とある原石の神造人形(エルキドゥ) 作:海鮮茶漬け
ハーメルン引退かと思いましたが、ログインできたので書きます。
後半少し付け足しました。
目が覚めた上条当麻は旅館にやってくる両親を、インデックスよりも先に会うために一人で待っていた。
「インデックスが両親のことを聞いてきても、何にも答えられないからな……」
そのために、いち早く両親と会っておいて、少しでも記憶喪失になる前の上条当麻を聞き出す必要があるのだ。
もちろん、両親に会うことの不安はあるが、記憶喪失は実際に起きているため、先送りにしても解決する問題じゃない。なら、状況を打開するためにするべきことをするしかないのだ。
そうしていると、無精髭を生やした中年のおっさんと目が合った。
「当麻!元気だったかっ!」
一瞬記憶の無い人物に声をかけられて呆然とするが、すぐに理解して話を合わせる。
「……あ、ああ、元気だったよ。父さん。(この人が俺の父親……)」
初めて父親の顔を見てこの人が自分の父親なのかと、上条は漠然と感じていた。
「そうか良かった。ああ、これはな、海外で見つけた厄除けのお土産だ。ほら」
「え?お、おう(海外に赴任してるらしいし、こういうお土産が毎回の恒例なのか?)」
海外の如何にも長年この地で親しまれている民芸品です、とでもいいたげなお土産を父親から渡された。学園都市の住人でもないのだから、お守りなんかのオカルトは信じていたとしても、あながちおかしいわけでもないのだろう。
そんなことを考えていると元気な声が後ろから飛んできた。
「お兄ちゃぁーーん!!」
「うおっ!?」
誰かが俺の背中にタックルを仕掛けてきやがった!
土御門や青髪ピアスと常日頃から闘っていなければ、吹き飛ばされていただろう。やはり、持つべきものはやっぱり悪友なのだろうか…………いや、やっぱり違うわ。
メイド姿が似合うのは寮の管理人のお姉さん一択なのだ。
悲しいかな、やれ義妹だネコミミロリっ娘だのと、アブノーマルな人種とは残念ながら上条さんは解りあえないのである。
それにしても、この猫撫で声を聞いて背筋が震えるのはなぜだろうか?
恐怖というよりも饒舌し難い不気味悪さ。例えるなら、強面のオッサンの趣味が、フリルだけで質量の半分以上の重さを占める、女の子向けの人形集めだと知ったようなおぞましさだろうか。
「久しぶりだね!おにーちゃん!」
「って、お前ビリビリか!?こんなところで何やってんだッ!?」
俺にお兄ちゃんなどと宣いながら、抱き付いてきているのは言わずと知れたビリビリ中学生。いくらなんでもご近所さんじゃないだろうし、何でこんな辺鄙なところに来ているのかさっぱり分からない。
「全く何を言っているんだ。ほら、母さんも来たぞ」
「えっ?」
そう言われた方向を見ると女性がこっちに歩いてきていた。麦わら帽子でも隠せないまるで絹のような長い銀髪。ゆったりとした服からは物腰の柔らかさが垣間見得る。
小柄な体躯はまるで少女のよう。上条の知識から似ている人物を挙げるなら、そうまるで
「あらあら、当麻さん久しぶりね」
インデックスと瓜二つであった───
「なんだそりゃああああ!!!!」
上条当麻ついに爆発。
「いくらなんでも若すぎるだろうがッ!お前が母親は無理があるわ!明らかに俺のほうが年上にしか見えねえよ!!」
「あらあら、当麻さん的にはお母さん歳の割りに若々しいのかしら」
「コラ、当麻。母さんが嬉しがってるじゃないか」
そんなマイペースな二人に「うがああああ!!」と上条は吠えた。何故か知らんが、久しぶりに会うはずの息子相手にどうやらドッキリでも仕掛けているらしい。
「というか、「おにーちゃんっ!」なんてお前のキャラじゃねえだろ!年がら年中喧嘩腰の反抗期みたいに、ツンツンしてんのがお前だろうが!!」
「うん?何言ってるのおにーちゃん。もしかして、頭でもぶつけた?いつも以上に言ってることが分からないよ?おにーちゃんはおにーちゃんじゃん。ええっと、……ほら!」
そう言って見せてきたのは俺と女の子のツーショットだった。この黒髪のベリーショートの子が乙姫という俺の従妹らしいのだが。
