とある原石の神造人形(エルキドゥ) 作:海鮮茶漬け
エタル前ってこんな感覚なのかなって思いつつ、56話投稿します。
『スタディ』がアジトにしていた研究施設から脱出し、オリ主は学園都市の街を駆け抜けていた。
「『いーやーー!!!!』」
泣きべそをかきながら街中を走るのは、先ほど『アイテム』に喧嘩を売ったオリ主だ。本人は必要事項のためにコピーをした程度の認識だが、『アイテム』の一員を昏倒させている時点で、敵対行動そのものである。
情けない声とみっともなさ過ぎる泣き顔に、思わず周りの人間が振り返っているが、その事にさえもオリ主は一切気付いた様子はない。
「『何あれ!?何あれ!?暗部は木原の爺といい、異常者しかいないのかッ!!』」
何をそんなに泣きわめいているのかというと、先ほど『スタディ』の根城で
AIM拡散力場とは能力者が無意識に放出する力場のことだ。それを無くすことは能力者である限りできはしない。(※例外はいます)
例えるなら、御坂美琴が常に電磁波を放出してしまい、動物から感知されてしまうことがまさにそうだ。滝壺はその無意識に放出される力を、全ての能力者から感知することができ、なおかつ標的が太陽系の外に居ても位置を把握できる。
そんな能力を持つ滝壺は、能力者にとって鬼門とも言える存在だが、オリ主は真っ先に滝壺理后を気絶させたはずだ。気絶していれば能力を発動することは当然できない。では、何故滝壺に捕捉されたのか。
麦野沈利が気絶している滝壺に、体晶を無理矢理飲ませたからに他ならない。
体晶とは能力を意図的に暴走させ、能力の出力を増幅させる劇薬である。
副作用で能力者の体を徐々に蝕んでいく、デメリットを備えた物なのだが憤怒に染まった麦野には、それを滝壺へ投与することに一切の躊躇いはない。
そうして滝壺は能力の暴走と共に意識を覚醒し、オリ主のAIM拡散力場を捕捉したのだった。
オリ主は混乱したままとある工場の中へと隠れる。
「(ヤベェよあいつ!本当におんなじ人間か!?倫理観や常識をどこに置いてきちゃったの!?)」
暗部の人間に倫理観や常識を求めるのは間違っていると思うのだが。
しかし、そんな当たり前のことは、死ぬ恐怖に怯えるオリ主は理解はできない。
「(あのツインテールレズオセロに変身して、
もちろん、変身自体は当然できるのだが、それを状況が許さない。
「(俺は今回助かるかもしれないけど、その変身した相手のAIM拡散力場を、滝壺が別のところで捕捉してしまえば、その人間が『アイテム』に狙われることになる。きっと死ぬわそいつ。
だってミコっちゃんでギリギリだったのを、並の能力者が対処できるとは思えないし。
それに、突然AIM拡散力場が変わったら、変身能力を持つ天野俱佐利がやらかしたのだと後々気付かれるかもしれない。そうしたら地の底まで追ってくるよなコイツら……)」
そんな想像をしてしまい「『今回は何も悪いことをしていないのに……!』」と、頭を抱えて自らの境遇を嘆くオリ主だが、暗部のメンバーを襲撃するなど、どう考えても恨まれるに決まっている。
「(ええい!この際麦野を含めた『アイテム』全員をコピーして、いつかやる『とあるのキャラコスプレ一人大会』の、暗部シリーズに加えてやる!)」
そんなこと考えていたのかコイツ。
この小説のあらすじに書いてあるコスプレについて、今までは大して明言されて来なかったが、どうやらコスプレをすることができなくて鬱憤が相当溜まっていたらしい。
「(今は
アンナ=シュプレンゲルとかいう、よくわからん奴が現れるみたいだけど、どうせ新シリーズで出てくるのは3、4巻先だろうし、危険になったら上条か
…………できるよね?新シリーズになったからって、早速主要キャラ殺すような真似はしないよね?)」
アンナ=シュプレンゲルという新キャラが、新約22巻の最後に出てきたこともあって、新シリーズが出ているだろうとオリ主は予測している。
「(中条の秘密やミコっちゃんの闇堕ち案件。さらには、唯一が去鳴達に施した木原増殖実験と、ヤバめな伏線をあれだけばら撒いておきながら、新約シリーズの続きで完結はしないでしょ流石に)」
『とある魔術の禁書目録』はキャラクターや能力バトルよりも、神話や実物のアレイスターが提唱した、魔術理論を基に深く練られた設定こそが醍醐味の作品だ。(異論は認める)
そのため、謎のまま完結する可能性は大分低いとオリ主は考えていた。
「(まあ、全部推測でしかないんだけどさ。
旧約は22巻で新約に変わったけど、新約は22巻が発売されても新シリーズについてのことは言ってなかったから、もしかして新約が続いている可能性もあるし。
アレイスターがああなって(未読への配慮)、学園都市が全く別のものになるのは確定したから、それから新シリーズに移行するものだと思ってたんだけど、……鎌池先生だからなぁ)」
