※この話は全てを知っている神からの視点だと思ってください。おそらく新訳を最後まで読まないと意味が分からないと思います。
この話は賛否両論あると思いますがどうぞ。
「ふむ、繋がっていた
そう呟いたのはオリ主をとあるの世界に送った神であった。おもむろに神は傍に置いてある鏡に視線を移すと、そこにはオリ主があの世界の下界へと堕ち、天野倶佐利の身体へと戻ったところが映っていた。
「まさか、ガブリエルの神の言葉を人に伝えるという側面から、強引に接続してくるとは。エルキドゥの身体を儂が作り出したとはいえ、世界そのものを越えるなどそう簡単ではないのだがなぁ」
世界を越えると言ったが、そもそもあの世界は一体何なのか。
説明するためには『新訳とある魔術の禁書目録』に出てくる、とある二つのキャラクターについて説明しなければならない。
一つ目のキャラクターの名前は
彼が持つ右手は、幻想殺しを盾とするならば矛となる右手である。
上条当麻の右手に宿っている
その力の効果は『願いが重複しているものを新天地へと追放する』というもの。オリ主や上条達がいる世界を説明するために重要なのは『新天地』の部分だ。
この『新天地』とは世界の容量の限界を100%とし、人の意識の中で構築された世界は100%の内の、ほんの20~30%だけでしかない。新天地はその残った空き容量で構成されており、同じ世界だとしても触れ合うことはない、とのこと。
つまり、この『新天地』を本来のオリ主の居た世界に適応させるのだ。
その部分で現実世界の70~80%で『新天地』を作り、これを世界のベースにする。そして、さらにこの世界に手を加える。
そのために必要な、二つ目のキャラクターの名前は魔神オティヌスだ。
とあるの世界で度々出てくる『位相』というものを知っているだろうか?位相とは「純粋な物理法則の世界」の上に人が投影し、塗り重ねた宗教概念のことである。
魔術に関係しているかどうかに関わらず、目に映る世界はこうした宗教概念という色眼鏡を介する歪んだ景色に過ぎないのだ。その色眼鏡を変化させる程の力を加えると、世界の『見え方』はがらりと姿を変わってしまう。
そうすると、向こう側にある「純粋な物理法則の世界」そのものを直接弄っているわけにも関わらず、人の主観では世界が全く違うものへと、作り替えられていることと変わらないことになる。
魔神オティヌスはこの位相を世界に挟み込み、『見え方』を改変して上条当麻に幾億の地獄を味合わせ続けた。ならば、この方法で世界に幾つも位相を挟むと?
魔術という異能が生まれるための位相。
アンナ=シュプレンゲルが存在するための位相。
十字教の名の元に様々な魔術宗派が生まれるため位相。
魔術結社『黄金』が魔術の工作キットを生み出すための位相。
アレイスター=クロウリーが学園都市を生み出すための位相。
超能力が生まれるための位相。
インデックスが誕生し、禁書目録へとなるための位相。
御坂美琴が……
神裂火織が……
ステイル=マグヌスが……
一方通行が……
アウレオルス=イザードが……
…………
………
……
───そして、主人公上条当麻がその右手に幻想殺しを宿し誕生するための位相。
このように全ての事柄を一つ一つ入力していけば、想像した望み通りの世界が構築することが可能になるのではないか?