「(なんだ?まるで、外見だけが入れ替わっているような……。いや、流石にそんな馬鹿げた話なんてあるわけないか)」
なんてことを考えていたせいなのかどうなのか。どうやら世界は俺の知らないところで、ガラリと変わってしまったらしい。
旅館に戻れば何故か御坂妹が女将をやっていたり、さらに、あのステイルが従業員として働いていたり、果てにはテレビを点けると白井が大統領に就任したりと、意味不明なこと目白押しだ。
大したことではないが、青髪の大男になったインデックス締め上げたりしたせいで、もし姿が戻ったら頭部を噛み砕かれるだろうことに、あとから愕然としたりもした。
それにしても、
「先輩はどこに居るんだ?」
そう、いつも頼りになるあの先輩が全く見あたらないのだ。
先輩のことだから両親と久しぶりに会う(記憶喪失でなければ)俺のために、気を使って一人にしてくれたのかと思っていたのだが、それにしてはかなり時間が経ちすぎている。
「もしかして、先輩もこの異常な世界に気付いたのか?」
この非常事態に気付いた先輩は一人で調べ回っているのかもしれない。先輩は品があって落ち着いた女の子ではあるのだが、いざというときは行動派で積極的に動くタイプでもある。
そのおかげで面倒事にかなり巻き込まれるらしいが、持ち前の頭脳と能力であっさりと切り抜けて、いろいろな人に感謝されているらしい。助けられた女の子の中には先輩に恋心を抱く子もいるようだ。
ある時「もし、先輩が男に生まれていたらハーレムとかできそうだなあ……」と言ってしまい、初めて見た先輩のジト目をくらいながら、頬をグイッと引っ張られた。
先輩はそんなつもりで助けたわけじゃないだろうし、今思うとあれは流石に失礼だった。だが、そんな不出来な後輩を今まで見捨てずにくれる先輩なら、知恵を貸してくれると思ったのだがどこを探しても一向に見つからない。
「うーん、てっきり書き置きの一つぐらいあると思ってたんだけどな」
以前の御坂の電撃で携帯が故障していたせいで、先輩に電話をかけることができない。先輩のことだから大丈夫だとは思うが、女の子がこの非常事態に一人っきりというのは不味くないだろうが。
「もしかしたら、俺と同じでパニックになっていることだって……!」
こんな意味不明な状況にいきなり放り出されれば、戸惑うのが普通だ。今頃、一人で涙を流しているかもしれない。
…………いや、ないか。
どっちかというと、身近な人の姿でその人ではあり得ないセリフを言う事に、心の底から楽しみそうだ。
先輩にはそう言ったお茶目な(マイルド表現)ところがある。それさえなければ完璧美少女なのだが、仮に先輩がそういった人であったのなら、ここまで仲良くなれていなかったかもしれない。
気にはなるがまだ朝であるし、あの先輩がなんのヒントも残さず、何かしらの事件に巻き込まれたことも考えにくい。ここは動かず先輩の帰りを待つことにする。
「うん?ちょっと待て。先輩だって他の人の姿に変わってる可能性もあるんじゃないか?」
普通に考えればそうなって当然だ。俺の右手には
何故こんなことを最初に思い付かないのか、天野倶佐利に対する絶対的な信頼?確かにそれもある。だが、一番の理由はそれではない。それは───
「……先輩がゴリゴリのマッチョになっているかもしれないのか!?」
尊敬する綺麗な女の子がそんなおぞましい姿に変わるのを、想像したくなかったのだ。つまりは現実逃避である。
上条の中で天野倶佐利という女の子は綺麗な女の子である。それは清潔感であるし、顔立ちでもあるし、立ち姿や動きの所作一つ一つとっても綺麗という他ない。
愚痴や悪口は当然のこと、一度たりとも苛立ちや不満というマイナスな感情を表に出したことがないのだ。それは、戦いのときもそうであり、一度たりともその姿は品を失うことはなかった。
そんな彼女は上条にとってまさに、理想の綺麗な女の子なのだ。……いささか理想像過ぎるとも言えなくはないのだが。
そんなにっちもさっちもいかない中で、砂浜でインデックス相手にイチャコラしようとする親父のヤバさを全力で防いでいると、「上やーーーーーん!!!!」という大声を出しながらズザザザァッ!と目の前の砂浜に突撃してくる奴が現れた。
