とある原石の神造人形(エルキドゥ)   作:海鮮茶漬け

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幕間が進まなかったので、次の章にいきます。ごめんなさい。
おそらく、今年ラストの投稿かな?

季節感は全く無いもよう。


御使堕し編
33.サービス回


「(なんだここ……?)」

 

 閉じていた目蓋を開くとその空間を漂っていた。

 この空間はいつもの見慣れたものではなく、空もなければ地面もありはしない。この空間に類似したものをオリ主の知識から導き出すと宇宙だろうか。

 だがしかし、

 

「(宇宙にオーロラがなんであるんだ?……それに、()()()()()()()()()()?)」

 

 幾億の星が瞬くこの宇宙空間に人間が居て、とても無事で済むとは思えない。

 もっと言えば何故オーロラが宇宙空間にあるのか意味がわからない。そして、どんなに見渡しても地球が見当たらないのだ。

 ここはなんなのか。その理由は既に、オリ主には見当はついている。そして、次の光景を見て確信をした。

 

 白い毛並みに余計な脂肪が一切ない、筋肉質なフォルムをして風を切りながら走る有名な草食動物。

 宇宙空間でありながらザッ!ザッ!と鋭い足音と共に、(たてがみ)を振るわせて近寄ってきた。

 

「ブルルッ!」

 

「…………なんでユニコーン?俺って夢で見るくらいにメルヘン野郎だっけ?」

 

 何故かその馬の額には角が生えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私こと上条当麻はただいま学園都市の外の海辺にやって来ている。

 何故こんなところに来ているのかというと、話せば長くなるのだが、学園都市最強の超能力者(レベル5)と殴り合いの末に、なんとか勝利する事ができたものの、しかしそのおかげであの無能力者(レベル0)を倒せば学園都市最強になれる、だとかいう根も葉もない噂が広まってしまい、昼夜問わずに街中のチンピラ達が、俺のもとにやって来るようになってしまったのだ。

 そのため、上条当麻の夏休みは数多のチンピラを相手取る、80年代の不良漫画さながらのバイオレンスな生活が始まったのだった。

 そんな揉め事ばかり起こす上条当麻に、学園都市のお偉いさん達が「君、バカすぎるから少し離れていなさい」という怒りのメッセージと共に、学園都市の外に外出できるよう、いろいろ取り計らってくれたらしい。

 情報操作やらなんやらを済ませるには、俺は邪魔でしかないため、とりあえずチンピラ達と会わないように、学園都市の外へと追放したようだ。

 俺としても平和になるのなら全然構わないのだが、ではどこに行くのかというと、学園都市の学生が帰る場所は実家なのだ。

 

 上条当麻は記憶をなくしている。 

 そのため、親の顔など知るはずもなく、上条当麻にとっては安心できる里帰りではない。

 上条当麻の歴史を全く知らぬまま会うなど、いささか無謀ではあるが、にっちもさっちもいかない状況であるため、腹を括るしかないのが現状だ。

 だが、今回は不幸ばかりではないらしい。

 

「わーい!くさり!とっても海がキレイなんだよ!」

 

「ふふっ、そうだね」

 

 海辺で戯れる少女達。

 インデックスは海で遊ぶのが楽しいのか、ピンク色のワンピース水着を着てはしゃいでいた。

 微笑ましい風景ではあるのだが、幼児体型すぎて目の保養には全くならない。上条さんの好みのタイプは寮の管理人のお姉さんなのであって、断じて銀髪西洋ロリではないのだ。

 

「おや?遊ばないのかい?後輩」

 

 そう言って振り向いた先輩は、いつもと雰囲気が違っていた。 

 白いビキニに大きめの麦わら帽子。

 珍しくもない組み合わせだが、先輩がするとまるで絵画のように神秘的だ。

 スラッと伸びた手足にキレイなくびれ(インデックスとは違って)。慎ましいながらもしっかりと主張する胸(インデックスには無い)。普通の水着を着ているだけなのに、男子高校生の上条当麻はそんな先輩に対して、年上の色っぽさを感じていたのだ(インデックスには微塵も感じ取れない」

