とある原石の神造人形(エルキドゥ)   作:海鮮茶漬け

34 / 149
ヤベェ……。
メインストーリーよりも先に幕間終わらせないといかん。じゃないとずっとタイトルが3X.のままじゃん……(焦り)


にもかかわらず、関係ない幕間書きました。どうぞ


32.ある日の路地裏

 人助け。

 人助けは世間一般では当然良いこととされるものであり、善行と呼ばれるものである。善行は進んでやることは素晴らしいことだ。

 日本の諺にも「情けは人のためならず」という言葉があることからもこれは分かるだろう。ちなみに諺の意味は、行った善行が回り回って自分に返って来るという意味である。仏教、キリスト教といった様々な宗派であってもこれと同じことを述べている。

 つまり、徳を積むことが人として正しいことであるのは、世界共通の認識なわけだ。助けることに貴賤なし、と言ったところか。

 

 

 だが、善行だけではなく偽善というのがこの世界にはある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「テ、テメェ……次あったらただじゃおかねぇ!覚えてやがれ!!」

 

 そんなありきたりな捨てセリフを吐き捨てたのは、どこにでもいるチンピラA。そんな彼の顔面はボッコボコに腫れていた。まるで、誰かに殴られたようである。

 そんな顔をして逃げていく彼の後ろを、焦ったように付いていくのはチンピラB~H。彼らの顔もチンピラAと同様に、誰かに顔を殴られたかのように腫れ上がっていた。

 

 何故彼らがそんな姿で立ち去って行くのか。

 そんなもの決まっている。殴ったヤツがいるからだ。

 

「あ、ありがとうございました!」

 

 そんなふうに勢いよく頭を下げてくるのは、柵川中学の制服を着た女の子。

 彼女は言ってしまえばクラスの中心的なグループには所属していないが、クラスの可愛い女の子ランキングでかなり良い順位に入りそうな容姿をしていた。

 セミロングで礼儀正しそうな様子はチャーミングである。確かに、声をかけたくなる気持ちは分かる。だって可愛いもん。

 

 

 でもな、中学生だぞ?(困惑)

 

 

 何で学園都市のチンピラ共は中学生にナンパをするのか。もっと育ってるヤツに声をかけろよ。

 学園都市にはロリコンしかいないの?

 

 

 

 

 

 適当に街をぶらついていると、チンピラのお兄さん達に囲まれて、涙目になりながら路地裏に連れてかれていく女の子を発見したのだ。

 みっともなく嗤っていたチンピラ達を後ろから奇襲し、風紀員(ジャッジメント)警備員(アンチスキル)の動きを取り入れた体術でボコボコにしてやった。

 上条さんではないので説教なんてしないよ?悪・即・斬は基本です。

 

 そんな訳で感謝されてるのが今だ。というか、そんなに感謝されると逆に申し訳ないんだよなぁ。

 

 

 

「(だってそもそも人助けって、上条に会うときに良い印象持たれやすくするためにしていたし)」

 

 

 

 NPCをいちいち助けてるプレイヤーなんていないじゃん?そりゃあ、俺だって最初はちょっぴり正義感みたいなのはあったけど、毎日、毎日そんな場面に出くわしたら流石に慣れるわ(辟易)

 なのに、何故こんなことをしているのか。その理由の前に前提条件を提示しておこう。

 

 

 上条当麻は正義に生きている人間じゃなく、悲劇を見ていられない人間だ。

 

 

 一見、同じように見えるかもしれないが、上条は目の前の人間を救うことに全てをかけるため、そのあとのことまで気が回らないのだ。いや、回さないというべきか。

 あまりピンとこないかもしれないが、例を挙げるならオルソラ誘拐事件編だ。

 建宮達やインデックスに科学サイドである上条が、魔術サイドの問題に介入すれば、科学サイドと魔術サイドで戦争が起きると言われているにも関わらず、上条はオルソラを救出に乗り込んだ。

 

