とある原石の神造人形(エルキドゥ)   作:海鮮茶漬け

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とあるの動画を見てると、小説を書きたくなってくるの不思議。Twitterでこの小説についての事を言ってくれている人が居て、やる気になりました。ありがとうございます!


64.友達

 防壁を力業で無理矢理開いて脱出した5分後。インデックスと御坂に合流した。

 

「あ、くさり!こっちなんだよ!」

 

「黒子とかの空間移動(テレポート)の能力以外でどうやって、あの防壁を抜け出せたのよ……。まさか、他にも空間移動能力者(テレポーター)のコピーをしてるって言うの……?」

 

 元気一杯のインデックスと、懐疑的な視線を向けるミコっちゃんが対照的で、それぞれの個性を表している。

 

「君達はこんなところに居て熱くは無いのかい?」

 

「とうまを待っているんだよ」

 

 そういう彼女は、照り付ける日差しを浴びて小さな額から汗を流していた。全身を覆うような修道服ならば、こうなるのも自然のことだ。

 そんなインデックスを見て、ミコっちゃんは何とも言えないような顔をしている。原作通りならインデックスから聞いた、二人の距離感にやきもきしているのだろう。

 

「それもそうだね。じゃあ、君も?」

 

「は、はあ!?何でこの私が、あんな奴待たないといけないのよ!!私が待ってんのは黒子……そうよ!黒子を待ってんのっ!」

 

「まるで、今思いついたかのような口振りだね」

 

「そそそそんな訳ないでしょうがっ!……わ、私にはアイツを待つ理由なんてそもそも微塵もないし!黒子を待つのがそんなに不自然だっていうの!?」

 

 真っ赤な顔で否定するミコっちゃんは、絵に書いたようなツンデレそのもので、どこか懐かしくそれでいて実際に初めて見るその姿に、笑顔で感謝と共に10点満点を差し上げたかった。

 

 そんなことを思っていると、スフィンクスがインデックスの腕から逃げ出す。

 

「あっ!スフィンクス!逃げちゃダメなんだよ」

 

「ス、スフィンクス……?…………え、嘘でしょ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 スフィンクスを追ってトコトコ歩いて行くインデックス。今後の展開的に放置して風斬が来るまで待っていたいのだが、そんなことをしたら上条からの信頼をまず失う。

 それは絶対に避けなければならないので、今回はちょっとだけ原作に介入することにした。

 ま、まあ、風斬が来る頃に適当に捌ければ、原作を崩壊させずに済むだろう。

 

「インデックス」

 

「あ、くさりは短髪じゃなくて私の方に来たんだね」

 

「彼女とのわだかまりは無くなったけど、和やかに話せる間柄ではないからね」

 

 まあ、実際にはからかうことに何の躊躇もないのだが、そこをわざわざ言う必要は無いだろう。

 

「それで、あの子は見付けたのかい?」

 

「うん、ほらっ!」

 

「ニャー」

 

 そう言って手に持ったスフィンクスを、こっちに突き出してきた。ぶっちゃけスフィンクスは嫌そうに身を捩っているので、すぐに解放して欲しいのだろう。

 そんな和やかなことをしていると、突然マンホールや街灯などがカタカタと揺れ出した。

 

「おや?地震かな?」

 

「……いや、違うよ。これは───ッ!!」

 

 地面が盛り上がりインデックスやオリ主の背丈を超えても、尚も大きくなっている。既にその高さは3メートルを越えるほどだ。

 そして、不思議なことにそのシルエットは、人のような手足や頭のようなものがあり、その姿は地面でできた巨人とも言えるだろう。アスファルトやマンホールなどの、地面にある物で作られた巨人は、誕生の産声を上げた。

 

 

 

「ぐおおおおおおおおおおッッッ!!!!!!」

 

 

 

 そんな咆哮を上げる恐ろしい化け物相手に、『必要悪の教会(ネセサリウス)』の禁書目録は、一切慌てることなくスッと目を細めた。

 

「──基礎理論はカバラ、主要目的は防衛・敵性の排除。抽出年代は十六世紀、ゲルショム=ショーレム曰く、その本質は無形と不定形」

 

「あれはやっぱり魔術かい?」

 

「うん。カバラでは、神様は土から人を作ったとされていてね。その手法を人が真似たのがゴーレムなの」

 

「神は土から人を作った……」

 

