とある原石の神造人形(エルキドゥ)   作:海鮮茶漬け

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129.神が語る術理

 玉座に座る転生の神は、オリ主達が巻き起こす騒動を遥か高みから見下ろしている。それは高度の高い低いではなく次元の高低。『とある』の世界に存在している人間を含めた、全ての存在とは尺度が全く違うのだ。

 老いた容貌をしているこの世界の全てを造り出した神は、蓄えた髭を擦りながら興味深そうに呟いた。

 

「ふむ、禁書目録がアルテミスを早々に候補から消したのは意外ではあったが、アルテミスの『水』にまつわる伝承は、恋仲であったオリオンが海から頭を出していたところを、アルテミスが誤射するギリシャ神話程度。

 『水』の要素が濃くなければ魔神へと至る理由に為り得んのだから、その可能性を切り捨てるのも自然か。実を言えばアルテミスになる可能性も高かったのじゃが……」

 

 全てを把握する唯一の存在は、まるでゲームの盤面がどのように動いたのか確認するように淡々と言葉を紡ぎ出す。実際にこの世界を創造した神からすれば、ただの確認作業でしかないのだ。

 何処の神話にも語られない奇妙極まる転生の神は、玉座に深く座り直し次々に流れが変わる盤上を、超越者ならではの傲慢な態度で見下ろした。

 

「まあ、ここから先は禁書目録やアレイスター=クロウリーであっても理解不可能じゃろう。それこそ、少ない情報で女神イシスまで紐解けたならば充分及第点じゃろうて。

 ここから先は、奴等が知らぬ『転生』と『エルキドゥ』の要素が絡んでくるんじゃからの」

 

 現地人では知るはずもない情報。オリ主がそう言った行動を明確にしてこなかったため、今まで表面化してこなかった秘密。

 その知識を知っている神は語り始める。この異常事態の真実を。

 

「一番の障害は女神ヌイトから変わり、次の段階へ切り替わることじゃった。それもそのはず、既にオリ主は御坂美琴の姿ではないために、木原幻生が打ち込んだウイルスを用いて力を得ることは不可能じゃったからの」

 

 そうなのだ。既に幻生が御坂妹に打ち込んだウイルスのエネルギーは途切れてしまっている。それは、オリ主が御坂美琴の姿をしていない点からして明らかだ。

 

「では、その代替エネルギーはどこから入手するのか。エルキドゥが介入できるエネルギーでは、オリ主の成長を内側から停止させ正気に戻せばそれで終わりとなってしまう」

 

 あのエルキドゥがマスターの危機と知って、何もしない可能性は極めて低い。マスターを守るために守護しようとするのは簡単に予測できることだ。

 

「大地に流れる地脈や龍脈はエルキドゥの十八番。『とある』世界独自の神性、『天使の力(テレズマ)』では(かえ)って相性の悪さが浮き彫りになり、オリ主の身体から弾かれてサーヴァントとして現界するかもしれん。

 魔術サイドのエネルギーでは取っ掛かりがある分、相性が良くても悪くても不測の事態が起こりやすいと言うわけじゃ」

 

 つまり、エルキドゥが扱い切れず、なおかつ抵抗させずに押し止められるほどの強大なエネルギーが求められた。

 

 では、そのエネルギーとは何だ?学園都市に存在しエルキドゥを抑え込めるほどの科学サイドの強大なエネルギーとは一体……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──しかし、それを考える前に何か忘れてはいないだろうか?

 

 何故、幻生が打ち込んだウイルスによるエネルギーが途絶えたと言うのに、妹達(シスターズ)一方通行(アクセラレータ)は未だ何一つアクションを起こしていないのか?

 被害が無くなったために楽観視するほど一方通行はお気楽ではないし、異常事態をネットワークを通じて事細かく把握できる妹達が、原因を究明しないなどあるわけがないのだ。

 

 そして、木原幻生は別のエネルギーがオリ主へ注入されていることに気付いていない。それは、彼が愚鈍だからと言うわけではなく、一重に彼がオリ主の観察に注力していたからだ。

 仮に予期せずオリ主の身体に『オカルト』が入っていたとしても、彼からしてみれば全く構わないどころか、そう言った不測の事態で起こり得る『オカルト』にこそ価値を求めているため、データを一通り全て取ったあとで詳しく精査するつもりでいた。

