とある原石の神造人形(エルキドゥ)   作:海鮮茶漬け

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では27話です。



28.ティータイムその2

「あなたが第一位に釘を刺すために、無謀力全開でわざわざ残ったのは理解したわぁ。でも、共闘したとはいえ、よく御坂さぁんと無事に別れることができたわねぇ?」

 

 それな。

 マジで何事もなく済んで良かったわぁ。何度もびびって振り返って確認しちゃったし。

 結論、やっぱ上条さんってすげぇや。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 未だに信じられない……。

 あの学園都市第一位の一方通行(アクセラレータ)を本当に倒してしまった。

 その立役者ともいえるツンツン頭の少年が、傷だらけの状態でこちらを向く。

 

「はぁ、はぁ……っ、なんとかなったな。でも、俺だけの力じゃ勝つことはできなかった。これじゃあ実験は凍結されないよな……」

 

 上条は自らの力の無さを嘆く。上条の夢である、『何一つ失うことなくみんなで笑って帰る』に手を届かせることができなかったのだ。

 

「いや、そうでもないさ」

 

 そんな上条にそう言って声をかけたのは、彼の頼れる先輩である天野倶佐利だった。

 

「一方通行は学園都市の頂点だ。第三位では相手にならないほどの実力差がある。そこに無能力者(レベル0)妹達(シスターズ)大能力者(レベル4)が加わっても勝つことなんて万に一つもあり得ないよ。

 もし仮に負けるようなことがあれば、それは演算のほうが間違っていたことになる。学園都市の研究者や科学者ならこう考えるはずさ」

 

 確かに、巡洋艦と同等以上の戦力を持つ御坂美琴が、傷一つ与えられない相手に、能力を持たないただの人間が付いたところで、足手まといにしかならないのが現実のはずだ。

 そのお荷物を守ったことで更に、御坂美琴と一方通行の差はそこまで離れていなかったことの証明となる。

 つまり、樹形図の設計者(ツリーダイヤグラム)の演算は最初から間違っていたことに他ならないのだ。

 

「なら、一方通行は同じ超能力者(レベル5)の御坂に敗れたことになるから、偶然だって言い切られる可能性があるんじゃ……っ!」

 

「確かに、そういった強硬派も当然現れるだろうね」

 

「「ッ!」」

 

 上条と御坂は息を飲む。

 ここまでの大掛かりな計画ならば、今回産み出される利益のために莫大な出資をした組織もあるはずだ。

 あとに引けないヤツらは今回の出来事を誤差と切り捨てて、強引にでも実験を継続させようとするだろう。

 二人はその可能性が思い過ごしではないことが分かり、相手の執念深さに苦悩する。

 そんな二人を見た天野倶佐利は、得意気な笑みを浮かべて言った。

 

 

「だけど、実験を推し進めることは絶対にあり得ないんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とある研究施設にあるその一室。

 

 ダンッ!!と机に手が叩きつけられる。

 

「どういうことだ!!」

 

「何ですか?ミスター天井」

 

 問い詰めてきたのは怒りの形相で、鼻息を荒くしている天井亜雄であった。

 

「何故、絶対能力者進化(レベル6シフト)計画が凍結されようとしている!?」

 

 

 

 

「人の頭脳を遥かに超えた演算装置である樹形図の設計者(ツリーダイヤグラム)が、超電磁砲(レールガン)は128手で詰むと算出した。彼らにとってこれは神の啓示と等しい。

 だが、前提条件である最強の一方通行が、敗北するということが起きてしまった。彼らからすれば青天の霹靂だろうね。

 前提条件が覆った以上、彼らの計画は目的地にたどり着くようなものではなかったことの、証明になるのだから」

 

 

 

 

「演算が間違っていた以上この計画は既に破綻していまス。ならば、計画を凍結するのは道理だと思いまスが?」

 

「ただ一度負けたってだけだ!一方通行が絶対能力者(レベル6)に届く可能性があるのなら続けるべきだ!学園都市の研究者ならば当然のことだろう!?」

 

 彼は半狂乱になり怒鳴り散らすが、逆に私は冷めていった。確かに、絶対能力者(レベル6)は学園都市の到達目標とされており、研究者や科学者はその存在を生み出すためにいると言っても過言ではない。

