目が覚めて見れば見覚えのある自室だった。天井の大穴から朝日が差していることを除けばだが。そもそも、こうして自室で目を覚ますこと事態がすでにおかしい。
「(あんな馬鹿みたいなシチュエーションだったけど、光の羽をくらえば記憶が消滅するはずじゃ……?)」
「(そうだ!上条はどうなった!?)」
ベッドから飛び起き、そのまま玄関から飛び出そうとする。昨日の服を着たままであったが、上条の状態を確認するため気にもせずに駆け抜け扉に手をかけると、
メキィッッ!!と、ドアノブが飴細工のように潰れた。
(うん?)
昨日まではこの程度の力加減で、普通に開くはずなのだが、なぜか、やたらめったら握力がついている。
「(え?何で?光の羽にはそんな効力はなかったよな?)」
上条の安否が気になって焦っていたが、意外な現象が起きて一周回って冷静になった。後回しにしたが、そもそも光の羽を受けて人格がまだあるのか分からない。
物思いに耽り体に起こったことを考察する。そして、そのドアノブを握りしめた右手を見ると
真っ赤に主張する、三画の令呪があった。
「(…………………………………………………………………)」
今度こそ全ての機能が止まった。上条の安否が気になり焦っていると、ドアノブを簡単に握り締める怪力になっていたり、何故か世界が違うfateの令呪が右手に現れていたりと、もはや理解不能であった。訳も分からずに呆然としていると、ふと疑問が浮かんだ。
もしかしてこの世界に聖杯ってあるの?
これは、「セイバァーーーー!!!!」っと全力シャウトする展開となるのでは?
ゴホンッ。ん、んー!ちょっと喉の調子を……………………エルキドゥでもシャウトできるのかな?
そんなことを考えながら思考を回し冷静になっていく。落ち着いたことで、これからこの身に降りかかる可能性を探る。
でもマジか。とあるの世界にも聖杯戦争あるのか。それで俺がマスター?世界が俺に対して厳しすぎるでしょ。
触媒とか縁を辿ってやってくるんだっけ?それってエルキドゥ(真)くるんじゃね?
いやいや、鎖の擬人化が顕れても聖杯戦争勝てねぇよ!そんなに甘くないわ!あ、でも、「問おう、貴方が私のマスターか?」ってやつはやってみたいかも。俺のことを尊重してくれるサーヴァントがいいなぁ。
とあるの出来事と、fateの聖杯戦争が襲ってくるとか生きるの無理じゃね?しかも、エルキドゥの体してるから逃げられんし。
令呪はいつ始まるか分からん聖杯戦争のために、残さないと詰む。だから、残すのは決定なんだけど……上条に
いや、別に大したことではないけどさ。元々は男だったからそんな感情なんてないし。まあ、今は女だけども。でもだからって、上条をからかえなくなるのはつまんないじゃん?
うーん、どうするものか……。
三十分経過
………………あっそうだ。つまり、上条の右手に俺の右手を触らせなければいいから、手袋してればいいんじゃね?一枚実在する布があるだけで
よし、それじゃあ準備して上条のところに───
……………………まず風呂入るか。
「あっ!くさり、おはようなんだよ!」
様々な準備をしたあと、あの名医がいる病院に向かい、上条の病室まで歩いているとインデックスに声を掛けられた。
「やあ、君か。おはよう」
慣れた所作でエルキドゥの返事をする。笑顔いっぱいで挨拶をされてほんわかしていると、インデックスの顔が何かを思い出したように、膨れっ面となる。
「ねえ聞いてよ!とうまったらね意地の悪いこと言ったんだよ!」
そこから始まるインデックスの怒濤の愚痴。病室のベンチに座りながら不満を爆発させ、病室で何が起きたのか
「とうまは、本当にデリカシーってものがっ!───あれ?どうしたの、くさり?」
「いや、何でもないよ。そろそろ僕も後輩の病室に行こうかな。一人きりは寂しいからね」
「うん、わかったんだよ!またね、くさり!」
そう言って最初から最後まで口角が上がっていた彼女は、手を振りながら元気に俺を見送った。
インデックスは彼女を見送りながら、彼女と話してみてふと感じたことを口にする。
「なんか、くさりが元気ないように感じたんだよ。それに、何か変な波長が……?」
そのあと目的の病室まで無機質な通路を歩いていると、見知ったカエル顔の名医とすれ違ったが、構わずそのまま歩き続けると、ある名字が書かれた名札の前まで来て俺は足を止めた。
数瞬迷ったがノックをすると「どうぞ」と、声が返ってきたので扉を開けて病室に入る。そのまま何も言わない俺に対して疑問に思ったのだろう。彼がこちらに声をかけた。
「
─────ああ、知ってた。こうなることは全部知ってたんだけどなぁ。
ステイルに言われたときから、いやそれよりもっと昔から、全部承知で付き合ってたんだけどな。
自覚はなかったけど上条当麻は自分の中で大切な後輩だったみたいだ。
深く息を吐くと声の調子を整える。原作の蜂蜜色の髪をした彼女は、いつもこんな気持ちだったのだろうか。
「やれやれ、あれほど力を合わせて戦ったことがあるのに、忘れてしまったのかい?」
別れを告げるように俺は言った。
「
とある『人間』のために建てられた、核兵器を以ってしても傷ひとつつかない建造物。───窓のないビル
その建物の中で、巨大なガラスの容器に逆さまの状態の男は、不敵に笑う。
「やはり、ただの原石ではなかったか。このまま
統括理事長・アレイスター。彼は自らの宿願のためならば不穏分子だろうが、230万の子供達全員だろうが利用し使い潰す。
全ては魔術をこの世から消し去るために。
もうすでにサーヴァントが召喚されている事実。