先の展開が予測できないことが楽しくて、前世は熱心に読んでいたのだが、転生してしまうとこうも頭を悩ませる要因になってしまうのだとは、前世では思ってもいなかった。
「(クソっ!新シリーズが出ていたら超読みたい!『終約、とある魔術の禁書目録』。面白いだろうなぁ!)」
何かいきなり興奮しているが、ヤバい奴らから逃走している自覚があるのだろうか?割りとマジで死ぬかもしれないのだが。やはり、オリ主は頭のネジは2、3本外れているらしい。
ちなみに、新シリーズは『創約、とある魔術の禁書目録』である。
「(おっと、今はそれよりも『アイテム』だ。あっちは別に瞬間移動の能力者が居るわけじゃないから、車じゃ通れないようなところを適当に進んでいけば、時間を稼ぐこと事態はできるはず。
そんな風に逃げてれば、滝壺の能力はすぐに切れる。だって暴走状態のままいるなんてどう考えても無理だろうし。それじゃあ、そろそろ移動しますかね)」
すると、オリ主が一瞬前まで居た場所を緑色の殺人光線が貫いた。
どうやらこの場所は既に特定されてしまったようだ。壁に空けられた穴から少女達が続々とやって来る。
「人が少ないところに超逃げたんでしょうけど、滝壺さんがいる時点で障害物や見通しの悪さは無いも当然です」
「上手く逃げたつもりかもしれないけど、返って袋の鼠って訳よ!」
「(いやいやいやいや早えーよ!?別にここに籠城したんじゃないんだけど!?次のポイントへの通過地点なんだよここはっ!!)」
オリ主が『とある魔術の禁書目録』の単行本について、想いを馳せていると、とうとう『アイテム』に追い付かれてしまった。
これで今の変身を変えられずに、
馬鹿かな?
「チッ!本当にムカつく奴ね。面倒臭せェところに逃げこみやがって……」
「はぁ……はぁ……」
「大丈夫滝壺?」
「うん……フレンダ、ごめんね……」
「このくらい仲間なんだから当然ってわけよ!」
そんな風にしゃべっている少女達を尻目に、オリ主は距離をとるため工場の奥へと逃げるように進む。
この工場はかなり大きく、どうやら学園都市の中でもかなり利益を取れるような、製品を生み出すの製造工場のようだ。
中は迷路のように要り組んでおり、麦野達とも先ほどまでより距離を空けられたようだ。
「『マジでヤバくね?いやいやどーすんのー?割りとマジで洒落にならないじゃんこれって。切り抜ける方法とか何一つ見付けられて無いんだけど。今回は流石にマジでヤバいわー。
AIM拡散力場捕捉されたら終わりとかマジでチート。軽く詰んでね?
……あと、マジでマジで煩すぎだから』」
どうやらオリ主が変身した能力者は、矢鱈と「マジで」を連呼する人間だったらしい。口調が軽い割りに表情が、ホラー漫画のキャラのようなとんでもないことになっている。
「(ヤバいヤバい!何か一発逆転できるような物は!?こんだけデカイ工場なら何か攻撃に転用できる、機械の一つや二つはあるだろ!)」
休日にそんな危険なものが勝手に稼働しないよう、全て停止させている事実に気付くまであと5分。
学園都市第四位にして、暗部組織『アイテム』のリーダーである麦野沈理は、自分が置かれている今の状況に血管が浮き出るほどにイラついていた。
逃げた獲物が迷い込んだ工場が、自分にとって都合の悪いことこの上なかったのだ。
「(本当に鬱陶しいところに逃げ込みやがったわねクソがっ!)」
「麦野、滝壺さんはそろそろ限界です。下部組織に連絡して離脱してもらった方がいいのでは?」
絹旗は隣でフラフラしている滝壺を見てそう進言する。
「馬鹿ね。奴は前回戦った第三位とは違って、絶対にここに留まる必要が無い。その気になればいつだってここから逃げ出すことができんのよ。滝壺が居なかったらあのクソ野郎が逃げた先が、分からなくなるでしょうが。
ここでアイツは潰す。だから、滝壺をここで退かせはしないわ」
絹旗としては滝壺をここで下がらせたかったが、リーダーである麦野がそう決定したなら異論は挟めない。
「大丈夫だから……絹旗も心配しないで……?」
「滝壺さん……」
額に脂汗をかいてそう言う少女に、絹旗は肩を貸しながら気遣う視線を送る。
そんな彼女達を無視して麦野は一人考える。
「(あのクソ野郎はここがそうだと知って逃げ込みやがったのか?足が付かないよう表でも活動している企業にやらしていたが、どこからバレやがった?)」
稼働していない無人の工場の中を、不機嫌そうにカツカツと靴を鳴らして進む麦野。
思い返してみれば、未だにオリ主が逃げれているこの状況が、既におかしい。滝壺の
麦野の能力である原子崩しは、粒子か波形になるところの電子を曖昧なまま固定して操るというもの。その攻撃力は強力でイージス艦を輪切りにできるほどである。
そのため、障害物などは跡形もなく溶解させることができるだが、最初の一撃以来麦野は一度も原子崩しを使用していない。壁などを吹き飛ばしてしまえば、簡単にショートカットできるのにも関わらずだ。
