言葉の間とか作者のイメージと違いましたね。
やっぱり実際に持っていないと分からないものです。
67話を2000字加筆しました。
九月一日、俺は原作通りにシェリー=クロムウェルの企みを、上条とインデックスの力を借りて見事退けることに成功した。
しかし、俺の話は終わらないようで、
AIM拡散力場の集合体の風斬だけが存在できる、『陽炎の街』に風斬がいるはずだが、何故だか俺だけには風斬を見付けることができるようだ。
そして風斬との会話の中で、この身体に未だ明かされていない秘密があることを知る。
それは神が与えたただのオプションなのか。あるいは、この世界に来てから生まれた変異なのか。謎は依然見当も付かない。
だが、直感的にだが上条と同じく、いつか全ての秘密が開示されるだろうことが俺には分かった。
───そして、それがきっと全てが手遅れになった後だろうことも。
そんな俺が今一体何をしているかというと。
「えーと、その先輩?……いきなりどうしたんでせうか?」
「うん?ああ、ちょっとね。気分転換だよ。気にしないでくれ」
「髪を弄られるのを気にしないっていうのは、なかなか難易度が高めな気がするんですけど……」
上条のツンツン頭のセッティングをしていた。
髪を一房一房に束ね、ワックスを浸透させるようにしてツンツン頭を形作っていく。そう、俺は上条の住んでいる寮の一室で、上条のヘアアレンジをしていたのだ。
「あれ?みさきそれってもしかして香油?」
「ええ、そうよぉ。どうせなら普段上条さんがしない、ちょっとお洒落な嗜好品を使用してもらうのも面白いでしょう?
私の蜂蜜の香りのオイルよりも、天野さんが使っている香油の方が、嗜好品を余り使わない上条さんには合っているはずだって、昨日二人で話し合ってわざわざ持ってきたんだゾ☆」
そんな風にきゃっきゃっ、うふふとしているのは、暴食シスターことインデックスと、常盤台中学の一大派閥を率いる女王の食蜂操祈だ。
あのあと、新事実が多く発覚して
みさきちはインデックスを上条を取り合う恋敵と睨みながらも、なんだかんだで彼女の純真さに当てられ、友達関係へとなったようだ。
とはいえ、そこはみさきち。まだ警戒していて心を全ては開いていないご様子。
「(うんうん、『とある魔術の禁書目録』のメインヒロインが誰かを即座に見抜き、警戒するとは流石に勘が冴えてるな。そこに痺れる、憧れるぅ!)」
インデックスと話しながらも食蜂は考える。
「(インデックスさんと上条さんの反応から、今間違いなく独走しているのは天野さんよねぇ。
インデックスさんも警戒力が必要な強敵だけどぉ、どちらかというと女の子としてより、家族として上条さんは認識してるっぽいしぃ。
インデックスさんに頑張ってもらって二人で膠着状態を作ってもらった方が、派閥を率いていて余りこっちに来れない私には有り難いんだゾ☆)」
流石は
打算的に計算して、謀略を練ることにおいてのスペシャリストだ。自分に優位な立ち位置をすぐさま見付け、相手を無意識に不利な状況に追い込んでいる。
「(天野さんには返しきれない恩があるけど、こればかりは譲れない。一切手を抜かずに行くわぁ。
まあ、私が気を使ったと思ったら天野さんは直接言いに来そうだけど。
もう少しズルくても、女の子なんだから全然構わないのにねぇ。御坂さんと違ってそういう工作ができない訳じゃないのに、わざわざ真正面からしか行かないのは、ちょーと男前
もし、先に上条さんと出会ってなかったら、前に見た天野さんの信者さんみたいに私もなってたのかしらねぇ……)」
その光景を想像して顔がひきつる。ちょっとした地獄絵図だ。
そして、彼女のそんな思考には全く気付かないオリ主は、今整えている上条の髪の事に思考をシフトしていた。
「(本当にあのツンツン頭はワックスで整えたものなんだな。ツンツンじゃない上条とか激レアじゃね?)」
そんな風に考えながらもぱぱっとセットするオリ主。それを見てインデックスが声を出した。
「ねえ、くさりって髪整えるの上手だよね。私もそうだけどみさきの髪もお洒落に整えちゃったし」
「僕が常盤台で派閥を率いていたときは、よく周りに居た女の子の髪をよく弄っていたからね」
「天野さんってそんな事してたの?女王たるもの派閥の子にやらせてあげるのが優しさだと思うけど?」
「相変わらず女王様してるんだなお前……。御坂にも言ったけど、あんまりそういうことしてるとあとで痛い目みるぞ?」
「……あらあらぁ?聞き間違いかしらぁ?今胸囲力が戦闘力に吸収されたアマゾーンの名前が聞こえたけど、気のせいに決まっているわよねぇ?
