドロした部分が表に出てくるとなるとどうなっちゃうのか私でも分からないわねぇ。

 それこそ、可愛い嫉妬ぐらいならいいけど、もし逆にそれ相応のものが出てきたらカウンセリング程度で済むとは思えない。俗に言うヤンデレみたいにならないといいけど」

 

 いつの間にかヤンデレにされるオリ主。本人が聞けば憤慨ものであろうその言葉は誰にも聞かれず虚空に消える。

 

「……っと、こんなことを考えている暇はないわ。早く次の行動を…………──え?」

 

 雷雲を窓から見ながら考えていた食蜂は、幻生から少しでも離れるために前に進もうと、窓からから視線を切るその一瞬、あるものが視界に映る。

 その、あり得ないその人影を見て困惑が彼女の頭の中を埋め尽くす。

 

「え?……ち、ちょっと待ちなさい。なんであなたがそこに居るの……?だってあなたは……………………いえ、もしかしてそういうことなの……?

 それじゃあ、幻生の狙いってまさか…………ッ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 高圧電流が(ほとばし)る中、その男達は拳を振るっていた。

 

「うおりゃああああッ!!」

 

 裂帛の声と共に電撃が幾つも叩き落される。そのあり得ない現象を目の当たりにしても攻撃の手が弛むことはなく、死角から滑り込ませるように電撃が迫っていく。

 しかし、そんな彼の背中を守るかのように飛び出す者が居た。

 

「ッ!」

 

 その右手で触れると迫っていた電撃が一瞬で掻き消された。上条と削板はお互いに背中を預けながら、未だに変容した御坂美琴の攻撃を(しの)いでいた。

 

「電撃やら鉄材やらやたらと攻撃手段が豊富だな」

 

「ああ、アイツ確かそれで自慢してたような気がするし、多分もっとスゲーのもできるはずだ。さすがに今の状態で超電磁砲(レールガン)はできないだろうけど」

 

 そんな話をしていると磁力によって打ち出された鉄骨が迫ってくる。その光景を見て即座に自分では対処ができないと悟る上条。

 避けようと動こうとするが、削板は一歩も動かず待ちの姿勢だった。上条としては先ほどと同じく攻撃して吹き飛ばすかと思っていたが、削板は衝撃の行動を取る。

 

 ゴィィイインッ!!と、金属が鳴らす特有の音を出しながら額で受け止め、弾き返したのだった。

 

「はあ!?」

 

 そのあんまりにもあり得ない光景を見た上条はまたしても唖然とする。もし、自分があんなことをすれば当然の如く頭蓋骨は砕け散っているだろう。

 

「(超能力者(レベル5)って本当にどいつもこいつもぶっ飛んでるな……。まあ、一方通行(アクセラレータ)も御坂もできそうっちゃできそうだけど)」

 

 ベクトル操作。磁力制御。

 どちらでも似たような結果は生み出されるだろうが、本人達の性格からしてあのような真似を果たしてするかと言われると疑問ではある。

 上条は削板の能力の正体は、身体能力増加系の能力ではないかと最初は思っていた。しかし、それにしては不可解な現象が起こりすぎていると、上条は今までの戦闘経験から導き出した直感で察する。

 魔術とも違ったその現象に困惑しながらも上条はそんな彼に声をかけた。

 

「アンタ本当にやること無茶苦茶だな……」

 

「俺みたいな根性ある男は無茶を通してなんぼだからな!道理だろうがなんだろうが俺の根性があればぶっ壊せるぜ!」

 

「いや、これ根性でどうにかできるレベルか?」

 

 そんなことを言い合いながらも二人は異形の姿となった彼女から目を一切離さない。気を抜いた瞬間どうなるのか予測が付かないのである。現在も防ぐばかりで根本的な解決法があるわけでもないのが実状だった。

 

「カミジョーを投げ飛ばしてもすぐ元に戻っちまうからなー。本当に時間稼ぎしか方法がねーのか?俺としては根性でババッと解決してーところなんだけどよ。どうせならもう一回しとくか?」

 

「なんでだよ!?しねえよッ!?右手で打ち消してもどっかから力が送られてきてるから無意味だって言ったろ!?人間大砲はもう嫌だぞ!?」

 

 先ほどのことを思い出して冷や汗を流す上条。砂鉄のバリアを抜けるためとはいえ自分を砲弾のように撃ち出されるのは、もう御免なのである。

 

「俺の幻想殺し(イマジンブレイカー)はそこにある異能を打ち消すだけの力だ。御坂に注がれ続けている何かを止めるには、送っている元栓自体を俺の右手で直接触らないといけないんだよ。……まあ、それも異能でないと結局意味はないけどな」

 

