とある原石の神造人形(エルキドゥ)   作:海鮮茶漬け

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20話です。数時間で書いたので少し雑かも。


20.それでも───

 無人の鉄橋に転移させられ、3分後には美琴は目を覚ましていた。

 

「(コインが当たる直前に、磁力で威力を下げなかったら危なかったわね……)」

 

 オリ主は磁力を、完璧に制御できたと思っていたが、実際は美琴が勢いを減速させたに過ぎない。あのままでは肋骨の2、3本を折る重傷だっただろう。

 これは言い訳になるが、オリ主にとってもあの展開は予想外の連続だったのだ。真空があるにも関わらず電撃を止めないことから、

 

 

 あのミコっちゃんが破れかぶれとかあり得ないんだよなぁ……(しみじみ)

 

 

 と考え、何かしらの策があることはわかっていた。とはいえ熱した砂鉄を使った、水蒸気爆発など予想の範囲外である。

 

 あの少ない時間でオリ主とは違い、相手の情報が全く無いのにも関わらず、オリ主を水面に誘い込んだ美琴がスゴいのだ。

 

 辺りを見回すがあの女の影も形も無い。どれぐらい気を失っていたのか自分では分からないが、とっくの昔に遠くまで逃げているだろう。

 絶対に勝たなくてはならない勝負で負けた。その事が美琴に絶望を与える。

 

「(……もう、実験を止める手立てがない。あの女が最後の糸口だったのにッ!……今さら私が殺されたところで、あの子達に違う地獄が待っているだけ……ッ)どうすればいいのよッッッ!!!」

 

 鉄橋の欄干を拳で殴る。ガンッ!と強く音が静かな夜に響く。ジィーーンと鉄を殴った痛みが拳がくる。

 意味がなくてもどうしても止められなかった。

 美琴はそのまま再び崩れ落てしまい、その姿はあの"常盤台のエース御坂美琴"の姿とはとても思えない、まるで別人のようであった。

 数十分の間そのまま動かなかったが、美琴は再び立ち上がる。だが、その表情は天野との戦闘のときとは違い、暗く沈んでいた。

 

「(そうよ、あの子達はこのままじゃ一方通行に必ず殺される。一方通行を倒すことができる人間なんて、この世に誰もいないんだから。

 だけど、別の役目が与えられても絶対に死ぬわけじゃない。おそらく、ロクでもない未来が待っていて、…………きっと多くの妹達が死ぬことになる。

 でも、いつか誰かが止めてくれるかもしれない。可能性は限りなく低い。だけど、ゼロじゃない)」

 

 美琴は思考を巡らす。問題の解決にはならないことはわかっている。だが、これ以外に方法はない。

 

「(妹達は学園都市の上層部が関わっている。助け出すのは容易じゃない。だけど、私達子供じゃなくて力を持った大人なら?

 権力を持った人間が、一人や二人なら妹達を保護しようと動くかもしれない。

 …………これが、無力な私にできる精一杯の方法)」

 

 それは博打のようなものだ。宝くじは買わなければ当たらない。そんなごく僅かな希望を灯すために、この少女は命を捨てるつもりだ。

 

「(何でも解決してくれるママはいない。この世界にヒーローもいない。泣き叫ぶことに意味なんかない。だから自分でどうにかするのよ)」

 

 悲壮な覚悟を決めた彼女はこれからその道を突き進み、最期には死ぬことになる。

 

「…………て」

 

 だから、これくらいは許されるだろう。これから自らを襲う逃れられない死の運命。さらにここは誰もいない無人の鉄橋だ。絶望に押し潰された少女から、そんな言葉が口から出てしまうのは当然のことだった。

 だってまだ14歳の少女には、余りにも重すぎる現実なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

「………………誰か助けて……」

 

 

 

