とある原石の神造人形(エルキドゥ) 作:海鮮茶漬け
それでは23話です。
「(ヤッベェ……、死ぬとこだったッ……!あ、イタッ!?)」
肩から血を流しながら踞る少女がいた。幸いにも銃弾は貫通している。カエル顔の医者の腕ならば、翌日には退院できるだろう。(化け物かな?)
とはいえ、そんな痛々しい少女は苦しみながらも、心から安堵していた。
「(とあるの考察結構してたからなぁ……。本人、目の前にしたからついつい口が滑っちまった……!!)」
コイツ、アホ丸出しである。
心の内を暴いたのは効果的だからとかではない。ただの知的好奇心の暴走だったのだ。端的に言ってクズである。
芸能人に会うと質問しまくる、タチの悪いファンそのものだった。
時間稼ぎにしてもまだ他にあっただろう?お前だけにある一方通行との馴れ初めを話せば、数分は持っただろうに。今まで稼いだ経験値の無駄であった。
何だかんだ名シーンに立ち会えることに浮かれていたのだろう。バカだ。
「(このままフェードアウトかぁ。そのうちフレームインすることすらないんだろうなぁ……。端役にしては超頑張ったし、もういいよねパトラッシュ)」
コイツ結構大丈夫じゃないのか?と思うかもしれないが、脂汗とか出まくりである。やせ我慢や現実逃避で何とかやっているだけなのだ。
そもそも、泣き言なら先ほど内心で喚き散らした。
「(ダメだ、痛くて眠れん……。あー、めっちゃつらたん。
気絶もできないとかサーヴァントの体強すぎじゃね?今は拷問でしかないけどなッ!
水蒸気爆発で怪我したときに使った、
「(この能力をコピーしたときは、レアな能力で喜んだものだが、いざ使ってみるとめちゃくちゃ体力を持ってかれて、驚いたなぁ。
《ヤベッ!包丁で指切っちまった!救急キットは……っと。あ、そういや回復系の能力持ってんじゃん!え~と、回復領域、回復領域。よし、それじゃあ、このロブスタグフゥッ!?》
……あのときは、肩に重石が乗ったと思ったな。あれが噂に聞く肩メロンってやつか……)」
万能の能力と言えばそうなのだが劣化が結構激しく、サーヴァントの体でなければ大半の能力は使い物にならないのが現実である。
「(やることないし暇潰しに実況でもやってみるか?)」
何故その思考に辿り着いたのか訳がわからない。
「(おおっと、青コーナー上条選手!まぁだ立ち上がるぅッ!(熱血アナウンサー))」
「((不屈の闘志を感じます(有識者))」
「(しかぁし!赤コーナーの一方通行選手はまだまだ余裕のようです!(熱血アナウンサー))」
「(えぇ、どうやらこれで決めるようですね(ダンディvoice))」
「(まあ、順当な結果と言えばそうじゃないですか?彼もよく頑張りましたよ(老害))」
やたらとノリノリなうえにバリエーションが豊富である。
粉塵爆発で発生した爆炎を背にして、一方通行が上条を老害と同じように誉め称えた。そして、ダンディvoiceが言った通りに、両手の凶器を上条に向けながら、この戦いを終わらすために襲い掛かった。
ドゴグシャァッッッ!!!!!
「(終わりましたね(老害))」
結果は単純であった。
一人は倒され、もう一人は地にしっかりと足を踏みしめていた。だが、この結末を誰が予測しただろうか。
身体中ボロボロであり、ところどころ出血までしている。それでも、必殺の攻撃を受けて尚まだ彼は立っていた。
そう、地面に叩きつけられたのは上条ではない。学園都市最強の一方通行だ!
「(な、なんとなんと、何ということでしょうか!!信じられません!あの必殺の攻撃を躱し、強烈な右ストレートを叩き付けましたッ!!(熱血アナウンサー))」
「(これはスゴイ!あの攻撃にカウンターを入れられる人がどれくらいいるのでしょうか(有識者))」
「(見事なダウンです(ダンディvoice))」
「(た、たまたまに決まっとるやんけ!足が汗で滑ってたまたま入ったラッキーパンチや。どんな障害があっても最後に勝利するっ!最後には絶対勝つから王者なんや(老害))」
「(この試合は屋外でのスペシャルマッチです。砂利のリングのため汗で滑ることはありません(熱血アナウンサー))」
その後も戦況は進み。
「(ラッシュ、ラッシュ、ラッッシュッッ!!!!怒濤のラッシュが決まっていくぅ!!(熱血アナウンサー))」
「(ジャブ、フック、ジャブ。……おおっ!右ストレート!全ての攻撃がミートしていて、気持ちがいいです。ここに来て調子が上がって来たように見えますが、彼はかなりのスロースターターなのですか?(有識者))」
「(はい。上条選手は試合の中で突破口を見つけるスタイルで、相手のスタイルを見極めてから反撃するのが、彼のお馴染みのパターンのようです。(熱血アナウンサー))」
「(なるほど、それは見ていて楽しいプレイヤーですね(有識者))」
「(彼の今後が楽しみです(ダンディvoice))」
「( ゚д゚)ポカーン(老害)」
ドゴッッッ!!!!
「(ここで、アッパーカットだあああ!!!!!体の芯を揺らす強烈な一撃が鮮やかに決まりました!!(熱血アナウンサー))」
「(いやー、これまた綺麗に入りました!(有識者))」
「(二度目のダウンです(ダンディvoice))」
「(これはもう立つことはできないかぁ!?(熱血アナウンサー))」
「(う、嘘や……!嘘やろチャンプッ!?ワイが憧れてたアンタはこんなところで敗けへんッ!!立つんや、立ってくれ!ジョー!!!!(老害))」
ブワッと大気が揺れた。
「……?」
訳が分からず眉を歪める上条。だが、変化はすぐに起きた。
「くかきけこかかきくけききこかきくここくけくきくきこきかかかーーーッッッッ!!!!」
大気が爆発したのだ。
一方通行を中心に突風が吹き荒れた。近くにあるものがまとめて吹き飛ばされる。
「(うおおおおおお!!!!!それでこそチャンプやッ!さっさとそのガキを───)
───と、流石に放っておく訳にはいかないね……!」
遊びを中断し、天野は一方通行が作り出した強風で、吹き飛ばされた後輩を
普通の
荒れ狂う強風の中、後輩の少年を見つけて何とか学ランの袖を掴んだ。
「『よっとこれで…………あら?』」
何故か空間移動ができない。白井黒子であるにも関わらずだ。
奇妙なことに疑問が浮かぶが、すぐに氷解する。
「(あ、
一瞬後に、天野は風力発電の風車に激突した。
◆裏話◆
くだらない妄想なんてしてるから、大事なことを忘れちゃってこの子は……。
実はドMなのでは?ってくらい自業自得です。
◆作者の戯れ言◆
一方通行ってオティヌスと似てますよね。
望みを叶えるために悪逆の限りを尽くしたり、周りとは隔絶した力があって、誰にも自分のことを理解されないし、理解されようとは思ってもいない。
だけど、心の中じゃ理解して側に居てくれる存在を欲してる。
それを浮き彫りにさせた上条さんってスゲェや。
こんな話書くつもりなかったのになぁ……。なんでこうなったんだろ?台風だからかな。