とある原石の神造人形(エルキドゥ)   作:海鮮茶漬け

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では21話です。
短いかもしれませんが、なんかキリがよかったのでここまでで。


21.会話は大切

 コンテナがひしめく学園都市の片隅で、二人の人間がその場にいた。時間は午後8時32分。始まりの刻限から2分だけ過ぎている。しかし、どうやら白い悪魔にはその2分で十分だったらしい。

 少女は地面に転がり、身に付けていた額のゴーグルは割れてしまって、既に使い物にならなくなっていた。

 

「はぁ……ッはぁ……ッ」

 

「オイオイ、前回ネタばらししてやっただろォがよォ?ちったァ俺を楽しませろよ」

 

 初撃で勝負は着いた。しかし、この結末は必然である。いくら能力の理屈がわかったのだとしても、一方通行(アクセラレータ)のベクトル操作はそう簡単に突破できるものではない。

 コツコツと靴をならし、一方通行は御坂妹に近づいていく。これから始まるのは勝者が敗者をいたぶり、蹂躙する惨劇の時間だ。

 

「残り一万回も同じ作業をしねェといけない俺の身にも───あ"?」

 

 彼女まであと残り数歩というところで、ザンッ!と砂利を大きく踏み締める音が響く。

 音源のほうを見ると、この実験と関係ないはずの人間がそこにいた。その女は白のローブを羽織り、薄緑色の艶やかな髪を靡かせて、この場に優雅に降り立ったのだ。

 

「…………何でオマエがここに居やがる?パクり女」

 

 あの一方通行が煽りでも殺意でもなく、素朴な疑問として言葉を投げ掛けた。その人物は古い知人ではあるものの、到底親密な関係とは言えない人物である。

 自分一人しかいない、ただ知識を詰め込められるあの教室で、この女が自身の能力を向上させるために訪れた数日で、既に関係は切れている。

 そして、コイツがこの実験に関わる理由も必要性も心当たりがない。

 

「とある人物からこの実験のことを聞いてね。こうして君を止めにきたんだよ」

 

 機密性の極めて高い計画をどうやって知り得たのか、疑問が浮かぶが、そんなことよりも気になるセリフが聞こえた。

 

「止める?オマエがか?……ギャハハハッ!!まさか、本気で言ってンのかァ!?圧倒的な彼我の差も理解できない程に、脳ミソが溶けちまったらしいなァ?

 万に一つでも勝てると思っちまってる時点で、オマエの敗北は確定してンぞ!!」

 

 この間のセリフもそうだが、コイツはどうやら英雄願望に目覚めたらしい。

 スカシた態度を取りながら、次々とそんな言葉を吐いていくコイツが実に滑稽だ。どうやら俺はコイツのことを今まで誤解していたらしい。

 どのような能力を手に入れればここまでのぼせられるのか、ここまでくると興味が湧く。

 だから、次のセリフは予想外であった。

 

「──確かに、無理だろうね」

 

「…………あ"?」

 

 返事は即答だった。だからこそ理解ができない。

 学園都市第一位に君臨しておりスパコン並みの頭脳を持つ、一方通行でも全く理解ができないのだ。

 コイツは何を言っているのだろうか?何かしらの秘策があるからこの場に現れたのではないのか?

 

「……オイ、ふざけてンのか?それとも、とうとうイカレちまったんですかァ?なら、この俺直々にその沸いちまった脳ミソをかッ捌いてやるよ」

 

 狂気によって歪み形成された怪物が、笑みを浮かべながら右手を開いた。

 もはや凶器とも言える悪魔のような人相を浮かべ、さらに余人に追随を許さない絶対的な力。その風貌は誰が見てもまさに死神としか認識できず、常人はおろかその道の凄腕さえも、裸足で逃げ出すことだろう。

 しかし、その風貌を向けられてなお、天野の顔色は微塵も変わらない。いつもの微笑みではなく、見たこともない真剣な顔で天野は取って置きの手札を言いきる。

 

 

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 一方通行はまたしても意味がわからなかった。

 

