とある原石の神造人形(エルキドゥ)   作:海鮮茶漬け

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今年最後の投稿です。良いお年を(あと一日)


122.お助けキャラ

「──ッッ!?!?」

 

 上条がオリ主の異変を目視したとき、同じくして大覇星祭を小萌先生と回っていた彼女もそれに気付いた。

 

「おや?どうしたのですか?シスターちゃん。何かあり──ハッ……!ま、まさか、またしても出店の匂いに釣られてしまったのですか!?

 流石の先生でも、お財布の中身がそろそろ怪しくなってきたのですけど!?」

 

 見た目少学生にしか見えない彼女ではあるが立派な大人である。煙草をカートンで吸うほどにヘビースモーカーであり、部屋にはビール缶が散乱している(オリ主が定期的に掃除している)淑女なのだ。

 そんな彼女は学校の先生として、自らの生徒の友人(?)の銀髪シスターであるインデックスを引率していたのである。

 というのも、彼女の保護者(?)である上条当麻が借り物競争で借りた御守りを持ち主に返しに行くらしく、その間預かることとなったのが事の経緯だった。

 

 その張本人であるインデックスは遠方を見ていた。それは、おそらく目の前にある建造物や大空ではない。まるで遥か遠くから特殊な電磁波を受信したかのように彼女はそれに反応したのだ。

 禁書目録としての知識から理解したその『力』の正体に、インデックスは顔を一瞬で青ざめる。

 彼女は驚愕した声音でその衝撃の事実を言った。

 

「……う、嘘……何で学園都市で天使の力(テレズマ)がッ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「づ……、……い、一体何が起こったの……?」

 

 先ほどの『力』で吹き飛ばされた御坂美琴が瓦礫の上で目を覚ます。彼女は突然巻き起こされた衝撃を上条と同様に反応出来なかったため、磁力を用いての回避行動に移れず諸に当たってしまったのだ。

 その反動で引き起こされた軽い脳震盪から目を覚ました彼女は、周囲の状況を見てさらに驚愕することになった。

 

「嘘……これがさっきの一瞬で……?」

 

 先の戦いの影響で地面が傷付いていたり陥没していたりなどはしていたが、今現在のように整備された地面が捲れ上がり、辺り一面が更地に変わるほどのものではなかった。

 それが先ほど吹き飛ばされた『力』で引き起こされたならばこの反応も当然だろう。だが、だからこそ不自然だ。

 

「それなのに、なんで私は生きて……?この惨状からしてトラックの衝突事故なんかとは、比べられないくらいに強力な衝撃だったはずなのに……」

 

 それこそ、ロケットランチャーで攻撃されるくらいでなければ、このような惨状は生まれないだろう。どう考えても強力な超能力がなければ、一般的な女子中学生と変わらない耐久力しかない彼女には凌げるはずもない。

 自らが原型も残らないミンチになっていただろう可能性よりも、原因も結果が全く噛み合わない事象の方が、彼女からすると余程不気味に映った。

 しかし、そんな彼女の後ろから声が発せられる。

 

「いやー参った参った。俺としたことが気が弛んで根性を入れ損なっちまったぜ」

 

「アンタ……!」

 

 そこに居たのは学園都市第七位、削板(そぎいた)軍覇。彼はボロボロとなった身体を動かして彼女の側にまでやって来た。

 

「反射的に隣に居たお前を衝撃波から逃がすことはできたが、思ったよりなかなか根性ある力だったな。直撃食らった俺はかなり吹き飛ばされちまってよ戻ってくるまでに数秒かかっちまった」

 

 その言葉から削板が御坂を助けてくれたのは明らかだった。彼女は助けられた人間として彼に感謝を述べた。

 

「ありがとう助かったわ。アンタが助けてくれなかったら間違いなく死んでた」

 

「なーに気にすんな!困った時はお互い様だからな!」

 

