とある原石の神造人形(エルキドゥ) 作:海鮮茶漬け
13.邂逅
キーンコーンカーンコーンという、お馴染みの音色が響いた後に、目的の人物達がいる教室のドアを開く。
「小萌、居るかい?」
「あっ、天野ちゃん!来たのですねー!」
夏休みの補習を受ける生徒に、講義をしている小萌先生に会うため、とあるクラスの前までやって来た。
すると、ガタタッと椅子を鳴らし立ち上がった青髪の少年が、興奮した様子で声を上げた。
「おおっ!?あのお方は謎の二大学校のマドンナこと、
「それ、本当に言われていたんだね」
青髪ピアスのハイテンションに、さらっと言葉を返して、俺は手に持っていた特製弁当を小萌先生に渡す。頑張っている小萌先生のために昼食の出前だ。
「はい、小萌」
「わあ!わざわざ作ってくれたんですか?ありがとうございます天野ちゃん!」
「えー!天野先輩のお手製弁当なんて羨ましいわぁ。いいなぁ、小萌先生。俺もめっちゃ欲しいー!!」
「ふふっ、ごめんよ。さすがに用意はしていないんだ」
「……天野ちゃん、このあと先生は用事があって、すぐに食べることができないのですよ。天野ちゃん自身のお弁当を持って来ていただいて、申し訳ないのですけど……」
小萌先生が俺の持っているもう一つの弁当を見て落ち込んでしまった。いきなり押し掛けてきたのはこっちなのだから、気にしなくていいのに。本当にいい人だなぁ。
でも、それは勘違いなので直ぐに正すことにする。
「いや、これは僕の弁当ではないよ」
「あれ?違うのですか?」
俺はその弁当を持って、窓側の後ろの席までスタスタと歩いていく。その様子を見ていたその席の人物は、目を真ん丸にしながら呆けている。
そのことに気付きながらもその一切に無視をして、その少年の机に手に持っていた弁当を置く。そして、あえてクラスにいる全員に聞こえるように、笑顔で俺は言いきった。
「はい、後輩。僕の手作り弁当だよ」
ピシリッとクラスの空気が固まった。ついでに、目の前の少年も固まった。それから直ぐに、溢れんばかりの怒声が上条に向けて飛んでくる。
「どういうことやねん!上やん!?まさか、ついに天野お姉様にまで手を出したんか自分!?」
「さすがに許されないぜい、上やん。女の子の手作りお弁当なんて羨ましいことを、俺達に見せ付けるなんてあり得ないぜよ」
「待て待て待て!俺にも何でこんな青春の一ページに飾られる最高のシチュエーションが、不幸な男子高校生の上条当麻にいきなり訪れたのか分からないんだよ!!
つーか、土御門は毎日舞夏から弁当作って貰ってるだろ!!」
「確かに、義妹の弁当は最高ですたい。しかぁーし、それとこれとは話が別なんだにゃー。これ以上、上やんの毒牙に女の子達がかからぬよう、制裁を下すのが世のため人のためだぜいっ!」
「…………ああ、いいぜ。お前達が俺のささやかな幸運を否定するっていうなら、まずはその
「お前らこの不届きモン共をシめるでぇーー!!」
「「おおォォーー!!」」
「あれぇ!?俺まで組み込まれてるぜよ!?」
補習に来ていた男子達が二人を取り囲み、次々と制裁を下していく。打撃や間接技、寝技といった攻撃手段が上条達を襲う。
……このクラスの男子は、攻撃のレパートリーが多すぎないだろうか……。しばらく、観戦して楽しんだ後に小萌先生に近寄って、このあとのことを話しておく。
「小萌、僕は職員室の昼食スペースに居させて貰うから、用事が終わったら来ておくれ」
「……えーと、これは止めなくていいのですかねー?」
「大丈夫さ。彼らのコミュニケーションの一種だからね。邪魔するほうが無粋だよ」
内心噂のデルタフォースが見れてご満悦だ。