 しかし、今回ばかりは勝手が違う。

 こんなことは理解していて当たり前なのですが、彼は重要なことを忘れているようですね。

 

 

 

 

「一方通行はこの街の技術の結晶とも呼べる存在だ。能力の凶悪性やスーパーコンピューター並の頭脳から、それは推して図るべきだろう。

 彼の能力は学園都市に莫大な利益を及ぼしている。そんな彼を結果が不確かなものに付き合わせるなんてあり得ないさ」

 

 

 

 

「このまま進めたとして、仮に一方通行が間違った方向に進んでしまったとしたら?あなたにその責任が取れまスか?」

 

「そ、それは……!」

 

「敵はそれこそ学園都市全てになるでしょう。逃げ出すのは不可能。地獄ですら生温い拷問の末に殺されるのが目に見えてまス。

 もし、あなたがやる気を出しても、そんな無謀なことに付き合う物好きな人は誰もいませんよ」

 

 天井亜雄は最後まで駄々をこねたが、賛同する者は誰も現れなかった。

 こうして、絶対能力者進化(レベル6シフト)計画は凍結したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 話を聞き終えた美琴は、ずっと気になっていたことを天野に問う。

 

「アンタ重傷だったのに何で傷が一切なくなってるのよ」

 

「以前コピーした治癒系統の能力を使ったんだ。この能力は僕しか使用できない欠点があるんだけどね」

 

 天野は体が無傷な理由を語る。だが、自分自身不可解なことがある。

 

「(……今は回復領域(ヒーリングドメイン)を使って治したけど、その前の撃たれた傷はなんで治ってるんだ?)」

 

 あの時点では体力も底をついていて、能力を使用できない状態だった。

 だが、再び目を覚ませば何故か上条達を庇う位置に立っており、その上全快した状態であったのだ。

 

「(まさか覚醒パティーンか!?そうなのか!?岩場にブッ刺さった大量の剣から自分の剣を見つける修行とかするのか!?)」

 

 まさか、近い未来「我が名を叫べ!我が名は──」「斬月ッ!」とか言うのだろうかと、一通りこれからの自分の未来に思いを馳せたあとに(なっている状況は割りと近い)、彼らに今からの自分の行動を伝える。

 

 

「三人は病院に早く向かうといい。僕は彼が目覚めるのを待つとするよ」

 

「「はあ!?」」

 

 二人が驚愕の声を上げる。

 それも当然だろう。今さっきまでそこに倒れているヤツと戦っていたのだ。目を覚ますと同時にこっちへ殺しに来てもおかしくはないのだ。

 

「彼とは幼馴染みとも言える関係でね。個人的に話してみたいと思ってたんだ」

 

「そいつは一万人もの人間を殺してきたのよ!?そんなヤツ相手に会話なんて通じるわけがないわ!」

 

「なら、なおさら彼と話さないとね」

 

 それでも彼の知り合いとして、そして一人の大人としてここに残らなくてはならない。

 

 

 

 

 

 

「(だって、ちゃんとお疲れ様って言うのは社会人として当たり前じゃん?)」

 

 思いのほか、理由が軽かった。

 

「(一応聞きに行くけど改心したの知ってるし、そこら辺は特に気にしてない。

 それより、アイツのこれからって結構大変だから、ちょっくらエールでも送ってやるとしましょうかねっ!

 くぅ~~!!よっ!気を使える良い女!才色兼備に温厚篤実、純情可憐のPerfect girl 天野倶佐利ちゃんでぇーす☆Yeahhhhhhhh!)」

 

 酔っ払っているのかお前。

 

 このアホは何気に即席の作戦が上手くいき、達成感が満ち溢れているのだ。追い詰められた状況からの逆転ホームランとなったことで、これ以上ないほどにテンションが爆上がりしていた。

 

「それにアンタには聞きたいことが山ほどあんのよ!」

 

「すまないけどそれはまた後日にしてもらえないかな。信用できないなら後輩か操祈に逢わせるように言えばいいさ。だから、ここは僕に任せて欲しい」

 

 天野は二人に頼み込む。

 「みさき……?」と知らない名前の人物を言われ困惑するが(食蜂操祈のことを名前で呼ぶ人物がいないために、美琴はピンと来ない)、美琴はなおも食い下がろうとした。

 しかし、それを上条が止める。

 

「先輩がここまで言うんだ。心配することはねぇよ。何か先輩に用事があるなら俺から伝えるから、早く御坂妹を病院に連れていこうぜ」

 

「…………はぁ、わかったわよ。アンタの顔に免じてここは退いてあげる。ていうか何なのアンタのその女に対する信用度の高さは?