「だけど、このゴーレムは単なる人型とは違うんだよ。さらに、上の存在である天使にまで近づけようとしている。

 たぶんより戦闘に特化した泥と土の天使でも、作り上げるつもりだったんだと思う」

 

 そうインデックスが言うと、巨人の石像が腕を振りかぶり、インデックス達に振り下ろそうとする。

 オリ主が迎撃しようとするが、それよりも前に隣の少女が動いた。

 

 

左方へ歪曲せよ(T T T L)

 

 

 ドゴォオオッッ!!!!と凄まじい音と共に、激しく土煙が上がるがそこに少女達はいない。彼女達が避けたのではなく、巨大な石像の腕が蛇のように左へ向かっていったのだ。

 インデックスは超能力はもちろん魔術でさえ使えない、か弱い女の子だ。しかし、彼女には膨大な『知識』がある。10万3000冊の魔導書。

 その全てを使えば、魔神にさえも至れるとすらされている叡知を使えば、かけられている魔術の割り込みなど容易い。

 

「へぇ、流石だね。なるほど、後輩が異能特攻だとすれば君は魔術特攻と言ったところかな」

 

「うん、それすっごくいいかも!私には10万3000冊の魔導書があるから、どんな魔術でもすぐに解読して弱点を突けるからね」

 

「それと比べてしまうと、僕には特攻と呼べるものはないけど──」

 

 ズバチィッッ!!と空気を焼く音と共に、再び攻撃を仕掛けようとする石像の巨人の腕を電撃が破壊した。

 短くなった髪を揺らして、一歩も退かずに少女は石像の巨人の前に立つ。

 

「『私のこの万能さは結構使えるのよ?』」

 

 帯電する石像の巨人を少女は勝ち気な笑顔で見上げた。

 

「おー、次は短髪なんだよ。くさりってどんな人にも姿を変えられるの?」

 

「『直接触らないといけないけどね。多分人間だったら誰でも変身できるはずよ』」

 

 ほら、もう楽勝ですよ。

 魔術に割り込むインデックスの強制詠唱(スペルインターセプト)と、魔術師と同等の汎用性も持つ劣化模倣(デッドコピー)があれば、魔術で作った石像などごり押しでどうとでもなる。

 風斬が来る前にどうやって負けるべきか。問題はここだ。

 石像の巨人であるエリスにインデックスがピンチにされないと、風斬が身体を破壊してでも介入しようとは思わないのだ。だが、そうしないとインデックスは風斬の存在に気付くことはない。

 え、マジでどうしよう……(汗)

 何かいい案が浮かぶかと思ったけど全然思い付かん……。ここで自然にインデックスがピンチになることなくない?

 ここでミスることなんて無いし、逆にこの優勢の中でやられたら上条に失望されるわ。

 どうする、どうする!この状況の中で自然にフェードアウトするためには……何か……───っそうか!あれだ!あれしかない!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 隣にいる天野(あまの)倶佐利(くさり)の能力がどういったものなのか、インデックスは知らなかったのだが、実際にその能力を見てかなり驚いた。

 

「(まさか超能力が魔術と同じくらい、いろいろなことができるとは思ってなかったんだよ。でも、これなら倒すことだってできる!)」

 

 そんな事ができるのはそいつだけである。

 

 インデックスは天野の能力と強制詠唱で互いの長所で補い合えば、万が一にも敗北することはないと計算した。

 いくら魔術といえど物理的な攻撃が全く通じない事はなく、衝撃波や電撃でダメージは与えられるのだ。

 つまり、天野が石像の巨人へダメージを与えている間に、自分がこの石像の巨人を止めるための解を導き出せば、それでチェックメイト。

 そんな勝ち筋が見えたところで、天野から一つの提案がされた。

 

「『この感じなら余裕ね。あ、じゃあ試して見たいことあるからやってみてもいい?』」

 

「やってみたいこと?」

 

 そう言うと、天野の身体がまたしても変化する。美琴から少し背が伸びたやせ形の体型。さらに女の子らしい顔立ちから、悪人面の中性的な顔立ちへと変化した。

 先程とは明らかに雰囲気が変わった天野に、インデックスはまたもや驚いた。

 そして石像の巨人も何かを感じ取ったのか、あるいは偶然敵性を攻撃する指令が出されたのか、周囲の物を取り込んで再生した、無機質な巨腕を再び振り下ろす。

 

