とある原石の神造人形(エルキドゥ)   作:海鮮茶漬け

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なんか、やめるやめる詐欺みたいになってるなあーと思いつつ、投稿します。


16.安全地帯

 今目の前で起きたことが信じられない。自分は先程まで学園都市の闇の中へ、高能力者の手により落とされるはずであった。そこに乱入してきたのは敵組織でも何でもない、たった一人の少年。色白の細身でひ弱にも見えるが、彼女は知っていた。彼の名は

 

 ──一方通行(アクセラレータ)

 

 学園都市の能力者全ての頂点にして、最強の能力者。

 しかし、彼が私を助けに来るなどあり得ない。なぜなら彼自身が参加している実験を、私は止めようとしたのだから。目障りな私を消すことはあっても、助けに来るなどどう考えても道理に合わない。彼が突然善性に目覚めたわけでもないだろう。それなら、なぜこんな

 

 

 

「『オイ』」

 

 意識の隙間から突然声を掛けてきたのは、私を押さえつけていた大能力者を、遥か彼方の上空にまで吹き飛ばした怪物だった。彼は先ほどの吹き飛ばした衝撃で、新たに生まれた粉塵から、私がその姿を認識できる距離まで近づいてきた。

 

「ッ!!な、何かしら?申し訳ないけれど、私にはあなたに渡す有益な情報なん「『では、行きますわよ』」…………は?」

 

 今までこの場を支配していた怪物が、中学生の女子のような姿に変わり、間抜けにも口を開けて呆然としてしまう。しかし、更なる変化が私に襲いかかった。

 

 

 

 

 瞬きした次の瞬間に写ったのは光景は、街の灯りがちらほら見える夜の街並みと、自分を上から覆う夜空だった。

 

 

「ッッッ?!?!?!」

 

 訳がわからずに目を剥く。何一つ理解ができない。何故三、四十メートル上空にいきなり居るのだろうか。こうも理解の範疇を超えられ続けると、流石に思考を止めてしまう。

 

「『よっ』」シュン「『ふっ』」シュン「『はっ』」シュン

 

 と、軽快に声を出しつつ彼女?は空間移動をしていく。この時点で訳がわからない。

 「自分より年下の少女に、横抱きにされるのは若干腹が立つわね」と現実逃避をしている布束であったが、どうやら目的地に着いたらしい。

 長い瞬間移動での移動が終わり、しばらくぶりに地面に足を着く。安全圏の確保と理解不能の出来事から、一時的に遠ざかったことで、今すぐにでもしゃがみこみたい気持ちなのだが、隣に立つ人物にいろいろ尋ねなくてはならないだろう。

 

「…………あなたは一体何者なのかしら?」

 

「『髪が伸びたことで元の髪色が、見えていると思うんですが……。まあ、あんなことの後なのですから、そこまで気に回らないのも仕方ないと言えば、仕方ないですわね』」

 

 そこまで言われてようやく気づく。彼女をよく見てみると、束ねた白髪のツインテールの先から()()()()()()()()()()()

 

「ッ!?まさか、あなた……」

 

「やあ、今朝ぶりだね。無事なようで何よりだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 もう一つの施設を防衛していたアイテムの少女達は、リーダーの麦野を残して下部組織の用意した車に乗り、戦線を離脱していた。

 

「はあーー。まさか、相手があの超電磁砲(レールガン)だとは思わない訳よ」

 

「大丈夫?フレンダ」

 

「大丈夫よ大丈夫!別に体が動かなくなる程じゃないしね!」

 

 超電磁砲(レールガン)に捕まりその身に電流を浴びたフレンダだが、そこは暗部の人間。柔な鍛え方はしていない。その様子に安堵する滝壺の隣で、フレンダはこのあとの予定について考えていた。

 

「まずは、絹旗と合流して今回の成果の確認をおう……ッ!?」

 

 フレンダが得意気にしゃべっていると、いきなりハンドルが切られた。体に凄まじいGがかかる。その乱暴な運転にフレンダが運転手に怒鳴り散らそうとする、その直前。

 

 

 ドゴォオッッッッンンンン!!!!!!

 

 

「のわっ!?」

 

「ッ!?」

 

 と、天高くから何かがとてつもない速度で墜落してきた。地面が揺れるその衝撃から、とてつもない高度からの落下であることがわかる。まるで隕石のようだが、そこまで都合のいいことはまずない。

 目の前に落ちたのが道を防ぐことが目的ならば、今すぐにも迅速に退避をするべき……!

