とある原石の神造人形(エルキドゥ)   作:海鮮茶漬け

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118.天野倶佐利の異常性

 息も絶え絶えな様子で少女は走る。非力な自分では接近されてしまうと大して抵抗ができないと知っているからだ。

 時間稼ぎも兼ねて、彼女は手元の端末から幻生に話し掛けた。

 

「天野さんを絶対能力者(レベル6)にしたいみたいだけど、確か絶対能力者に到達(りょく)のある能力者は第一位だけという結論が出たんじゃなかったかしらぁ?」

 

 設置されているスピーカーから声が投げ掛けられた幻生は、その質問を肯定する。

 

『うん、理論的には安定して絶対能力者に達しうるのは彼だけだねぇ』

 

「……理論的には安定して……?」

 

『それこそ、御坂くんでは理論上で到達率五十三%で精神が別次元のものへと変異してしまうんだ。

 一〇〇%に到達するまでは自我がなくては困るから、それを防ぐための方法として心理掌握を手に入れた訳だけど、天野くんが絶対能力者に至る人員として確定しまった以上は、それも無用の長物になりかねないねぇ』

 

「……勝手に能力を奪われた側としては物申したいところだけどぉ。ここは私の強靭な忍耐力で飲み込んで上げるわぁ。

 私が聞きたいのは御坂さんでも安定しないなら、天野さんだったら更に難しいんじゃないかってことなんだけど、そこのところ私にも答えてくれるかしらぁ?」

 

 食蜂の口から出た当然の疑問。

 しかし、幻生は先ほどの警策との問答でそれは食傷気味であった。ならばと、幻生は少し視点を変えて話し出す。

 

『食蜂くん。君は「オカルト」を信じるかい?』

 

「……はあ?」

 

 文脈を断ち切るかのような話題変換に食蜂は困惑する。話の方向性が百八十度変わったのだからそれも当然だった。そんな食蜂を気にせず幻生はしゃべり出す。

 

『科学というのはあらゆる法則を数値化して紐解いていくと、ポッカリと理論では説明できない理解不可能な箇所が生まれることが度々ある。

 僕達科学者はその事を「非科学(オカルト)」と名付け、その解き明かせない行き止まりをブラックボックスに放り投げてきた』

 

「……」

 

 『オカルト』。

 幻生からその言葉が出てくることに違和感しか感じられないが、食蜂は天野が置かれている状況を把握したいがために、湧き出る疑問を全て封殺する。

 話の内容の真偽はともかく、少なくとも時間稼ぎの時間が稼げているのは事実だ。

 

『天野くんはその「オカルト」の数値を弾き出すことが殊更(ことさら)に多いんだ。特定の条件下でしか出てこないはずの「オカルト」が彼女を相手に計測しているとどんどん出てくる。まるで、その「オカルト」を自ら精製しているかのようにね』

 

「ふーん、つまり天野さんが使う能力は超能力じゃなくて『オカルト』だとでも?」

 

『いやいや、それは早計だよ。僕の考えでは彼女の力自体は超能力に分類してもいいものなのだろう。彼女の不可思議な力は能力の行使とはまた違ったときに発現しているから、彼女の能力とはまた別物と僕は思っているよ。

 本人ですら把握していないようだから、意識せずとも自然と発生するもののようだね』

 

 そして、と更に幻生は付け加える。

 

『ここ最近は「非科学」がより多く計測できるようになったんだ。推定で二ヶ月ほど前くらいかな?』

 

 そのやたらと詳しい様子に、まさかと思いながら食蜂は問い質す。

 

「……もしかして、天野さんを遠くから監視して、データを取っていたりとかしてるんじゃないでしょうね?あなたならしてもおかしくはないけど、ちょっと変態(りょく)が極まり過ぎじゃないかしらぁ?」

 

『天野くんのデータは貴重なサンプルだからねぇ。一分で集まるデータが値千金になる。科学者なら垂涎(よだれ)が出るほど欲しいものさ』

 

「…………コイツ、真面目に殺した方が良いんじゃないかしらぁ。天野さんの貞操を守るためにもなるべく早く」

 

 データのためならば乙女の私生活まで土足で踏み入れようとしていることに、食蜂は軽蔑と嫌悪感で鳥肌が立った。

 

