とある原石の神造人形(エルキドゥ) 作:海鮮茶漬け
そういった話を省きまくってるせいなんですけどね。
原型制御なんて書かなきゃ分かりませんわ。メインで出てきたことないですし。
では、19話です。
夕陽が射し込む河川敷で、二人の少女が向き合っていた。
「悪いけど手加減とかできる状況じゃないのよ。風穴空けられたくなかったらさっさと話しなさい」
「……」
ひりつくような緊張感の中、白いローブのような服を着ている緑髪の少女は、鉄橋のときと同じく、ぞっとするほどの感情の消えた無表情で、美琴を見つめていた。
その態度で美琴は、自分の推測が当たっていたと確信する。あの無表情の裏で自分を排除するために、どんなイカれた計算をしているのか、美琴では想像することもできなかった。
「(えぇ……。何でそんなにマジなの?(困惑))」
中身一般人ではこの程度が限界である。テレパスがこの内心を美琴に伝えれば、舌打ちとメンチを切られるダブルコンボ確定だろう。
「(今までミコっちゃんの邪魔なんてしてないし、そもそも会ってすらないじゃん。
ちょくちょく人助けはしてたけど、長い間ロールプレイしてたよ俺?原作の介入もみさきちのときだけだよ?)」
この程度なら改変しても問題ないよね?というラインを見極めている気になっているが、バタフライエフェクトというものを知らないのだろうか?
新約とある魔術の禁書目録の22巻リバースで、食蜂操祈関連の話をするのだが、コイツはどうするつもりなのか。
「(ど、どど、どうしよう……。マジギレてるJCの諌め方なんて、元男の俺が知るわけないじゃん。流行りのモン食わせればいいの?タピオカ食う?)」
この元男、タピオカ単品を食べさせるつもりである。
「(だ、大丈夫大丈夫。一度目の人生では20まで生きて、今世では高校二年まで生きてるんだ。合わせてアラサーだよ?これぐらいできないはずがないじゃないか!)」
果たして子供達に囲まれて得る経験値が、一体どれ程あるのだろうか。
そしてこのオリ主。一つ忘れていることがある。
「一旦頭を冷やすといいよ」(一旦落ち着こ?ね?)
エルキドゥの言葉でしかしゃべれないのだ。
オート変換はできなくとも長年の生活から、自然とエルキドゥの口調に変えることに違和感がない。
「ッ!上等よッッッ!!!」
セリフ選びが最悪。1アウト。
焦りや恐怖などの過大なストレスで、精神が極限状態のときに、飄々とした態度。2アウト。
この状況で微笑んでいるその性根。3アウトチェンジ。
交代裏、第一投は本気の
「(うおぉおい!?バカなの!?ねえ!バカなの!?ホントに撃つヤツがいるか!!)」
躱しながら不満を爆発させるオリ主。しかし火蓋は既に切って落とされた(無自覚に)。
この戦闘はもう避けては通れない。
「(ヤバいって!原作乖離にどんどんなっていくんだけど!?つーか、お前何でここにいるん!?上条との逢瀬を楽しんでこいよ!)」
やたらめったら電撃を撃ってくるJCに、本気でビビり倒すアラサーJK(字面の暴力)。
しかし、名シーンを見たさに錯乱するあたり、筋金入りかもしれない。
そんな妄想をされている少女は何を思うのか。
「(
美琴から見れば刺客に見えなくもないが、その実ただのとあるのファンである一般ピーポーだ。
「(やっぱりこっちの戦闘スタイルは全て把握されてる)コピーできるのは能力だけじゃないみたいね。理屈は全く分からないけどそれが原石らしいからいいとして、私の前で黒子の姿になるなんて、良い度胸してるじゃない!」
「『ええ。彼女の能力は使い勝手がよろしいので。重宝させて頂いておりますの』」
「ッアンタねぇ……!口調まで似せるなんてどこまで顔の皮が厚いのよ!」
バチィッッ!!!と再び電撃が少女に飛ぶが、その一瞬前にまたしても掻き消える。
まるでこちらの攻撃のタイミングが、分かっているかのような気がしてくる。
「(違う!実際に把握されてるッ!私の能力開発のデータを調べれば、癖なんかはあらかじめ全て知ることができるんだから!)」
まさか、自分の演算パターンまで調べあげているとは思わず、愕然としてしまう。しかし、この実験は学園都市の上層部が関与しているため、手に入らないことはないと思い直す。
自分が立ち向かっているのは、それほどまでに強大なものなのだ。
「(