 フレンダは滝壺を車から外に出し、別の隠れ家のルートに向かおうとするが、ふと先ほど墜落したとこを見ると、あることに気づく。粉塵の中のあれは()()()()()()()()()()……。

 残り少ない爆弾を手に構え、フレンダが粉塵に近寄ると、何故か荒い息づかいが聞こえる。

 その事を不審に思いながらもよく見てみるとその顔に見覚えがあった。それこそ数時間前に会った顔に。

 

「「絹旗!?」」

 

「ぐッ……ごほッ、がはッ……ッ!!」

 

 今まさに合流しようとしていた相手が、何故か空から降ってきた。体はあちこちから出血していて、さらに口から血を吐いている瀕死の状態である。理解できない状況にフレンダは混乱に陥る。

 

「なになになに!?何なのこれ!?どうして絹旗が空からおちてくるの!?ラピ●タじゃあるまいし、流石にその勢いで落ちて来られたら腕がひき肉になる訳よ!!」

 

「……フレンダ、冗談を言っている場合じゃない。すぐに病院に連れていかないと、絹旗が死んじゃう」

 

「ゴフッ…………超……聞いてください。……私を学園都市外の地形が、見えるまで、飛ばしたのは…………学園都市、第一位です」

 

「…………………………は?」

 

 だいいちい?だいいちいって第一位?この街の頂点?

 隣にいる滝壺が絶句しているところをみると、フレンダの聞き間違いではないらしい。

 

「ヤバイヤバイヤバイヤバイ……ッ!!いくらなんでも勝率が低すぎる訳よ!第一位と第三位を相手にするのは、流石に麦野でも無理だってッ!?」

 

「うん、こんな話は聞いてない。また上と話し合うべき」

 

「だ、だよね!麦野と合流したらすぐにこの事を話そう!麦野でもこの状況を知れば引いてくれるはずッ!」

 

「ガハッ……コフッ……」

 

「ああ……!絹旗のことを一瞬忘れてた訳よ!早く病院に連れていかないとっ!」

 

 わたわたしながら彼女達は、埋まった少女を地面から発掘し、完全な隠れ家へと移動するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所は変わりとある高校。その校舎の教室で机を対になるように並べ、椅子に座り二人の少女達が向き合っていた。二人の間には、余人を許さないかのような空気がある。その張りつめた空気を破壊する一言を、黒髪のボブカットの少女が喉を震わし、覚悟を決めて発した。

 

 

「ダウト」

 

「残念。本当だよ」

 

 

 苦々しい表情をしながら布束砥信は場にあるカードを手札に加える。なんとこの二人、真っ黒な組織から命を狙われる中で、トランプを使い悠々自適に遊んでいるのだ。

 暗部の連中もビックリである。コイツら逃避行をしているということを、忘れているのだろうか?

 

「(人の心理について、ある程度は精通していたつもりだったけど、演出によるブラフにも全く動揺しないなんてね。……しかも、この子のポーカーフェイスからは何も読み取れないわ)」

 

 違う。シリアスな雰囲気を出しながら考えることではない。もっと他に思考を回すことがあるだろう?追われているのはお前なんだぞ?

 そのことには両者は触れずに自分のターンでそれぞれ手札を切る。布束は自分の武器が通じないことに、内心で歯噛みをしながらも少しずつ手札を減らしていく。

 そして、ゲームは続いていき、ついにその時がきた。脱力して布束は持っていた手札を机に放る。

 

「はあ、完敗ね。ここまで手も足も出ないとは思わなかったわ」

 

「ふふっ、心理や脳の専門家が僕の周りには多く居てね。駆け引きならそうそう負けないよ」

 

 次はどのトランプのゲームをしようかと、わくわくしながら話す少女を見て、ついため息をついてしまう。

 研究者として生きてきて、こうして同年代と遊ぶのは初めてだったが、楽しくないわけではなかった。しかし、今置かれている状況を鑑みると、とても落ち着かないのも事実だ。

 そんな彼女を見ながらふと思う。感情がほとんど変わらないところや、一歩引いたような距離から話すところは、まるで()()()のようだと。

 

「それで?どうしてトランプなのか、そろそろ聞いてもいいかしら?」

 

「ん?したかったからに決まってるだろう?それにしても随分と遅かったね。てっきり提案した時点で聞かれると思ったよ」

 

