とある原石の神造人形(エルキドゥ)   作:海鮮茶漬け

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22話です。

数年前。
運命的に引かれ合い(上のヤツ等の差し金によって)緑髪のロリと白髪のショタは出会った。


22.昔話

 あの日は曇り空だった。

 連日続いた雨のせいで湿度が高く、不快だと研究者が愚痴っていたことを覚えている。

 湿気というのは空気中に含まれる、水蒸気の圧力が高いと起こる現象だ。つまり、その水蒸気圧のベクトルを少しイジれば、そんなものは消えてなくなる。

 そんな当たり前のことに興奮していた研究者が、ひたすらに鬱陶しかった。あの目は生徒を見る目ではなく、まさしく実験動物を見る好奇の目であり、自分が周りとは違うのだと、改めて再確認させられているようであったからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 昔、ある事件が起きた。

 その事件の主犯は強盗や殺人などの凶悪犯ではない。しかし、その事件の鎮圧のために兵隊、戦車、戦闘機、ありとあらゆる武力が総動員された。

 なぜ、それほどの兵力を用意したのか。それは至ってシンプルだ。

 

 一人の少年に対抗するために、軍隊が必要最低限だったからに他ならない。

 

 国民を守るための武力が一人の子供に向けられる。その光景は果たしてどれだけ異様であっただろうか。

 そして、事件を引き起こした少年に、悪意がないというのだから救われない。

 

 俺は覚えている。

 あの怒声も悲鳴も覚えている。

 あの動くキャタピラの駆動音も、鳴り響く銃声も何もかも。

 だからこそ、人との接触から遠ざかった。なぜならあのとき証明してしまったからだ。あのとき理解してしまったからだ。

 

 この力は世界を壊してしまう力なのだと。

 

 

 

 

 

 

 午後一時。教室から別の部屋に移されその部屋に入ると、既にその人物は来ていた。

 こっちに笑みを浮かべながら親しげに話しかけてきた。

 

「やあ、君が一方通行(アクセラレータ)だね」(目付き悪ッ!!コイツこのときから人相悪いな!?やさぐれアルビノショタとかどこに需要が…………。

 ……いや割りと、刺さる人には刺さりそうだな……)

 

 その女は今と変わらず、飄々としていて掴み所のないヤツだった。

 何でも学園都市初めての、多重能力者(デュアルスキル)になる可能性があり、破壊力、持続力、汎用性といったほぼ全ての項目で、絶対的な数値を叩き出している俺の能力をコピーし、本家の俺と比較することで正確な能力のレベルを測るつもりらしい。

 しかし、それは相手の都合でしかなく、能力を模倣されるなど当然容認できるわけもない。

 拒否を続けていたが、学会の重鎮がこれを主導していることや、協力すればこれからの能力開発にサポートをする確約。

 そして、使用者が変わることにより新しい戦闘理論が確立される可能性。

 さらに、そのコピーも完全ではないらしく、問題となっているところが今回の比較でわかったのだとしても、改善する可能性は限りなく低いようだ。

 疑問に思いその開発データを確認すると、確かに劣化し本来の能力よりも明らかに出力が出ていない。その上、確認も取ったがAIM拡散力場の形跡が全く確認できず、演算パターンも不可解極まりなかった。

 

 この結果は原石の特徴ではない。

 噂によると世界最高と言われている原石の能力者は、繊細かつ複雑な能力で、研究者が手出しすることができなかったらしい。

 それが、演算パターンなのかAIM拡散力場なのかは知らないが、能力の計測はできたということだ。しかし、この女のAIM拡散力場は実際に確認できず、演算パターンも計測できない。

 重要なのは後者の演算パターンが、途中で切れていることだ。能力を行使するうえで演算パターンは必要不可欠な処理である。

 未来の予測をするとき、今ある様々な材料や知識、これまでの経験則などを使い予測し導きだすのが普通のやり方だ。

 だが、この女は材料を自分の周りに並べ、瞑想して導きだす未来予知のようなふざけたものだった。

 

 つまり、コイツの演算は途中でぶつ切りになっているにも関わらず、能力を発動することができる、原石の中でも異質な存在だったのだ。

 

 その仕組みは理解ができねェが今回ばかりは好都合だ。演算パターンが計測できず、AIM拡散力場も観測できないのであれば、これから効果的な能力の対策が生まれるとは考えられない。

 さらに劣化することがデフォならば、制圧するのも容易であり、コイツに寝首を掻かれることもない。だから許可してやったのだが……。

 

「ねえ、君の本名は何ていうんだい?一方通行(アクセラレータ)は能力名なのだろう?」

 

「ベクトル操作を常に行使しているというのは本当かい?」

 

「君が着ているその服なんだけど、もしかして有名ブランドのーーー」

 

