2、3話で終わる予定。
30.淑女会合
常盤台中学は学園都市でも有数の、お嬢様学校だと有名なのは既にご存知だろう。
「ご機嫌よう、泡浮さん湾内さん」
「「ご機嫌よう、婚后様」」
「お二人とも今日の
「婚后様のドレスもとってもお似合いで素敵ですわ」
「わ、私は着なれない服装のため、少々気恥ずかしいですね……」
しかし、今日の学舎の園はいつもより一風変わっていた。
巨大なホールにシャンデリアを吊るし、クロスがかけられたテーブルを幾つか配置している、西洋のパーティーのような空間がひろがっている。
彼女達はドレスコードをしてそれぞれ動いているようだが、明らかにおかしな光景がそこにはあった。
彼女はこの光景を見て溜め息を吐く。
「本当に何なのよこの行事は……」
「突然どうしましたのお姉様?」
そう答えたのはルームメイトの後輩、白井黒子だ。彼女はその髪色に合わせたフリル多めのドレスを着て、彼女の隣に控えていた。
いや、今回ばかりは逆かもしれない。
「……はぁ、本当に私がこんなのを着ることを望んでる子がいるのかしらね?」
「何を仰るのですかお姉様!お姉様のそのようなお姿を拝見することができて、この白井黒子まさに感無量ですの!!」
「あーはいはい、ありがとね。アンタも似合ってるわよそのドレス」
手をヒラヒラしながら適当に答えた御坂美琴は、視線を下に向ける。いや、正確には自らの着ている服を。
「何で私がタキシードなんか着てんのよ……」
御坂美琴が着ていた服はタキシードだった。白のシャツに黒のタキシードがよく映えている。首元にあるブラックタイがいいアクセントになっている。ブラックタイを隠さないためか後ろで髪を一くくりにしていますの。そのお姿は凛々しいお姉様にさらに引き立てています。今夜はこのパーティーが終わり次第、このままお姉様と黒子だけの大人なディープな二次会が───」
「あるわけないでしょうがっ!この変態がああああ!!!!」
モノローグを有り余る熱量で奪い取った白井黒子に、御坂美琴の電撃による鉄槌が放たれる。
白井黒子はいつもの3割増しでテンションが上がっているようだが、周りの常盤台の生徒も美琴を見てキャーキャー言っているのだから、それも仕方がないのかもしれない。
何故こんな服を着ているのかというと参加しているこの行事が関係していた。
この行事では特別に常盤台の制服を着なくても良くなっている。その代わり参加する生徒の3分の1は男装をしなくてはならない。(この行事の開催経緯は後書きに記載)
だが、人気の高い女子生徒は全校生徒の要望により、服が事前に用意されることがある。
「はぁ……まあ、流石に王子様よりはマシかしらね」
試着室に行くと用意されていたのは黒のタキシードと、白をベースに裏地が鮮やかな青い着色がされたコートと、真っ白な白のズボンだった。意外と少女趣味の彼女は自分が着るのには抵抗があったのだ。
ちなみに用意されるだけで強制力はない。では何故着るのかといえば一重に御坂美琴の優しさだろう。
このイベントは常盤台中学で数年前に生まれた行事である。学年の隔たりや派閥などで、普段接触しない者同士が話し合える数少ない機会だ。
だが、この行事は参加自由という生徒の自主性に任したものだ。年上や他の派閥がいるなら参加しにくいと思うかもしれないが、なんと全校生徒の96%が参加するという大人気イベントとなっている。
理由は様々あるが一番の理由は仮装をするという非日常さが、そういったものを感じさせないことだろう。
「(私としては一刻も早くあの女をとっちめたいんだけど、あの子やあの馬鹿のお見舞いもあって、なかなかできなかったのよね)」
お見舞いにあの女も行ったようなのだが、狙い済ましたかのように行き違いが起きて、結局あの後に会うことはなかった。
これが終わったらあの少年に連れてくるように言うのだと、決心している美琴に甘ったるい声がかけられた。
「
