とある原石の神造人形(エルキドゥ)   作:海鮮茶漬け

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オリ主のターン


54.世界の分析

~現在~

 

 この騒動の黒幕である『スタディ』の潜伏先へと、『フェブリ』を担いで向かったミコっちゃん。そのあとを遅れて俺も追跡する。

 その最中、俺は先ほどの手にのし掛かった確かな感触を思い出しながら、その持ち主との昔を思い出す。

 

「(いやー、あのときはビビったなぁ。この世界に来て初めて髪色もコピー元に合わせた変身を、完璧に見破られたんだよな)」

 

 そのあとも何度もコピーして見破られたから偶然ではない。本人にその理由を聞いたところ、「なんとなく」とかいう実にアバウトな理由だった。

 メガネをかけているくせに何だその感覚的な説明は。

 

「(というか、この世界の革命未明(サイレントパーティー)編はやっぱりいろいろおかしいぞ)」

 

 あの牛乳(うしちち)メガネに話を聞いたところ、今回の黒幕の科学者達の組織である、『スタディ』は暗部組織ではないらしい。とある暗部組織と取引をし資金や武器などを手に入れたようなのだ。

 能力者を量産型のパワードスーツで圧倒することにより、能力者達の価値を下げて能力開発よりも機械工学の分野が、より有益であることを証明することが有冨の狙いのようだ。

 

「(無能力者(レベル0)のために周りから評価されないコンプレックスが、今回の事件の動機みたいだ。要するに科学者として有能であることを示したいってことか)」

 

 今までは能力者としてではなく、一科学者としてあることで、自らの承認欲求を満たしていたのだろう。そのままであれば何も実害はなかった。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「(くそっ!あの爺本当に碌なことしないな!……まあ、有冨達を唆したわけじゃなく、目指している到達目標をただ酷評しただけだから、この騒動で一番悪いのは富竹なんだけど)」

 

 とはいえ、それがきっかけで今回の事件が起きたのだから、やっぱり元凶はあの爺だ(断言)

 

「(ミコっちゃんのクローンである妹達(シスターズ)とは違い、『フェブリ』は完全な人工生命体。そして、その姉だか妹だかよく知らない双子の『ジャーニー』を、無意識下のうちに富竹が外部から操り、あの無数の無人機のパワードスーツを動かしているらしい。

 ジャーニーの髪を媒体にすれば、AIM拡散力場を発生させることが可能らしく、それを遠隔操作で操ることにより無人機のパワードスーツが出来上がるようだ。

 ぶっちゃけこの仕組みはよく知らないし覚えていないが、それが『ジャーニー』の能力みたい。

 人工生命体だからいくらでも有冨は使い捨てる。それを止めたくて、ミコっちゃん達はこの研究施設に乗り込んできたらしい。)」

 

 双子の彼女達を使った計画名は『模造生命遠隔装置(ケミカロイド)計画』。科学で作り上げた数の暴力こそが富竹達の答えだった。

 そして、フェブリはそんな『スタディ』から逃げ出したため、安定させるカプセルに入っていない間は、体を安定させる特殊な飴を舐めていなければ、体調が安定せず死んでしまう。

 死んでしまう…………はずなのだが。

 

 

「(そのフェブリなんだけど……なんか普通に治せたみたいなんだよね)」

 

 

 これにはさすがにビックリした。つい二度も聞き直した程だ。

 

「(フェブリは人工生命体でありジャーニーのスペア。長生きできるような身体を造る意味がないから、身体を安定させる飴を舐めていなければ変調をきたして、彼女は死んでしまうはずだ。

 アニメではその飴の成分を入手することも必要条件だったのだが、なんと冥土帰し(ヘブンキャンセラー)が必要なデータやら器具を集めて来て、一晩かからずに無事フェブリの飴の作成と、元の容れられていたカプセルよりも、さらに高性能なカプセルを用意したらしい(そんな馬鹿な)

