とある原石の神造人形(エルキドゥ)   作:海鮮茶漬け

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次の話からFate要素などと言っておきながら、見通しが甘くあと二話ほどかかってしまうのが現状です。「はあ?100話以上書いてきてその程度のことも分からんのかこの作者?」と、言われてしまうと何も言い返ません。
そのため、お詫びと致しまして今日から3日間連日投稿にして、Fate要素が出てくるところまで投稿し続けます。楽しんで貰えたら幸いです。


135.魔神の領域

 それはまさに災害であった。

 地形を変えることが当たり前だと言わんばかりの大火力。その一つ一つが辺り一帯を瓦礫に変えるに充分な天災だ。

 

 だが、その理不尽な攻撃の数々をまとめて吹き飛ばす理不尽な男が居た。

 

「おおおおおおおおッ!──根性ォッッ!!!!」

 

 彼の一撃が天野から放出された猛威の(ことごと)くを粉砕していく。

 しかし、攻撃を防ぐ度に削板の身体は火傷や打撲が多くなっていた。あれほどの攻撃は彼であっても容易に相殺出来るものではなく、相殺し損ねた余波が彼を傷付けていたのだ。

 このままでは、誰が見ても長く保たないのは明白。しかし、この戦場には彼だけでなくもう一人超能力者が居る。

 

「く……っ!このッ!!」

 

 第三位である彼女は飛んでくる攻撃に対し、彼女の代名詞である超電磁砲(レールガン)や磁力で引き寄せた鉄材をぶつけて捌く。

 初めは彼女も能力の汎用性を用いて戦おうとしていたが、許容量越えの大出力と手数の多さを悟り、直ぐ様コインをポケットから取り出したのだった。

 

 自らの切り札をいち早く切らねば、このまま押し潰されると理解したために。

 

 そして、彼女は生死の懸かったこの戦場でもう一つの作業もこなしていた。土御門から渡された紙に描かれていた図形を、天野が立つ位置を把握しながら地面へ書き記していたのだ。

 だからこそ、削板は音速の高速移動で天野の攻撃を躱さずに、作業をする御坂を守るように攻撃と防御を繰り返したため、いつもより消耗が激しくなっていた。

 そのような攻防がこの先も続くかと思われたが、削板と同じくして戦場の最前線に居た御坂が突然声を上げる。

 

 

「───()()()()()()()()()()

 

 

 土御門の指示通りに図形を描き終えた彼女は、土御門へ睨み付けるようにして問い詰める。

 

「これで本当にどうにかなるんでしょうね!?」

 

「──この出来なら下準備としては上々だぜい。あとは、こっちでなんとかするにゃー」

 

 土御門は描かれた図形を見て御坂に言葉を返す。彼女は時間稼ぎをするため戦場に居る削板のところへ戻るが、果たしてどれだけ

出来るか。

 数分と経たずにボロボロになってしまった削板を見れば、今がどれだけギリギリの戦況なのかは言うまでもないだろう。

 

 あとは、彼の秘策に委ねられる───はずだった。

 

 

 

 

 目も眩むほどの閃光と共に、先ほどまで天野が発生させていた稲妻と同等の大きさのレーザーが、天野の身体に目掛けて降り注いだ。

 

 

 

 

「「「ぐあッッ!?!?」」」

 

 その極光の余波によって天野の近くに居た三人に衝撃が及んだ。

 距離が離れているにもかかわらず、肌がジリジリと火傷を負っていく。天から降り注ぐ閃光はそれほどの熱量を有していた。

 

「(アレイスターの野郎……!衛星兵器まで出しやがったな!!俺達ごと蒸発しても構わないってことか!!)」

 

 行う作戦の性質上、上条を比較的遠くに配置しているとはいえ、この科学兵器は殺傷能力が極めて高い。二人の超能力者(レベル5)の損失もあり得たことを踏まえれば、アレイスターが天野の殺害になりふり構っていないのが読み取れるだろう。

 

 とはいえ、アレイスターの完全な不意打ちによる攻撃は、これ以上無いほどのタイミングで決まったのもまた事実。

 どれだけ冷静さを奪われても流石はアレイスター=クロウリーと言ったところか。あの極光を受けて蒸発しない生物などあり得ない。

 

 しかしそれは、相手が『普通』であるという前提条件があればこそだ。

 

 

 

 ゴギリィッッ!!という、余りにもおかしな音が響き渡る。

 

 

 

 攻撃してきたものがレーザーであることから、何かを貫通する際に削るような音が鳴ることもあるだろう。

 しかし、この威力のレーザーならばあらゆるものは蒸発し貫くはずなのだ。熱線による空気を切り裂く音ならまだしも、このような鈍い音が鳴るなどあり得ない。

 だが、何よりもあり得ないのはその光景。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 その異常な光景を目にした土御門はある可能性に行き着く。

