とある原石の神造人形(エルキドゥ) 作:海鮮茶漬け
学園都市最新鋭の機材が揃ったその施設は、二人の人物により既に壊滅的な被害を受けていたが、今尚戦闘が続いていた。
白ランを肩に乗せている男が、腰を低くして構えながら言葉を投げ掛ける
「お前真似っ子か?気持ちは分かるが目移りしちまうのはよくねえ。男なら一つに絞って突き進んだ方が、ビシッと根性が据わるもんだ!」
「とは言ってもね、僕は女だよ(まあ、元は男だけどな!)」
能力を使い、
しかし、そこは世界最大の原石。
「すぅ~~~~~~~~~~~~~~」
火が迫ってる中で突然深呼吸をし出す削板。炎という脅威が近づいているのにも関わらず、焦った様子は微塵もない。
肺に限界まで貯まった空気を音に変換して、削板は勢いよく吐き出した。
「──根性ォオオッッ!!!!」
ブォオオ!!と、その雄叫びはとてつもない衝撃を巻き起こし、迫る炎を火の粉一つ残さずに、跡形もなく掻き消した。
「『なっ』」
炎を掻き消しても衝撃は止まらず、オリ主の肌がその余波でビリビリと痺れる。
ただの雄叫びすら攻撃に変わる。それが学園都市の第七位にして世界最高の原石、
そんな削板が作り出した光景を見て、オリ主の顔色が変わる。
「(な、なんだそりゃああああああああああ!?!?!?雄叫びで飛んでくる炎吹き飛ばしたぞアイツ!?
アイツだけ出る作品間違えてねえか!?)」
大パニックであった。理解の範疇を超えるこの超人にただただ驚愕する。
「(音を衝撃波に変えて打ち出す音響兵器は確かにあるけど、もっと爆音のはずだ。だから無人機じゃないと使用できないのが常識。
鼓膜が破れる事ももちろんだけど、何より爆音と衝撃破で脳震盪を起こして気絶しちまう。こんな雄叫び程度の声が炎を吹き飛ばすなんて、どう考えてもあり得ないんだけど…………実際に起きちゃってるんだよなぁ……。
二段階ジャンプはするわ音速の速さで動き回るわ、常識も物理法則もガン無視じゃん。実は週刊少年ジャンプ出身だったりしない?
あーもう!こんな奴にどうやって勝てって言うんだよぉおお!!)」
少年の夢が詰まったような男に出会えて、嬉しいのは嬉しいが敵としては会いたくはなかった。
なぜなら、削板の能力は全体的によく分からないからだ。
いや、マジで分からん。原作でも理解不能って扱いだし、弱点なんて本当にあんの?
「(確か、雷神ミサカにも進化する前までは張り合ってたし、あの時点では超能力者の中で一番強いんじゃね?そんな奴に能力勝負で勝てるかいっ!
あと切り札のこの身体のスペックも凌駕されてるし。えぇ……、どうすりゃいいのさこれ?)」
自分の認識では一般人と聖人の間くらいのスペックが、この身体にはあると思っているが、この目の前の第七位にはそれが全く通じない。マジで聖人クラスの身体能力ではないだろうか。
勝つビジョンが全く想像できない。逃げることもできない。八方塞がりとはまさにこのことだ。
というか、そもそもの話
「君と僕が戦う必要があるのか僕には分からないな。何で君は僕に襲い掛かって来たんだい?」
そう、オリ主には削板と戦う理由が無いのだ。
削板にいきなり攻撃されたから、防いだのが始まりであるのだから。だが、どうやらそう思ってるのはオリ主だけのようで
「おいおい、ここまできてしらばっくれるつもりか?」
目の前の男から苛立ちが伝わってくる。
「お前が子供を集めて、くだらねぇ実験をしてるのを聞いちまってな。それを直接確かめに来たって訳だ。
お前が出てきたとこにどんな子供達が居るのか、さっき落ちてくるときに見た。白衣なんてモン着て、イッチョ前に科学者してるかと思えば、やってることは子供を使った馬鹿げた実験だ。
はぁ~、全く…………
──ここまで根性が入ってねぇ奴が同じ原石とは思わなかったぜ」
覇気が可視化できるほどに激情を燻らせている、超能力者がそこには居た。それを見てオリ主は察する。
「(……あれ?もうこれって弁解無理じゃね?)」
事実は全く違うが削板からすれば、火災現場から覆面被った黒服の男が出てきたようなものだ。
この状態で「犯人はお前にここまで情報を渡した男だ!」と言っても、信じる奴はまずいないだろう。冷や汗をダラダラ流しているオリ主の未来は暗い。
黄泉川愛穂は他の
とはいえ、この事件を知ったのは数時間前。事件の深刻さから作戦会議が開かれ、どうするのが一番いいのか散々話し合わされたが、如何せん時間がない。
万全とは言い難いが決行する事となった。
