とある原石の神造人形(エルキドゥ)   作:海鮮茶漬け

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サイレントパーティー編の皆で戦う日っていつなんだろう?
詳しい人教えて!


48.悪魔の誘惑

「『おーい!聞こえているかー?兄貴ぃー』」

 

 いきなりぶっ飛んだ話に一瞬間抜け顔を晒してしまった。

 

「『このままだと世界がヤバいんだよー』」

 

「…………………………………………」

 

「『いやいや、これは小粋な心理戦だとかじゃなくてなー。マジな話だぞー。何のためにデモンストレーションまでしたと思ってるんだー。信じないと殴るぞー。マジでな』」

 

「……」

 

「『私はガブリエルの身体に入ってだなー。……まだ、信じなくていいからちゃんと聞けよー?

 そこである声を聞いたんだー』」

 

「ある声?」

 

 そこまで言って今までの会話とは違った雰囲気を出した。土御門舞夏のままでという器用にムカつくことをしながら。

 コイツは溜めを作ったあと俺に言った。

 

「神様というヤツだー」

 

「………………………………………………………………………………はぁ」

 

 何だそれは。

 

「『あー!今、痛い妄想女だと思っただろー!?私だって結構ヤバいこと言ってる自覚はあるんだぞー!!』」

 

 頬を引っ張ったりしてダメージを与えてくる痛い妄想女。

 それでも、顔面を殴らないのは重傷の俺に対する配慮なのか。

 俺を出し抜いたヤツはこんな女だと知って泣きたくなる。

 誰か嘘だと言ってくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『大天使ガブリエルは伝令の役目を担った存在だー。それなのに、バグって役目を守る気が無いらしくてなー。代わりに身体に入っていた私に代理を頼んだというわけだー』」

 

「人間であるお前にか?」

 

「『ガブリエルの身体に入ってたんだから、その資格はあるだろうー?そうじゃないと人類が絶滅するのは目に見えていたから、断腸の思いというやつじゃないかー?神様に腸があるかは知らんがなー』」

 

「……それで、その神はお前に何て言ったんだ?」

 

「『【ローラ=スチュアートは科学の街を中心にし、世界を滅ぼす悪魔である。さらに、その要因となったアレイスター=クロウリーには注意せよ】って話だー』」

 

「…………」

 

 手を合わせて何を言っているんだコイツ。それに、悪魔はお前のことだろう?

 

「『私もそんな話は信じられないが、これからの未来に起こることをいろいろ聞いてしまってなー。もし、それが本当なら蔑ろにしてはいられないのだろー?』」

 

 そして、ねだるように俺の服を掴みソイツは懇願してくる。

 

「『私と一緒に人類を助けてくれよー。魔術や科学なんて言ってる場合じゃないんだぞー!人類が終わってしまうんだー!』」

 

 ぐいぐいやってくる馬鹿を視線から外し少し考えてみる。

 確かに、あのポンコツ天使はメチャクチャしていたのも事実。最大主教(アークビショップ)が百年もあの地位にいる化け物なのも事実。

 それらを総合的に分析して答えを出す。

 

 

 

「ふざけているのか?そのような何の確証もない話を俺に信じろと?──舐めるのもいい加減にしろ……!」

 

 

 

 確かに、あの年増BBAは異常という言葉に尽きるが、悪魔などと馬鹿げた存在のはずがないだろう。召喚魔術はアレイスター=クロウリーを最後に成功したものはいない。

 そのアレイスターも既にその大悪魔コロンゾンを元の位相へと追い返している。そして、他の悪魔がこの世界に存在しているわけがない。不老の魔術を行使していると言われたほうがまだ現実的だ。

 そんな拒絶の意味を含めた俺の返答に、何故かコイツは嬉しそうな反応をした。

 その姿に驚き目を見開く。

 

「『うんうん、兄貴ならそう言うよなー。……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()』」

 

「……………………」

 

 心理戦ではないという発言も実は嘘で、俺がどの程度参っているのか俺の発言を引き出した……?

 チッ!どこまでが計算なのかそうじゃないのか、その線引きが分からなくなってきている。まさか、ここまで底が見えない相手だとは思わなかった。

 畳み掛けるように悪魔は言った。 

 

「『だから、信じてもらえなかった場合のために、それとは別の利点を私は既に提示しているぞー?」

 

「利点だと?」

 

 コイツは何のことを言っている?俺がコイツを信じること自体に利点などあるわけがない。

 何だ?今さら何が望みだ?

 ソイツは俺に顔を寄せ、至近距離から囁くように言った。

 

 

 

 

 

「兄貴ですら違和感を抱けない程に模倣する人間なんて、これ以上無いほどの(デコイ)になると思わないかー?」

 

「………………………………………………………………………………」

 

 

 

 

 唖然とした。

 

「『土御門舞夏が土御門元春に向かって拳銃を向ける、なんていうあり得ない状況でも、兄貴は違和感を抱けなかっただろー?