ここは河川敷、辺りに鉄材は置いてないから磁力での攻撃もできない。ここで勝負するのはいくらなんでも早計だった!磁力で引っ張ってくるにも、その一瞬の隙で確実に殺られる……!)」
先日の第四位が所属する組織、『アイテム』との戦闘のときもそうだったが、隙を見せれば死に直結する。
意識の外れたその一瞬を察知し、気付いたときには既に手遅れ。目の前のコイツはおそらくそれができる。
他の能力者相手ならそんなへまはしないが、演算パターンを把握されており
コイツから目を離すことはあまりにも危険すぎる。
「(一番厄介なのは生体電気が察知できなくて、奇襲に気づけないこと。ならッ!)」
美琴を中心にして大量の砂鉄が、地面から巻き上げられる。渦を巻きながら空へと昇るその姿は、まるで黒い竜のようだ。その凶悪な破壊の権化を天野倶佐利にぶつけるが、またしても瞬間移動で躱される。
今までの焼き直しのような応酬だった。ここまでは。
「そこッ!!」
「『ッ!!』」
雷撃の槍が美琴の後方に向けて飛ぶ。その方向にいた天野はすぐさま瞬間移動で退避をした。距離が離れていたため、紙一重で躱すことに成功したらしい。
「『……随分と動きが良くなりましたわね。まるで、人が変わったようですの』」
「さあ?何でかしらねッ!」
その後も死角に入られても一瞬で察知し、攻撃を仕掛ける美琴。先ほどよりも天野の位置が、美琴よりも離れていることから、どちらが優勢か一目瞭然だ。
躱していくうちに天野は目に写る小さな物体に気付く。
「『なるほど。先ほど空中に巻き上げられた砂鉄ですわね』」
「……もうバレたか。そうよ、黒子の
「『──空中の砂鉄が押し出された空間を、演算により把握し、場所を割り出していたということですか』」
「アンタの生体電気が察知できないからくりは分からないけど、"必ず生体電気で察知しないといけない"なんてルールは無いわ。使いようによってはこんなこともできんのよ」
この察知の仕方は後の、聖人ブリュンヒルド=エイクトベルとの戦闘でも披露することになる。
しかし、空中に砂鉄を浮かべるためには、重力や風を磁力を以って捩じ伏せ、移動する立体的な座標を特定しなくてはならない。その難易度は遥かに跳ね上がる。
しかし、それができるからこそ学園都市第三位なのだろう。
「(だけど、砂鉄の演算に結構持ってかれるわね。長期戦は不利か)」
初めから分かりきっているが、この決闘は美琴の方が不利だ。こちらのことを全て把握されているため、決定打に成り得るものが今まで編み出した技にはない。
そのうえ、あっちはまだ黒子の空間移動しか見せていない。噂通りの能力なら、歩を止めるために飛車を指してしまったようなものだ。
能力の汎用性の高さこそが一番の長所だとは思うが、場所の優位性も砂鉄がある程度だ。コピーのストックによってはこちらのスペックを超えるかもしれない。
「(鉄材があれば
今振り返ると、何故不用心に外を出歩いていたのか。もしかすると、ここに誘い込まれたのではないか?人気の少ないこの場に。
頭が冷えた今ではそう考えてしまう。一度立て直した方が最善だと理性が囁く。
「──だとしても、逃げるわけにはいかないのよッ!」
その声を振り切って御坂美琴は目の前の敵に挑みかかる。時間がない上に、やっと見つけた唯一の突破口なのだ。例えあっちの掌だとしても退くわけにはいかない。
だが、当然あちらも手を抜くことはしない。
「『えぇ~い!』」
そんな気の抜ける声と共に、ドッ!!!と、風が吹き散らした。
「しまった砂鉄がッ!!くッ……!」
空中に分布していた砂鉄が辺りに散らばっていく。そちらに気を取られていると、空気弾が顔のすぐ近くを通過した。
態勢を整えながらもその実行犯を見ると、先ほどまで自分の後輩の姿であったにも関わらず、いつの間にかゆるふわパーマをかけている、グラマラスな女となっていた。
「『あらあらあらあら、ご学友の方の姿で、お相手を勤めさせて頂いておりましたのに。先輩の心遣いは素直に受け取るべきだと思いましてよ』」
穏やかで落ち着きのある口調だが、攻撃の手を緩めることはない。両手の掌に空気を圧縮して、サッカーボール程の空気弾を、いくつもこっちに発射している。
お陰で多くの砂鉄は風に流されてしまったが、
「あんまり私を舐めるんじゃないわよッ!!」
流された砂鉄が磁力で操られ元の位置へと戻っていく。並の
そのまま砂鉄をぶつけようとするが、あの女が消えた──。一体どこにッ!