 やたらと話しかけて来やがる。

 静かそォなのは見た目だけらしい。……いや、緑なンつう矢鱈と目立つ、イカレた髪色をしてやがるが。

 どこかのお嬢様学校にでも、通ってるような雰囲気を出しておきながら、蓋を開けてみれば好奇心に動かされるただのガキだ。

 最初は何を聞かれても無視を決めていたが、あることから会話ぐらいはするようになった。

 

 

「君の能力がベクトル操作でよかったね。もしそうでなかったら、先天性色素欠乏症の君は、外を出歩くのも大変だったろう」

 

「……これは俺の能力で紫外線を反射しちまうから、メラニンの生合成ができねェだけだ。後天性である以上能力を切ろうが問題ねェ」

 

 別に仲良しこよしをしていた訳じゃねェ。答えてもいい範囲を話し返す程度だ。

 それから計測にある一定の区切りがついたため、一週間も経たずに俺達はおさらばすることになった。

 

 

 そうだ、あの別れた最終日で縁は切れたはずだ。なのに何でそこに居やがる?

 

 

 

 

 

 

 

 この場に降り立った緑髪の少女は、白い悪魔の前で淡々としゃべり始める。

 

「君は妹達(シスターズ)を初めて殺めたそのときに、この実験へ参加することにしたんじゃないのかな?───殺してしまった罪悪感から逃れるためにね」

 

 ……コイツはどこまで把握してンだ?何でこうも突っかかって来やがる?

 

「……人形を壊すことにこの俺が頓着すると、本気で思ってンのか?

 …………くだらねェ。ガキくせェ期待なんざしてんじゃねェぞ妄想女」

 

 ああ、くだらねェ。人形を壊すことを躊躇う訳がねェだろうが。俺に人形を愛でるイカレた趣味があるとでも、思ってンのか?

 

「そうかな?君が初めて誰かを殺めたのは、妹達が最初なのだろう?いくら情報操作をしていても、10人、20人と殺していれば隠すことは難しくなるからね。

 殺しをすれば生活することが難しくなるから?いいや、君の能力と頭脳ならばどうにかすることはできるはずだ。警備員(アンチスキル)に睨まれることになるが、君には些細なことだろう。

 では、どうして君は周りが確実に静かになる、簡単な方法を取らなかったのか。それは───ッ!?」

 

 ドバッッッンッッッ!!!!と空気を叩く音が響いたと同時に、一方通行の背中から強烈な風の渦が巻き起こる。まるでその先を言わせないかのように。

 

 その拍子に近くのコンテナの幾つかは、無残にもひしゃげてしまっていた。その猛威を振るう白い悪魔は、不自然な程静かに言葉を発する。

 

「黙って聞いてりゃあ何だそれはよォ。そもそも殺しだとか人形相手に何言ってンだオマエ?博愛主義だかなんだか知らねェが、オマエの主義主張なんざ、こっちはこれっぽっちも興味ねェンだよ!!」

 

 逆巻く嵐の塊が一方通行の手によって、さらに指向性を獲得する。

 

「この俺に説教なんざ百年早ェ!雑魚の分際で調子に乗ってンじゃねェぞッ三下ァ!!」

 

「ッ一方通行(アクセラレータ)!」

 

 普段一方通行を君としか呼ばない天野が、声を荒げながら名前を呼ぶ。そのことから、どれだけ一方通行のことを想い、必死に動いているのか、もはや説明するまでもないだろう。

 しかし、怒りに支配された一方通行は、そんなことに頓着はしない。

 ベクトル操作で天野倶佐利に高速で接近し、そのまま圧倒的な力で叩き伏せようとした、その寸前

 

 

 

 パァンッ!と破裂音が響いた。

 

 

「あ?」

 

 一方通行の意識に空白が生まれる。

 車並の速度だったにも関わらず、一瞬で動きをゼロにして止まる一方通行。

 だが、一方通行が止まろうとも時は動き出す。それも一方通行が馴染み深い鮮血とともに。

 

「がッ!?」

 

 目の前にいる天野倶佐利の口から、痛みを堪えるような声が漏れた。天野の纏っている白いローブに、赤い染みが広がっている。

 射撃だ。

 右肩を撃ち抜かれている。

 先ほどの発砲音から一方通行は妹達(シスターズ)にすぐさま視線を向けた。撃ったのが一方通行でないのならこの場には妹達しかおらず、実験のため銃を所持していたのだから、当然そうなのだろうと考えた。

 しかし、その妹達が目を開いて驚愕している。

 銃は手元にはなく、立つこともできないほどのダメージを負っている。痛みで這う這うの状態でしか居られないヤツに、まともな射撃などできるはずもない。

 では一体誰が?

