とある原石の神造人形(エルキドゥ)   作:海鮮茶漬け

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ようやく、あのキャラの登場です。


38.一方その頃

「(なるほど、御使堕し(エンゼルフォール)下では二重人格の者は人格が切り替わるのですか。それなら、彼女もそうなっている可能性が高い。ならば、彼女は容疑者から外れますね)」

 

 上条が火野が御使堕しの犯人ではないと断言する中で、神裂は一人胸を撫で下ろした。彼女からすれば天野という少女は上条と同じく、感謝してもしたりないくらいの恩人である。

 インデックスの首輪の件はもちろん、彼女がいなければ神裂とステイルは、インデックスと今の関係にはならなかっただろう。

 

「(ステイルはおそらく彼女の前には現れず、陰で彼女のことを守っていたでしょう。会えば話をし合う今の二人は見ていて嬉しいものがあります)」

 

 インデックスの純真さに年相応の反応をする彼を見るのは、とても微笑ましい光景だった。彼は望んでいなかったかもしれないが、それでも今の関係は彼にとって悪いものではないはずだ。

 

「(……ですが、新たな疑問が浮かびます。今、彼女──いえ、()()()()は果たしてどこにいるのか)」

 

 神裂はあの邂逅を思い出す。あれほどの力を持った存在ならば、地球を脅かす何かをしている可能性がある。早急に探し出さなければならない。

 神裂は結局インデックスの首輪を破壊したあとに現れた、超常の存在をイギリス聖教に報告していなかった。

 それは、天野の身に降りかかるであろう災いを予測してということもあったが、神裂自身イギリス清教に教える必要性も特にないからだ。

 確かに、組織に所属する人間ならば報告は当然の義務であるが、彼女は魔術師。魔術師とは全より個を優先する生き物だ。

 『救われぬものに救いの手を』を魔法名にする彼女にしてみれば、確実に彼女の人生を苦難ばかりのものに変えてしまうならば、そんなものを認めるはずもない。

 さらに、彼女を巡って科学サイドと魔術サイドがぶつかる火種になる可能性もある。報告を慎重になるのも頷けることだ。

 

「(あのあと、彼女を観察しましたが大して変化が見られなかったため、超常の存在の言葉を信じましたが、今回の御使堕しに乗じて何かするつもりなのかもしれませんね……)」

 

 御使堕しの中で新たに大魔術などをすれば、この世界に致命的な破壊を呼び起こすかもしれない。彼女の安全を売るような真似はしたくはないが、世界の崩壊の可能性がある以上は魔術師として進言しなくては。

 

「あの、土御門。貴方に伝えなければ「あれ?この写真……入れ替わっていない……?」──なんですって?」

 

 聞き捨てならないセリフが聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おもむろに、上条が手を伸ばした写真立てにはとある人物が写っていた。その人物を隣から見て土御門も予想外のことなのか聞き返してくる。

 

「それは本当なのか上やん?」

 

 訝しむ土御門の質問に、俺自身とてもじゃないが信じられない目の前の事実を口にする。

 

 

「あ、ああ。()()()()()()()()()()()()()()()……。つまり、父さんは……───」

 

 

 上条がそこまで言うと、ダンッ!と音を鳴らしてミーシャは勢い良く外に飛び出した。

 

「まずい……ッ!上やん!ねーちん!急いで刀夜氏の保護に向かえ!!」

 

「土御門……!」

 

 思わず土御門の顔を見る。土御門は俺の顔を見て苦笑を浮かべて言った。

 

「なーに、術者を殺すのが術式を止めるのに一番簡単とはいえ、好き好んで殺す必要もないからな。血が流れないならそれが一番いいことには変わらないぜよ。

 それに引き換えミーシャは短絡的だ。間違いなく術者である上条刀夜を殺して事態を収拾しようとしてやがる」

 

「ッ!?」

 

 背筋が凍る。ミーシャは火野に向けたような暴力を父さんに与えようとしているのか……!

 土御門はグラサン越しに珍しく真剣な目を向けた。

 

「儀式場のことは俺に任せろ。二人はそっちを頼んだ」

 

「ああッ!!」

 

 何で父さんが魔術なんてもんに手を出しちまったのかは分からねえ!だけど、ミーシャ。そんな真似は絶対にさせねえぞッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(ここは、本当にどこなんだ?)」

 

 所変わって久方ぶりの登場となったこのオリ主。相変わらず辺り一面無駄にメルヘンな空間の中に居た。

 

「(ユニコーンの他にもグリフォンやら妖精やら、それこそドラゴンまでいる、メルヘンな方向にブッ飛んだ世界なんだよなぁ)」

 

 さらには、なんかメチャクチャ派手な服着た、よくわからん女まで出てくる始末。もう訳が分からないよ。

 そんなことを思いながら、この宇宙空間らしき場所をスイーっと体を動かし移動する。

 なんとこのオリ主、わけの分からないこの不可思議な空間に順応しつつあった。

 

 宇宙空間のため距離を測ることはできないが、既に数十キロ近く動き回っている。しかし、出口はおろかこの不思議プラネタリウムの風景は全く変わらなかった。

 

「(やっべぇな。何の手掛かりも見付けられなかった。そろそろ焦るわ)」

 

 遅ぇよ。

 

 オリ主は童心を刺激されてメルヘンな動物を観察していたのだ。夢の世界ならそれで満足していたが、どうやらちゃんと意識があるため、この世界がただの幻想ではないことにようやく気付いた。

 

「(無駄かも知れないけど一応やってみるか)あのー、すみませーん!誰かいませんかー?」

 

 返事はない。

 

「迷子なんですー!助けてくださーい!」

 

 返事はない。

 

「そろそろ地面が恋しいんですー!元の世界に戻してー!」

 

 返事はない。

 

「Arrrrrrrrrrrrrr!!!!」

 

  返事はない。

 

「■■■■■■■■ーーーー!!!!」

 

 返事はない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰かああああーーー!!」

 

 

「やかましいわッッ!!!!」

 

 

 !?

 

 

 

 




はい、久しぶりにオリ主登場ですね。
この小説を書き始めていろいろと調べることが多くなりました。御使堕し編の第三巻も買っちゃいましたし。
旧約の中だと3本の指に入るほど、この小説では重要なストーリーってのもありますけどね。

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