「しまっ───ガッッッ!!!」
横に影が見えたと知覚したときには、既に横腹を蹴られていた。二メートル程吹き飛ばされ地面に転がる。咳き込みながら襲撃者を見ると、その姿は同室の後輩だった。
「ガハッ!ゴホッ!……さっきの空気弾は偶然私を外したんじゃない。わざと私の周りの砂鉄を飛ばして、直すまでの時間を稼いだってわけね。貫いた空間に
「『ご明察ですの。顔の近くを攻撃が通過すれば、攻撃手段を変えたと思うのが自然ですから、気を落とす必要はありませんわよ』」
自分の後輩の姿で私に攻撃するとは、神経を逆撫でするのが余程うまいらしい。とはいえ、一杯食わされたことは変わらない。砂鉄に意識を割かれすぎていた。
「(能力の切り替えと心理戦がコイツの戦闘スタイル。即興で攻撃を構築しないといけないし、それまでコイツの何通りもあるコピー能力の組み合わせた戦い方を、全て捌かないといけないってことか……)」
やはり、こちらのやり方を知られているのが痛い。汎用性が高いとはいえ限度がある。そして、相手の能力の多様性は測りしれない。このままでは勝率はかなり低い。だがしかし、
「それぐらい乗り越えられないと、
地面を踏みしめて再び立ち上がる。限界を幾度も乗り越えて
「(辛い辛い辛い辛い!二重の意味でつッッらいよぉ!!)」
魔王の風格すら出している女の内心は、ビックリするほどみっともないことになっていた。
「(今の蹴りだって大分手加減したし!気絶のやり方なんて知らんもん!俺だって攻撃食らったらヤバいんだよ!そっちも手加減しろよ!!)」
美琴が男前に覚悟を決めている裏で、その相手は泣き叫んでいた(表には一ミリもでないが)。
ヒロインを蹴り飛ばすのはファンとして心が痛いが、さすがに高圧電流やら砂鉄の高周波ブレード、
「(ミコっちゃんの能力で磁力やら電磁波をぶつければ、攻撃を逸らすことはできるけど、劣化してるから力負け確定だし、なんか知らんけど完璧にコピーできると勘違いしてるみたいなんだよな。
この見せ札は捨てられない。じゃないと死ぬ)」
美琴も美琴だが、オリ主もオリ主で切羽詰まっていた。絹旗のときとは違い安全性などなく、下手をすれば黒焦げか微塵切りの未来が待っている。
「(ほら、いい感じに今の決まったじゃん?警戒してさっさと逃がして下さい。お願いします!)」
不敵な表情の裏で必死に懇願してるわけだが、この世界はオリ主に甘くはない。
「(……ん?なんかやる気満々ってか、覚悟完了してね?)」
強者感を醸し出すことに、成功したと思っていたオリ主はこの展開に唖然とする。
体のいたるところからビリビリしてるJCが、これから何かするつもりらしい。
「(あ、まだ終わらねぇんだぁ……)」
空気中に砂鉄が再び分布される。
「『その対処法は既にお見せしたと思いますが?』」
目の前のコイツは後輩の姿を模しながらそう言い放つ。確かにここまでは同じだ。これでは先ほどのやり方で突破されるが、そのための一手を打つ。
「ハァァアアアッッッ!!!」
吐き出された声と共に、360度全てに放電が振り撒かれる。御坂美琴の周囲が近付くこともできない死地となった。
「『……なるほど、