『いやいや、プライバシーはそれなりに守るようにしてるよ。まあ、それも近付き過ぎるとバレる可能性があるからだけどねぇ。

 天野くんの察知能力は極めて高い。だけど、それは特定の個人を見付けられるほどに精度は高くはないんだ。

 なら、やりようはいくらでもあるとも。彼女が視認しても大丈夫な風景に馴染むことが可能な人員と、データを取っていると一目では分からない機材を用意すれば、仮に彼女の索敵範囲に入ったとしても誤魔化すことは簡単さ』

 

 事も無げに言う相手の神経に反吐が出る。年頃の少女の私生活を見張るなんてゴミカスとしか思えない。絶対に何かしらの天誅を下してやると彼女は決意した。

 

『そして、僕は集めたデータから一つの結論を出した。「非科学」が最も計測出来たのは天野くんの危機的状況だったことから、おそらく自動迎撃システムのようなものとして、「科学では立証出来ない力によって生み出された何か」が存在しているのだろうとね』

 

「(自動迎撃システムって、CIWSのようなもの……?自国へ発射されたミサイルなんかを迎撃する近接防御火気システム。それと似たようなものが天野さんの中に……?)」

 

 幻生の発言からどうやら火事場の馬鹿力とは別種のもののようだ。疑問を抱く食蜂に幻生は自らが叩き出したその方策を語った。

 

 

 

 

『そして、どうやら天野くんに眠る「非科学」はなかなか強力なものらしくてねぇ。今回の実験に支障をきたす可能性が高かったんだ。

 だから僕は考えた。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 これこそが答えだった。何故オリ主の危機的状況にもかかわらず、未だにエルキドゥが表に出て来ないかと言えば、エルキドゥもオリ主同様ミサカネットワークから送られたエネルギーで、ショートしてしまったからに他ならない。

 この結果の要因はミサカネットワークから送られたエネルギーが、魔術ではなく科学サイドのものだったからだ。

 エルキドゥは魔術に関しての防御機能は途轍もなく高いが、科学による攻撃は門外漢である。

 これが生半可なものであったとしたら、エルキドゥはダメージを受ける程度で済んだだろうが、このエネルギーは能力者を神ならぬ身にて天上の意思に辿り着くもの(S Y S T E M)へと押し上げる程の高密なエネルギーを秘めている。

 その上、幻生の狙い通りに身体の主導権をオリ主へと預けていたため、十全に力が発揮できない状態だったのも災いした。しかし、似たような事態を偶然か必然か、彼らは既に経験している。

 

 

 ──そう、御使堕し(エンゼルフォール)だ。

 

 

 あの経験があったからこそ、逆にオリ主もエルキドゥも油断していたのだろう。

 オリ主はあのような経験は原作知識からもう無いと確信してしまい、エルキドゥは御使堕しで今後似たような事態を防ぐための心構えをしていても、それはあくまで魔術によるもの。科学サイドというものをオリ主の視点から観察していたからこそ、そちらに対しての防御の認識を弛めていたのだ。

 それこそ、実際に科学サイドの一つの頂点である一方通行(アクセラレータ)と対峙したのも原因であるかもしれない。脅威的な力だと認識はしても、自らの力を使えばあの絶対防御は貫けるものだと、エルキドゥは正確に認識してしまった。

 そして、マスターの意向から科学サイドの問題には、なるべく介入しないようにしていたからこそ、悪意を感じられても即座に動くことはなかったのだ。

 

 言ってしまえば、思い込みによるそれぞれのミス。今回に限りそれが致命的な失敗だったというだけのこと。その結果オリ主もエルキドゥも完全にその意思を停止してしまうこととなった。

 

 そして、これは彼らのミスでもありながらも、この結果を生み出すこととなったのは、他でもない幻生の導き出した解決案が最適解であったからだ。

 それこそ、オリ主のデータを常に幻生が取っていたからこそ、生まれた攻略法だったのだから。

 

 

 

 

 

