とある原石の神造人形(エルキドゥ)   作:海鮮茶漬け

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もう少しでこの小説を書き始めて一年になります。

一周年記念ですが、そりゃあ何かありますよねっ!(1ヶ月半後の自分にプレッシャーをかけていくスタイル)

もしかしたら、電子レンジの前で電子メールを送るかも。


63.緊急警戒警報

 風斬をその話題で散々弄り倒し終わる頃には、上条インデックス達の痴話喧嘩も終息していた。

 涙目の風斬を近付かせて「ひょうかどうしたの?」と、純粋な目で見てくるインデックスに、先ほど自分が思い描いていた光景を思い出し、風斬は自己嫌悪に陥ったのか目線をひたすら避けているが、そこはインデックス。

 犬のように風斬と目線を合わせようとぐるぐる回り、それが余計に風斬を追い詰めている。この純粋の塊であるシスターの無垢さを見せ付けられ、自分の汚れ具合を自覚しているのだろう。

 ふはははっ、その悪感情。誠に美味であるっ!

 

 そのあと、予定通り上条達と地下街の服屋や、ゲーセンを回ることとなった。

 上条に見られるのはなんかあれだったので、インデックスと風斬をうまく生け贄にし、アニメのコスプレ姿を見られるという屈辱から回避したりなど、順調に遊んでいた。

 だが、ふと横を見ると風斬がじーっと、俺のことをみているではないか。気付いて顔を合わせるとすぐに反らす。それの繰り返しだ。

 ……また、弄り倒してやろうか小娘。

 

 

 

 そんな風に四人でそこら辺を歩いていると、壁から目玉のようなものが浮き上がり、ゴスロリ金髪ことシェリー=クロムウェルが宣戦布告をしてきた。

 そのときに、「禁書目録に幻想殺し(イマジンブレイカー)に、虚数学区の鍵まであるじゃない。無関係なガキまでいるが関係ねえか。……まとめて殺しちまったほうが早いわね」などという、ふざけた言葉を送って来やがった。

 

 ……おおん?この(自称)世界第二位の原石を知らんのかこのゴスロリぃ?

 ハッ!魔術サイドの中だと全然大したことないくせに、盛大にイキりやがって!(オリ主は現在イキっています)あの野郎しばいたるっ!……と、決意していたら御坂美琴と白井黒子が偶然合流した。

 緊急警戒警報が出されて地下街は、シェリーの手によって電気が落とされ、今は停電用の灯りが付いているため、周囲が見えないことはないが、遊んでいた学生達は地震と停電に慌てふためいている。

 それを風紀委員(ジャッジメント)として解決するため、オセロはここまで来たらしい。

 そのオセロ……もとい、白井黒子はテロリストであるシェリーと戦闘をし、シェリーからまんまと攻撃食らったが、そこに現れたミコっちゃんが華麗に助け出したようだ。

 それからは、事件解決するために共に行動しているとのこと。

 あれ?何だかんだこれがヒロイン同士の初めての邂逅じゃね?おーと、テンション上がってきたー!

 修羅場っ!フーッ!修羅場っ!フーッ!(wktk)

 

「というか、それならこの人はここに残ってもいいんですの?誰も彼女のことを入れてませんでしたけど」

 

「そうだよ!くさりも女の子なんだから、とうまと暗闇の中でいるなんて危ないんだよ!」

 

「……インデックスさん?もう少し俺に対する信頼はないのか?」

 

 そのセリフに風斬も同じようなことを思っていたのか、人が多くなって萎縮しながらも疑問の表情をしていた。

 それを見た二人+俺は納得したように頷いた。

 

「あー、黒子は知っていても、直接見たことはなかったわね。この人アンタにも姿を変えられるのよ」

 

「は?」

 

 口をあんぐりと開けるオセロ。

 俺の力は知っていても見ないと眉唾物だと思うし、しゃーないか。それに、知らない間にコピられてるとは思わないわな。

 さあ、今以上に度肝を抜いてやるか。そんなわけで、あーらよっと。

 

「『これこそが、私の劣化模倣(デッドコピー)。多様性という意味では超能力者(レベル5)であっても他の追随を許しませんの』」

 

「なっ、ぬうっ、はあっ……!?」

 

「ええっ!?くさりの姿がそこにいる短髪の付き添いと変わっちゃったんだよ!まるで伝承のドッペルゲンガーみたいだけど、これって魔術じゃないんだよね……?」

 

 おぉ、すげぇ。全部綺麗にスタッカート決めてたな。流石は黒子だな。出てきた言葉は訳わからんけど。

 まあ、これで理解してもらえるのはすごく楽だったりする。百聞は一見に如かずとはよく言ったものだな。

 それに、この初めて見せるときはやっぱりワクワクする。キャラクターの普段見れないリアクションが見れてなかなか嬉しい。インデックスも初めて見せるから、良いリアクションをしてくれるし。

 でも、インデックスさん……?ちょっとオセロへの扱いが、適当すぎない?まあ、別にいいけどさ。

 

「そんなわけで、この人が居れば黒子と同じように空間移動(テレポート)できるから、この馬鹿が誰かと残ることにはなんないのよ」

 

「『それはできませんわよ』」

 

「……………………え?」

 

 自らの後輩に話していたがミコっちゃんだが、俺の言葉を聞き目を見開く。上条も驚いたようにこっちを見る。

 いやいや、そんなに見詰められても無理なもんは無理だよ?