 つまり、彼としてはオリ主の成長が止まらない限り、手出しをするつもりは一切無かったと言うわけだ。

 

 そのため、幻生は変わらずミサカネットワークからエネルギーを流し続けていた。しかし、それでは確実に不具合が起こる。

 

 何故なら、原作で御坂美琴が事件を解決し終わるまで、一方通行が一切出てこなかったことを踏まえれば、ミサカネットワークから流し込まれたエネルギーは、常に御坂美琴へ注がれ続けていた、ことになる。

 それはつまり、送られてくるエネルギーの吸収場所がなければ溜まり続けると言うことに他ならない。では、御坂美琴が絶対能力者(レベル6)になった途端、学園都市が丸ごと消し飛ぶほどのエネルギーが滞留して大丈夫なのか?

 

 もちろん、大丈夫なはずが無いのである。

 

 そんなことになれば、その学園都市に何らかの重大な被害を出すことになる。それこそ、学園都市が運営不可能な事態へとなるほどの「未知数な何か」が。

 では、何故それが起こらないのか?そんなもの決まっている。全てはオリ主のせいなのだ。

 オリ主は自身にエネルギーを送っていたミサカネットワークへハッキングし、妹達(シスターズ)を助けるためにウイルスを除去した……などと言う理由では無く、そのウイルスを取り込み掌握して別のエネルギーを得るための『鍵』へと変質させた。

 

 しかし、お分かりの通りその時点であり得ない。

 何故ならば、オリ主へと送られていたエネルギーは妹達(シスターズ)からオリ主へと送る一律なものであるのだから。

 流れ落ちる滝が突然逆流することが無いように、与えられる側が主導権を奪うなどできるはずもない。それも、御坂美琴の身体ではなくなりネットワークのチャンネルが変わった状態で……。

 

 

 ──だが、仮にそれが可能だとしたら……?その全てが何らかの要因でクリアできるとするならどうだろう?

 

 

 妹達(シスターズ)全体に影響を与えるほどにミサカネットワークに負担を掛け、幻生が打ち込んだウイルスと変わらず異常を起こし、科学サイドが有する特大のエネルギーとなり得る代物。

 それを『とある』の世界ではこう言った。

 

 

 

 

「科学サイドの総本山である学園都市が生み出した学園都市最大の禁忌であり、アレイスターの切り札の一つ。───虚数学区・五行機関じゃ」

 

 

 

 

 虚数学区。

 能力者のAIM拡散力場が生み出した虚数空間にして、手付かずの資源の宝庫でもある『陽炎の街』。さらに言えば、世界のテクスチャ全てを塗り替えることが可能なエネルギー源でもある。

 

「アレイスターの考案した第三の樹を活用すれば、科学サイド由来のエネルギーを魔術のエンジンとしても活用することが出来るのは道理よ。

 オリ主は劣化模倣(デッドコピー)で手に入れた超能力を、自分のものとして扱うことができるが、能力開発を受けていないために分類としては『能力者』ではない。それはつまり、原則である『超能力者は魔術を使えない』という制約の外側におる。

 ならば、アレイスターが迂遠な方法で第三の樹に組み込んだ魔術サイドの理論を浮き彫りにして、直接的にその要素を利用することが出来るのじゃ」

 

 アレイスターがセフィロトの樹から、魔術要素を出来る限り排して必要なパラメーターだけで組み上げた物を、オリ主というアバターを操り神はいとも容易く手中に収めて汚し尽くす。

 

「儂以外の神が同じことをすれば神性が意図せず付与することになる。神というものは存在が強大すぎるためにその痕跡を消すこともままならんわけじゃな。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()最新鋭の科学に振り回される心の移り変わりを表す第三の樹ならば、アレイスターよりも掌握できるのじゃよ」

 

 だからこそ、アレイスターは気付けない。世界の創造神という莫大なエネルギーを有する存在からの介入でありながら、オリ主という間接的な方法と、第三の樹をアレイスターよりも深く理解し巧みに扱う神によって、それを異変を解明することが出来ないのだ。

 もちろん、オリ主が虚数学区に手を出していること自体は把握できている。しかし、どう言った方法で手に入れているのかまでは思い至ることができない。

 そして、神の力だけではなくオリ主にも虚数学区にアクセスできる理由がある。

 