 

 下手人はすぐに判明した。

 

「……はっはは、やってやったぜ……!」

 

 コンテナの陰から拳銃を持った冴えない男が、笑いながら表に出てくる。

 

「依頼通り半殺しだ。文句何か一つもねえだろ……!はははははっ!これで俺も暗部組織に入ることができるぞぉ!!」

 

 ソイツは達成感に溢れていた。その顔はまるで長年の夢が叶ったかのように、興奮に彩られている。

 

「悪いな、第一位。この女は俺のターゲットだったんだ。安心してくれ、依頼通りアンタのヤバそうな案件の邪魔もしないし、口外もしない。調べようとも思っちゃいない。

 外からじゃ無法地帯に見えるかもしれないが、俺達の世界はそういったルールを破るヤツから死んでいくんだ。制裁があるぶん暗部のほうが表よりも、規律が遥かに厳しいんだよ」

 

 興奮により饒舌にしゃべり出す、暗部側にいるであろう男。

 どうやら学園都市第一位に、知識を与えることに優越感を抱いているらしい。天上の存在であり逆立ちしても決して敵わない超能力者(レベル5)と、対等に話しているこの状況が男の気を大きくしているのだろう。

 万能感に酔いしれている男は尚も話し続ける。

 

 まあ、あの一方通行が男を、対等と見ているはずもないのだが。

 

「さっさとこの女をバンが停めているところにゴバウッッ!?!?!?」

 

 一方通行が地面を踏みしめると、意気揚々としゃべっていた男が空中に打ち上げられた。

 当然、男が能力を使い跳んだわけではない。

 一方通行がその身にかかるベクトルを、男が立つ地面から真上に向かってぶつけたのだ。

 その小さな動作とは違い、男を3メートル以上吹き飛ばす程の、威力を持った一撃であった。

 男は落下時にカエルのようなうめき声をあげた後、電気を流したカエルのように手足をビクビク痙攣させている。

 この状態からヘヴンをキャンセラーできるのは、あのカエル顔の医者しかいないだろう。暗部の末端の中の末端である彼が、そこに運ばれるかは分からないが。

 即死をしていないのは一方通行が手加減をしたのか。あるいは、反射的に能力を使ったためなのか。それを知るのは一方通行ただ一人だ。

 

「……チッ、カスがハシャいでンじゃねェぞ、うざってェ……」

 

「はぁ、はぁ、……づッ……!」

 

 振り返ると天野は撃たれており、地面に倒れたまま動くことができないようだ。これではもう邪魔されることもないだろう。

 このような目に遭えば、もう口出しをしてくることはないはずだ。

 

「ハッ!くだらねぇ幕引きだな。身の程を弁えねェからそォなる。さっさと失せろパクリ野郎。次、出しゃばりやがったら殺す」

 

 そう言い残して一方通行は天野から離れて行き、御坂妹の方へ歩いていく。さっさと殺して実験を終わらしたいのか、会話をする様子はない。

 

「……ぐッ……!」

 

 必死に手を伸ばすが激痛に苛まれ、立ち上がることすらできない。天野はこのまま御坂妹が殺されるのを、ただ眺めていることしか許されていないのだ。

 

 しかしその絶望の中、天野の眼は死んではいなかった。

 

 彼女は知っているのだ。

 例え、原作とかけ離れた展開だとしても。

 助け出す条件が変わってしまったのだとしても。

 それでも絶対に彼は現れるのだと。

 

 

 

 

 

 

「今すぐ先輩と御坂妹から離れやがれ三下ぁッ!!」

 

 

 

 

 

 




◆裏話◆
オリキャラというか噛ませキャラというか。もう出てきません。彼の暗部奮起物語とかありませんよ?

AIM拡散力場?そんなのありません。だって特典だもの

◆作者の戯れ言◆
低評価が増えて何でだろう?と考えていたのですが、コメントで何かを言うわけでもないので、ああ、そういうことなんだな、と納得しました。
これからは楽しんでくれている読者さん達優先で、書いていきたいと思います。



※ここからは活動報告にてお願いします
お願いなのですが、疑問に思ったことはもちろん、ストーリーやキャラ的にここは違くね?と思ったところは、どんどん書いて貰いたいです。
もっと話にメリハリがほしいなーとか、日常回ほしいなーとかも書いて頂けると助かります。

投稿が毎回未定なのでいつになるのか分かりませんが、とあるの世界観が壊れず、作者のある程度の筋書きから外れない範囲で、頂いた要望を小説に書いていこう思います。
できない場合は、ifとして別の世界線という感じで書いていきます。
しかし、作者は適当な理由でキャラ同士を絡ませるのがあまり好きではありません(恋愛、友情、戦闘に関わらず)。
ですので、本編でオリ主との関係性が明記され、物語がある程度一段落した辺りで、書くことになるのをご留意ください。(トール、オティヌス、上里などの話を書いてしまうと、ネタバレになりかねないので)

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