 そう言って快活に笑う彼は、御坂を助けたことによって及んだダメージなどは一切気にしていない。いや、それこそそこで不満や疑問を抱くようならばここに来てはいないだろう。

 そして、ふとある人物のことを思い出す

 

「ちょっと待って!それじゃあ、あの時天野さんの近くに居たあのバカは……!」

 

「ああ、あの距離じゃあ流石の俺もカミジョーを助けることは出来なかった。本来なら元の形すら残ってねーはずなんだが……」

 

 そこまで言って削板はスッと横を向く。御坂も続いてその方向を見ると、そこにはツンツン頭の少年が地面に座り込んでいるのを視界に捉えた。

 

「生きてる……ッ!」

 

「どうやら、あの右手で吹き出た力を打ち消したみたいだ。衝撃の源があの右手で打ち消せるモンじゃなかったら、流石のカミジョーも死んでただろうけどな。

 まあ、同時に巻き起こされた純粋な衝撃波はどうしようもなかったようだが」

 

 削板の言う通り、上条も彼と同じくして体操服をボロボロにしていた。衝撃波で吹き飛ばされる最中でそうなったのだろう。

 

「お前を助けたっていっても身体が反射的に動いたってだけでよ。実は着地までのことは考えてなくてな。

 打ち所が悪かったりしたら普通に死んでることもあるって気付いて、焦って戻って来たんだ。いやー、生きてて何よりだぜ」

 

「(……待って。あのバカは天野さんの近くに居たことで『力』が噴出されるのを感知できたかもしれないけど、私と同じくして離れて居たコイツは、もしかしてあの衝撃波が引き起こされた後に身体を動かしてから、私を助け出したって言うの?)」

 

 ソニックブームが引き起こされるのは超音速である。先ほどの一見衝撃波と間違える『力』の噴出は、少なくともソニックブームと同程度の速度があったはずだ。

 それを条件反射だろうがなんだろうが、身体の速度を合わしたということはその速度で動くことが可能ということ。

 

「(もしかして、超電磁砲(レールガン)も見切って避けられる……?)」

 

 自分の奥の手すら届かない可能性が頭を過るが、今はそんなことを気にする暇が無いことに気付き頭を横に振る。現在より緊迫したものが他にあるのだ。

 

「それより、天野の奴また変な姿になってるじゃねーか。しかも、今までなかった変な力も感じてるしよ。

 もしかして、あのバカでけえ翼みたいなのがそれか?なんか一段と面倒臭いことになってるみてーだな」

 

「あれが天野さん……?」

 

 御坂も前を向けばそこには翼を広げた天野俱佐利の姿があった。御坂が今まで気付かなかったのは脳震盪の影響でちゃんと周囲を把握できていなかったためか、はたまた生物の本能で認識することから逃げていたのか、それは彼女自身にも理解のできないことである。

 御坂美琴は次々に与えられる情報を一つ一つ呑み込んでいくが、あることに気付き思考が止まる。この混乱の中心点にして一番の被害者である天野俱佐利に異変が起きた。

 

 正確に言うのならばその左肘から生えた白い槍が。

 

 右側は人間の形に戻ったものの、左側は依然として異形の造形をしている。その異形の左腕がまるで蕾から花が開くかのように、肘から上下に分かたれた。

 見方によっては傘が開くようにも見えるその光景を見て、御坂美琴がまず最初に連想したのは、銃火器が現れるまで長く戦いの道具として利用されていた、人類が生み出した遠距離からの狩猟武器にして、弾性を利用した最古のバネ。

 

「……弓?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その姿だけをみれば当然錯乱してしまったようにしか見えないだろう。事実、隣に居る目を真ん丸にした月詠小萌を初め、通りすがりの人々を好奇な視線を彼女に向けていた。

 しかし、彼女にとってからすればそんな周囲の視線などに、今は目を向ける必要性が微塵もない。そんなことよりも遥かに重要視するべき事柄が目の前に現れたからだ。

 