『その結果はご覧の通りだよ。天野くんの中に居る「何か」は無事に封じ込めることに成功し、天野くんは絶対能力者の一歩を踏み出すことが出来た。

 何せ「非科学」は数値化できないからねぇ。もし、注がれたエネルギーを跳ね返す力すら持っていたとしたら、天野くんは絶対能力者になるための一歩を踏み出せなかったよ。まあ、そのときは元から進めていた御坂くんの絶対能力者計画を進めるだけなんだけど』

 

 あくまでも第二計画(セカンドプラン)。成功しようがしまいが構わないということだった。

 

「……つまり、天野さんが御坂さんを遥かに凌駕する理由は、その科学じゃ導き出せない何かが要因ってこと?」

 

『それも一つの要因になる、ということだよ。僕の協力者にも伝えたけど天野くんの特別なところは、身体だけじゃなくその精神性もだからねぇ。あれだけ特異な精神を持つ子はこの世に二人といない』

 

 タブレットに映る幻生は愉快そうに話す。食蜂はその言葉に違和感を抱いた。

 

「確かに、天野さんの精神面は記録から大人顔負けみたいだけど、私達、超能力者(レベル5)と比べるとそこまでに思えないわぁ。

 第二位、第四位は暗部と深い繋がりがあるし、それこそ第一位はクローンを一〇〇〇〇人殺してる。天野さんもかなり特殊だとは思うけど、その人達の方が大概の性格だと思うけどぉ?」

 

『ひょっ、ひょっ、ひょっ、食蜂くんは分かってないねぇ。まあ、食蜂くんは彼女のことをさして知らないようだから当然と言えば当然かな』

 

 ビキリッ!と、その言葉を聞いた食蜂のこめかみに線が走った。先程までよりも幾らか声の高さが下がった彼女は、小さな眉根を寄せて幻生に向け棘のある声で話し出す。

 

「……へ、へえ?この私が天野さんに対して知らないことがあるとでも?残念だけどあの人の置かれている状況を把握するために、だいたいのことは調べ上げてるわぁ。

 まあ、あなたのようにプライバシーを無視するかのような情報までは得ないようにする配慮(りょく)はあるから、情報の多さではあなたの方が少し上回ってるかもしれないけどねぇ」

 

 食蜂は幻生を小馬鹿にするように告げる。彼女としては天野との関係もそれなりに続いており、彼女の周辺のことは既にリサーチ済みだ。

 これは相手のことを完全に信用できない食蜂が、相手の情報を握ることで不安材料を無くしたいからという、精神的安定を求めたのが始まりではあるのだが、関係が深まることで天野の置かれている状況を知ることとなり、それを改善するため彼女の情報をより詳しく調べ上げていた過去がある。

 だからこそ、天野の情報はかなり知っている部類だと食蜂は自認していた。そんな彼女の態度がまるで可愛らしいとでも言いたげな声音で、幻生は衝撃的な真実を話し出す。

 

 

 

『それなら、食蜂くんは知ってるかい?天野くんが置き去り(チャイルドエラー)だということを』

 

「は…………?」

 

 

 

 食蜂はその言葉に呆然とする。何故なら彼女はそんな情報は一切知らないからだ。動揺する彼女に対して幻生は諭すように囁きかけた。

 

『君も不思議に思ってたんじゃないかな?能力情報の提供で生み出される莫大な資金は果たしてどこに使われているのかをね』

 

 食蜂としても調査する中で見付けた莫大な金の流れは、確かに興味を抱いたことがある。そして、彼女はその答えを直接本人から聞いていた。

 

「う、嘘…………天野さんは多くのお金の流れを作ることで、自分の能力で利益を得ようとしている研究施設に対して、イニシアチブを取りやすくするためだって……」

 

『もちろん、それも理由の一つではあるのは間違いないだろう。普通に彼女と取り引きをすれば、能力研究的にも金銭的にも潤沢とも言える報酬が確約されるのだからね。

 それを欲張って強行しようとすれば、彼女と協力関係の企業から妨害や刺客を送られる可能性があることを考えれば、彼女に取り入るのが一番安全で確実だ。そう言った流れを作るためにお金を利用するのは効果的で合理的だよ』

 

「……いや、だとしても天野さんの実家が、それ相応のお金持ちって情報は確かよ。お嬢様なんだから金銭的な余裕が無いはずが……」

 