「『果たして、学園都市第一位のベクトル操作は、魔術を反射する事ができるのかっつゥ単純な疑問だ。

 オリジナルとは違って反射できねェのも俺にはあるが、ただの土の人形なら俺の反射の範囲内でしかねェ』」

 

「ッ!?待ってくさりっ!受けちゃダメ!!」

 

 そのセリフに血相を変えて天野を止めるインデックス。だが、そんな彼女の焦燥を伝える時間などは、もう残ってはいなかった。

 突っ込んでくるダンプカーさえ弾き返すその巨人の一撃が、回避を一切しない天野に直撃する。

 そして、ギンッ!!という、一方通行(アクセラレータ)の独特の反射音が、激突と同時に出された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 学園都市第一位の一方通行は、あらゆるベクトルを操作するという凶悪な能力を有している。そのベクトル操作を利用した反射は、いかなる物理攻撃もそのまま跳ね返す最強の防御だ。

 そして、その一方通行の防御能力をコピーしたオリ主は、その場から一切動けなくなることと、電撃や炎などのプラズマは反射できないという劣化はあるものの、単純な物理攻撃は全て跳ね返すことができる。

 

 

 

 そんなオリ主はエリスに吹き飛ばされ、10メートルほど離れた建築現場の鉄骨へと、その背中を預けていた。

 

 

 

「ごほっ!がはっ!…………はぁ……はぁ……、まさか、彼の反射が通じないとはね……」

 

 直撃を食らったはずなのに、オリ主がまだ人の形を保っているのかというと、エリスの一撃を受けて吹き飛んだ軌道が直線ではなく、物理法則的にあり得ない、山なりの放物線を描いて吹き飛んだからである。

 

「(……一方通行が魔術を反射すると、物理法則ではあり得ない結果が残る。水の魔術を受けると反射ではなく光となって分散されたりな。

 だからそのまま押し潰されるのは無いとは踏んでたけど、まさかここまで吹き飛ばされるとは思わなかった)」

 

 あの巨腕の一撃によるダメージは反射により三分の一も無かったが、その分何故か後ろへのベクトルが異常に働いたのだ。

 そのため、めちゃくちゃダメージを受けたような大袈裟な吹き飛び方をしてしまった。

 

「(まあ、普通なら何十メートルも吹き飛んだら、それで死ぬけどね。離脱できたから結果オーライか……?超怖かったけど)」

 

 オリ主は背中を鉄骨から離して、インデックスの方へと歩いて行く。敷地内から出てインデックスの居る方を見ると、予想通りにストーリーのクライマックスだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 損傷したため修復をする機能が壊れ、周りの物をひたすら体に吸い寄せるエリス。もはや、その吸収は小型の台風と化しており、その場に立つことすら出来はしない。

 その近くにはインデックスが吹き飛ばされないように、近くの標識にしがみついていた。

 インデックスはエリスを止めるために、シスター服を留めるための安全ピンを外している。そのため、チャイナドレスのように片足を露出していて、なんかセクシーで危ない。

 ……いや、そんなことを言っている場合ではないな。

 

 そのインデックスの前を見ると、そこにはエリスの腕を受け止める風斬が居た。だが、そんな細腕でエリスの巨腕を受け止められるはずがない。

 巨腕を受け止められず、風斬の腕がミシミシと音を出して壊れていく……が。

 

「ぐ、ぬぬぅ……ああああああッッ!!!!」

 

 光の線が走ると共にその細腕が一秒とかからず修復された。一瞬前まで崩れかかっていたのが嘘のようだ。

 その光景を見たインデックスはポカーンと口を開く。目の前でそんな治り方したらそりゃ驚くわ。

 

「……っ」

 

 そんなインデックスを見て僅かに傷付いた表情をする風斬。しかし、すぐに前へと向き直り、今までに見せてこなかった覚悟を決めた表情をしている。

 だが、そんな風斬にプログラムされた石像の巨人は、微塵も手を弛めはしない。

 風斬が受け止めたのはエリスの右腕一つ。そう、まだエリスには左腕が残っている。

 エリスはその左腕を振りかぶり、轟ッ!!と空気を押し潰すかのような強烈な一撃を、風斬に向かって無慈悲に振り下ろした。

 

「ひょうか!!」

 

 インデックスの悲痛な叫び声が響く。もう、その巨腕が到達するまでもう数秒と無い。

 いつもの俺なら、自分のせいで原作が解離してしまっている可能性を考えて、どぎまぎしているのだろうが、今回はそんな心配はしていなかった。

 