 これは結果的にオルソラを救うことができたが、その実、相当危険な橋を渡っていた事件である。

 

 例えば、上条が十字架のネックレスをステイルから受け取っていなかったら。

 例えば、オルソラがネックレスをかけて欲しいと上条に言わなかったら。

 

 ほぼ間違いなく戦争は起きていた。

 それこそ、オティヌスが上条に見せた地獄の一つに似た、『上条の身勝手な選択で多くの人間が死ぬ未来』へとなったことだろう。

 

 自分の心が向くままに人を助ける。それが上条当麻だ。

 

 もし、人道に反した行いをしたら説教喰らって殴られて和解して終わりだ。ぶっちゃけ、何をしても最後には許してくれるだろうし、上条ならどんな人格でも受け入れてくれるだろう。

 

 でも、それではダメなのだ。

 俺には野望がある。

 

 

 そう、とあるの名シーンに立ち会うという野望がな!(ここは曲げない)

 

 

 そのためには、上条のすぐそばにいなければならない。

 禁書の主人公であり幻想殺し(イマジンブレイカー)を宿している上条は、名シーンを生み出すとんでもない大事件に関わるからだ。

 体がサーヴァントで特別な存在だからメインキャラになれる?そんな馬鹿な話があるわけないだろう。

 

 なら、何で姫神秋沙は影が薄いんだよ!!(慟哭)

 

 吸血殺し(ディープブラッド)なんてとんでもない存在なのに、メインどころかサブですら怪しいポジションなんだぜあの子。2回目の見せ場が大覇星祭でオリアナの攻撃による、大出血という可哀想過ぎるキャラなのだ。

 つまりだ、ミステリアスってだけじゃこの世界では生き残れない。(キャスティング的に)

 そのうち、ちょい役で出されて「あのキャラがストーリーの根幹に関わるキーパーソンだった!?」みたいな感じで、第二のヒューズ風斬化待ったなしよ。

 知ってる知ってる。どうせ俺が酷い目に遭わされて「くふふふ。これで計画(プラン)の大幅な短縮に繋がるだろう……」とか、アレイスターにビーカー越しに言われるに決まってるんだ!

 そんな未来はごめん被るので、アレイスターの計画(プラン)のメインである上条と、親密な関係になることが目標にして生き残ることの最低条件。上条の日常で欠かせない存在となれば、襲われる可能性は格段に低くなるはずなのだ。

 身近な人間が死ぬとか、明らかに上条の成長を阻害する真似はしないだろうし。

 

 そんなわけで俺は考えた。上条の中で替えの利かない存在とは何か?

 

 守るべき存在?どれだけ居ると思ってるんだバカ。

 敵対し殴り合って生まれた友人?どれだけ居ると思ってるんだバカ。

 上条と恋人関係?あれだけの数のヒロインができないことができるわけないだろ。というか、俺の精神男だからそれないわー(笑)

 

 それから結構長い間考えまくった。あの数のヒロインと被らないようにするのはなかなかキツかったわマジで。

 まあ、そんな経緯で思い付いたのが先輩ポジションよ。

 先輩ポジションには雲川芹亜がいるが、逆に言ってしまえばコイツだけだ。頼りにされるのもその頭脳やコネを活かしたものだから、その他を俺が全部カバーすれば割と楽勝だろうと考えた(無慈悲)

 違いを出すためにあっちがクレバー路線なら、こっちは善人路線。

 これにも理由があって、上条は新訳で神裂に「ある意味、俺なんかよりお前の方がヒーローに向いてる!敵味方関係なく救える現実的な力を持ってるんだから!」などと言ったりしていたため、その理想を俺が上条の身近で叶えちまおうぜ!というわけだ。

 言ってしまえば、雲川と神裂の良いとこ取りだな。

 頭脳派と行動派で住み分けができて被りもなし。ここしかないって思ったね。

 そんなわけで、上条と神裂を見習って人助けの毎日がスタートした。

 

