とある原石の神造人形(エルキドゥ)   作:海鮮茶漬け

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遅れました。許してくださいプライベートが忙しいのです。_(..)_
では、伏線回収していく20話です。


18.不気味な少女

 天野(あまの)倶佐利(くさり)

 

 ツンツン頭の少年との、決闘の場に現れた不気味な少女。基本的に噂などは気にしない美琴のため、常磐台の卒業した生徒の噂など、当然知るよしもなかった。

 その彼女が天野倶佐利を知ることとなったのは、仲の良い少女からとの会話からだった。

 

 

 話は遡り、彼女と出会う数日前のことである。

 

 

 夏の陽射しが照り付ける、七月終盤近くのとある日。セブンスミストにて、いつものように集まり談笑している、四人の少女達。場が温まってきたときを見計らい、満を持して少女が話し出す。

 

「ふっふっふっ!今回も新しい都市伝説を仕入れてきましたよぉー!」

 

 小物くさいセリフを吐きつつ、明るく声を上げたのは、この間まで小学生とは思えないプロポーションをしている、黒髪ロングに一輪の花飾りが特徴の、中学一年生佐天涙子だ。

 それは、行き付けの場所となったファミレス店で、いつものメンバーと談笑中の一コマであった。

 

「……はぁ、またですの?この学園都市でそんなオカルト染みたことなど、あるわけないでしょうに」

 

「まあまあ、いいじゃないですか白井さん。佐天さんのお話は面白いですし」

 

「ですが初春、この前の【能力が効かない能力をもつ男】などと、余りにも荒唐無稽な話ではありませ──」

 

「コフッ!?」

 

「どうしましたのお姉様!?」

 

「な、何でもないわ。大丈夫よ黒子(ものすっごい身に覚えがあるわねその噂の男……)」

 

 都市伝説を求めてやまない、ミーハーな佐天涙子を見て、呆れている白井黒子。

 科学の総本山である、学園都市に住んでいる彼女から見れば、そんなものは"常識的に考えてあり得ない"という結論になる。

 それは、学園都市第三位の地位にいる彼女にも、もちろん当てはまるはずなのだが、なぜか焦って気管にジュースを詰まらせていた。それもそのはず、件の噂の男と戦闘(軽くあしらわれてばかりだが)を何度もしているのだから。

 そんな彼女を尻目に、佐天は少しばかり声を大きくして言った。

 

 

「今回の都市伝説の女は、実際に戸籍が確認されていて、目撃証言も多くある、実在する人物なんです!」

 

 

 

 

「「「……………………うん?」」」

 

 彼女達のテーブルに、しーんと静寂が流れた。

 

「……あ、あれ?皆さんどうしました?」

 

「……どうしたというかなんといいますか……」

 

「えぇとね?佐天さん。私たち都市伝説には詳しくないんだけど」

 

「それって、そもそも都市伝説って言えますの?」

 

 都市伝説とは情報が不確かで、曖昧な噂話のことだ。ここまで確認されているなら、それってもう都市伝説じゃなくね?と少女達は思った。

 それを聞いた佐天は、テーブルに身を乗り出して話し出した。

 

「そう!そう!そうですよね!私もそう思ったんですけど、どうにも違うらしいんですよ。なんでもその人物と、扱う能力が特殊らしいんです」

 

「特殊ですか?学園都市だと【どんな能力も効かない能力をもつ男】ぐらいではないと、特殊にならないんじゃありませんの?」

 

「話によると、その【どんな能力も効かない能力をもつ男】と、同等の力を持った、とんでもない存在なんですよ!」

 

「能力の無効化と同じくらいって、どんな能力なんですか?」

 

 

「なんとっ!【どんな能力でもコピーする能力をもつ女】なんですって!」

 

 

 

「「「…………」」」

 

 またしても、場に静寂が流れた。

 先程の疑問による無言ではなく、どちらかといえばしらーっとした目で、彼女達は見つめていた。

 

「……佐天さん。それって【どんな能力も効かない能力をもつ男】から派生した噂にすぎないのでは?」

 

「私もそう思います。夢がある能力だとおもいますけど、多重能力者(デュアルスキル)は実現不可能らしいですから」

 

「もし、実在していたら超能力者(レベル5)にいるはずだけど、一度も聞いたことがないわね」

 

「え?あれ?初春はともかく、お二人は知っているんじゃないですか?」

 

「えっ?どうして私たちが?」

 