 

 

 

「………………とうま。それが最期の遺言でいいんだね?」

 

「……はい?」

 

 ガキンッ、ガキンッと、どこかの拘束具のように歯を鳴らしたインデックスが、ハイライトを失った瞳で俺を見下ろしていた。

 

「後輩。気付いていないかも知れないけど、さっきことは全部声に出ていたよ。()の中の言葉もね」

 

 尊敬する先輩の言葉に上条の頭が一瞬空白になる。

 

「…………まさか先輩に全部聞かれちまったのか!?思春期真っ盛りの男子高校生の妄想を、よりにもよって本人に聞かれちまうなんて、俺はこれからどうやってこれからの高校生活を過ごしtぎゃあああああああ!!」

 

 その妄想で虚仮にされた、もう一人の本人であるインデックスは、ごめんなさいが言えないツンツン頭の馬鹿に制裁を下した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(ハっハっハっ!どうよ、このパーフェクトコーディネートは!)」

 

 オリ主結構ノリノリである。

 

「(どうせあのブレインならば、上条の前だからって頑張って黒のビキニなんかを着るだろうが、それは悪手でしかないのだよ)」

 

 上条当麻は思春期真っ盛りの男子高校生だ。確かにそんな上条にはおっぱいドーン!は確かに効果的ではある。

 ……だが、それではいつかなってしまうのだ。

 

 

 そう、イロモノ枠になッ!(迫真)

 

 

 神裂火織しかり、五和しかり、オルソラ=アクィナスしかり、巨乳キャラはイロモノ枠になるのだと宿命付けられているのだ。

 

「(ほっほっほっ、顔を赤くしている上条を見て、ニヤついている姿が目に浮かぶようじゃ。

 だが、雲川芹亜。お主は所詮その程度の女よ)」

 

 夏の日差しのせいか、オリ主は悪徳大名のような口調になっていた。

 

 男女問わず憧れの的となる完璧な凹凸のスタイル。統括理事会のブレインに任命されるほどの類い稀なる頭脳に、超能力者(レベル5)心理掌握(メンタルアウト)に張り合える人心掌握術。

 これほどのスペックならば男を手玉に取るなど、赤子の手をひねるようにこなすだろう。

 

 だがしかし、上条当麻を除くという注意書きが入る。

 

「(上条をドキドキさせつつ、イロモノ枠に入らないようにするには清楚さ、そして滲み出る色気。この二つよ。

 いつの時代も白ビキニは男受けがいいうえに、ピンクなどと違ってあざとさも割りと感じにくい。

 前世の男目線と今世の女目線、さらに原作知識のメタ視点が加わり、完全無欠のコーディネートをすることができるのだ!

 その気になればヒロインの座も楽勝よぉ。ふはははは!

 同じ高校生としてではなく、女として誘惑したのがお主の敗因だぁ!

 そもそも性欲でどうこうできるなら、何人かは既に手込めになってるっての!バーカ!バーカ!)」

 

 勝手に一人で盛り上がっているが、小馬鹿にしている雲川芹亜は、上条に水着を着て誘惑したことなど一度もない。

 貧乏学生の上条当麻にプールに行く発想はないし、雲川芹亜は基本的に裏方の引きこもりである。出会うシチュエーションはほぼ皆無なのだ。

 

 というか、どちらかというと誘惑しようとしてるのはお前なのでは?

 

 特にそういう対象として見ていないにも関わらず、思わせ振りな行動は女目線から見てどうなのだろうか。この17年で何を学んできたのか、小一時間程話を聞きたいものである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何故この場にオリ主がいるのか。それには当然理由がある。

 原作では上条一人で一方通行(アクセラレーター)を倒した上条ではあるが、この世界では上条、美琴、御坂妹、さらに天野倶佐利の四人で倒すこととなった。

 御坂妹は学園都市の最高機密のため話題に上がることすらなかったが、他の三人は別である。

 美琴は常盤台の生徒のため学舎の園からでなければ、話を在学生に幾度も聞かされることはあっても、街中で襲われることはなかった。

 