 

「はあ!?アンタこの前黒子の姿をして空間移動してたじゃない!何でできないの!?」

 

「『はぁ、全く。お姉様は私の能力名をお忘れですの?ちゃんと覚えて下さいな』」

 

「あームカつく!黒子のしゃべり方のくせして、どこか馬鹿にしてるところがすごく腹立んだけど!?」

 

「わー!すごいんだよ!まるで白井が二人居るみたい!」

 

「何と言いますか……。自分を客観視するとこういう気持ちになりますのね……」

 

 そんなわーきゃーしているみんなを無視して話し出す。話さないと収まりそうにないし。

 

「『私の能力である劣化模倣ですが、名前の通り模倣した相手の能力がどこかしら劣化してしまうのです。

 御坂美琴ならば電力と精密さが、白井黒子なら限界許容量と目視した場所にしか転移できないという、一種の制約のようなものが付いてきてしまうのですわ。

 そのため、シャッターの向こう側が見えない以上は、転移などができるわけがない、ということになりますの。

 都市伝説の『どんな能力もコピーする』というのは、いささか大言壮語が過ぎますわね』」

 

 そのセリフに全員が押し黙る。それは能力の特異性か、はたまた三人が残るというその事実かは当人しか分からない。

 

「『まあ、この能力が使えなくとも、私の能力の持ち味はその多様性にこそっ!この能力を使わなくとも脱出なんてお茶の子さいさいですのっ!

 ……ですが、どんな能力を使っても私一人での脱出が限界です。白井のように自分以外の脱出は不可能でしょう』」

 

「それなら、先輩には早く脱出してもらって、俺ともう一人はここで白井を大人しく待った方がいいか。それじゃあ、白井。風斬とインデックスを頼む」

 

 まあ、上条が思い付く中でも合理的な判断ではあるが、年下組は納得できなかったようで感情を爆発させた。

 

「へー!とうまは私よりも短髪と一緒に残りたいって言うんだね!」

 

「えぇ……?それじゃあ、風斬と御坂を外に連れ出してくれ」

 

「ほほぅ?アンタはこのチビッ子と残りたいと?ほほぅ?」

 

「えぇ……」

 

「……早く決めてくださいません?」

 

 白井が一緒に連れていける人数は二人までとのこと。それで風斬とインデックスのペアか、風斬とミコっちゃんのペアかで言い争っていた。

 これ見たことあるー、と思っていると、上条が決めてミコっちゃんとインデックスが、黒子に問答無用で外へ連れていかれた。

 そんな二人を見て、俺も脱出のため残った上条と風斬から離れる。なんか悪いことしてるみたいだなこれ。

 

 まあ、悪いことと言えば悪いことだけど。

 ぶっちゃけ、隔壁を壊さずに俺ともう一人を外に出す方法は幾つかある。なのに、何故それをしないのかというとそれは風斬にあるのだ。

 

 風斬は人間ではない。

 その正体は能力者が無意識に発する、AIM拡散力場の集合体。それが風斬の正体だ。そして、虚数学区・五行機関を開けるための『鍵』にもされる、悲劇のヒロインだ。

 

 このまま、原作通りなら風斬はシェリーが生み出す、土塊の巨人のエリスによって頭を強打し、空洞の頭の中にある三角柱の物体を見て、自らが人間ではないことを知る。

 俺が立ち会えばシェリーなんて上条と共にフルボッコ確定だが、それだと風斬は自らをAIM拡散力場の集合体だと、自覚することはない。

 そうすると、もしかしたら原作崩壊の起点となる可能性が生まれるのだ。風斬はその特異性から物語のキーマンとなる存在である。

 その風斬が自らの存在を自覚しないと、大幅な出力の低下に繋がるため、ロシア編で最悪天使に負けてしまうかもしれない。つまり、ロシア編で物語が終わる。

 ……まあ、ここでなら上条やインデックスはもちろん、警備員(スキルアウト)なんかの良い大人が居るため、風斬を否定するのはシェリーだけだ。

 正体が明らかになるシチュエーションとして、これ以上の場は無いし、気兼ねなくみんなに救われるといいさ。

 

 遠くで銃撃戦のようなものが始まっていることから、もうすでにシェリーと邂逅したのだろう。俺もそろそろ行動しなくては。

 それで、そもそもどうやって脱出するかというと。

 

 

「『……どっせええええええいッッッ!!!!』」

 

 

 ドガガガンッッッ!!!!と轟音と共に、重い障壁が一瞬上がり、一人の少女が綺麗な前回り受け身を取りながら出てきた。

 スガァァンッッ!!と再び降りるシャッターを背後にして、少女はよく通る高笑いをきめる。

 

「『この婚后光子にこの程度の防壁など、あって無いようなものですわっ!おーほっほっほっほ!』」

 




~学舎の園~
「そう言えば私、婚后さんの先日起きた話を聞きました」

「はい!私もあの話を聞いてとても感心してしまいましたわ!」

「噂?どういったお話ですの?」

「婚后さんがテロリストを無力化したというお話ですわ!」

「え」

「地下街を占拠したテロリストに単身挑み撃破したのち、そのテロリストの自滅で崩壊する地下街から、シャッターを押し退けてギリギリ脱出したとか」

「はい!何でもシャッターから出る時の身のこなしが、無駄が一つもなかったと、スポーツ科学を専攻している先生が太鼓判を押していたとか!本当に素晴らしいですわ!」ニコニコ

「え」


◆作者の戯れ言◆
この小説を紹介してくれてた人を見付けて、その内容をよく見てみると、基本的には褒めてくれてたけど、最後に地雷注意の警告を出しててワロタ。
……うん、否定はできないなぁ。

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