とある原石の神造人形(エルキドゥ) 作:海鮮茶漬け
なので早めの投稿です。
では、28話です。
優雅にティータイムを楽しむ二人の少女は、仲睦まじく会話を弾ませていた。
「それに、何もしなくてもまた会うのだから、誤解を解くのはその時でもいいだろう」
「卒業した常盤台OGであっても再び入ることが難しい学舎の園に、あなたがこうして奥深くまで来ているのは、
「僕が派閥を作る切っ掛けともなったものだからね」
「…………派閥を受け継いだ私には、結構受け入れ難い経緯なのよねぇあれって。お嬢様学校ならではと言えなくもないんだけど」
お淑やとも言える光景がそこには広がっていた。お嬢様然とした彼女達はそれこそ少女の憧れと言ってもいいだろう。和やかな雰囲気が流れるが、断ち切るように食蜂が切り出す。
「それで本題はなんなのかしらぁ?天野さんが学園都市の上層部に関わる危険な案件を、わざわざ私に伝えようとするはずないものねぇ」
「ふむ、君の目には僕がとても良い人間に映っているようだね」
「天野さぁんのお節介力は知ってますぅ。私のときのようなことを何度もしてることは、今までの付き合いからわかっていることだわぁ。どうせ何かしらの問題が起きても、一人で解決するのがあなたのやり方だものねぇ?」
拗ねたように唇を尖らす常盤台中学の女王。それは彼女がめったに見せない年相応な愛らしい姿だった。天野はその様子を見て微笑ましげに笑みを浮かべる。
天野はティーカップを置いたと同時に、声の調子を変えて話し出す。
「僕が撃たれたことは話したね」
「ええ、その傷を自分の能力で無事に治したこともねぇ」
ここは違うが嘘をつかなければならない。アレイスターに
おそらく、記憶がない間のことは
原作で後方のアックアの攻撃により、
情報は与えないに限る。
「僕は刺客に気付いていなかったわけではないんだ」
「それって、本当なのぉ?」
言外に負け惜しみじゃね?と目で言ってくる食蜂に、さらりと天野は答える。
「後ろから気配を感じたからね」
「気配なんてものを言われても、あなたの正気力を疑うんだゾ☆」
「軍覇もこれぐらいはできるよ」
「……原石って獣か何かなのかしらぁ?」
原石とは天然物の能力者のことである。
周囲の環境が学園都市の開発と偶発的に一致し、能力を発現した者達のことだ。つまり、自然によって作り出された能力者のため、人工で発現する能力者達よりも、そういった感覚が鋭いのかもしれない。
「でもそれってぇ、わざと撃たれたってことぉ?」
「いや、撃たれる気はなかったよ。撃つだなんて思ってもいなかったからね」
「それはどうして?」
「僕が原石だからだよ」
「?…………ああ、なるほど」
一瞬首を傾げたのはおそらく付き合いの長さから来るものだろう。俺と出会っていなければ、『原石』の立ち位置をみさきちなら正確に理解していたはずだ。
「原石は世界に50人程度しかいない稀少な存在だ。僕は今まで様々な施設に協力すると共に、手を出されないように振る舞ってきた。
例えば、勝手に僕で実験をしようとすれば、組織同士で利権を巡る抗争へと発展するように仕組んだりね」
世界最大の原石、削板軍覇がいる以上はあくまで俺はスペア扱いにされる。すると、珍しい原石を使って解剖やら実験をしようとする、科学者や研究者は必ず出てくる。
そのため、削板軍覇とは違うタイプの原石だということのアピールや、能力の多様性を発揮してそれぞれの研究施設での旨みを見せ、膠着状態を作り出して今の平穏な日常を確保しているのだ。
「その僕に声もかけずにいきなり銃撃をするとは、流石に思わなくてね。立ち振舞いはプロとはとても言えない杜撰なものだったし、そのうえ一方通行の実験中だったこともあって予想の範囲外だよ」
原石だからなのか何故か気配という曖昧なものを、明確に察することができる。
最初は戸惑ったものだ。まあ、慣れたが。人間は順応していくものだということを知った。
この気配察知はマップ上に敵の位置がわかるゲームの仕様に近い。これも、この世界が本物に見えない原因の一つだろう。
「そして、話はここからだ。さて、僕に刺客を差し向けたのは誰かな?」
天野が食蜂に問う。
「そうねぇ、さっき言ってた原石の天野さんを狙っている人達じゃない?」
「いや、彼らは独占させないためお互いに監視をしているんだ。それをあんな腕の人間が越えられるとは思えない」