「ヤバいぜよ上やん!ねーちんがこっちにやってくるにゃー!」
「はあ!?土御門、何でお前がここにいるんだ!?」
「ええいっ!そんなことに気にしている場合じゃないんだぜい!いいからさっさとズラかる───」
「見付けましたよ上条当麻」
「えっ?」
あっちゃー、と額に手をやるグラサンアロハの同級生が居ることに、疑問が当然の如く浮かんでいたが、Tシャツの裾をくくりジーンズの片方を根元から切断した、異常に露出度の高い服のお姉さんが鬼気迫る様子でそこにはいた。
「さあ、とっとと
そう言いながら、
話を聞くと、どうやらこの奇妙奇天烈なお姉さんは、インデックスのときに居合わせた魔術師らしい。なんでもこの騒動を収めにわざわざイギリスから来たという。
だが、この話を一般人である土御門の前ですべきなのかどうなのか考えていると、土御門がああ、と気付いたように言い
「実は土御門さんって魔術結社、
と、衝撃発言をぶちかましてきたのだ。
「はあ!?お前が魔術師!?」
「さらに言うと、学園都市に潜入しているスパイってやつだにゃー」
そんなことを平然に言い放ったのは、寮の隣人にして同級生である土御門元春であった。
元々、彼は陰陽師博士とかなんとかだったらしく、学園都市で能力開発を受けて能力者になってしまったことで、今では魔術を使ってしまうと拒絶反応で死んでしまうのだとか。
その土御門が言うには世界規模で大魔術が発動しているようだ。何でもこの入れ替わりはその魔術によるものらしい。
この二人は偶然にこの魔術の影響下から逃れたようだが、神裂はステイル=マグヌスの姿になってしまったらしく、「赤髪の大男が女のようなしなをつくって歩いているなどと、言われる苦しみが貴方に分かりますか!?」と言っていることからも、相当ストレスになっていることが分かる。
「それで、この魔術を仕掛けたと疑われている最有力候補が、上やんってことだせい」
「いやいやいやいや、おかしいだろ!だって俺は能力者だぞ!?
「しかし、土御門のように魔術を使った際の出血を、服で隠してしまえば外からではわかりません。なので、今から貴方の全身のいたるところを調べます」
「……えっ?ちょ、嘘でしょ?まさか、今からありとあらゆるところを手でまさぐられるってのか!?思春期絶賛突入中の上条さんには、なかなかにハードルが高───」
ジリジリと太陽の日差しが降り注ぐ中、しくしく言いながら少し離れた砂浜で、ツンツン頭の少年が一人俯きながら膝を抱えていた。
「まあ、上やんには
「それでは、最初から考え直しですか……」
全て知っていたように語るにゃーにゃー陰陽師は、笑いながら神裂火織に言った。……コイツ幻想殺しのことも知っていやがるのか。
「いや、そうでもねーぜよねーちん。俺に心当たりがないでもないにゃー」
「っ!本当ですか土御門!」
その言葉を聞いた神裂が勢いよく聞き返す。……どんだけその姿が嫌なんだよ。
「言ったはずだぜい。上やんが最有力候補ってことは第二候補だって当然考えていますたい」
「私はその人物を聞いていないのですが……」
「はっはっはー。ねーちんは聞いたとたんに、上やんのときみたく突撃していくのが目に浮かぶからにゃー。そんなことにはならないように自分の中で留めておいたんだぜい」
その言葉を聞いて神裂は視線を横にずらした。先ほどの自分がしていたことに多少の罪悪感があるらしい。
はぁー、とため息を吐きながら俺は立ち上がる。
「なら、さっさとその疑われているヤツに会いに行こうぜ。こんな世界が当たり前になっちまうなんて流石にごめんだからな」
このままではインデックスは青髪の大男に、母親は銀髪碧眼のロリっ子になってしまう。流石にそれは不幸すぎる。そんなふざけた幻想は全速力でぶち壊さなくてはならない。
そんな一代決心をする俺に土御門はニヤリと笑い、もったいぶるようにその人物の名前を言った。
「現在行方不明の天野倶佐利だにゃー」
◆作者の戯れ言◆
再びリアルが忙しくなってきたので更新ペースはガクッと落ちるでしょうが、エターナルしないように頑張ります!