 遠くから力強く地面を踏み締める足音が聞こえていたから。

 

 

「風斬ィィいいいいいいッッッッ!!!!!!」

 

 

 ダンッ!と靴で地面を強く踏み鳴らして、自分の背丈を優に超える石像への巨人へ、上条当麻は一切の躊躇なく突っ込んだ。

 

「とうま!」

 

 喜びに声を上げるインデックスを見ながら、俺もそんな上条を見ながらしみじみと思ってしまう。

 

「(上条の誰かのために我武者羅に走るところ、やっぱカッコイイなぁ)」

 

 この世界に来て、上条が誰かのために走るところは何度も見てきた。その度に思うのだ。自分が憧れた主人公は、やっぱりこの世界でもカッコイイのだと。

 

 友達を守るために涙を浮かべて、一人きりで脅威へと立ち向かっている少女へ再び宣言する。

 

「──()()()()()()

 

「っ!」

 

 静かだがしっかりと芯が通った声で上条は言う。

 少女を安心させるように。絶対にこれだけは変わらないのだと理解させるために。

 自分が世界の異分子なんかじゃないということを、分からせるために。

 

「お前の住んでるこの世界には、まだまだ救いがあるって事を!」

 

 元の大きさの倍近くまで体積を増したエリスのその一撃は、数メートルまで陥没させるほどの衝撃を有していた。当然その拳も大きく、飛び込んだ上条の上半身近くまである。

 そんなものが接近すれば身がすくむのが当たり前だが、上条は万感の想いを乗せるように、その拳を微塵の躊躇無く振り抜いた。

 

「教えてやるってなあッ!!!!」

 

 パキュゥゥンッ!!!!と、魔術が打ち消される音と共に、上条の右手がエリスの巨大な左腕に接触すると、あれだけ猛威を奮っていたエリスがボロボロと崩れた。

 シェリーが企てた魔術サイドと科学サイドの、火種を作るためのテロは、上条のその一撃で幕を閉じたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから、風斬にインデックスが変わらない友情を見せることで、二人はこれからも友達のままだ。そこらへんの話は今回ノータッチだ。

 まあ、立ち合いたい気持ちは確かにあったが、今回俺は事件を引っ掻き回しただけと言ってしまえるので、なんか僅かに罪悪感が刺激されたのだ。

 え?それじゃあ、もしかしてそのシーンを見なかったのかって?

 

 いや、遠くからこの視力を活かして見てたけど?(罪悪感とは……)

 

 まあ、インデックスを風斬の元に行かせるために、風紀委員(ジャッジメント)警備員(アンチスキル)が来る前に、離れた方がいいというミコっちゃんやオセロを引き留めていたから、これぐらいはきっと、多分、おそらく許されるだろう。

 

 そして冥土帰し(ヘブンキャンセラー)の病院で上条と一緒に、インデックスの元へ向かうと、寂しそうだったがそれでも笑顔のインデックスがいた。

 原作通り、風斬はまた誰にも認識できない『陽炎の街』にへと、帰ったようだ。風斬はAIM拡散力場の集合体のため、自由にこの世界に居られる訳じゃない。再びこの世界へとやって来るのを待つしかないのだ。

 インデックスの寂しげな笑顔で、俺達と風斬(かざきり)氷華(ひょうか)の出会いの一日は終わった。再び会うのは0930事件の時だろう。それまでは一端お別れだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんて良い感じに終わろうとする、俺と上条の手をぐわしっ!と、小さな手が掴んだ。

 その先を辿ると視線を下に向けると、そこには俺が住んでいるボロアパートの隣人にして、上条のクラスの担任である小萌先生が、なんか怖い笑顔でこっちを向いていた。

 その暗黒微笑に嫌な予感をしている俺とは違って、二人はこの突然の展開に困惑しているだけのようだ。

 そして、その笑顔に付け加えられたセリフは、いつもならばこっちの事情を鑑みて疑問系にするはずなのだが、何故か今回は有無を言わせない断言であった。

 

「少しお話したいことがあるので、お時間を頂きますね」

 




言ってしまえば、今までの話は前座です。これからがこの小説の本編となります。
オリ主の秘密が一つ分かるかも?

次に付け加えたい話があるので、最後を少し変えました。数時間後に投稿します。

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