 そこからはもう作業みたいなもんよ。

 サーヴァントのスペックで人間相手に後れをとることなんてまずないし、たまに風紀員や警備員(こっちは能力による変装や偶然を装って)の手伝いしてたから、彼らの捕縛術を見て盗む機会が何度かあったんだよね。

 そのおかげで能力無しの喧嘩でも負けることなんてなくなった。

 警備員の体術はアレンジを加えると、肉弾戦のエキスパートである土御門ですら圧倒することができる代物になることは、原作が証明してるので覚えておいて損はないのだ。

 

 

 

 

 

 そんな理由で助けたので別に可哀想だからというわけでは全くない。

 どっちかというと嗤ってるチンピラに腹を立てたからぶっ飛ばした、という理由のほうが遥かに大きい。

 ゲームとかで調子乗ってるキャラクターとかぶっ飛ばしたくなるじゃん?ああいう感じ。

 

 

 

 オリ主はシミュレーテッドリアリティーを患っている。だがその認識はあながち間違いでもない。なぜなら、オリ主にとってこの世界は本当に創作物であり、有機物、無機物に関わらず全て作り物でしかないのだ。

 そんなNPCとしか認識できない世界で彼は生きている。

 

 

 

 

 

 

 

 

「(名乗るほどの者じゃないんで、とかいって去った方が遥かに楽なんだけど、タイミング逃したなこりゃ……)」

 

 本当にそんな感謝されることでもないんだけどな。気分としては缶蹴りの感じだし。(缶はチンピラ′s)

 

「(ほとんど暇潰し感覚だから本当に気にしなくてもいいんだよなぁ……)」

 

 気まずさにそろそろ帰っちまおうかと思っていると、女の子がポツポツと話し出す。

 

「私、あんなことされるの初めてで……ぐすっ……すごく怖くて、何もできなくて……。

 周りの人達を見てもいないかのように目線をずらされたのが、すごく悲しくて……ひぐっ……そんな中であなたが助けに来てくれて……本当のヒーローみたいで……うぅっ」

 

 そう言った彼女は涙を流して震えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 ……………………はあ。

 

 

「良かったらこのあとお茶しないかい?」

 

「え?」

 

「割引券がちょうどあってね。誰と行こうか迷ってたんだ。そこの紅茶はとても美味しくて、何かの雑誌でも取り上げられていたらしいよ」

 

 女の子はいきなりの展開に混乱している。

 やってることがナンパのそれである。弱ってるところに言っているためこっちのほうが余程悪質かもしれない。

 俺だってこんな一文の得にもならないことをしたいわけじゃないんだぞ?別に助ける義理はないし、というか助けた後だし。上条には結構好印象を持たれているはずだろうから、今さらこんなことをする必要性は全くないしね。

 

 けどまぁ、習慣というのはなかなか消えないんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「報酬としてお姉さんとデートして欲しいんだ」

 

 

 はあ、人助けって本当にめんどい。




天野の豆知識
紅茶の中にはテアニンという、リラックス効果のある成分が入っています。

とある喫茶店
「ふむ、結構な長居になってしまったね。そろそろ帰ろうか」

「は、はい!今日はありがとうございました!」

「いや、構わないよ。報酬も貰ったからね」

「(なんて優しいんだろ。私に気を使わせないようにしたんだ。すごいなぁ……)あっ!今日はありがとうございました!とても気持ちが軽くなりました!」

「気にすることはないよ。じゃあ、行こうか」

「あ、お金……」

「さっきトイレに行くときに一緒に払っておいたから気にしなくていい。もう、日も遅いから送っていこうか」

「い、いや、そんな何から何までお世話になるには……」

「これは僕のワガママだよ。君の身に何かあると考えるだけで安心して眠れないんだ。僕のためにもう少しデートをしてくれると嬉しいな」(^_-)≡★

「(あ、好き)」トゥンク

 とかがあったとかなかったとか。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。