 声は聞こえていないだろう。

 とても小さく、尚且つ距離が離れている。少女が被害者なのか加害者なのか、絶対的な確証があるわけでもない。裏でどんな脅威が蔓延っているのかを、微塵も理解していないはずだ。それでも───

 

 

 それでも、吹けば飛んでしまいそうな少女を、ツンツン頭の少年は絶対に見捨てはしない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(あ"あーー。超辛い。少しは手加減してくれって、死んじゃうからね?マジで)」

 

 高い建物の屋上で街を見下ろす天野倶佐利。見た感じはとんでもなく強者感が溢れているが、やっぱり泣き言を言っていた。本当に残念である。

 回復の能力は劣化により体力を著しく低下させる。そのため表面上を治しただけで完治はできず、熱のような痛みとなってオリ主を苦しめている。結構痛い。

 それと、別に逃げ続けてここに来たわけではない。コピーした千里眼を使い、一方通行と御坂妹がいる場所を探しているのである。

 

「(もう、あたりをつけた四つの学区を動き回ったんだけど、全然見つからんなー)」

 

 忘れている人もいると思うがこのオリ主、常盤台にいたときに至るところをぶらついていたのである。

 その際に聖地巡礼と題して、未来に起きる様々な有名な舞台をあらかじめ記憶していたのだ。コンテナだらけの場所などそう多くはない。

 

 あのあと、実は気を失った美琴から実験の場所を聞き出そうと、リモコンを向けて何度もボタンを押したのだが、ことごとく弾かれてしまった。

 みさきちの劣化能力だが、弱っており気絶してるなら余裕で介入できると思っていたが、電磁バリアは自分という存在が心底気に入らないようだ。

 美琴が「うぅん……」と呻き出し始めたので、急いで止めて空間移動で姿を眩まし、科学が産んだ雷神との第二ラウンドは無事回避した。

 余裕など微塵も無い。勝者には見えない逃げっぷりである。

 もしかしたらこのせいで、美琴は少ない時間で目を覚ましたのかも知れない。

 

「(『どうせラノベやなろうお得意の、砂鉄を上手い具合に使った粉塵爆発だろ?はいはい知ってる、知ってるゥ!』……とか調子こいて意気揚々と、川の上空に飛んだらドカンだよ。

 砂鉄がたくさんある陸地から遠ざかれば大丈夫だと思うじゃん!普通はさぁ!)」

 

 まんまと出し抜かれたアラサーJKがそこにはいた。最後の磁力は偶然の産物である。あそこまでオリ主に読めるはずもない。

 

「(急いで逃げたから確認できてないけど、……起きたよね?ミコっちゃんが寝たまんまだと、上条が一方通行を殴りにいけないんだけど。

 俺も場所知らんし?伝えることもできないからどうしようもないんだよなぁ。もう、この時点でいろいろヤバい。こんなの原作に無いし!そもそも俺と戦わないし!……もっというと俺原作にいないし。

 そういうわけで、もしものときのために俺が足止めをしようというわけだ。

 …………無理じゃね?相手は物理法則の全てを掌握してんだよ?既に無敵じゃん。何なんですかねこのチート野郎は(クソデカため息)

 ……ん?未元物質(ダークマター)?木原数多?……ハハッ!知らない子ですね)」

 

 このオリ主理不尽だなんだと言っているが、それお前がぶっ飛ばした絹旗も同じこと思ってたぞ。

 人の姿を勝手に真似た報いである。

 

「(ああ、でも全然見つからないなー。これはどうしようもないなー。既に四つ学区を空間移動で回ってるし?あくまで保険だし?十分頑張ったよねー俺。これはしょうがな───あ)」

 

 何となくコンテナの方を向くと白髪が見えた。

 

「」

 

 眉間の辺りを揉み解し、再び前を向く。

 ──白髪がいた。

 

「」

 

 目をつむり、精神を落ち着かせ瞑想をする。カッ!!と目を開くとそこには、

 ───白髪頭が立っていた。

 

 

 