 投げ掛けられた言葉が分からず、不思議に思い佐天さんに聞いてみる。黒子も首を傾げていることから、私と同じ気持ちなのだろう。

 

「その【どんな能力でもコピーする能力をもつ女】って、元常磐台生らしいんですよ」

 

「でも、お二人がご存知ないのなら、やはりただの都市伝説ではないでしょうか」

 

「だよねぇー、やっぱりウソかぁー……」

 

 ガックリと落ち込む佐天。その様子を見ていた常磐台の少女達は、彼女にそれぞれ言葉をかけた。

 

「ええっと……、私はそういう話は興味無いし、黒子は風紀委員(ジャッジメント)で忙しいから、話を聞かないだけかもしれないわよ?」

 

「それに戸籍が確認されているのなら、先輩方や教員の方に聞けば分かるでしょうから、その噂を話してみてくださいな」

 

 二人からそう言われて、彼女は俯いていた顔を上げた。不器用な励ましを受けて感動したのか、喜色満面となっている。

 そして、白井黒子の言った通りに、【どんな能力でもコピーする能力をもつ女】の説明をする。

 

「美人で髪が特徴的な色をしている他は、見た目の情報は出回っていないんですけど、『能力を活かして諸外国にスパイとして潜入しに行った』、『闇の組織に入り学園都市を乗っ取ろうとしている』、『何故か学園都市にある最低レベルの高校に進学した』などの噂が出回っているらしいですよ」

 

「……ここまで荒唐無稽な話もなかなかありませんわね……。というか、最後だけ種類が違くありませんか?」

 

 まさに、噂が噂を呼ぶ。【どんな能力でもコピーする能力をもつ女】だけで、そのうち七不思議ができそうである。

 その話を期待はせずに寮監に話してみると、なんと本当に実在していた。髪色は常に変えていたらしいがどれも派手で、なぜか緑色という、人間には合わないだろう髪色が、一番似合っていたらしい。……黒髪や茶髪よりも似合うってどういうことよ?

 

 こんな話で盛り上がった平凡な日常こそが、とても幸せだったと今は思う。

 

 

 

 

 

 

 現在、御坂美琴は絶望の中を一人で歩いていた。

 樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)はすでに破損していて、計画を中止に追い込むことができない。最後の手段も使えないことが分かり、手詰まりとなってしまったのだ。

 

「(私が死ぬしかこの計画を止めることができない。……ただ困っている人を助けたかっただけなのに、なんでこうなっちゃったんだろう……?)」

 

 始まりは筋ジストロフィーの治療のためだと、DNAマップを提供した。それが、あの子達のためになると私は喜んでいた。

 

 それがあのイカレた実験を生み出した。

 

 知らなかったでは済まされない。すでに二万人もの命が生み出され、そして殺された。この罪を背負い、そして残りの妹達(シスターズ)を救う義務と責任が私にはある。

 悲痛な覚悟を決めた美琴が、ふと視線を横に向けると、何かが視界に入った。

 

 風に靡く緑髪だった。

 

「(ああ、そういえば佐天さんが【どんな能力でもコピーする能力をもつ女】が、最近ネットで人気になっているって言ってたっけ……)」

 

 その程度の感想しか思い浮かばなかった。一度しかあったことがない関係の薄さと、受け入れがたい現実に押し潰されているために、わざわざ声をかけようなどと思わなかったのだ。

 そのまま通り過ぎようと足を動かすが、ピタリと足が止まる。何が彼女をそうさせたのか。理由は一つ。

 

 彼女の前に妹達(シスターズ)がいたからだ。

 

「……………………え」

 

 思いもしない光景に思考が空白となる。

 

 信じられないことだが彼女達は親しげに話していた。(妹達は無表情だが)

 あのツンツン頭の少年のときと同じく、彼女達が独自の人間関係を、構築することもあるだろう。しかし、妹達は学園都市の秘匿とすべき存在だ。そう何度も会える存在ではない。では何故親しげにしている?