テンションが上がるが澄ました態度で顔に出ないようにする。この頃、無意識の内に働くエルキドゥの言動が、何故か消えてしまったので油断が出来なくなってしまった。
うーん、本当に何でだろう?心当たりがないんだけど。
とはいえ、エルキドゥの真似は常にしていたので、生活自体は何とかなっているのが幸いか。後ろから聞こえる怒号や悲鳴は無視して、二人で並んで職員室まで歩いていった。
小萌先生との昼食後は、たまにはコンビニ製品も食べてみようかと近くのコンビニに立ち寄った。
すると、アホみたいに缶コーヒーを買ってコンビニから出て来た、白髪頭に赤い眼をしている知人と、数年ぶりに鉢合わせた。
「おや?もしかして、君は
「あァ?…………オマエ、パクり女かァ?」
「君は相変わらずだね。いや、その口振りだからこそ、君とも言えるかもしれないけどね」
そう、以前に俺は
三日間と短い間だったのであまり話せていないが、この髪色の人間はなかなか忘れないだろう。
「……テメェもクソ雑魚共と同じように、最強の称号が欲しいってクチかァ?」
「そんなものに興味はないよ。僕は今の生活に満足しているからね。それに、コンビニに来る理由なんて普通は一つしかないだろう?」
「チッ……まあいい。オマエなンかと話してる暇はねェからなァ」
そのまま一方通行は俺を全く眼中に入れずに、前を歩いていく。そういえば、もう
それを万が一防ぐことが出来たとしても、大悪魔コロンゾンを倒す決定的な手札が消えてしまう。人類史の終幕だ。
「
「あァ?」
だから伝えようと思った。これが懺悔なのかはわからないが、この言葉が彼の決意の一助になると願って。
「君は破壊することが得意だけど、君の力はその程度のものではないんだ」
「オイオイ、この俺に説教かァ?いつから、そんなに偉くなったンだオマエ」
「違うよ。ただ、僕にはベクトル操作の劣化しか出来なかったけど、君の真骨頂はベクトル操作ですらないだろう?」
「……何が言いてェ」
「誰かを守ることも救うことも、君なら可能ということだよ」
近い将来、一方通行はその道を選ぶことになる。自分の犯した罪を償うために、誰かを助けることに力を使うのだ。その道は苦悩の連続で、あらゆる困難が一方通行に襲いかかる。
それでも大事な者を守るために。そして罪を償うために足掻き続ける人生を選ぶのだ。だからこそ、一方通行がその道を選ぶ時にこの言葉が後押しになればと思った。
俺の言葉を聞き一瞬固まった一方通行は顔を伏して、体を震わす。
そしてまるで堪えきれないとばかりに嗤いだした。
「ギャハッ!ギャハハハハハ!!!!オマエ、スかした面しながら、そンなメルヘンな妄想してたのかァ!?外面と違って随分と愉快な脳ミソらしいなァ。
……くッッだらねェ。何でこの俺がンなことしねェといけねェ?」
「別に強制しているわけではないさ。君の能力を自分なりに分析してね。そして導きだした推論を君に言っただけだよ」
「ハッ、イイこと教えてやる。この力はなァ世界をぶっ壊せる程の力がある。そこら辺にいるカス共に使ってやる程、安くねェンだよマヌケ」
そう言い捨て一方通行は暗い路地裏に一人歩いていく。きっと今夜も彼女を殺すのだろう。狂気に呑まれた怪物を止めることなど出来はしない。
それこそ、歴史に名を刻む
夕暮れのとある木の下で、猫と戯れている少女を見かけて声をかけた。
「やあ、久しぶりだね」
「どこかでお会いしましたか?と、ミサカはネットワークに記憶していない方を前に、訝しみながらも尋ねてみます」
だから、端役にもできることをしよう。より良い結末を迎えるために。
オリ主の立ち位置がこのままでいいのか不安ですね