最近忙しかったからもしかして疲れているのかしらぁ?はぁ~~、派閥の女王でいるのも楽じゃないわぁ」
「はぁ……、本当に御坂と食蜂って仲が悪いよな。何がそんなに気に食わないんだ?」
「…………主な理由はあなたなんだけどねぇ?まあ、それがなくても御坂さんと私は水と油、歩み寄るなんて元から不可能なんだけど」
食蜂からすればミコっちゃんは、自分の居たポジションを奪い取った泥棒猫だ。そりゃあ仲良くなんてなれないし、能力的にもお互いに嫌悪感を抱いてるから、仲良くできる方がどうかしてるか。
……ん?そういや、能力効かない俺は大丈夫なのか?あれ?もしかして、陰では嫌な奴とか思ってる?
えぇ……めっちゃへこむそれ……。でも聞くのも怖いしどうしよう……。
そんな感じに三人をお洒落にして満足した俺は、みさきちに生まれた疑念を無かったことにして、一人で街へと繰り出すことにした。
逃げたとかそんな理由ではないけれど、一人にふとなりたいときも人にはあるものだ。当てもなく適当に街をぶらぶら歩いていると、偶然にも懐かしい人物と会った。
「おや、愛穂じゃないか」
「何度も言っているが私はお前より大人で先生で年上だ。敬語を使え敬語を。そろそろ本気で教育的指導をしてやるじゃんよ」
そこに居たのは微塵も色気の無い緑のジャージ姿の癖に、グラビア紙で表紙を張れそうな凹凸ハッキリしたグラマラスボディをしている、大人の色気が隠しきれない残念美人な先生が居た。
黄泉川愛穂。小萌先生と友人の関係であり、街の平和を守る
真ん中で前髪を分けて襟足で一本で纏めている、お洒落とは縁遠い人物だ。
「うん?髪型がいつもと違うじゃんよ。ははーん、もしかして男でもできたか?色気付くなんてお前さんにも、少しは可愛いところがあるじゃん」
「違うよ。友人と今まで会っていてね。そこで髪型をお互いにセットしただけさ。
あと、君はもう少し見た目に気を使った方がいい。素材は充分にいいんだから、少し手を加えれば劇的に変わるだろうに」
ニヤニヤしてくるその表情がムカついたので、すぐに事実を言った。他人の髪をセットなどしたことが無い、みさきちとインデックスに髪をメチャクチャにされたので、最終的には上条に髪をそれっぽくセットしてもらったが、二人にも一応してもらったし決して間違いではない。
「余計なお世話じゃんよ。それにそんなことしてたら、もしもが起きたときに万全に動けないしな。
私は男を捕まえる事よりも、間違った道へ進む生徒の手を掴むことに情熱を燃やしたいじゃん」
小萌先生といい何でこんなドス黒い陰謀が渦巻く、学園都市にこんな良い先生が在籍しているんだろう?治安が悪いから逆にそういった人達が集まるのか?
「君は変わってるね」
「お前に言われるのは心外じゃんよ」
そんな会話をしているといきなり、ドバァッ!!という衝撃音と共に、路地裏の奥で何人かの悲鳴が聞こえた。それなりに音は大きく、周りの通行人の足が止まってしまっている。
そんな中で一番に動けたのはプロである黄泉川だった。
「全く……!この街は問題ばっかり起きるじゃんよ!───私は警備員の黄泉川愛穂だ!民間人は今すぐここから待避しろ!!
……こちら黄泉川。何かしらの異常事態が起きた。今すぐ何人か派遣してくれ!ここは第七学区の…………っておい!?待て天野!!」
黄泉川は携帯で警備員に連絡をしていたので、先に行って様子を見てくる。爆音でもレーザー音でも無かったから『アイテム』じゃないし、他の
それになーんか今の衝撃に既視感があるのだ。具体的には数ヶ月前ぐらいまで隣で見てきたかのような気がする。
持ち前の身体能力を使って突っ切っていくと、そこには想像していた通りの人物が居た。
「ったく、こんな程度で吹き飛ぶなんて、見た目通りに根性がねえ奴らだぜ。俺を倒したいんならもっと根性付けてからにするんだな!」
その姿は最後に見たときと同じように、頭に白いハチマキを巻き、白い学ランを肩にかけた独特の格好。
以前と変わらずに暑苦しい瞳して、彼はいつも通り胸を堂々と張っていた。
「やっぱり君か」
「……はぁ、今日は思い出の顔ぶれに矢鱈と会うじゃんよ」
路地裏では数十人のチンピラと思わしき風貌の奴らが、とある人物を中心にして纏めて伸びていた。おそらくまたあの意味が分からない力で吹き飛ばしたのだろう。
前世に居たあのテニスプレイヤーと並ぶほどに、熱いこの男はいつも通りに根性で、何もかもを解決していたらしい。
『とある魔術の禁書目録』では、三人のキャラクターがヒーローとして扱われているのは、新約既読者ならば当然知っていることだろう。
主人公である上条当麻。
ダークヒーローの
そして一般人視点のヒーロー、浜面仕上。
それが公式だが、実際にこの世界で直接見た主観的な意見を言わせてもらえるなら、俺は最後のヒーローは浜面仕上ではなく、このキャラクターを推したい。
「ん?よお!久し振りだな天野!」
世界最高の原石にして
そんな彼は俺の元相棒でもある。
やっとこの男を出せました。次からは過去のお話