「──私の全力を教えてあげるわ──」
電撃が幾つも瞬いた。空間移動と電撃の目にも止まらぬ攻防が始まる。
常人には美琴が手当たり次第闇雲に、電撃を放っているようにしか見えないが、放たれた電撃が一瞬前に、天野がいた場所を通過しているのだ。二秒間に一度の応酬が続いていることが、それぞれが卓越した、能力の使い方で戦っていることが分かるだろう。
「(何なのよその空間移動の速さは……ッ!もしかしたら黒子よりもッ!?)」
オリ主の能力は
1つ、自分以外を空間移動させる際には、自分自身は動くことはできない。
2つ、一度に移動できる距離は黒子の80mよりも短い40m程。そして、目視をしなければならない。(絹旗のときは穴から偶然見えて移動した。見えなければ少しスタンバるつもりだった)
3つ、運べる重量は130㎏ではなく100㎏程(布束ぐらいならまだゆとりがある)
このような劣化が起きてしまうのが、オリ主の劣化模倣だ。ならばなぜラグが本家よりも速いのか。
その理由は二つあり、一つが演算をしていないことである。
それに対し、オリ主は神の授けた特典によって、対象に触れれば能力を使えるため演算をする必要がなく、移動するための座標を視認するだけで構わない。
しかし、発動するにはその座標を明確に認識しなければならないのだ。というのも、縦、横、高さを何m先にあるのか目算で正確に測らなければならず、見誤ると検討違いの場所に転移してしまう。
人間の動体視力では一秒未満で、全体を把握することなどできるわけがないが、その体はサーヴァント。しかも、オリ主は知らないが、エルキドゥはトップクラスのサーヴァントである。そのエルキドゥの動体視力ならば、場所の把握程度は簡単に認識できてしまうのだ。そして、移動距離を10m以内にすれば目算も楽にできる。
「(
ズゴォッッッ!!!と、辺り一面から砂鉄の壁が地面から突き上がっていく。空を覆うように砂鉄が展開された。
この光景に天野の動きが止まる。
「『いくらあなたでも近いうちにガス欠になると思いますが?』」
確かに、このままでは30分程度で限界がきてしまう。平行で演算しつつ、そのうち一つは大気中の砂鉄の流れを把握し、必要に応じて拡散と収束、さらに攻撃する砂鉄の操作をしなくてはならないのだから。
「なら、その前にアンタを倒せばいいだけよッ!」
巨大な天蓋から太い触手のような砂鉄の塊が襲ってくる。砂鉄の空間で捕捉され、美琴から出る雷撃の槍と天蓋からの触手で追撃される。
最初の数分は避けることができていたが、段々と避けるが被弾していく。転移の演算パターンが暴かれたらしい。たまらず天野は退避した。
追撃をしようとするが、何故か砂鉄の空間に存在を察知することができない。突然消えた敵を探そうとするができずにいると、急に空が暗くなる。
「ッ!?」
脇目も振らず横に飛び退いた。その一瞬あとにバシャッ!!と水が弾けた。
どうやら、砂鉄がない川の中へと移動し、川の水を真上に転移させたらしい。
「嫌がらせのつもり──いや、さすがにそんな余裕はないはず。……!そうか空間移動ッ!!例え固形物でなくとも、空間移動した先の物体は押し出される!それは水でも変わらないッ!