「喧嘩売ってるならいい値で買うわよ?食蜂」
扉から派閥の人間を引き連れて来たのは、常盤台の女王食蜂操祈だ。彼女は美琴に自らの豊満な胸を強調して見せつけた。その女子中学生の平均を大幅に上回るバストを見せつけられ、御坂美琴の頬がつり上がると同時に頭から電気が迸る。
食蜂操祈は本当にどこかの国の女王が着るような、豪華なドレスにその身を包み会場に赴いていた。
不敵な笑顔を浮かべる食蜂操祈と御坂美琴は、余程絵になっていたのだろう。二人の険悪な空気とは違い周囲の生徒は黄色い声を上げている。
見目麗しい彼女達がコスプ──もとい、華麗な衣装を着ていればそうなるもの必然だった。
「まあ、御坂さんにお姫様は似合わないわよねぇ?王子様なんて待たずに自力でまとめて吹き飛ばすか、王子様を差し置いてお姫様を先に助け出すのがあなただものねぇ」
「アンタの場合は助けに来た王子様を能力で傀儡にして、都合の良い肉壁に変えるんでしょ」
そんなこんなでしばしの間言い合っていると、食蜂の派閥の一人が食蜂に時間がきたことを教える。
「そろそろビッグゲストのご登場よぉ」
「ビッグゲスト?常盤台に絶対外部の人間は入れないだろうから、まさか衣装着た先生とか?」
「残念ハズレだゾ☆今回ばかりは外部の人間を招いているのよぉ」
「はあ!?よりによってこのふざけたイベントに!?常盤台の先生達は何を考えているのよ……」
「大丈夫よぉ。来るのはここのOGだもの。それにあなたのいうふざけたイベントの考案者だから、そういった心配力は皆無よぉ」
「え!?この行事って生徒の考案なの!?……何かとんでもない人っぽいわね……」
「あら?ちょうど来たみたいよぉ。御坂さんが言う通りのとんでもない人がねぇ」
ガチャっと扉が開けられた先には、スポットライトが当てられている、足元まである
彼女はビシッ!とキレのある動きでポーズをとると、コートをはためかせて清々しい顔をしながら言い放った。
「やあ、スペシャルゲストの僕だよ」
「何やってんのアンタ!?」
~淑女会合の開催経緯~
「寮監少しいいかな?」
「天野、貴様はどれほど言っても敬語を使わないな。そろそろ、その体に刻み込んでやろうか」
「僕は原石だ。そこは仕方ないと諦めてくれ」
「それとこれとは明らかに話が別だ」ギリギリギリギリ
「それで話なんだけどね。この学校の生徒は男に免疫が無さすぎると思うんだ」プラーン
「ほう、まさか不純異性交遊がしたいなどと抜かすつもりか?それならば指導室にこのまま連行してやるが……」ギリギリ
「倫理観はあるつもりだよ。常盤台は男子禁制の学校だ。そのために、男と触れ合う機会が異常に少ない。この学校にいる間はそれで良いとしても、社会に出れば男と無関係ではいられないだろう?」プラーン
「なるほど、確かに一理ある。男を見るだけで悲鳴を上げているようでは、ままならぬことも確かにあるだろう。だが、生徒達は家も能力も頭脳も平均より優れた者ばかりだ。その彼女達を男に近づかせるのはリスクが高すぎる」ポーイ
「なら、男を呼ばなければいい」シュタ
「……何が言いたい?」
「ほら、居るじゃないか。女でありながら男の姿になれる特異な存在がね」
「なるほどな。貴様ならば保護者の理解を得やすいということか」
「そのイベントを学校主催でしてくれないかい?一部の女の子にそんなことをしていたら、人が思いの外多くなってしまってね」
「貴様の言いたいことはわかったが、私の一存では決められん。ひとまず上に掛け合ってみよう」
「日付は夏休みの終わり頃がいいかな。日程を合わせやすいだろうしね」
~一部抜粋~
◆作者の戯れ言◆
この話を読んで「はあ?何だよこのどうでもいい話。メインストーリーと関係ねぇじゃん」と考えてしまったそこのあなた!m9(´・д・`)ビシッ!!
…………あながち間違っていない。
いやでも、後々きっといくつの要素がメインと関係あるから!……多分ね。