 しかし、上条と天野はそうではない。

 街中で襲われることはザラにあったのだ。天野は争い事に上条同様馴れているため、適当に叩きのめしたり逃げたりしていたのだが、数が数のため鬱陶しく内心では思っていた。

 だが、そんな最中おかしなことが起きていた。よくよく調べると上条のほうが件数が遥かに多かったのだ。

 「無能力者(レベル0)がとどめを刺した」や、「一人で一方通行をタコ殴りにした」など、微妙に合っている噂が出ていたためだ。

 無能力者(レベル0)であるため相手としてやり易いのか、あるいは天野に媚びを売ろうとした研究施設が、勝手に流した噂なのかは預かり知らないが、上条が集中的に狙われ始めたのだ。

 それを優等生である天野が放っておけるわけもなく、上条を助けに何度もしていると、何故かお偉いさん方に恋人同士だと勘違いされた。

 

 なんだコイツら恋愛脳か?と思うかもしれないが、四六時中隣で歩き(警護のため)買い物を同伴する仲であり(警護+セール品を一緒に買うため)そのまま男子の家に上がり込む(警護+食事を振る舞うため)ことを知ればそういう結論にもなるだろう。

 

 ()の中でさえ既に怪しいものである。

 

 そして、天野の親は海外を転々としており、日本に家はない。そのため海外に行くしかないのだが、海外の組織に連れ拐われる可能性もあるため、なるべく日本本土が望ましい。

 そう言った経緯で彼氏(仮)に同行させることにしたのだった。

 

 それから、インデックスが帽子と勘違いした海月を、上条の顔面に押し付けるなどお決まりの展開が起きつつ、泊まることになっていた旅館『わだつみ』に移動することとなった。

 

 

 

 

 

 着いた旅館の一室は田舎の旅館のイメージ通り質素なものであったが、案外快適に過ごせるものであった。

 部屋自体には文句はない。だが、上条当麻にとって見過ごせないことがあった。

 

「いやいや、先輩が俺と一緒の部屋なのはマズすぎだろ!?」

 

 愕然とする上条。もちろん、お世話になっている先輩と同じ部屋なのが嫌なのではない。だが、持ち前の不幸で先輩に迷惑をかける可能性や、そのあとのインデックスによる頭部への噛みつきを考えると、喜んでばかりもいられないのだ。

 

「とうま。いきなりどうしたの?私は倶佐利とお泊まりできて嬉しいかも!」

 

 このお子ちゃまシスターは能天気に言っているが、割りとマズい状況である。年頃の若い男女が一つ屋根の下で寝るなど、先輩のご両親に会うと同時に、キン肉バスターをくらっても文句は言えないのだ。

 そんな上条を気にしてか天野は声をかけた。

 

「構わないさ。僕は気にしないよ」

 

 微笑みと共にかけられた言葉で、男として見られていないことを実感し、落ち込む上条。

 キレイな女の子に「お前なんて全く意識してねぇから」と言われたら、男なら誰でもそうなるだろう。

 

「僕は君のことを誰よりも信頼しているからね」

 

 とはいえ、キレイな女の子に信頼していると言われれば、男なら誰でもテンションが上がるものだ。

 

「(……本当に単純だなぁ。気持ちは分かるけど)」

 

 もしかしたら、雲川芹亜と同じくらい人心掌握術を持っているのでは?と思うくらいに、男心を上手く転がしているオリ主である。

 いつもの微笑みを浮かべながらも、どこかウキウキしながら先輩は俺達に言った。

 

「さあ、そろそろ温泉に行こうか」

 

 

 

 

 

 

 

 後半に続く。

 

 

 




まさかの後編。でも、結構増えたからしゃーない。

メリークリスマース!
皆さん幸せですか?絶望ですか?だけど、大丈夫!ハーメルンにはサンタ(作者)が多くいるから、プレゼント(投稿)には困らないんだよ!
…………エタった人も書いてくれないかなぁ。

サンタが来る人も来ない人にも、海鮮茶漬けからのプレゼント(投稿)おあがりよ!

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