「学園都市に『天使の力』が発生するのもおかしいけど、量があり得ないくらい多いんだよ!偶像崇拝の理論で『天使の力』を利用している聖人を遥かに超える膨大な力の奔流……。

 大天使…………いや、もしかしてそれ以上の()()を呼び出そうとしている……ッ!?」

 

 『天使の力(テレズマ)』を利用して行われる魔術は少なくない。だが、制御することは生半可な者では不可能だ。通常、魔術を発動する際は生命力から魔力を精製し、その魔力を燃料にして魔術を発動する。

 しかし、『天使の力』には既に指向性というものが存在する。つまり、ある一定の『色』が存在しているのだ。

 それこそ、学園都市の超能力と類似しているだろう。多様性もなければ扱いづらさなどもあるため、総合的に見て『天使の力』の方が使いにくいのではあるが。

 つまり、大天使と同等の『天使の力』が現世に呼び出すには、何かしらの霊装を用いるしかないのだが、学園都市という科学信仰が広まる土地で発動するには無理がある。

 

「これが、星座や月の満ち欠けで発動する霊装なら学園都市でもおかしくないけど、これだけ膨大な『天使の力』を使用するとなると、土地なんかも必要な条件に含まれるはず……やっぱりどう考えても辻褄が合わないんだよッ!?」

 

「え、ええっと……シスターちゃん?」

 

 インデックスがこれ程焦っているのは、魔導図書館である自分が理解できない魔術サイドの事象が、科学サイドで起こっているというだけではない。

 もし、大天使が暴れることがあれば甚大な被害はほぼ確定と言ってもよく、学園都市を含めた日本全土が更地になることも当然考えられる。

 

「(ううん、大天使が本気を出すと丸ごと地球の環境が変わりかねない。しかも、その大天使を超える存在が現れるなら危険度も遥かに上回るんだよ!)」

 

 一〇万三〇〇〇冊の魔導書の原典を記憶している禁書目録だからこそ、この状況が途轍もなく緊迫していることを誰よりも理解した。この学園都市で魔術を行使するという常識破りも踏まえれば一刻の猶予もないだろう。

 すると、そんなインデックスが所持している0円携帯がいきなり鳴り響いた。

 

「あっ!シスターちゃん携帯なってますよ。もしかしたら、上条ちゃんですかね?」

 

「そうだ!当麻なら……!」

 

 上条当麻。彼と関り合いのある人間なるば、彼がどれ程の厄介な事態に巻き込まれ易いのかすぐに分かるはずだ。そして、魔術サイドの人間からしてみればその特異な右手は標的とされることもある。

 彼女としてはこれが合って欲しくはないが、インデックスは状況とタイミングからこの問題の中心に上条が近いと導き出した。だからこそ、上条にどういう事態なのか話を聞こうとするも、その考えは予想外の形で裏切られる。

 

『──おっと、タイミングはギリギリセーフってとこか』

 

「え?」

 

 通話口から聞こえてきた声にインデックスは意表を突かれた。この携帯のアドレスを唯一知っている上条当麻だけのはずなのだからそれも当然だろう。

 

『色々と疑問はあるだろうが取り敢えずこっちの指示に幾つか従って貰うぜい。じゃないと、学園都市に魔術師が攻め込んできちまうからな』

 

 その声にインデックスは聞き覚えがあった。しかし、だからこそこの局面で現れることに驚きを隠せない。

 

『全く、問題の中心は上やんだけで充分だってのに、天野の奴も大概トラブルメーカーですたい。やれやれ、困ったときのお助けキャラの土御門さんでも、さすがに手に余るってもんだにゃー』

 

「えっ!?もとはる!?」

 

 通話口の向こう側から聞こえてきた声の主は、インデックスが居候をしている学生寮のお隣さん、土御門元春だった。




通話をして聞こえてくる声は合成音声らしいですね。その声に近い音を当ててるだけなので実際は別物だとか。
まあ、それを聞いたのは結構前なので今の技術だと限りなく近く出来そうですけど。

山場は次話から
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