「何を言ってンだ、オマエ。学園都市ってのは絶対能力者(レベル6)を生み出すのが目的だろォが。学園都市最強のこの俺がそれ目指すことに、何の不自然があるッてンだ?」

 

 神様の頭脳とやらに至ることが、学園都市は到達点としている。それはこの実験を見れば一目瞭然なのだから。

 

「僕が疑問に思ってるところはそこじゃないよ。以前コンビニで偶然会ったとき、君は僕にこう言ったね。

【雑魚共と同じように、最強の称号が欲しいのか】。

 それはつまり、君が常日頃襲撃にあっているということだろう?僕が理解できないのはそこなんだ。何故君に彼らは襲いかかってくるんだい?」

 

「ハア?そこまで知っておきながら理解できねェのか?ヤツらにとって学園都市最強っつう称号は、喉から手が出る程に欲しいンだろォよ」

 

 一方通行は目の前に何度も現れ、視界をちらつくハエ共を思い出し苛立ちを抱きながら言い捨てた。一方通行にとってそれはウンザリとした日常であったのだ。

 

 だからこそ次のセリフは予想外だった。

 

 

 

 

 

「僕が言っているのは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「…………は?」

 

「うん?だってそうだろう?確かに最初は君に挑もうとする人間は多いかも知れないが、君の残虐性と能力の理不尽さが知れ渡れば、おのずとその数は減っていくと思うんだけど」

 

 それは一方通行にとって闘争が当たり前であったがために、気付くことができなかった理屈であった。

 いくらスパコン並みの頭脳を持とうが、能力者が溢れるこの街ではこういうこともあり得る、と納得していては正解に辿り着ける訳もない。

 さらに、学園都市は一方通行を怪物にするために、悪意や闘争を組み込んで設計したのだ。彼はウンザリとしているが平穏で温かな日常よりも、闘争の毎日に身を置く方が気が楽なのである。

 

「僕は学園都市の都市伝説や、学園都市最強の噂を調べても、君の容赦の無さは何一つ書かれていなかった」

 

 確かにおかしい。SNSなどでは足が残るため、自ら発信する馬鹿はそうそういないだろうが、人伝で他人が噂話をSNSに上げることもあるだろう。

 ヤツらが人気の無いところで襲ってくるため、派手にはならないが、人の口に戸は立てられないものだ。

 

「だから僕は一つの結論に至った。君に悪意を向けるように誰かが情報操作しているとね」

 

 馬鹿馬鹿しい荒唐無稽の話───とは言えなかった。実際に一方通行による被害は実際に止まっておらず、情報を遮断していることで興味本意の馬鹿を排除するどころか、増やしてしまっている始末。

 情報を改竄をする程の人物が、樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)を使用できないとも思えない。つまり、その人物は真剣に一方通行の被害を解決しようとは、微塵も思っていないのだ。

 ならば、そいつは善意ではなく悪意を持って情報を操作していることになる。

 

「何故そんなことをしたのか。簡単だよ、君にストレスを与えるためさ。自らに降りかかる火の粉は誰だって振り払いたいからね」

 

「君は学園都市に悪意と闘争で形作られた存在であり、自らの抱える問題も解決できる。この実験を断る理由がない。

 だけど、きっと君の最後の背中を押してしまったのは、そんなことじゃない。あるたった一つの出来事なんだろう?」

 

 そこまで言った後改めてこちらに視線を合わせ、天野倶佐利はその決定的な言葉を紡いだ。

 

 

 

 

妹達(シスターズ)の殺害だ」

 

 

 

 

  

 

 




◆裏話◆
特になし

◆作者の戯れ言◆
上条にとって天野は困った時に現れるお助けお姉さんキャラ。
一方通行にとっては、間違えたときに寄り添うんじゃなくて、相対して向き合い、正すためにやってくる頑固な幼馴染みキャラ(※作者の近しいと思ったイメージですのであしからず)。
…………原作キャラに見事に被らなくて、おいしいポジションに収まったなコイツ……。

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