 そう思考している間に、緑髪の少女はどこかに去ろうとしていた。慌ててその場に駆け込むが、

 

「!消えたッ!?」

 

 その場についたときには、跡形もなく消え去っていた。

 瞬間移動(テレポート)なのか影も形も残しておらず、やるせなさからつい歯噛みをする。そして、その一部始終を見ていた少女がいた。

 

「お姉様が少年漫画さながら、横から砂煙を上げて登場したことに、動揺を隠しきれません、とミサカは内心ワクワクしながらも驚嘆します」

 

「…………………アンタ……」

 

 妹達(シスターズ)。御坂美琴の過ちから生まれてしまった、被害者達である。そして、先日美琴は彼女に暴言を吐いてしまった少女だ。他でもない自分の弱さのせいでだ。

 資格はないかもしれないが、それでもすべきことがある。

 

「……この間はあんな酷いこと言ってごめん。アンタは悪くないのよ。あれは全部私が悪いわ」

 

「いえ、お姉様の反応は当然であると認識しています、と科学者の人から教えて貰ったことをお姉様に伝えます」

 

「そんなこと……ッ!」

 

 自分にこのあとのことを言う、資格はない。切羽詰まってたとしても彼女に暴言をぶつけたのは私なんだから。

 

 無言で拳を強く握りしめた。そんな後悔に押し潰されている彼女を尻目に、彼女は話し続ける。

 

「それにしても彼女は一体何者なんでしょう、と疑問を溢します」

 

「……もしかして、名前も知らないの?」

 

「ええ、それどころか実験の概要を知っている口振りでした、とミサカは謎の存在に危機感を抱きます」

 

「実験を知っていたですってッ!?」

 

 思わず彼女の両肩に掴みかかる。

 

「次の役目と言っていたので、実験の詳細を把握していると思います、とお姉様の突然の変わりように、目を白黒しながら驚愕します」

 

 なんだそれは?一体どうなっている?たかが一生徒にこの実験が知らされるはずがない。

 いや、それより

 

 

 ━━━次の役目ってなんだ……?

 

 

 妹達(シスターズ)絶対能力進化(レベル6シフト)計画のために作られた。樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)が破壊された今、別の役目など与えられるはずがない。

 にもかかわらず、妹達は別の役目があるのだという。それから導き出される答えは───

 

「まさ……か……、樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)が壊れる可能性まで……想定していた……? 」

 

 あり得ない。宇宙空間である上に、学園都市のセキュリティも万全であり、今回の破壊は限りなくゼロに近い可能性だった。今回のことは宝くじに当選するよりもさらに低い確率だ。

 だがしかし、限りなくゼロに近い事柄まで想定している、入念な計画だとしたら?

 

 

 今さら自分が死んだ程度で、まるく収まるのだろうか?

 

 

 樹形図の設計者の演算結果とは違い、128手かからずに一撃で死ねば、実験が中止になる可能性があると考えていた。

 しかし、樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)が破壊されることも想定内ならば、実験が中止になった時のために、妹達(シスターズ)に別の運用方法があるのではないか?

 クローンである以上科学者や研究者達が、彼女達に容赦をするとは思えない。それこそ、使い捨ての道具ように扱うだろう。

 

 それこそ、絶対能力進化(レベル6シフト)計画のような地獄の再来があるかもしれない。

 

「………………そんなの……どうすればいいの……?」

 

 もしそうなら、妹達(シスターズ)を救うためには、学園都市の闇全部を潰さなければならない。

 ハッキリ言っていくら第三位の能力者でも、そんなことは絶対に不可能だ。

 学園都市が相手ならば電子機器は停止させられ、能力者を何人も送り続けるだろう。たった一人の少女を殺すなど、奴等にとって赤子の手首を捻るよりも簡単だ。

 代名詞の超電磁砲(レールガン)も、木原クリスティーナの戦いから、対策されていることを確認済みだ。

 

 やる前からすでに結果が見えている。大したこともできずに犬死にする。───勝率など0%だ。

 

「どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう……ッ!どうすれば!」

 

 まさか自殺することよりも、最悪な絶望があるとは思わなかった。決死の覚悟を持っても何も変えることができない。たったひとつの解決法でさえ、無意味であることを知ってしまったのだ。

 

「いや、待って……。あの女はなんで知っていた……?…………あの女が関係者であることは間違いない。それなら───

 

 ───妹達(シスターズ)のこれからを知っているんじゃ?」 

 

 あの女が実験の関係者なら、妹達の行く末を知っているはずだ。身内の裏切りまでは流石に、シミュレーションしてはいないだろう。そこに活路がある。

 

「ごめん。私これから用事があるから、もう行くわ」

 

「はい、了解しました、とお姉様にお別れの挨拶をします」

 

「ッ!」

 

