とある原石の神造人形(エルキドゥ)   作:海鮮茶漬け

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勢いで書いてしまった。なんか微妙なところで終わっちゃったし。


では、どうぞ。



40.異世界の正体

「お前を一人置いて行けるかよッ!俺も戦う!俺の右手は『神の力』にだって通じるはずだ!」

 

 上条当麻からそんな言葉が飛んでくる。聖人相手にそんなセリフを言うとは、ステイルの報告通り彼は調子を崩しにくるようです。その気遣いは好ましいですがね。

 

「天使相手に勝つという考えが既に間違っているんです。あれは私達とは規格からして違う。

 勝とうとは思っていません。私がするのは互角の時間稼ぎ。その間に貴方と土御門は御使堕しの解除をしてください。

 そうすれば、あの天使も文明を焼き尽くす火矢の豪雨『一掃』を発動する意味はなくなります。

 ───彼女を首輪から救ったように、次は私を救っていただけると助かります」

 

 そう言うと数瞬考えた後、彼の表情が変わった。

 

「……ああ、分かった!神裂、お前を信用する!!」

 

 そう言って、少年はこの場から去って行った。そのセリフに思わずふっと笑ってしまう。

 

「この私に対して信用するときましたか。確かに調子が狂いますね。───ですが、お陰で私の生存確率が高まりました」

 

 天使の背中から水晶らしきものと海水で、新たな攻撃手段である長大な翼が何本も生み出された。翼の先から先まで『天使の力(テレズマ)』が満たしているあれは、一撃で山脈を吹き飛ばす程の威力を有している。

 そんな絶体絶命の状況でも彼女は一歩も退くことはない。敵わないと知りながら神裂は誰かのために刃を振るう。

 

「『唯閃』の使用とともに、一つの名を」

 

 愛刀である七天七刀を強く掴み、あの誓いを口にする。

 

「───Salvere000(救われぬ者に救いの手を)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなシリアス極まる場面から変わり、オリ主サイドに移る。そこには神と天使(?)がいた。

 

「普通気付くじゃろお主アホか?」

 

 果てしなくムカつくがぐうの音も出ないセリフだった。身体中が肌色じゃなくて全体的に白いことに何故気付かなかったのか。

 

「というか、何でガブガブの身体に入ってるんだ!?もう、わけが分からないよ……」

 

 ペタペタ身体を触っても明らかに感触が違う。どうやら人間とは素材から違うらしい。頭とかどうなってんのこれ?

 

御使堕し(エンゼルフォール)とかいうのが天使を人間の位階に堕す術ならば、空いた天使の椅子に誰かが座るのは道理じゃろ」

 

「いやいや、それが俺とかどんな確率だよ。流石にご都合主義だろそんなのさぁ……」

 

 60億分の1を当てるなど余りにも出来過ぎている。魔術師としては知らんが一般人からしてみれば天使の身体など災いの元である。これは、本格的に上条の不幸が移ったか?

 そんな風に呟く俺に対して神は端的に告げた。

 

 

 

「何を言っておるんじゃ。お主がガブリエルの身体に入ることは必然じゃぞ?」

 

 は?

 

 

 

 ふむ、と間をとって神は話を続ける。

 

「お主はそもそもこの世界がどこなのか分かっているのかの?」

 

 そんなもの知るわけがない。こんな世界に見に覚えなどあるほうがどうかしているだろう。

 だが、神は当然の如くそれを言った。

 

「お主は知っておるぞ。何せ一度この世界に訪れたことがあるのだからな」

 

「!?」

 

 こちらの思考を読んだかのようなセリフに驚いたが、それよりもこんな世界に俺が来たことがある……?一体どういうことなんだ?

 神はそんな俺を相手に話し出した

 

「この世界はアストラル界と呼ばれる場所じゃ。幽界とも呼ばれる場所じゃな。一度死んだときにお主はこの世界に来ておるのだから、この世界と関係深いガブリエルの身体に入ることに、他よりも適正があるのは当然のことよ」

 

「ちょ、ちょっと待った!ここって死後の世界なのか!?」

 

 うっそだろ!?あの世ってこんなにメルヘンなところなのかよ!?