「つーことは、このままアイツの攻撃を根性で防いでいればいいのか?待ちの姿勢ってのは俺の趣味じゃないが、それ以外の方法がないっていうなら仕方ねーか…………ん?」

 

 そんな彼らに影が射した。またしても砂鉄で引き寄せ掻き集めた、コンクリートブロックなどでできた集合体の塊をぶつけようとしているのだ。

 

「その攻撃はさっきもう見たぜ…………あん?」

 

 削板がいきなりその攻撃とは別方向の方向に振り向く。その様子を見て上条は思わずぎょっとする。

 

「お、おい、どうしたんだ!?さっきのあれが来るぞ!早く壊さないと…………──ッ!!」

 

 その瞬間、上条も遅れて身体が反応する。それは上条自身が知覚したのではなく文字通り身体が勝手に反応したのだ。

 

 前兆の感知。

 上条当麻が幾多の魔術師や能力者と相対した経験から身に付いた、異能の力を引き出す直前に起こる前兆を察知する察知術。一見便利な技能ではあるがある欠点が存在している。

 それは、察知するためには相手の攻撃が出る直前の微弱な反応や、術者の癖などを知っていなくてはならないという点だ。そして、今回上条が前兆の感知を発動したということは相手も当然知人ということになる。

 では、その相手とは誰か?答えはその攻撃が雄弁に語っていた。

 

 上条と削板の上空を切り裂くようにオレンジの閃光が瞬き、その着弾地点である巨塊が粉々に弾け飛ぶ。彼はその攻撃を見たことがあった。

 

超電磁砲(レールガン)ッッ!?!?!?」

 

 レールガン。

 それは、電磁誘導を用いて物体を飛ばして攻撃する近代兵器の一つである。その兵器の名を冠する少女が学園都市には存在する。

 その人物は電気系能力者(エアクトロマスター)の頂点して、七人しかいない超能力者(レベル5)の一人。

 

「おっ?空から誰かやって来るぞ」

 

 削板がいち早くその事実に気付く。彼が助けに向かわないのは必要ないと判断してのことだろう。

 その巨塊に攻撃した更なる乱入者は、少年達二人の遥か上空から舞い降りた。その人物を見て上条は信じられないものを見るかのようや顔をする。

 

「くっ!流石にそりゃあ遅れるか!…………でも、アンタが居るなら最悪なことにはなっていないわよね」

 

「……お、お前、なんでそこに……?」

 

 人間が落ちればまず助からない高度から飛び降りたにもかかわらず、その人物には怪我一つありはしなかった。その事実がその人物の有する力がどれ程のものかを証明している。

 実力と性格から推測しても彼女のクローンではないことは明白。当然、自らの先輩たる彼女の模倣にしては、能力の精錬さと出力共に模倣の限界値を軽々と上回っている。

 ならば、上条の記憶に該当する人物は一人しかいない。上条の前に現れた乱入者は、今の今まで必死に助けようとしていた学園都市第三位にして常盤台のエース。

 

 

 御坂美琴、まさにその人だった。

 

 

「なんだぁ?もしかして双子か?」

 

 調子が変わらないのは削板軍覇。ちょっとやそっとの状況の変化では一切揺るがないその強靭な精神は、まさに超能力者(レベル5)の一角だ。とはいえ、ここには無能力者(レベル0)の常識人である少年と、超能力者(レベル5)の中でも比較的常識人枠の少女が居たため、認識の齟齬は生まれなかった。

 

「いきなりで悪いんだけど、御坂。……俺達がさっきから戦っているアレが何か分かるか?」

 

 アレとは当然先ほどから上条達と戦闘をしている、本家の御坂美琴よりも強大な力を有する存在である。その上、角や光の帯などを生やしており異形と言っても過言ではない見た目をしており、上条にとっては初めて出会う未知の存在だった。

 

「……そうね。この場にあとから来ておきながら情けない話だけど、私も絶対的な確証がない。一つ心当たりはあるけどどっちかっていうと私自身が本当にそうなのか、未だに半信半疑だもの。

 状況から考えてみてもそれが一番可能性が高いってだけのね。……それに、今回ばかりは外れてくれた方が嬉しいってのが本音」

 

 その口から出てきた言葉は、いつもの溌剌な彼女らしくなく口ごもった発言だった。実際に本当に自分の推察があっているのか確信がないのだろう。そして、状況を理解するためとはいえ予測を立てるのさえ躊躇する内容ということだ。

 上条は話を聞きながら、どこかで気付きながらも無意識で考えないようにしていたその予測を、御坂美琴は異形と化した自分の姿を見据えて躊躇い気味の口調で言った。

 

 

 

「おそらく、アレは…………天野さんだと思うわ」

 

 

 




オリ主、念願通りに雷神戦参戦!!


これで今月は多分終わりです。では、また来月
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