……外したのは黒子と違って正確な転移はできないってことね。
そして、例え外しても私を自分の電撃で感電させて、少しでも演算を狂わせるのが算段だった」
これでも学園都市最強の
感電などすればすぐに解けてしまうだろう。
「アンタ本当に陰険なヤツね……!とはいえ、一旦水中に逃げたのは失敗だったんじゃない!?」
ズバチッッッ!!!と電撃が天野の下に走る。だが、電撃は彼女を避けるように曲がり、後ろの水面に着水した。
「は!?一体何が……ッ!?」
高圧電流があり得ない動きをして困惑する美琴。だがそこは第三位、すぐさま仮説を立てる。
「……なるほどね。真空を作って曲げたってことね」
「『能力は使い方しだいなんだよ……。上手く使えば
前を向くと、鬼太郎ヘアーで陰気そうな男子高校生がいた。どうやら、あの少年の能力らしい。
そして、ズザァッッ……!!と美琴が設置した天蓋の砂鉄が空から落下してくる。
「『へぇ……。そろそろ限界みたいじゃないか。無理しないほうがいいんじゃないか?』」
「はぁ……はぁ…………う、ッさいわね……!すぐに黙らせてやるわよ!」
その後も雷撃の槍が幾度も飛んでいくが、全て逸らされ後ろの水面に着水した。
「(電熱による死なない程度の高熱を食らわしたいけど、そうすると自分の電撃が目眩ましになって、死角に転移されるのよね。だから常に砂鉄の空間は保たないといけない)」
この間も砂鉄の空間はもちろん、電撃を常に放出しており、不意討ちを警戒している。だからこそわからない。
「ぜえ……はぁ……ッ、……こんだけ電磁波ぶつけてんのに、何で平然としてるのよ……!」
美琴はずっと電撃を放出していた。それは自衛のためであると同時に、電磁波をアイツにぶつけるためだ。電撃使いの自分ですら不調が出てきてるにも関わらず、相手は平然としている。
これは絶対にあり得ない。あのツンツン頭の少年のように、能力を打ち消される訳でもないのだ。では、なぜこんなことが起きているのか。
その理由はただ一つ、
どういう仕組みかは分からないがあれは人工物。もしや、彼女達のような経緯があるかもしれない。だけど、それでも私は絶対に聞き出さないといけないッ!!
ドバッッッ!!!と砂鉄が再び天野を襲う。不意討ちであったが再び避けられた。だが、温存していたことが当然筒抜けなのは知っている。離れた水面の上にまで飛んだ少女は、こっちに声をかけてきた。
「『もう余力を残すのはお止めになったのですか?』」
「……えぇ。もう終わらせるわ」
「『そうですか。あなたには決め手は「もうチェックメイトよ」……何ですって?』」
そんな話をしていると天野の視界の隅に何かが落ちてきた。とはいえ、距離がある。飛び退くほどでも無い。
しかし、それが明暗を分けた。
「砂鉄が溶けるのは1400℃。溶かすのは難しいけど、
「『ッ!?』」
初めて相手の顔色が変わった。
「(これはさすがに空間移動で避けないと危ないだろッ!)」
天野が瞬間移動をしようとするその刹那。
「させないわ!」
辺りが何故か暗くなった。
「(あ、ヤベッ視界が──)」
砂鉄が半球体状に天野を包む。何度も転移するところをみた美琴は、視線の動きから転移するときの法則に、気付いていたのだ。
電撃姫は挑発的に言葉を発する。
「私の能力は汎用性の高さが売りなのよ」
水蒸気爆発が天野倶佐利に直撃した。
既に河川敷の周辺は至るところがボロボロで、当初の見る影もない。人が一人も来なかったのは、派手に戦闘をしていたために、近づこうとは誰も思わなかったようだ。
「ぐ……っ……」
対岸までくると身体中から煙を出しながら、時折呻き声を上げる緑髪の女がいた。美琴は仰向けに倒れている、少女の姿をしたナニかに向かって一歩一歩近づいていく。
「……空気弾が放たれれば砂鉄の空間の修復をしつつ、私の周囲の砂鉄が吹き飛ばされたときだけに、四方に放電するほうがより効率的。
だけど、それじゃまた違うやり方で突破される可能性があるわ。アンタの能力の多様性は底が知れないから。
なら、単純な力業で押しきると思わせれば、アンタはそのうち持久戦をするようになる。そうすれば奇抜な手は自然と少なくなるわ。