 

「魔神の過出力による魔術……!?あるいは、魔神という存在の特異性か!?……天野の奴、既に魔神に成っていたのか!?」

 

 純粋な魔力によるゴリ押しによるものなのだとすれば、それは魔神になったということ。そして、魔神に通じる魔術は同じ様に魔神の領域に居る者しか生み出せない。

 つまり、土御門の天野を元に戻す案は水泡に帰したのだ。

 

「(……いや、待て。()()()()()()()()()()()()()()()()()魔神について誰よりも調べ尽くしているアイツが……?)」

 

 アレイスター=クロウリーの目的が土御門の知るところだとすると、魔神についても殺害対象のはずだ。それにもかかわらず、その前段階であるなりかけの状態の天野を殺し損ねるなどあり得るのだろうか?

 

「(確かに、奴の魔術が扱えない以上は純粋な科学兵器で攻撃しなくてはならないが、それにしてもこんな無駄撃ちをするか?未だに学園都市の『外』には魔術師達が控えているんだぞ?)」

 

 つまり、アレイスターには天野を仕留める確信があったということに他ならない。それこそ、今の一撃で天野俱佐利を粉砕できるのだと確かな確信が。

 

「つまり、天野はまだ魔神に至っていない……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 生命維持装置の巨大なビーカーの中で『人間』は沈黙していた。

 学園都市が有する兵器の中でも衛星兵器は上位の殺戮兵器である。それを、片手で受け止められてはアレイスターであっても打つ手がなくなるのだ。

 それこそ、再び科学兵器を持ち出せば学園都市中に知れ渡ることになり、大覇星祭というイベントで学園都市の『外』から来た生徒の親は、科学兵器を知ったことで学園都市から子供を連れ出すだろう。

 そうなれば、子供が八割の学園都市は致命的な損失を受け、この先運営していくことは不可能となる。

 その上、学園都市の『外』に居る魔術師達に、学園都市が有する科学兵器。その起死回生の一撃を封殺されたアレイスターの内心は推し量るに余りある。

 そんなハイリスクな手を打ち終えた『人間』は、その閉じられた重たい口を開く。

 

「……今の天野俱佐利は魔神の途上。つまり、『オッレルス』と同等の存在ということになる。あの魔神に成り損ねた男と規格が同じだとするならば、殺すことは出来なくとも負傷させなければおかしい」

 

 『オッレルス』。

 魔神に成り損ねた男。子猫を助けるためにまたとない機会を棒に振り、後悔し続ける魔術師が彼である。彼は魔神の領域に辿り着いた有数の魔術師ではあるが、それでも『魔神』ではない。

 

「オッレルスが扱う魔術である『北欧王座(フリズスキャルグ)』。あれは、伝承に登場する王座を強引に利用した術式だ。本来の王座に攻撃的な機能は備わっていないが、それを組み込むことでより一層『説明できないもの』へと昇華させている。

 威力も攻撃範囲も攻撃そのものの実態も、曖昧なまま定義しているがために防御も回避も不可能な魔術。あれならば、衛星兵器のレーザーを打ち消すことも可能だろう」

 

 それこそが、魔神の領域まで足を踏み込んだものの術式。それがオッレルスが特別視される要因の一つだ。

 

「天野俱佐利がそのような魔術を修めていないのは分かっている。魔神の領域まで上り詰めた者が、普通の攻撃で死ぬような性能はしていないだろうが、並みの魔術師が扱う魔術しか使用できない制約を課された上で、不意打ちで衛星兵器のレーザー照射ならば無傷とはいかない」

 

 魔神となっていないのならば、未だに魔神の過出力は有していないことになる。

 では、どうやってレーザーを『手で掴む』などとことが可能なのか。その理由を、世界最強の魔術師アレイスター=クロウリーは誰よりも先に理解する。

 

「───なるほど。『質』ではなく『量』か」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そのことに、戦場に居る土御門も気付いた。

 いや、『究めた魔術』が魔神が持つ最低限の資格なのだとすれば、この可能性に辿り着かなければならなかった。

 

「───まさかッ!()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 土御門はその推測に唖然とする。もしそうだとすると、彼の想定を超えることになる。

 

「(……()()()()()()()()という動作があらゆる魔術体系の魔術と一致した……!?その対象が形無き物だろうが一切の関係無く、『掴み取る』という結果だけを魔術で引き寄せやがったのか……ッ!?)」

 

 常識では計れないメチャクチャな話ではあるが、その異常すぎる『質』と『量』を除けば、実を言うとそこまで異端なことをしているわけではない。

 違う文化圏から生まれ、異なる宗派で生まれた魔術同士の組み合わせで、より目的に沿った魔術へと昇華する。

 その行為を突き詰めれば現代の魔術師そのものではないか?