 これって言ってしまえば、兄貴以外の人間なら気付くことすら100%無理ってことの、証明になると思うんだがー?」

 

 確かに、身内で暗部に身をおいている俺ですら見抜けないなら、他人に見破ることは不可能だろう。

 

「超能力開発だけではなく学園都市の技術は確かにゲテモノだけどなー。言ってしまえばその見分けるシステムを誤認させてしまえば、逆にこれ以上ない情報操作の鍵になるとは思わないかー?』」

 

「……無理だ。学園都市の技術は外のものとはわけが違う。イカれた精密機械を騙せるわけがない」

 

「ただの変装と一緒にされては困るぞー。

 たった数回会っただけで完璧な動作に口調ができる達人が、どれ程いるかはわざわざ聞くまでもないよなー?

 その上、少なくとも見た目、骨格、身長、体重、声音は全く同じなんだぞー?あとの口調、表情、動作を合わせていけば、何が本物と違うのか私には分からないなー。

 このままさらに人間観察をすれば、クローンでさえも真っ青なコピー人間ができるんじゃないかー?』」

 

 確かに、どんな化け物染みた精密機械でも判別するのは前者のみだろう。だが、誤魔化すのはどんなプロでも難しい。何故なら基本のベースはどうあっても他人なのだ。

 変装では骨格だけは誤魔化すのが不可能なのは、考えるまでもない。学園都市のカメラには骨格検知が搭載されているものがある。人間の骨格をAIが記憶し識別するというものだ。いくら見た目を変装で気付かれなくしたって、骨格検知だけは絶対に気付く。

 そして、スペクトログラム。

 これは、複合信号を窓関数にし、周波数スペクトルを計算したものだが、この精度も馬鹿にできない。

 声音は人間が聞き取れないレベルでの声紋というのがついて回る。これはどれだけ他人の声を真似ようが出てくる声の指紋だ。アレイスターのヤツなら、既に舞夏の声紋は取っているはず。

 つまり、いくら囮を用意しても骨格検知搭載のカメラや、スペクトログラムの音声識別装置に引っ掛かれば、一秒も経たずにバレることになる。

 

 だが、それをもしクリアできる存在がいるとしたら?

 

「今も兄貴の僅かな反応から、リアルタイムで修正しているんだぞー?いつも一緒にいる人間はその人の動作や口調を、人は記憶しているものだー。

 その記憶との差異に人間は、無意識レベルで反応してしまうからなー。それを読み取って逆算していくと、自然と答えが浮かび上がるのだー。

 ───どうだ?もう、精神的ショックや貧血でなくなったとしても、微塵も気付けなくなるほどなんじゃないかー?

 とはいえ、今の兄貴に言っても仕方ないんだけどなー。あっはっはっはー!」

 

 逆算?何を言っている?本人ですらないのにコピーの修正ができるなんて絶対にあり得ない。

 あり得ないはず。……なのに、何だこの雰囲気は。

 ここが殺し合いや取り引きの場ではなくて、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 いや、そもそもコイツの言う利点とは何だ?これではまるで……。

 

 

 

「ここからは、私が勝手に話すからなー。返事はしなくていいぞー。

 まず一番の問題点は、学園都市統括理事長・アレイスター=クロウリーだなー。統括理事長と言うだけあってその影響力と権力は私には無いものだー。

 そして、その統括理事長と私という存在を天秤にかければ、統括理事長という存在に天秤が傾くのは当然のことだー。

 しかし、そもそもの話アレイスターに肩入れすることが、土御門舞夏の安全を守る方法という、一択しか兄貴には残されていないんじゃないかー?」

 

「……」

 

「そして、アレイスターの庇護を受けているのは暗部の活躍というよりも、上条当麻のコントローラーとして機能しているから、という面が大きいだろー?

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……」

 

「兄貴は近いうちにこの状況をどうにかしたいと思っているだろうけど、どうしたって何かするときには、土御門舞夏の身の回りは無防備になるだろー?

 そのときに私を使えばいいのだー。純粋な武力でも(デコイ)でも要望の120%を出せると自負しているぞー」

 

 えっへんっ!とでも言いたげな顔が腹が立つのと同時に、どこか僅かに愛おしさまで沸き上がる時点で、コイツのいう修正が嘘ではないことを悟った。

 だが、そんなことすらどうでもよくなるようなことをコイツは言い放った。まさか、

 

「……まさか、お前の今までの行動は」

 

「私は最初に()()()()()()()()()()だと、ちゃんと言っただろー?」

 

 その言葉である結論が導き出された。

 そんな馬鹿な。まさかコイツの目的は俺を殺すまでのオモチャにすることでもなく、ましてや操ることでもない。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 俺の中で最大主教より悪魔らしい悪魔な神の使いは、何でもないように言った。

 

 

 

 

 

「私を兄貴の懐刀にしてみないかー?」

 

 

 

 

 




~次回予告~
「野郎、ぶっ殺してやるッッ!!」
「ちょ、ちょ待てよ(イケボ)」
「いや、さすがに。さすがにあるわけがないッスよねー?」
「───あるよ(ダンディvoice)」
「え?」

◆オリ主への質問◆
Q.何故コピー能力の実証のためとはいえ、土御門をあそこまで追い込んだのですか?やり過ぎでは?
A.この世界来て初めて、コピー能力をフルに使ってテンションが上がっちゃって……(*´∀`)ゝテヘヘ

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