アンタが悠々と電撃を避けている間に、私はずっとこれを仕掛けてた。いくらアンタでも電撃を避けながらじゃ、砂鉄を溶かしていることまでは注意が向かないでしょ。
そして──づッ!」
ぐらッと美琴の体が揺れる。頭を押さえながら苦しげに顔をしかめた。
「……さすがに、平行でいろいろやり過ぎたわね。相当体に疲労が溜まってるわ。
でも、威力はかなり落ちるけど、あと
天野の側まできた美琴は、スカートのポケットからコインを取りだし、倒れ伏す天野に向かって構える。
「手足吹き飛ばされたくなければさっさと言いなさい。今回ばかりはハッタリでもなんでもないから、舐めてかかると一生後悔するわよ」
目から光を無くし荒い息を吐いている彼女は、それだけで切羽詰まっていることが分かる。数時間後には実験が始まってしまうことが、さらに拍車をかけているのだろう。
沈黙があった。
目を険しくさせた美琴は宣言通りコインを宙に放る。
いつもの彼女なら威嚇程度で済ましただろうが、今回は時間も手段もないのだ。容赦などする余裕はない。
宙からくるくると回転して落ちてくるコインに、指を当てようとした瞬間。
くいっとコインの軌道が変わる。
「は?」
美琴が疑問を抱くと同時。
ドンッ!!と強い衝撃が腹部を襲い、意識を彼方に飛ばすこととなった。
ドサァッと音と共に倒れる学園都市第三位。まさか、『アイテム』すら退ける彼女が、敗北するとは誰も思わなかっただろう。
「『ふぅー……。今回はなかなか危なかったわね』」(あッッッぶねぇッッッ!!!死ぬかと思ったわ!!)
そんな美琴を見下ろす人物がいた。
「『アンタに鉄橋で触れていたことを忘れたの?最後の最後まで瞬間移動ばっかで使ってなかったし、自分の策がうまく機能していたと思っていたなら、しょうがないかもね。
疲労と焦燥、そのうえ慣れていない、今から人体を破壊するのだという緊張。さっきのアンタならスペックが劣る私でも、不意討ちでなら磁力でコインを当てれるわ』」
そこには勝ち気な表情に短く切られた髪の少女、御坂美琴が立っていた。しかし髪色が緑のためパチモンではあるのだが。
美琴は愛用のゲームセンターのコインを、逆に相手に利用されたのだ。動けない相手に伝家の宝刀である
しかしそれも仕方がないだろう。さすがの美琴でも、自分自身に負けるなど考えもしなかったのだから。
勝ちは決まった。そう考えたことが美琴の最大の敗因であった。
「僕の能力は多様性の高さこそが真価なんだ」
天野倶佐利の負った火傷は既に治っている。能力を使い回復したのだ。
実はこの能力、回復するために自然治癒を促進させる必要があるのだが、細胞を活性化させるために、体力や集中力がアホみたいに持ってかれる、デメリットがあったりする。
エルキドゥの体でなければ逆に能力に殺されていただろう。
天野は美琴を別の場所に転移させたあと、一人で学園都市の闇へと飛び込んで行く。
一つの悲劇を止めるために。
「『はあ、それにしてもこれからどうしましょう……』」(原作の進み具合やら名シーンやら、これからの俺の生活などのその他諸々)
大丈夫なのだろうか。
◆裏話◆
ゆるふわパーマはオリキャラです。
常盤台にいたときのオリ主の同級生のお嬢様。能力は空力使い(エアロハンド)でlevel4。片手でバスケットボールほどの、空気の塊を作ることができる。
オリ主がコピーすると、サッカーボールほどの大きさになり、両手を使わなければ作ることすらできない。そのうえ目標に当たらないクソエイム。
美琴は勘違いしているがあれはガチで狙らっていた。
鬼太郎ヘアーもオリキャラですが、もう出ることはないでしょう。上のゆるふわパーマも同じく。
◆追記◆
キツい。バトル思った以上にキツかった……。こんなに難しいとは思わなかった。しかも、10000字までいくなんて。分割すればよかったかも。
それにしてもなかなか妹達編終わりませんね。すぐにこの話は終わらすつもりだったんですけど。想定通りには進まないものです。
それよりも、美琴の株を落とせずに済んだのか不安です。駆け引きの勝負になったので、この結末でもいいと思ったんだけど大丈夫かな?
あと感想を下さい。やる気が上がるので。