 

 魔術から遠い場所に居た素人が、現代の魔術サイドが行っている方法を究めた上で、魔術サイドの金字塔である『魔神』に至ろうとしている。

 現代魔術師達から見れば皮肉以外の何ものでもないだろう。

 

「(何も知らずに魔神に至る天野と魔術を究めた順当な魔神とでは、圧倒的な隔たりがあると思ったが、古今東西のあらゆる魔術を何の準備もいらずまとめて発動できるなら、()()次第では他の魔神と並んでもおかしくはない)」

 

 それは土御門の予想より最悪の事態に他ならない。それこそ、魔神の出力で魔術の底上げだけでなく、類似した動作や術式が世界中に存在する魔術が勝手に乗算し出力されてしまうのだから。

 

「手元に火を着ける程度のものなのか、それとも世界を壊す一撃か。本人さえ分からない完全なギャンブル。

 それに加え、自分の意思関係無く常にサイコロを振り続けるせいで、終わる条件が世界を壊し尽くす以外に存在しない!

 クソッ!デタラメがすぎるッ!ふざけるのも大概にしろ……!」

 

 魔術的な要素が複雑に組み合わされたものよりも、世界共通のシンプルな動きの方が火力が上がる。

 土御門は魔神という存在の『質』から天野が魔神となるリスクを計算したが、今行われたのは全くの逆。

 数多の魔術体系に存在する同じ動作や、類似したシチュエーションから発動する魔術を全て束ねた『物量』による魔術。

 天野は隙間があるなら数で押し潰せばいいという暴論をそのまま実現させたのだ。

 

「『掴み取る』動作なんて時代や文化が違う程度で変わるもんじゃない。子供染みた絵空事の実現が魔術なんてものが生まれた経緯でもあるからな。該当する範囲はとんでもなく広い。

 その魔術の『量』がレーザーなんて形無いものを無理矢理固定させ、掴み取るという事象を生み出している」

 

 土御門がそこまで話すと、レーザーが甲高い音を立てて氷のようにひび割れ砕けていく。その不可思議な光景はプロの魔術師である土御門であっても原理がまるで分からない。

 それこそ、空から打ち出されたものがレーザーなどではなく、氷の柱だったと言われても信じてしまいそうだ。

 

「……それにしても、これほど強引な手を切ったとなると、本格的に御大層な計画(プラン)が全て打ち砕かれかねない事態に陥ったようだなアレイスター」

 

 学園都市の直ぐ外側に魔術師が居るにもかかわらず、このような破壊兵器を表へと出すのは明らかに悪手だろう。安全地帯からいつでも攻撃出来ると証明しているのだから。

 このような強引な手段を取ったアレイスターが抱く、動揺と危機感を土御門は読み取った。

 

「(とはいえ、今の光景を見て魔術により引き起こされたものだと理解できる奴はまず居ないだろうがな)」

 

 今の光景が魔術によるものだと明言することが可能な魔術師はまず居ない。ホログラムを用いた学園都市の催しの一環だと、魔術サイドに納得させること自体は可能の範疇でもある。

 結果的に他の誰でもない天野倶佐利によって、学園都市は助けられたことになるのだ。

 尤もそれに対してあの『人間』が感謝することはないだろうが。

 

「今のレーザーは純粋な科学兵器か。まあ、アレイスターの魔術が少しでも混じっていればアイツは進化してしまうのだから、リスクの低さを考えれば当然だな。

 ……全く、天野が地面に到達する前にレーザーを握り潰さなかったら、御坂美琴の頑張りが無に帰るところだったぞ」

 

 その間の悪さや他人の行動を信じず自分勝手に行動することが、『失敗』に繋がっているのだと彼は毒を吐く。

 理由も詳しく話さない人間の案に、二人の超能力者(レベル5)が命を懸けて協力してくれる今の状況が、奇跡であると分かっていればその苛つきも当然だ。

 

「……邪魔が入ったがようやく天野の奴を元に戻す魔術を起動できる。よりにもよって『虚数学区・五行機関』なんてゲテモノに、魔術師として介入しなくちゃならなくなる日が来るとはな」

 

 首より上を夜空のような何かが覆う、人ならざる存在に変貌しようとする天野俱佐利を見据えて、土御門元春は覚悟を決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───カチャカチャガシャシャシャ!と、頭の中で叩く音が鳴り続ける。

 

 ───くるりくるりと回りながら鳴り響く。

 

 ───そこに、確かな(ひず)みを浮き彫りにして。

 

 ───災厄はもう直ぐそこに。




最後の『首より上を夜空のような何かが覆う』の描写は、雷神御坂最終ver.をイメージしていただきたいです
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