とある原石の神造人形(エルキドゥ)   作:海鮮茶漬け

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削板とオリ主が居ることで、間違いなく起こるであろう事を一辺に書いちゃいます。どんどん巻きで書かないと旧約が終わらねぇ……。


多重能力編
69.初顔合わせ


「おっ!黄泉川センセーも居るじゃねーか!久し振りだなっ!」

 

「……名前呼びじゃないからセーフという訳でも無いじゃんよ。原石っていうのは敬語を言えないような縛りでもあるのか?」

 

「さあ?どうだろうね。僕達以外の原石は見たこと無いから分からないな」

 

 そんな俺のセリフにため息を吐く黄泉川先生。

 えっと、その、なんかゴメンね?エルキドゥって敬語使わないみたいなんだよね。

 原石二人と警備員(アンチスキル)という異色のトリオだが、そんな俺達にはとある事件から繋がりがある。

 今から二年前。

 固法(このり)美韋(みい)と出会った後のことだ。一年後に俺はこの世界最高の原石と出会った。

 この街が生み出した一つの悲劇の真ん中で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこは学園都市にある研究施設の一つだった。最高峰の設備ばかり揃えられていることから、そこが学園都市にとって如何に重要視されているか伺い知ることができる。

 しかし、今ではその高品質な設備は軒並み停止している。電力を止めていないだけで、その研究施設は全く稼働していなかったのだ。

 そんな施設をよく見ると、白衣を着た人間が何人か倒れている。彼らは全員気絶していた。襲撃を受けたのだ。それも外部からではなく内部からによる襲撃によって。

 この現状を生み出した白衣の女に、まだ意識がある男は睨み付けた。

 

「き、貴様っ!こんな真似をしてただで済むと思っているのか!この施設は学園都市の未来のたmぐはっ!?」

 

「『はあ……?アンタあたしのこと馬鹿にしてんの?そんな事は当然全部知っているに決まってるでしょ?

 ぜーんぶ分かった上でここを潰しに来てるのよ』」

 

 そう言ったのは、高圧的な声を上げる身長が平均よりも高い女だった。彼女はここの研究者で、進めていたプロジェクトの副リーダーだったのだが、今はこうして何故か上司を踏みつけている。

 その奇行を行う女は懐からある書類を取り出した。

 

「『こーれっ。これ見える?ここの成果のデータ。数年間続けて全くのゼロ。

 研究者の夢?はあ?生産性が皆無ならやる意味なんて何も無いてしょ。

 この実績と私自身が生み出すデータ、どっちの方がより実用的か上の方も分かってるようね。目障りだから潰すと言ったら「どうぞ」だってさ。

 アンタ達は無事、なんにーも出来ずに終わったのよ』」

 

「な、何故だ?貴様にはこのプロジェクトに直接的な関係はなかったはずだ。

 まさか下らん英雄志望か?貴様の唯一性を失いたくないからか?馬鹿馬鹿しい!そんな個人的な事で我々の偉業を妨げるなど、愚昧にも程があるっ!

 この実験の成果はなぁ!全ての能力者の可能性を広げる偉大n──たわばっ!?」

 

「『全然違うわよカス。知ったかされると本当に腹立つわ。まあ、本当のことをアンタなんかに話す気は無いけどね』」

 

 ヒールの踵で男の脳天を勢いよく踏みつける。そしてそのままぐりぐりと踵をめり込ませながら女は言った。

 

「『アンタ達がしていたことが、学園都市の未来のためだろうがなんだろうが、何も成せて無い時点で無意味な虐殺よ。

 アンタは人間としても科学者としても終わってる負け犬。そこら辺を学園都市の闇から、責任を追われながら実感したら?』」

 

 最後に男をその細い足で二メートル程吹き飛ばした女は、以降男の方を一切見ることなく、あるところへ向かって歩いていく。そして、ついた先はシャッターが閉じられている部屋だった。

 先程の男から奪ったIDカードを読み込ませ、その閉ざされたシャッターを開ける。

 開いたその先は大して広くもない部屋だ。何か特殊な設備が置いてあるわけでも無い。

 このままでは何故厳重に閉じていたのか分からないが、答えは側面一杯に取り付けられた巨大なガラスの向こうにある。

 変身を解いて緑色の髪を流している女は、そこにある光景を上から見下ろした。

 

「(これはNPCがどうとか以前に胸糞悪いな)」

 

 そこには科学者が産み出した地獄があった。懐から取り出した書類とは別のレポートに記されている。

 

 ここの名は特例能力者多重調整技術研究所。縮めて『特力研』。

 ここでは多重能力(デュアルスキル)の研究が行われていた。

 多重能力とは能力が一つ以上の能力を有する能力者の事だ。絶対能力者と同じくらいに、科学者に重要視されている事柄でもある。

 そして、俺は常盤台に入りたてのとき、それに関係するある噂を耳にしていた。

 

『非人道的に多重能力者(デュアルスキル)の能力開発が進んでいる』、と。

 

 別にそれは不思議なことじゃない。原作でも少ししか触れていなかったが、多重能力者の実験はかなりの数の犠牲者を産み出していたはずだ。

 ある意味では原作通りとも言えた。

 しかし、見過ごせない言葉を俺は聞いてしまった。

 

 

 

 その実験は劣化模倣(デッドコピー)を第一目標に据えている。

 

 

 

 まさか自分の名前を好きなように使われているとは、思ってなかった。確かに、科学者共は多重能力者と俺のことを期待していたのは知っていたが、まさか、都合良く俺を火の元に立たせているとは。

 