「お望み通り愉快なオブジェに変えてやる……」
そんな物騒なことを言う麦野は、着実にオリ主の元へと近付いていく。こうして歩いているのも既にクソ野郎の目前だからに他ならない。
「チッ!やっぱりここか。面倒なことこの上無いわね」
舌打ちとともに吐き捨てられたのは、純粋な憤怒の言葉だった。格下にこうも振り回されるのは、彼女のプライドが許さないのだろう。
彼女は何の気負いもなくその場所に足を踏み入れる。その工場の区画に入る扉の上にあるプレートには、『半導体珪素製造所』と書かれていた。
「出てこい売女ァ!!!!」
その区画に入ると同時に麦野は殺意を込めた咆哮を上げた。
「(ヒィィ!?ヤバいヤバい!打開するための策が何一つ浮かんでいないんだけど!?マジで詰んだ!?)」
とんでもない気炎をあげている第四位に、ビビり倒しているオリ主。あれから様々な機械に大して使えない電気操作能力を使い、幾つかは無理矢理作動させたが、それがアラームを鳴らしてしまう結果になってしまうなど、それは散々なものだった。
それが麦野には挑発に見えて、さらに怒りを燃え上がらせているため始末に負えない。
「それにしても、ここの設備はなかなか大きいですね。一体どんなものを作っているのでしょう?」
「3メートルはありそうだよねこれ」
そう言ってフレンダはその大きな筒状の設備を見上げた。
「これらの大型設備に隠れて奇襲を行えば、勝算があると踏んだんでしょうが、超残念でしたね。滝壺さんには一切通じませんよ」
「(知ってるわボケェ!でも、表に出ていっても狙い撃ちされるじゃん!?なら俺はこうして隠れるしかないんじゃい!)」
殺人集団に追い立てられてガクブルなオリ主。結局電気を無理矢理流しても、作動したのは麦野達の傍にある大型の設備と、他の数機だけだったのだ。
当然、そんなものが麦野達『アイテム』に通じるわけもない。
「あ"あ、面倒臭せぇッ!!フレンダ、あんたがあのカスを爆弾で炙り出しなさい」
「え?私!?麦野が原子崩しで一掃しちゃえば良くない?」
「私にも都合があんのよ。いいからあんまり物を壊さないようにして、攻撃し続けろ」
「いやいや、私の獲物は爆弾だからあんまり被害の調節とかは難しいんだけd「いいからやれ」……はい」
あんまりにも横暴な物言いだが、麦野はこれが通常運転である。フレンダはしぶしぶ時間差で爆発するタイプの、小型爆弾を幾つか襲撃者がいる方向へと投げた。
小型爆弾であって威力は少な目だが、人体に当たれば爆風だけだとしても、相当なダメージを与えることができる。
あとは、耐えきれず表に出てきて総攻撃を食らうか、そのまま焼け死ぬかはソイツ次第だ。
そんな絶対的な優位の中で、麦野はふと気付いた。
先ほどから横に置いてある筒状の設備の蓋が空いていると。
「(あん?何でコイツが開いて……───ッ!?)チィ……ッ!全員すぐにここから退避するわよッ!!」
「え?麦野一体どうしたってわけぐぼぉお!?」
困惑するフレンダの首根っこを掴み、強引に出口の方に走る麦野。その様子を見て絹旗も反射的に滝壺を連れて退避する。
ところでご存知だろうか?
以前日本のある工場で、高純度多結晶・単結晶シリコンを製造する過程で、水素精製設備の熱交換器を洗浄する際に大事故が起きた。
熱交換器内部に付着したシリコンの原料である、液化ガスのトリクロロシランを分解する際に発生した水素が、何かに引火して爆発したのだ。
それを踏まえて今回のことと結び合わせて見よう。
シリコンは半導体の大部分を占める素材であり、パソコン、テレビ、スマートフォンといった電化製品にも使われるものである。
当然、科学の総本山である学園都市にも、必要不可欠な素材であることは説明しなくても理解できるだろう。
そして、この工場はその半導体シリコンを生み出すための製造工場だ。学園都市は科学が2、30年進んでいるために工程の大幅な短縮はあったが、冷却の工程だけはどうしても残さざるをえなかった。
とはいえ、学園都市の安全は並大抵のものではない。
ここまで言えば理解できただろう。
大型の設備のために学園都市では、既に手動から電動に移行しているその設備を、矢鱈目ったら電流を流して偶然にも作動させてしまった馬鹿を、私達は知っている。
そして、蓋から溢れだしたその気体に引火すること間違いなしの空間に、小型爆弾などを加えればどうなるのか。
ドゴオオオオオオオオオオオオンッッッッッッッ!!!!!!
と、凄まじい爆発音とともに、学園都市のとある工場が跡形もなく吹き飛んだ。
……ちなみにだが、麦野沈理が使用する
爆破オチなんてサイテー!また爆発してますねこのオリ主。
アニメで軍覇と上条の共闘が見れただけでも、レールガンTは最高!声も合っててスゴく良かった!