 

「知識にないヤツに説明するのは面倒なんじゃが、まあサービスということにしておいてやろう。

 アストラル界は天球の世界じゃ。ここはアストラル体が存在しうる場所である。アストラル体とは人が持つ感情的、情緒的なものを司る身体を言う。他の動物や植物なんぞにはアストラル体は在りはしない。

 周りに居るのは幻想種ばかりじゃろう?そう言ったものは人の情緒が生み出したものじゃからの」

 

「なら、これってやっぱり幻なのか」

 

()()()()()()()()()()()()()()説明が面倒じゃから省くぞい。その世界は死んだ者が最初に訪れる世界じゃ。お主も当然来ておる。知識には残っておらぬとも魂にはそれが刻み込まれておるはずじゃぞ」

 

 全く覚えていないが、どこか懐かしさや既知感があったのはそういうことか。

 

「そんなことよりもお主は気にすべきことがあるだろうに」

 

 この世界の話を「そんなこと」でまとめていいのか?結構重要だったと思うんだけど。

 神はこの期に及んで何か言うつもりらしい。まあ、今更何を言われたとしても受け止めるつもりだけど。

 

 

 

「今頃、エルキドゥがお主の身体で暴れているのではないか?」

 

「……はい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 スパン!と、襲い掛かる『水翼』を七天七刀で両断する。

 

「天草十字凄教は日本独自に進化してきた宗教です。ですから、十字教ならば天使を傷つけることはできない、という制約の外にいます。

 更にあなたからすれば不思議なことかもしれませんが、日本では神を殺す神話も存在します。……さて、天草十字凄教をかつて束ねていた私がその術式を有していないと思いますか?」

 

「…………」

 

 天使───いや『神の力』は答えない。そんなことに頓着はしない。有るのは元の世界に帰るということだけ。そのために新たな水翼を作りだし、目の前にいる存在を消し飛ばそうとする。

 神裂も呼吸を変え対神殺し用の魔力を練る。人の領域を越えて目の前の存在がいる領域へと届かせるために。

 

 

 

 

 

 そして、両者が互いの刃を振った。

 

 

「ッッッッ!!!!!!」

 

 そこから始まったのは常人では視認することはもちろん、何をしているかということですら理解できない斬り合いだった。

 1秒間に45回という超高速の斬り合いは凄まじく、本当に選ばれた一握りの者しか見ることのできない世界だが、何より驚愕すべきことは両者はフェイントを入れる余裕があることだろう。

 牽制や時間差、攻撃方法の変化などをその速さで実行しているのだ。卓越した戦闘能力がなければ不可能な斬り合いである。

 だが、すぐに両者の差が浮き彫りになった。

 

「ぐッ!…………っはあッ!!」

 

 神裂の体が発熱している。それは運動による発熱にしては異常であった。それもそのはず、神を殺すための術式を編んだとしても、それが人間が万全に使用できるかというと別の話なのだ。

 神裂の『唯閃』は超高速の抜刀術で切り裂く一撃である。では何故一撃なのか。それは、唯閃を問題なく振るうのは一撃が限界であるということだ。聖人は絶大な力を有している反面、魔術などで緩和しなければ自らの力で体を壊してしまうことになる。

 もし、それを続ければ自滅しまうことは当然だった。

 

「(手を弛めることはできない。少しでも力を抜けば次の瞬間肉片へと変えられる……ッ!)」

 

 体が軋みを上げる。遠心力で関節は伸び、内臓には負荷が掛かり吐血してしまう。このままでは、神裂の体が持つわけがない。しかし、それを理解していながら神裂は手を弛めない。

 上条が御使堕しを解除すると信用しているからだ。

 

「(ここは、私の全てを用いて絶対に死守してみせるっ!)」

 

 『神の力』と『神を裂く者』の短くも長い戦いが始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その寸前、人影が高速で割って入った。

 

「ふっ!!」

 

「───qkd!?」

 

「なっ!?」

 

 ドガァッ!と、凄まじい轟音とともに人影は数十メートル程ミーシャを蹴り飛ばした。その事実が神裂にはとても信じられない。

 今の戦闘に隙を見いだして奇襲を成功させたこと───ではなく。天使という存在を吹き飛ばしたことそれ自体。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 ただの蹴りで天使を吹き飛ばすことなど、聖人ですら片手で数えられる程度しかいないはずだ。あんな馬鹿げたことをした者は味方か敵か、あるいは第三勢力か。

 そんな風に乱入者を仰ぎ見ると、神裂の目が大きく見開かれた。その人物は今回の騒動に今まで関わり合いがなく、この騒動が起きてから姿を一度も見せていなかった人物だったからだ。

 

 金色の瞳を煌めかせて長い髪を靡かせながら、その()()は『神の力』に対して言った。

 

 

 

 

 

「恨みは無いけれど僕のマスターのために、君には少し大人しくしてもらおうか」

 

 




アストラル界…………はあ?っとなった皆さん、その理由はまた次の話でします。
まあ、多くの読者さんには分かってるでしょうけどね。

ある一定の人達は「神とかww流石にないわー(失笑)」とか思ったでしょうが、ぶっちゃけ結構重要なキャラです。
というか、とあるのような綿密に練られた小説を書いておきながら、無意味に神なんて存在を書くわけないよねっ!

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