「私もトランプを通して知りたいこともあったし、何より助けて貰ったのだからこの程度のことはするわ」

 

 私の演出を使った駆け引きでは、全く相手にならないことがね。

 

 能力でも上、思考力でも上、身体能力もおそらく上。彼女が殺しに来たら私は何も出来ないわね。とはいえ、危険を冒してまで助けに来るくらいなのだから、そんなことはしないだろうけど。

 さて、一体何が目的なのかしら?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何故私を助けに来れたのかしら?あなたには全く違う施設を教えたのだけど」

 

 そうなのだ。このギョロ目、学区が違うところを教えてきやがって。言われた通りにしていたら間違いなくたどり着けなかったぞ。

 最初は言われた場所に行こうとしたのだが、よくよく考えれば御坂のところに行ってもしかたないし、「布束に付いていったほうが確実じゃね?」と考え直したのだ。

 無理矢理自分から聞いたくせに、言われたことをガン無視をしたので後ろめたかったが、布束を助けることができなければこの事件に首を突っ込む意味がない。

 だから、ストーカーのようにビルや家屋の屋根を飛び越えて、こそこそ後ろからついていったのだ。

 そうしていると、コイツは俺に言った二つの施設の場所と、全く違うところに行ったのだ。その時点でウソを言われたことに気付いた。

 内心でちょっと、ちょおっっっっと、イラッ!としたけど、俺を危険地帯に行かせないためだと思えば、……まあいいか。

 

 布束は施設に関係者として潜入したから、同じやり方は不可能だ。そのため、あとから力業で突っ込むことにした。(脳筋)

 アクセラさんになって超テンション上がった!あの個性的な容姿にファッション、なんてコスプレのしがいがあるキャラクターなのだろうか。

 まさかあの服がブランド物だとは思わなかったが、コスプレするための必要経費だ。しょうがない。

 あの成りきりの完成度は我ながら相当高かったと思う。心残りがあるとしたら、愉快なオブジェを言いそびれたことかな。とはいえ、全体的に見たら結構クオリティが高かったと思うんだよね!(大満足)

 あれ?特典によって声としゃべり方も一緒だから、これはもはやリアル一方通行(アクセラレータ)と言っても過言ではないのでは……ッ!?(※学園都市なので実際にいます)

 

 絹旗の窒素装甲(オフェンスアーマー)は衝撃を無効化するチート能力だったが、頑張ってなんとか退かせることに無事成功した。

 それで一緒に逃げたわけだが、匿うにしてもウチは天井に穴が空いてるために、一発で衛星にバレるからなし。一ヶ所心当たりがあるが、この時間ではいない可能性があるため、明日の朝に赴くのが最善だろう。

 その間の隠れ家としてこの学校に移動したんだよ。瞬間移動で足はつかないし、普通の学校の校舎の中にいるとは考えないだろう。それ以前に一方通行(アクセラレータ)(偽)の登場で現場は大混乱だろう。あっはっはっは!(愉悦)

 とはいえ、学校の校舎は何もやることがなくて、暇で暇で退屈すぎた。適当に机の中を漁っていけば、流石無能力者(レベル0)ばっかりの高校。なんとトランプが入っていた机があった。

 そんなこんなで二人っきりでポーカーやら、ダウトやらでこうして楽しんでいるわけだ。思考の誘導や番外戦術を駆使したゲームで、頭の体操にもなり意外に楽しい。

 作中キャラ(とある科学の超電磁砲の)とこうして普通の遊びをする事は、上条やみさきちで分かっていたことだがテンションが超上がるな!

 いやー、悔しげな表情だったりを見てると、ついつい顔が死んじゃうわ。前と違って無意識下でエルキドゥの動きができなくなったから、常に意識しないといけないんだよなぁ。今回はそのおかげで顔がポーカーフェイスになってうまくいったけど。

 

「君が僕に嘘をついていると思ったからね(大嘘)」

 

「……はあ。ここまで見破られているとはね。とはいえ、あなたも私に嘘をついているでしょう」

 

 肩がビクッと震える。布束が半目で睨み付けてくる。

 

「何でそう思うんだい?(ウソぉ!?何故バレた!?)」

 

「becauseあなたは後輩のためと言っていたけれど、私を助けてもその後輩のためになるとは思えない。それどころか、逆に厄介事を持ち込んでしまっているもの。何か私に用があるのでしょう?」

 

 なんだそっちかぁー。全く焦らせんなよな!