「(俺が居なくても多重能力の実験は散々してただろうが!都合よくスケープゴートにしやがってっ……!)」

 

 オリ主ブチギレである。

 まあ、自分を知らない間に矢面に立たせて、散々甘い汁を吸っていた奴が居たのなら、堪忍袋の緒が切れるのも仕方がないだろう。

 こうして、オリ主は八つ当たりで殺される可能性や、都合よく利用されるのにムカついたため、変身能力を使い内部からぶっ壊すことにしたのだ。

 

 ──ちなみにだが、土御門にローラ=スチュアートのスパイだととっさに言ったのは、自分がされたようにいつか誰かをスケープゴートにするのだと、画策していたからだ。

 要するに、ただの八つ当たりである。

 

 そんな経緯があったために、オリ主はいろいろなところに手を回して、この施設を破壊することにしたのだ。

 良くも悪くもそう言った伝は矢鱈とあるので、学園都市の上と掛け合うのは難しくはなかった。まあ、実行までに二ヶ月もかかってしまったのだが。

 紆余曲折あったがこうして特力研を潰すことに成功した。

 

 そして、この施設の成果ともいえる悲劇がそこにはあった。

 

「(まさか子供の脳ミソを切ったり付けたりしてるとはな。突然変異があとから起こるかもしれないと、あの状態のまま生かされてるのか……)」

 

 その隔離された空間には無惨な姿の子供達が居た。

 話す言葉はとても言葉にはなっておらず、歩くことすら出来ていない。乳児のような声や動きをする、四十人程の小学生の子供達は異常そのものだ。

 言語能力、計算能力、おそらく判断能力までも無くなってしまっているのだろう。

 

「(科学者によると俺が変身するとき、どうやら演算が途中で跳んだようになって、結果がいきなり算出されるらしい。

 まあ、これは神の特典だから演算をそもそも使わないけど、変身した相手のことを僅かにトレースするから、それが僅かながら演算という結果で現れてしまっているのだと思う)」

 

 何が言いたいかというと、科学者達は能力が算出させる演算に主体において研究をしているが、オリ主の能力にとって演算などは副産物であり、入力するときに混ざり込んだ異物でしかないのだ。

 

「(そのことを当然知らない科学者や研究者達は、逆転の発想をすれば多重能力者が、人工的に生まれるのではないかと考えた。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()())」

 

 最初は計算能力から始まり、言語能力、記憶力と削っていき、どんな変化が能力者に現れるのか計測したのだろう。

 演算に必要ないところも切除していることから、こいつらのヤバさが分かる。

 本当に実験動物(モルモット)としか見てないのな。

 

「(本来ならもう殺してやるしか救いが無いけど、この街には名医が居るからきっとどうにかなるはずだ。時間はかかるだろうけど、きっと心の安寧も取り戻してくれる。

 死んでなきゃ絶対に助けてくれるからなあのお医者様は)」

 

 そしてとある病院に電話をかけながら、オリ主はその場から踵を返す。

 

「(あとは、あらかじめ呼んでおいた警備員がかけつけて来るまで、証拠を隠滅しようとするアホを、見張っとくのが俺の役目だな)」

 

 すべきことを再確認し、この馬鹿げたプロジェクトを完膚なきまでに終わらすつもりなのだ。とはいえ、この施設に居た科学者も研究者も気絶させ、外部との連絡手段は軒並み破壊したので、どうすることもできないのだが。

 オリ主は科学者や研究者が外に逃げないように、一旦外に出ることにした。仮に目覚めても気配を辿れば、視認しなくても見付けられるのだが、わざわざ奥の狭まったところに居る意味も無い。

 そのような理由で、オリ主が先ほど開いたシャッターから、まさに一歩目を踏み出したところで。

 

 

 目の前の天井が落ちた。

 

 

 ドゴシャァァアアアア!!!!と、凄まじい音を出したその地点は、一瞬で視界を奪うほどの砂煙を立ち上らせる。この光景にさしものオリ主も目が点になった。

 「(まさか、隕石でも落ちたのか……?)」と思ったが、そんな偶然があるわけもない。オリ主はその砂煙の向こうから聞こえる声を聞いた。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()鹿()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 聞いたことの無い声だった。前世での知識も合わせて、『とあるシリーズ』の主要キャラには絶対に居なかった声だ。おそらく、この世界に転生した後に、付けられた声なのだろう。

 セリフから善人であることが分かる。ならここですぐに無力化したあと、全ての理由を話せば手っ取り早いとオリ主は考えた。

 

 だが、その目論見が甘かったことを察する。砂煙から出てきたキャラクターに驚愕した。

 その姿を見て背中に冷や汗がだくだくと流れ出す。アニメでは見たことは無かったが、その服装と髪型に見覚えがあったのだ。

 肩にかけた白ランとハチマキを靡かして、その男は気合いの籠った声で言った。

 

 

「そのひん曲がった性根を、俺の根性で叩き直してやる!」

 

 

 超能力者(レベル5)にして世界最高の原石。削板(そぎいた)軍覇(ぐんは)がオリ主の前に立ち塞がる。




アニメが始まる前に出したかったんだけど、なんかアニメで削板の出番がまだ終わってないし、セーフと言えばセーフですかね?

◆作者の戯れ言◆
低評価と高評価の振り幅ぁ……。
作者にしか分からないけど、評価のコメントを見ると『本当にこの人たち同じ小説見てるの?』って気分になってくる。
「はぁ……、もう止めちまうか……」と「よしっ!もっと書こう!」って感情を行ったり来たり。
……え?本当に同じ小説見てるんだよね?

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