 言葉を交わしたあと、美琴は彼女を追うために全力で走り出す。

 

「別れの挨拶なんてことに絶対しないわ……!」

 

 走りながらもターゲットを分析する。知っている情報は都市伝説程度で、邂逅したのは一度きり、しかもやすやすと背後を取られてしまった。もし彼女が殺すつもりなら、自分は死んでいたかもしれない。相対すれば一瞬の油断が命取りとなる。

 

「……もっと早く気付くべきだった……!」

 

 以前からおかしいとは思っていた。

 

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 電磁レーダーを頼りにしていた自分は分かるが、こちらを向いていたあの少年はそうではない。

 

「(あの女が私に近付けるように、注意を引いていたってことも考えられるけど……。あのお節介にそんな器用な真似は、きっとできない)」

 

 超能力(レベル5)の能力者に、全神経を注いで警戒していたから見逃した、という可能性もあるが、今まで散々自分を軽くあしらってきた、少年ならばそれはないだろう。

 さらに、あの日は風が吹いており、あの目立つ長髪が風に靡けば、確実に目につくはずだ。しかし、あの少年はそれに気付かずに、私に怒鳴り付けた。その事から考えられるのは、

 

「(私の電磁レーダーを、すり抜けられるかの検証……!)」

 

 そのために、あの少年に気付かれる訳にはいけなかったのだ。───そして、見事にしてやられた。

 あらゆる能力をコピーするのなら、生体電気を感知されないような、能力を有していたとしても不思議ではない。

 パルクールと磁力を合わせたような動きで、建物を高速で駆け抜けながらも考え続ける。

 

「(出力では勝っているはずたけど、闇討ちだとしてやられる。必勝条件は正面戦闘。それ以外ではこっちが不利になる)」

 

 コピー能力を使えば索敵など容易だろう。その上こっちの電磁レーダーは無効化されている。暗殺を食らえば、ほぼ間違いなく殺されるということだ。

 

 そろそろ日が落ちる。夕日が射してきたことに焦りが出てきた。

 

「(ヤバイ、実験が数時間後に始まっちゃう。それまでにあの女を見付けないといけないのに……ッ!)」

 

 水面に反射する夕日を憎々しげに睨んでいると、ふと視界に人影が映る。

 

「ッ!!」

 

 ダンッ!!!!と、建物の屋上からひとっ飛びで、ほぼ水平に飛んだ。

 何故こんな強引な動きをしたのか。見つけたからだ。ターゲットを。

 

 地面に降り立った美琴はポケットから取り出し、一方通行(アクセラレーター)のときと同様に、コインを構える。

 

 

「アンタの知ってることを全部話してもらう!!あの子達を助けるためにッッッ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 現役JCに啖呵を切られている、現役JKがいるらしい。まあ、俺なんだけども。第三者から見たら、俺もミコっちゃんも美形だから、スゴイ絵になるんじゃね?なぜなら美形だから(強調)

 いろいろ言いたいけどまず一言。

 

 

 なんでお前ここに来たの?(困惑)

 

 

 君がすべきことは鉄橋行って上条ボコボコにして、ナデポされてイチャイチャすることだろ?(憤慨)

 そして、その光景を俺に観察させろ(迫真)

 

 ……はあ。まあまあまあ、今回はそれを置いておこう。そんで、なんでここに来たん?意味が分からんがな。

 俺悪いことしてないじゃん?良い未来になるように、結構危ない橋を渡ってるじゃん?そうじゃん?(必死)

 なんか敵意ビンビンなんだけど。何その諸悪の根元見つけた、みたいな雰囲気。

 行動起こしたの数日前よ?原作知識があるから、ある程度は知ってるけどさあ……。

 

「あの子達が今の実験の次に、やらされる計画だけでも、絶対に聞き出すから覚悟しなさい!」

 

 …………ん?はい?何それ、俺知らないんだけど。

 

 え?マジで何の話?妹達を世界に配置して、ミサカネットワークを広げる計画のこと?何でミコっちゃん知ってんの?

 それ言ったらアレイスターに消されるの確定だわ。詰んでますねぇ(白目)

 

 

 

 ダレカタスケテー!

 

 

 

 




「(物語の始まりだから、絶対邪魔しちゃいかんよなー。
……そだ!バレんように観察するために、鉄橋の上とかに居たらよくね?)」
そんなこんなで無駄にテレポートを駆使して、隠れていた原石がいたらしい。

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