 でも、あまり上条とは関係ないことではあるのも事実だ。布束は超電磁砲のキャラだし、そもそも二人は一切関わりがない。これは、布束を助けたい俺の我が儘なんだから。

 ……まあしょうがないとはいえ、ギョロ目ボブカットは上条のことを知らなさすぎだな。

 

「いや、実際に後輩のためになってるさ。彼とそれなりの付き合いがあればすぐに分かることだよ。彼はヒーローだからね」

 

「……?」

 

「つまり、君がどこの誰なのか全く知らなくても、彼は絶望に苦しむ人を出したくないんだよ。それが自分に一切関係ないことでもね」

 

「」

 

 絶句。布束砥信、絶句である。まあ、確かに訳がわからんよな。上条はそのうち、学園都市で起きた悲劇をどうにか出来なかったのかと責められることになる。

 特別な連絡手段や、そういった伝を持たない高校生に言うことじゃないだろ、と思うが上条はこれを重く受け止めるのだ。

 これはぶっちゃけ、「そんなの知らん」で済む話だと思う。周りがヒーローと呼ぶだけで、上条が誰かに向かってヒーローだと名乗ったことはないし、そもそも絶対に助ける義務とか上条にないしな。

 まあ、そう言わないから主人公なのかもしれんけど。この思考や行動は原作でもバードウェイに狂人扱いされてたっけ。

 

 

 

 そして、翌朝。

 

 夜遅くに高校の校舎に潜伏する不良少女×2は、こそこそと抜け出しあるところに移動する。

 

「病院は怪我や病気の治療をする場所であって、匿う場所ではないんだけどね」

 

 そう、このカエル顔の医者の勤める病院である。

 

「何故よりにもよって人が多い病院なのかしら。私は追われているのよ?これは悪手でしかないわ」

 

「いや、そうでもないよ。彼ならば大丈夫だ」

 

「ふむ、存外に僕のことを買ってくれているようだね?その根拠を教えて貰ってもいいかな」

 

「近いうちに彼女の調整していたクローン達が、ここに運ばれてくる」

 

「ッ!?あなたそんな軽々しく彼女達のことを、無関係の人間に……!!」

 

 俺の言葉で布束の俺に対する態度が刺々しいものに変わった。学園都市上層部が関与しているこの問題に、ただの医者である彼を巻き込むことを忌避しているのだろう。

 だが、布束は気づいているだろうか?布束の表情が変わったように、後ろにいる世界一の名医の目の色が変わったことに。

 

「なるほどね。それなら助手として彼女を雇おうかな」

 

「っ!待って、彼女達が関わる計画はあなたの考えるものよりも、遥かにおぞましいもので……!!」

 

「関係ないね」

 

 後ろの名医はその警告を即座に切り捨てる。

 

「僕は患者のために必要なものは揃える。クローンの少女達を助けるためには君の知識が必要なんだろう?なら、君を匿うために情報の隠匿も戦力の確保もするのが僕の仕事だ」

 

 その言葉は反論を許さないかのような力強さが宿っていた。この世界でも変わらない彼の姿につい笑みが浮かぶ。

 

「お礼にナースの姿で触診してあげるよ」

 

「せめて、あと五年経ってから来てほしいね?」

 

 そして、彼は白衣を翻して彼の戦場に戻っていく。その歩みは一切の物怖じを感じさせず、それが当たり前の日常であるのだと、まるでその背中で語るように。

 

「……彼は、一体……」

 

 布束がその姿につい言葉が溢れたかのように呟いた。医者としての腕だけでは出せない、その姿に圧倒されたのだろう。ならば、彼女は知るべきだ。彼の戦場に立つことになるのだから。

 

冥土帰し(ヘヴンキャンセラー)。世界最高のお医者様だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ペタペタとサンダルを鳴らして戦場へと戻る最中に、他の誰にも聞こえない小さな声量で、その医者は呟いた。

 

「アレイスター。君がどういうつもりかは知らないが、僕は変わらずに患者を助けるだけだ。例えそれが、君の意に反することであったとしてもね」

 

 

 

 

 

 

 




髪の毛の上は緑で先端は白…………ネギかな?

アンケートを2つ同時にやるのは無理なようなので、上やん病についてはまた次回に。(それが目的だったような?)
アンケートを1回削除してしまったので、最初に押してくれた人はまた押してくれると嬉しいです。

上条に対するオリ主のこれからその1

  • 相棒ポジションの獲得
  • 頼れるお姉さんポジション継続

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