 カエル顔の医者曰く、『患者に必要な物を全て揃えるのが僕のモットーでね?この程度ならすぐに用意してみせるよ?』……とのことだ。

 さすが回復チートキャラ。さすが◼️◼️◼️=◼️◼️◼️◼️。

 アニオリのときとは大違いである。)」

 

 一晩で治療法を確立させるとか流石は公式チート。回復系の能力者の存在意義(居るのかは不明)を一切合切無くす存在だ。

 

「(そんですぐに治る予定のフェブリだが、ジャーニーを助けるために必要最低限の飴を確保したのち、双子ということを活かしてジャーニーの居場所へと向かうための、ナビゲーターとして美琴に担がれて『スタディ』のアジトへと突入していた。

 まあ、他に見付ける方法もないし、ジャーニーを速攻で発見するためには必要な人材なのだとは思うけど)」

 

 俺が学園都市から海沿いの僻地へと飛ばされ、天使になっている間にミコっちゃん達は、相変わらずめんどくさい事件に巻き込まれていた。

 

「(辻褄が合うように話の設定や日時が、変わってるなんて思わなかったなぁ……)」

 

 この『革命未明(サイレントパーティー)編』は明日。つまり、8月の31日の午前中にやる話なのだ。それが30日に起こるなんていうのは異常事態だ。

 おそらく、31日は正午に御坂と上条がデートする話があるため、それに合わせて日時が前倒しになったのだろう。

 

「(え?…………ちょっと待って……。まさか、この世界は原作に合わないことなんかは、無理矢理合わせようとするのか……!?)」

 

 それはヤバい。めっちゃヤバい。

 というのも原作が崩壊する可能性がかなり高い。今までは自分の不用意な行動で原作を崩壊させないように動いてきた。しかし、それでは全然足りないかもしれない。

 この世界が統合性を取ろうと改変するなら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「(ぐおおおっ!!今までの俺の完璧なロールプレイがアニオリという不確定分子のせいで、全部無意味になるのか!?最悪だぁ!!)」

 

 猛スピードで駆け抜ける少女は頭の中でのたうちまわっていた。しかし、感情と表情がリンクしないために感情が消えたその表情は、今から誰かを消しに行きそうなほど表情が死んでいた。

 

「(……いやちょっと待てよ。世界が原作に合わせようとするなら、逆に原作と致命的なズレは起こらないんじゃないか?

 もし、原作とアニオリを無理矢理組み込むとしたら、朝は革命未明を解決して昼に上条とデートだからほぼ無理な日程だ。

 最終回でミサイルを撃ち落として、芝生で四人仲良く寝てた描写があったから、時間的な側面で上条と出会うシチュエーションがそもそも生まれなくなる。

 そうなると、上条とエツァリの戦いが起こらずに、ミコっちゃんが照れるイベントがなくなるし、本当の海原が口封じで始末される可能性があったのか……)」

 

 そうやって考えてみれば大した問題ではない。世界が修正をしてくれるなら味方も同然なんだから。

 

「(ふぅ~。最大の悩みが解決して気が楽になったー!……そんじゃあ、ここからは俺のボーナスステージ。この革命未明での俺の利益を頂戴してきますかねっ)」

 

 天野はニヤリと不敵な笑みを見せ、黒く染めたその髪を靡かせながら、美琴が"彼女ら"とかち合った場所へと走る。

 

「(天敵に対してあらかじめ対策を用意するのは当然の事。卑怯、汚いは敗者の戯言よぉ。おっほっほっほ)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~15分後~

 

「みっともなくケツ振って逃げるだけかぁ!?もっと私を楽しませろ売女ァッ!!」

 

「『うわああああああん!!だじゅげでっ!助げてとうましゃああん!!うわあああぁぁぁぁ!!』」

 

 まるでどこかの駄女神のように泣きわめき、壁を貫いて襲ってくる幾つもの殺人光線から、全力で走って逃げる少女がそこにはいた。

 

 




ぶっちゃけ革命未明編はアイテムとかち合うための、導入でしかなかったという話。

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