「能力者の能力を劣化模倣(デッドコピー)で取得すれば、演算パターンを同時に取得することになる。

 だが実のところ、オリ主は相手の自分だけの現実(パーソナルリアリティー)も同時に取り込んでおるのじゃ。演算パターンを得たからと言って、相手の記憶まで取得するなどどう考えてもおかしいじゃろう?」

 

 もし、演算パターンを得ることで過去の記憶を得ることが可能ならば、『暗闇の五月計画』の実験体である絹旗最愛や黒夜海鳥が、一方通行の過去の記憶を有していないはずがない。

 

「では、何故そんなことが可能なのか?儂はそんなオプションを付けたわけでは無いというのに」

 

 神が授けた特典にそんな要素は存在しない。触れた相手を不完全なままコピーする力でしかないのだ。肉体ではなく精神面の情報の取得は特典の範囲外。つまり、手に入れることができるはずないのである。

 では、何故それができるのか?それにも理由があった。

 

「ほら、なんと言ったかの……ああ、木山春生(はるみ)か。奴は木原幻生から得た脳波の調律という技術を工学科し、聴いた音楽で脳波を一定のものへと整える幻想御手(レベルアッパー)を生み出し普及させた。

 その副産物が大人でありながら超能力を使用できる上に、数多の能力を扱える多才能力(マルチスキル)じゃ。しかし、多すぎる思念は独りでに形作り、幻想猛獣(AIMバースト)という怪物を生み出すことになる」

 

 胎児のようでもあり天使の要素を随所に示す怪物、幻想猛獣(AIMバースト)

 木山春生が彼女を止めに来た御坂美琴と、多才能力を用いての戦闘中に、その木山春生から生まれた数多の能力者の思念の集合体。

 その見た目は人間の胎児のようでもあったが、そこに愛らしさなど何処にも無く、異形の怪物としか表現出来ない禍々しさを有していた。

 

「要するに、オリ主は自己完結してるアレじゃよ。脳波の調律を目的としてないにしても、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 考えてみれば当然のことではあった。木山春生は他人の脳波を音で一律にさせて同一にする方法を取り、逆にオリ主はコピーする人物の脳波に自らの脳波を変えて同一とする。言ってしまえばそれだけの違いなのだ。

 

「現れた幻想猛獣から脳波を一律にされて床に臥せった、少年少女達の抱いている能力のレベル差からくる嘆きや、無念の感情が漏れだしておったじゃろう?

 つまり、脳波を合わせればそのような感情やそれに類する記憶を得られる可能性があるのじゃよ」

 

 低レベルの能力者が抱く無念や挫折感。そう言ったものが浮き彫りになっていたあの化け物は、能力者達が胸の内に秘める気持ちの発露でもあった。

 つまり、そこから逆算すれば脳波を合わせた人間が、どう言った人間なのかを分析することも可能になる。

 

 ……しかし、それで終わらない。幻想猛獣の一番の異常はそんな目に映る異形の姿でも、数千数万の思念の塊という事実でも無いのだから。

 

「──あったはずじゃ。幻想猛獣が御坂美琴に討たれるときに現れた不可解な物体が。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 それは、自然には発生しないだろう人工的な作為を思わせる三角柱の物体。まるで、何かに呼応するかのように、格子状の表面から一つ一つ異なる起伏を起こし、身体の中へいつしか宿る不可思議なアーティファクト。

 では、それを宿していたのは一体誰だ──?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オリ主の身体の中で異音が鳴り響く。それは、今までと何も変わらないようで、しかし段々と存在感を増していた。オリ主もエルキドゥも身体を操ることが出来ない中、その音は身体の主の命令を受けずとも音を奏で続ける。

 

 

 カチカチカシャシャシャシャと、高速でキーボードを打ち込むような軽快な音を鳴らして。

 

 




◆要約◆
脳波を合わせることによって演算パターンだけじゃなく、実はパーソナルリアリティーも借りパクしてたよって話。
オリ主はAIMバースト(アニメレールガンで出てきた化け物)と似たような存在ってこと

◆補足◆
アニメ『とある科学の超電磁砲』要素が入ってきました。この小説で書いてないところなので気になる方はアニメを見るかかwikiで調べて下さいm(_ _)m

◆作者の戯れ言◆
伏線を回収していいところとダメなところの判別が難しい。その上、自分で張った伏線にこんがらがる作者の残念さよ
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