 そもそも、怪我の具合じゃアンタのほうが酷いこと忘れてんじゃないでしょうね!?」

 

「あの、お姉様。そんなに動かれると激痛がミサカを襲いますと、ミサカは身体の状態を簡潔に報告します」

 

 やいのやいの言いながら三人は病院に、天野は一方通行の元に向かって歩いていく。

 

 天野は倒れている一方通行まで行くと、スッと膝を折りしゃがみこんだ。

 物憂げに目を細めて、少女は少年が目を覚ますまでずっとその顔を眺めていた。

 

 

 

 

 

 

「(一方通行がやられたところ写真撮りてーなぁー!良い顔してるわぁ。滞空回線さえなければ連写で撮りまくって、一方通行を目一杯からかってやるのに。

 …………あのビーカー野郎、ぶっ殺してやる……ッ!

 とはいえだ。一方通行を倒したのが上条で安心した。上条が殴って終わらなかったら、認識が変わってたかもしれなかったんだよな。

 一回上条を目指したから原作の一方通行があるわけだし、そこは変わらなくて良かった。

 それに、上条の一番大好きなあのセリフも聞けたし、うんうん、満足する最高な一日だったぜ!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 御坂妹を担ぐと言った上条を美琴が断り、御坂妹の肩を支えて歩いて行く。そこには譲ることはしてはいけないという使命感があった。……単純に怪我人だから自重しろ、という意味合いも含まれていたが。

 

 先程の戦場から離れた場所で腰を落ち着けて、救急車を待つ間に御坂が俺に話しかけてきた。

 

「……ねえ、あの女はどうして()()()を出さなかったのかしらね」

 

「急にどうしたんだよ?」

 

「ちょっとした疑問よ。あれなら、もっと楽に一方通行まで到達できたと思わない?」

 

 上条がひき肉に変えられそうなときに助けたあの攻撃は、一方通行の攻撃を全て薙ぎ払っていた。

 ならば、何故あのような遠回りのような真似をしたのか。

 御坂妹が自分の考えを答える。

 

「ミサカの気持ちを汲んで下さりあの作戦にしたのでは?と、ミサカは思い付いたことを言ってみます」

 

「あれは少しでも間違えば死人が出てたわ。わざわざ死ぬ可能性があるかもしれない作戦を実行するとは思えない」

 

「雰囲気も違ったから自己暗示の一種なんじゃねえのか?先輩は体を変化させる能力者なんだから、無理をすればできないことじゃないかもしれないしな」

 

「自己暗示か……」

 

 能力はその能力者の演算と自分だけの現実(パーソナルリアリティー)によって生み出される。

 つまり、自分だけの現実(パーソナルリアリティー)を変化させることは、能力の変化に繋がることになる。とはいえ、そんな軽々とできることではないのだが。

 だが、ここで重要なのはできるかできないかの討論ではない。このツンツン頭の馬鹿は適当に言っているだけだろうが、自分だけの現実(パーソナルリアリティー)を拡大させるには、自己暗示が効果的であることは確かだ。だが、そこに美琴は違和感を感じた。

 

 

「本当にただの自己暗示なのかしらね」

 

「どういうことだ?」

 

 上条が疑問の声を上げる。

 

「自己暗示ってあくまで自分だけの現実(パーソナルリアリティー)の拡大に使うものでしょ?原石だからってそれが体に現れるものなの?」

 

 そして、美琴は彼女の雰囲気と共に変わっていた部分を指摘する。

 

 

 

 

 

 

 

「……()()()()()()()()()()()()()()変わってたのよ」

 

 

 

 

 

 




※ちなみに削板軍覇は色が変わるどころか目が光ります。


◆戯れ言◆
エルキドゥは近々本格的に戦います。ですがその前に登場させておきたいヤツがいるので、ちょっとだけ話を挟みつつその話を展開していくつもりです。


◆追記◆
皆さん、ご存知だろうか。エルキドゥは緑色の目にもなれることを。

言っている意味がわからない人は、とあるの考察で検索、検索ぅ!
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