「……………………。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 鉄橋は電撃を浴びてボロボロになっている。辺りにところどころ焼けたような跡が残っていることが、私の出した電撃の威力を物語っていた。

 ……こんな真似をした私に怒りもせず、コイツはヘラヘラして許して、その上学園都市第一位と戦おうとしている。

 

「その次の役目ってやつも結局は一方通行(アクセラレータ)が最強ってのを前提にした、樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)予測演算(シミュレート)が基になってるんだろ?なら、学園都市最弱の無能力者(レベル0)が、学園都市最強を倒しちまえば、その前提は全て覆されるんじゃないか?」

 

 そう言って戦場に行こうとしてるコイツを私は必死になって止める。一方通行の危険性を。私の罪を。少しでも伝わるように声を荒げて説明する。一方通行には勝てっこないと。

 

 だって、何でも解決してくれるママはいないから。

 神頼みしても都合よく奇跡なんて起きるわけがない。

 だって、……。

 

「何一つ失う事なく、みんなで笑って帰るってのは俺の夢だ」

 

 泣き叫んでいたら助けてくれるヒーローなんて……

 

「待っててくれ」

 

 そう言って振り返った顔には、怯えも不安も微塵もなくて、いつもと同じような笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

「必ず御坂(みさか)(いもうと)は連れて帰ってくる。

 

 ──────────約束するよ」

 

 

 

 

 

 

 

 第20話『それでもヒーローはやってくる』

 




◆裏話◆
その1
実は砂鉄の空間は場所の把握だけではなく、瞬間移動のジャミングの意味もありました。テレポーターは高度な演算をするため、空気中に砂鉄がバカみたいな量があれば、阻害できると思っていました。しかし、オリ主は視認をすれば能力を発動することができ、テレポーターの抱いている瞬間移動の恐ろしさがない(理解することができない)ため、平然と瞬間移動していたわけですね。
その2
オリ主は砂鉄が増えたときに川に向かって飛んだので、砂鉄による攻撃を再びすれば、再び川の近くに瞬間移動するだろうと予測を立て、あらかじめ美琴が川の上空に熱した砂鉄を配置していました。
オリ主が水を転移させたのは感電させるためだけです。瞬間移動で殺す?あり得ませんね
その3
初めは電気分解を使った水素爆発にしようとしてました。ですが、そのためには塩素銅を用意する必要があるのを忘れてましたね。
たまたま川のなかに塩素銅があるわけもないですから、急遽変更して水蒸気爆発にしました。
その4
そもそも当初は違う戦い方を想定していました。その名も"垣根帝督リスペクト戦法"です。
新約では垣根提督が一方通行に、妹達の残存思念を使って精神攻撃をします。
それと同じやり方です。
あくまでオリ主の場合は、感覚的でしかわからないのですが、相手のパーソナルリアリティーを相手の肌に触れたと同時に、ほんの僅かに取得します。
でなければ原作キャラ以上の、1000人のコピーなどできるわけありません。(言葉遣いやら性格やらの理由で)
つまり、妹達に触れたときの精神状態やら思考を、美琴にぶつけて、責め立て、精神的に潰す作戦です。
美琴は夢でも妹達に責められている描写があるので、それを参考にウソも混ぜれば楽勝でしょう。
潰したらダメなので却下となりました。
その5
もっというと、この対決はするつもりはありませんでした。基本的にノリで書いてるので17、8話ぐらいで「これ書かないといかん流れじゃん……!!」と慄きましたね。計画的には進まないものです。
その6
原作との相違点。オリ主との対決のせいで美琴は疲れきっているため、上条は軽く気絶する程度。ダメージも割りと少なめ。だけど、変わらず携帯は死ぬ。

◆一言◆
美琴に会いに来てくれたのはヒーローで、オリ主が会いに行っちゃったのが死神ですね。ちょっとした対比です。

もうストックはありません。次回はいつも通り未定です。
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