『なおのこと、それだと辻褄が合わなくなるんだ。何せ彼女がお金の流れを作ったのは彼女の能力が知れ渡り、初めて襲撃されるよりももっと前。それこそ、学園都市に来て初めて取り組んだことがそれだよ。

 まあ、先の展開を読んで仕組んだ自衛という可能性もあるけど、お金持ちのお嬢様である少女が一番に金銭を気にするのは、いささかおかしくないかな?』

 

 確かにそうだ。幾ら聡明な子供でも能力開発という、分かりやすいオモチャがあるのならそちらに目を向けるはず。お金の重要性を仮に理解していたとしても、家がお嬢様ならば地に足を着けた状態で取り組むのが一番自然なのだから。

 ……しかし、もしそれが本当のことならば天野倶佐利という少女は……。

 

 

『──君の立場ならどうだろう。お腹を痛めて産んだ赤ん坊が緑の髪をした異常な子だとするなら、君はその子に「愛情」を注げるかな?』

 

「…………」

 

 

 ……つまりは、そういうことなのだ。置き去りはそもそも金銭的な理由などから生まれる障害を、乗り越えられなかった親が子供にする厄介払い。

 箱入り娘のお腹から天野倶佐利のような特殊な子供が生まれたのならば、少しでも遠くへ遠ざけたいと考えてもおかしくはないだろう。

 その上、超能力者を研究する学園都市ならば受け入れを拒否するはずもない。

 食蜂は天野が背負ってきた境遇を思い唇を噛み締める。

 

『彼女の母親は天野くんが産まれると、山深くにある別荘に彼女を隔離し、学園都市に来るまでの世話はメイドに任せていたそうだ。彼女には両親が海外に行ってしまい、「手違いで不幸にも振り込みが止まってしまった」と知らされたけど、聡明な彼女のことだ。とうの昔にそれが嘘だと見破っているだろう。

 小さなときから母親にも父親にも会えずに過ごした嬰児(みどりご)が、そのまま誰も知り合いがいない学園都市に放り込まれて過ごすなど、パニックになっても仕方がないことさ。しかし、僕が知る限り彼女はそんなところを一切していない』

 

 物心付く前に知らない土地にたった一人で投げ出される恐怖は如何様なものか。食蜂は自らがそうだったらと想像して背筋が凍った。

 

『この歳まで絵に描いたように真っ直ぐ育つことがそもそも異常なことだよ。

 彼女が周囲の人間を助けようとするのも、誰にも与えられなかった「愛情」を誰かを助けるという行為の報酬として、無意識に求めるが故なのかもしれないねぇ』

 

 考えたこともなかった。あの少女がそんな境遇を過ごしていたなど想像もしていなかったのだ。

 もし、そんな風に育てられたのなら、自分は果たして今のような精神性をしていただろうか。『愛情』を注がれるのは自己肯定感と承認欲求を満たすことに繋がる。それが一切与えられなかったとするならば、常に足場の無い不安定な状況に置かれていること同然なのではないだろうか。

 

「(なら、当然だけど普通は安定を求める。『愛情』を受けることに貪欲になってもおかしくはない。……けど、私はそんな状態の天野さんを見たことがないわ)」

 

 愛情を注がれるべき時期に一度も愛情を注がれることなく過ごし、今もなお愛に飢えているとするならば、それを身近な人間にさえ一切気取られない強靭な理性は、果たしてどのように形成されたのだろうか。

 

『飄々とした態度の裏では、一体どんな葛藤を繰り広げているんだろうねぇ。親から絶縁された孤独な生活で、一度も疑問を抱かなかったことは無かったはずだろうに。

 それこそ、当時は理解できなかったとしても学園都市で周囲の話を聞けば、どれだけ自分が異常な環境下ですごしたのか理解できるはずだ。

 それにもかかわらず、愛情を受けとることが出来なかった理由だろう緑色の髪をあそこまで伸ばすその意味。……実に、(いびつ)な精神だとは思わないかね?』

 

 ……確かに、そのような事実があればコンプレックスになっていても不思議ではない。あれほどまで伸ばす理由が何故なのか食蜂には理解出来なかった。

 

