とある原石の神造人形(エルキドゥ)   作:海鮮茶漬け

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2月から創約が始まりますね。
いやーすごく楽しみです。果たしてアレイスターが居なくなった学園都市はこれからどうなっていくのか。LEVEL6とはなんなのか。主人公である上条当麻とドラゴンの関係とは。
気になることばかりですね!

……この小説が旧訳を書ききるまでに創約が完結しそう。(震え声)



37.ミーシャ=クロイツェフ

「安心してください。彼女はロシア成教『殲滅白書(Annihilatus)』所属の魔術師です。私達と同じく今回の騒動を収めに来たのでしょう」

 

 神裂がそう言った少女は、赤色のローブに拘束具という奇抜な格好の服装をしていた。上条としてはその風貌に何かしら言っておきたいところではあるのだが、そんな彼女は自分の命の恩人であるため今回ばかりは自重しておく。

 

 火野神作に足を斬られるその寸前、彼女が窓から乱入して火野を撃退してくれたのだ。

 彼女がいなければ上条は今ここに居なかったかもしれない。

 

「さっきは助けてくれてありがとう。もし、助けてもらわなかったら今頃「問一、貴方が御使堕しの首謀者か」──ッ!?」

 

 一瞬で目の前に現れた。

 瞬きをしていないにも関わらず上条は全く反応することができない。ヒヤリとする首にいきなり添えられたものは、火野を撃退するときに使ったノコギリだ。

 日用品としてありふれたものであるが、それを人間相手に使えばどうなるかなど語るまでもない。

 

「ッ!?ま、待って下さい!彼が無実だという確証があったがために助けたのでは!?」

 

「解答一。少年が御使堕しに関わっているかどうかは不明であった。そのため、あの場では保留とし、殺害するよりも生け捕りにするほうが最善であると判断した。

 もう一度問う、貴方が御使堕しを引き起こしたのか」

 

 抑揚のない声音と前髪に隠れている目で読み取りにくいが、ここでくだらないことを言えば間違いなく首が吹っ飛ぶことだろう。

 

「待て待て待て待てっ!俺は魔術なんてものはよく知りもしないし、そんなものを扱うことなんてできないんだって!」

 

 俺の物言いに疑問を浮かんだのか首を傾げるミーシャ。それを汲んだかのように土御門が説明する。

 

「上やんには魔術を使うことはできないぜよ。幻想殺し(イマジンブレイカー)っていうどんな異能も消し飛ばす、特殊すぎる力がその右手には宿ってるからにゃー」

 

 土御門がそういうとミーシャは何か言葉を呟いた。すると海から水が重力に反するように吹き上がる。そして、そのまま幾つかの水柱が上条に殺到した。

 

「ッ!!」

 

 パキーンッ!と右手をつき出すと何かが砕ける音と共に、水柱がただの水に戻る。もし、今の水柱を打ち消していなければ今頃足元に刻まれている、陥没した地面と同じようなことになっていただろう。

 

「あっぶねえな!!殺す気か!?」

 

「真偽を明らかにするためとはいえ、刃を向けたことを謝罪をする。彼が御使堕しに関与していない事を確認した。問一、では他に容疑者を割り出しているか」

 

「お前もしかして全然反省してないな!?」

 

 すんなり過ぎる返答に大声で抗議するがミーシャはガン無視を決めていた。そんな中、神裂が先ほどの火野神作が一番怪しいというと、ミーシャは火野が逃げたベランダにそのまま向かおうとする。

 だが、それを止める人間が居た。

 

 

「待って下さい」

 

 

 ガシッ!と神裂がミーシャの腕を掴んだ。ミーシャの表情は隠れていてよくわからないが、どこか不満を抱いているようだ。

 

「既に用は済んだ。これ以上共に行動する理由はない」

 

「協力体制を敷きませんか?」

 

 神裂が話を切り出す。

 

「解答一、それに意味はない。私個人でも充分に追跡することができる」

 