「儂は魂を転生させるのが与えられた役目とする神じゃ。そのため、他の権能は持ち合わせておらん。
神は自身の力を冷静に分析する。
「その世界も天地創造などと大層なものでもない。お主の世界に手を加えて形を整えただけじゃ。1から物質世界の万物を創り出した創造神とは、比べることすら烏滸がましい程に格が遥かに違う。儂がしておるのはその程度のこと」
生み出すことは同じだが無から有へ、有から有へは難易度が天と地ほど離れている、ということだろう。
世界の神々は世界の重要な要素の化身ともいえるが、この神はそうではない。例え居なくなったとしても世界には微塵も影響は出ないのだから。天国か地獄へとたどり着くまでの、『転生世界』という寄り道の世界を創ることしかできない。
そんな既存の物から世界を作り出せない神は言った。
「じゃが、『転生』において儂以上に優れた神もそうはいない」
贋作を作ることしかできない神は自分の存在や力を誇るように断言した。どう思われようと自らは神の一柱であると言うように。
魔神オティヌスは全ての『見え方』を操作することはできない、と言っている。だが、魔神とは違った純粋な神ならばそれが実現できるのも道理だろう。
だが、そこまで話して神はどこか気分が下がったかのように続けた。
「儂は数多の者を転生させてきた神じゃ。特典などという人に有り余るものを付けてそれぞれの行く末を眺めてきた。
与えられた力に振り回され、外道に堕ちる者や破滅する者などは観ていて見物ではあったが、ここまで力に溺れる者ばかりじゃとさすがに一辺倒すぎる」
その顔には呆れが見えた。何十、何百、何千と繰り返してきた転生は類似していき、見応えがなくなってくる。それでは、何のために力を授けているのか分からない。
そこまで言って神は口許に弧を描いた。
「そして、儂はふと思ったのじゃ。逆に考えてみればよいとな。すると、驚くことに簡単に面白そうなことを思い付いた!そして、思い付いたのならば試すしかあるまい!?」
それは一体どういう思惑なのか。
退屈を弄ぶ神が、目を輝かせて取り掛かる企てとは一体なんなのか?オリ主が映る鏡を見ながら神は分析するように言った。
「経過は順調。さらに枝分かれした分岐も成長中──か。ククッ!本当に楽しませてくれる!」
椅子に深く座り直した神は、まるで患者のカルテを診る医者のようであった。だが、その顔はとても良医とは到底呼べるものではない、彼をまるで実験動物のように見るかのようだ。
神とは傲慢な生き物だ。人間に配慮するほうが物珍しい程に。
この神も同じだったというだけ。試練を与え乗り越えれば祝福を。乗り越えられなければ切り捨てる。
つまり、今回もそういうことだった。
「よい。実によい。
果たして何のことだろうか?何をオリ主は忘れているのか。この神が企てることに、オリ主に対する思いやりがあるとは少しも思えない。
神はその説明がないままに、鑑に映るオリ主に対して疑問を投げかけた。
「お主は何故死にたくないと考えながらも死地に向かっていく?それが、一度も痛い目を見なかった無知さならばまだ分かるが、幾度も傷を作り血を流しとるのじゃぞ?
もし、原作が好きというならば、街中で話す程度の関係性で満足したはずじゃ。実際に以前のお主ならそうしたであろうに」
言ってしまえばオリ主には一貫性がない。矛盾ばかりが目に写るのだ。
そこまで言って自身の胸の内から噴き上がる衝動に、まるで堪えきれなくなったかのようにして、神は思わず口角を上げた。
「虚言などは言ってはいないぞ?儂はお主に
───さぁて、お主は最後まで『愛』を抱き続けられるかのぉ?」
手間暇を費やして整えたものが軌道上に乗って、神はこれ以上ない程の高揚感を神は感じていた。あとはただ盤面を眺めることのみだ。
「ああ、楽しみじゃわい。あやつがどこまで■■として『愛』を貫けるのか」
神が何を『愛』と呼ぶのか。それは博愛なのか純愛なのか友愛なのか、あるいはそれ以外の『愛』なのか。
そして、付け加えるように神は言った。
「
自らの手間暇かけて作り出したものが、壊されるかもしれないというのに、神はどこまでも愉しげだった。
「そんなお主が、その愛する世界で成すのは救世か、はたまた破滅か。これからが楽しみじゃ」
神は台座に置かれた杯を手に持ち、その中身を飲み干す。
「(更なる、苦難があやつには降りかかるだろう。その先であやつは変わらないのか、それとも失うのか、あるいは───)」
隠しきれない邪悪な笑みを浮かべて神は言った。
「お主の『愛』がどういった未来を選ぶのか儂に見せておくれ」
アドバイスがあったので匂わしながら、これから少しずつ秘密を明らかにしていくことにします。
内容を先に知ってしまった人はごめんなさい。