『流石は高位能力者の一人と言えばいいのかねぇ。実に独自性がある思考回路だ。そして、それを表に一切出さない器用さも彼女を彼女足らしめる要因なのだろう。

 その独自性の高い思考回路からみても、やはり全ての能力者の中でも飛び抜けた自分だけの現実(パーソナルリアリティー)の強固さと言えるね』

 

「……自分だけの現実……?どうして、今の会話からそんな話に?」

 

『ふむ、幾らか周回遅れは否めないが君は僕ほど面白いデータを手に入れてないから仕方の無いことなのだろうね。そして、君にも分かるように説明して上げてもいいんだけど────どうやら時間のようだねぇ」

 

「ッッ!?!?」

 

 その声を背後から聞いた食蜂はすぐさま逃げようとするも、多才能力(マルチスキル)の能力の一つであろう氷の能力で、体操服が壁と挟まるようにして凍り付く。

 壁から体操服を抜き取る時間をくれるような相手では無いことを察して、食蜂は無駄な力を使うのを止めた。そして、敢えて今まで聞かなかったことを幻生に尋ねてみる。

 

「……というか、そもそもなんで私を追っているわけぇ?御坂さんならともかく、天野さんに心理掌握が全く効かないのは調査済みでしょう?

 リミッター解除コードで心理掌握の出力が増加させたとしても、能力が通らないものは通らないわ」

 

 これは心理掌握を長年使ってきたから理解できることだった。0に何を掛けても0にしかならない。

 リミッター解除コードで心理掌握の出力が増したとしても、動物である犬猫には心理掌握が通じないのと同じ様に、幻生がリミッター解除コードを手に入れても、天野への精神介入は不可能でしかないのだ。

 食蜂からすれば無意味でしかないことに付き合わされているのは、馬鹿馬鹿しいことこの上無い。

 それを聞いた幻生は更に笑みを深くする。

 

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「……指標ですって?」

 

 思いもしなかった返答に疑問を抱く。しかし、幻生はそんな食蜂のことは気にせずに話し続ける。

 

「けど、それはあくまでも今の話だ。今のまま進めば無事に天野くんは初めての絶対能力者となり無用の長物に成り果てる。

 だけど、仮に僕が予測するような可能性を見せてくれれば、君の心理掌握、そしてリミッター解除コードもあとから重要な役割を担うことになる」

 

 相手に効かない能力に一体なんの意味があるというのだろうか?食蜂にはその意味が全く分からない。そんな食蜂など眼中に無いかのように愉快気な声で幻生は笑い出す。

 

「クククッ、絶対能力者になれば天野くんは人間の枠組みを超越することになる。それこそ、彼女の存在に世界が軋みを上げるだろうねぇ。

 そうなれば、被害に遭うのは間違いなく彼女の居る土地。つまりは、学園都市だ。

 彼女の成長が世界を滅ぼすのか、それとも理を解き明かすことで世界を丸ごと掌握するのか。科学者としてとても面白い研究対象だよ」

 

 食蜂には幻生が何を言っているのか理解出来なかった。それこそ、相手が机上の空論を日常会話で繰り広げているかのような、気持ち悪さが彼女の中を渦巻く。

 しかし、持ち前の天才的な頭脳を用いて言葉を分析し、今の話から生まれた疑問を幻生に尋ねた。

 

「……今の話がどこまで本気かは分からないけど、それだと学園都市に居るあなたも無事では済まないんじゃないの?」

 

 その質問を聞いた幻生はなんでもないように、しかしそれこそが科学者のあるべき姿なのだとまるで主張するように、不気味など落ち着いた穏やかな声音で幻生はその言葉を発した。

 

 

 

「──科学の発展に犠牲はつきものだろう?」

 

 

 

 清々しくもそんな狂ったことを平然と(のたま)う妖怪を見据えて、食蜂は嫌悪感を隠しもせずに呟いた。

 

「……これだから、正気(りょく)が低いのを相手するのは嫌なのよねぇ」




【速報】衝撃の事実、オリ主YAMA育ち

◆裏話◆
オリ主「ええ?振り込み無いの?なら、しゃあない稼ぐかー……そういや、労基法は大丈夫か?」

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