「……刺客を送り出したのはもっと上の人間?」
「おそらくね」
食蜂は天野の相手が学園都市の中でも、相当深いところまで食い込んでいることを理解した。とはいえ、いまさら降りる気は全くないが。
「というか、どうしてわざわざそんな人を送り込んだの?それほどの人間なら暗部のプロを使わないかしらぁ?」
「暗部はそんな便利なものではないよ。暗部は基本的にお金で動くが依頼者は確実に名前が残る。権力があればその履歴を抹消できるけど、
「とある人間?」
「この学園都市の長、統括理事長アレイスター=クロウリーさ」
「ッ!?」
まさか、ここでその名前が出るとは思わなかった。学園都市を統治する存在が出る以上は、これからの話は波乱を呼び起こすものになる。
「つまり、その人物は僕を使って学園都市に害することをしようとしているんだ。僕の見立てではあくまでそれは結果的にそうなるだけで、本当の目的は別にあるだろうけどね」
下っ端のために圧力や情報操作で場を整えたのだろう。あれは、元々威嚇目的だったのだろうが、何の偶然かモブキャラが思わぬ成果を上げてしまったようだ。
「言ってしまえばあれは、僕に向けた『手を出すな』というメッセージだったんだろうね。僕の思考パターンを把握していて、実験場までの予測経路を割り出すことができる人物。
学園都市の上層部しか知らない
「さっきから、随分とその人物のことを理解しているような口振りねぇ?」
「僕と君は長い因縁のある相手だよ。こうして君に伝えたのは、きっと君にも近々何かをしてくるだろうと思ってね」
一方通行にとっての木原数多。
木原数多は一方通行の能力開発をする科学者だ。彼は一方通行の演算パターンから反射を逆算し、反射を利用して殴るという奇天烈な戦法、木原神拳を編み出した野原ひろしである。
つまり、能力者の演算パターンを把握することは、その人物の思考や行動パターンを予測でき、能力の欠陥も詳しく知ることができるということだ。
そして、天野倶佐利にも同じような存在がいる。
「その人物の名前は───」
暗い暗い闇のさらに深い闇の中に、老翁の姿をした妖怪がいた。
「ひょっ、ひょっ、ひょっ、ひょっ」
独特な笑い声を上げる年老いた科学者は、今回のことを振り返る。
「ふむふむ、
自らが押し進めていた計画が頓挫したにも関わらず、木原幻生に悲嘆の二文字はない。この妖怪には知的好奇心しかないのだ。
「慎重が過ぎたかな?餌に引っ掛かった無名の暗部の人間だとはいえ、まさか指定したタイミングよりも遥かに遅れた上に、よりにもよって実験場で仕掛けるとは思わなかったよ。
やはり、僕の部隊を動かせば良かったね。だけど、僕の動きを統括理事長に気づかれてしまえば、今進めていることを止められるかもしれないからねぇ。顔が広いというのも考えものだよ」
彼は科学者の中でも重鎮と呼ばれる地位を獲得していた。
その顔は知れ渡り、彼のことを知らない科学者はいないほどだ。
ならば、どんなに抹消しようとしても、パイプを作ろうと暗部の連中は必ず繋がりを残す。当然、彼らも漏れないようにはするだろうが、相手は学園都市の統括理事長。
その方法は不明だが何かしらの方法で、学園都市の細部に至るまで極秘の監視網があるらしい。ならば、痕跡を残すような真似は控えるべきだ。
残念だが今回は運が悪かった。この結果を呼び込んだ彼には既にこの世から消えてもらっているため、これ以上の不利益は起こらないだろう。
「なら、次はあれを試してみようかな。達成する可能性があるのは御坂君か、あるいは……───」
「──木原幻生。あのマッドサイエンティストさ」
これで本当に絶対能力者編は完結です。
次回から日常編を少しします。
そして、申し訳ありませんがアイツを出すには物語の都合上あまりにも早すぎたので、代わりに近々アイツを出すことにしました。
◆嘘告知◆
平凡な女子高生(レベル4の能力者にして原石)である天野倶佐利は、目が覚めたらあり得ないことに妖怪ジジイになっていた!?(能力でなることはいつでも可能)
現状を二人は理解し、幻生との入れ替わり生活が始まる(始まらない)
そんな中、数ヶ月後にハレー彗星(僧正)が落ちてくることを知ったオリ主は、果たしてどうやってその幻想を打ち砕くのか!
今、話題沸騰のボーイ(ジジイ)ミーツガール(元男)の青春物語を見届けろ!
海鮮茶漬けが送るB級映画の最高峰!
「敵の名は。」
敵がジジイしかいねぇ……。