「貴方に逃亡者を相手取る心得があるのですか?必要悪の教会(ネセサリウス)は魔女狩りのために創られた組織です。逃亡する者を追う技術を私達は身に付けています。

 それに対し、殲滅白書は幽霊狩りに特化した組織。そのような技術には明るくないとお見受けします。ならば、共に行動した方が合理的なのでは?」

 

「……」

 

 そんなこんなで、ミーシャと俺達は協力して火野神作を追うことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから数時間後、既に夕日が差す時間帯へとなっていた。俺達は今現在特に何の変哲もない一般的な一軒家の中に居る。

 その一軒家とは記憶喪失になる前に上条が住んでいた実家であったのだが、何も気分転換に来た訳ではない。

 こんな騒動の中、わざわざここに来たのにはもちろん理由がある。

 

「エンゼルさま、エンゼルさま、エンゼルさま……」

 

 そう言い続けているのは大量殺人犯、火野神作。

 何故火野がこんな状態になっているのかというと、俺達は火野神作を運良く探しだしたあと、無事に火野を捕まえることに成功したのだ。

 それまでにいろんなこと(単行本40ページ程の内容)があったが、わざわざ言うことでもないだろう。

 一つ言うなら、今回活躍したのは上条当麻ではなく土御門元春だった、という話だ。

 

「さあーて、そんじゃあキリキリ吐いて貰うぜよ。お前が話すのは他の協力者の有無と儀式場の場所だけだ。他の言葉を言える余裕があるとは思わないことだな」

 

「…………」

 

 指を鳴らす土御門に引き続き、ミーシャもノコギリやバールといった工具を取り出す。魔女狩りのために産み出された必要悪の教会は尋問や拷問はお手の物である。火野が動機を説明するのも時間の問題だろう。

 そんな中、上条は火野の行動に違和感を抱いた。

 

「(何だ……?何か見落としているような……。……27人殺害…………潜伏……責任能力……)」

 

 ハッと気付いた。

 

「そうだ!二重人格だ!」

 

 突然声を上げた上条に皆の視線が向く。

 

「火野神作は二重人格の可能性ががあるってニュースで言っていた。……なあ、素人の俺じゃよく分からないんだけど、「中身A」と「中身B」の人格の入れ替わりは、御使堕しだとどうなるんだ?」

 

 魔術師は揃って顔を見合わせるが誰も答えを持っていない。それもそのはず。なぜなら、御使堕しはこの地球が始まって以来の大魔術なのだから。この場の魔術に精通した者でも知るものはいないのだ。

 そんな上条の言葉から火野はどこか怯えるように言葉を発した。

 

「な、何を言っている!エンゼルさまは本当に居るんだ!ま、まさか、お前らもあの医者と同じような事を言うのか!」

 

 その言葉を聞き、神裂は神妙な面持ちで火野に尋ねる。

 

「……貴方の言っているエンゼルさまというのは、医者の診断で二重人格と言われたのですか?」

 

「や、やめろ……!俺をそんな目で俺を見るな!!エンゼルさまは本当に居るんだっ!何でエンゼルさまのことが分からないんだ!!」

 

 そんな風に発狂する火野神作を見て上条は結論を下す。

 

「……決まりだな。二重人格だったから中身と外見が入れ替わったようには見えなかった。火野は巻き込まれただけ。

 ───つまり、火野神作は御使堕しの実行犯じゃない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ザザァッと、押して返す波のさざめきが聞こえる高台に、髪を風に靡かせる人影が立っていた。高台は年期が入っているが、どこか故障したわけでもなければ破損したわけでもない。

 そのため、工事で作業員が高台に登っているということではないし、そもそも彼女の服は作業着ではなく普通の私服であった。この高台は田舎にあることもあり、特に観光スポットになっているわけでもない。年頃の女の子が来るような場所では当然ないのだ。

 では、何故彼女はこんな辺鄙な場所に訪れたのか。そんなもの一つしかない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

「───ふむ。まだ、その時ではないようだね」

 

 

 




ようやく下準備が終わりましたね。
というわけで、ようやく次回オリ主が出てきます。長かった……。

ちなみに、旧約のプロットは9割方決まってます。あとは書くだけ。でも、それが一番大変なんだなぁ。海鮮茶漬け

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