「(せめてもう一日あればいろいろ情報集めて、より確実な作戦も練れただろうに。だが、奴等がこのまま雲隠れする動きがあると言うのなら、悲劇を繰り返さないためにもここでぶっ潰すしかないじゃんよ)
虎穴に入らずんば虎子を得ず。生徒を救いたいなら命を懸ける必要がある。──皆、いつも通り子供のために命懸けで先生するぞ」
『了解!』
問題の研究施設の付近に到着した。
ここからは車では察知されるため足で施設へと近付く。そして、あらかじめ決めていた配置にそれぞれ着こうとしたその時、
「だらっしゃああああああああッッッッ!!!!」
「『クソ野郎がァァアアアアッッッッ!!!!』」
ドゴォオッ!!と、何かと何かが空中でぶつかり合うような、轟音が響き渡った。その拍子にガラスが割れて「きゃああ!?」と部下の
予想外の事態に黄泉川が舌打ちをしながら、無線を向かって声を張り上げた。
「クソッ!もうドンパチしてんのかっ!第一、第二部隊突入ッ!」
その声と共に警備員が次々と突入していく。組織間での抗争でもしているのかやけに派手な音がしているが、腰を引いていては警備員としてここに居る意味はない。
何より今回は罪の無い子供達が被害に合っているのだ。自分達大人が命を懸けなくてはならないのは当然だ。
警備員達は鉄火場に向かって躊躇いもなく駆け出す。
「おい!警備員だ!双方、大人しく投降するじゃn「ドガァァアアアン!!!!」───なッ!?」
黄泉川が警告を飛ばそうとすると、勢いよく数メートル横に何かが突っ込んできた。その拍子に設備を破壊したため、その人物の飛び出た足しか確認ができない。
今の速度でぶつかれば、まず間違いなく無事では済まない。しかし、その飛んできた人間は倒れたまま声を発した。
「流石は世界最高の原石と言ったところかな。こうも攻撃が通じないとはね」
「……お前は」
そう言って顔を上げたのは、緑色のアバンギャルドな髪をしている高校生ぐらいの少女だった。能力で先ほどの衝撃を緩和したのか、どこか怪我をした様子はない。
そして黄泉川は思う。先ほどの攻撃を食らえば仮に痛みは無かったとしても、何かしらの感情は抱くのが普通だ。それは、憤怒であったり恐怖であったりなどを抱かなければおかしい。
戦場で感情が動かないなど、それは全てを悟った聖人か狂人しかいないだろう。
だが、目の前の少女の様子はまさにそれだ。
「(どんな人生を送れば、そんな精神を持つことができる…………
凪ぎの心。巨大な大木のような揺るが無さ。この少女は一体どんな境地に居るのか。大人である黄泉川ですら全く分からなかった。
「(うん、無理☆)」
お釈迦となった最新鋭の設備の上で、オリ主は諦めの境地に至っていた。オリ主がたどり着いた境地など、残念ながらこの程度のものである。
「(いやいや、俺も結構頑張ったよ?
頼みの綱の
まあ、本当にダメージが全て貫通してたら、こんな程度じゃ済まないだろうけど)」
オリ主の十八番である、原作知識を使いキャラクターの弱点の能力を組み合わせて、有利な戦況に持っていく戦闘理論が微塵も通用しない。
全盛期の
そしてこの身体はサーヴァントのものであり、尚且つ俺の能力は様々な能力を使用できる
身体能力では常人を遥かに超えており、相手の能力の弱点となる能力を選び、原作知識で正確に突くことができる。上手く戦闘の主導権を握れれば、彼らを打倒する事も全くのゼロではないのだ。
だが、この削板と一方通行は別だ。
コイツらチート過ぎて上条の
「よっと!」
俺をぶっ飛ばした削板が空中で一回転回って、俺の数メートル前に着地する。
「(ははっ、あーあ負けた負けた。チート過ぎるわ第七位。まあ、削板に負けるのも悪くないかぁ。別に最強とか無敗とか興味無いし。
まあ、警備員に情報流したのは俺だから、無実であることも証明されて……)」
そこで気付いた。
「(木原の爺いは警備員に捕まった俺に対して、何もしないのだろうか?)」
思い出せ前世のことを。『とある』の魔術ではなく、科学でのあのマッドサイエンティストの所業を。
「(あの爺い、
そう、木原幻生は少年院にコンタクトを取り、警策看取を脱獄させた。つまり、間違いなく幻生の手は少年院まで伸びている。
なら、もしかして……。
「(警備員の中にも幻生の手駒が居る可能性があったり……?)」
あの陰謀において木原の中でもトップクラスの幻生が、警備員という組織に手駒を一つも用意していないのだろうか。警備員は善良な教師がしているという、前提条件が学園都市では当たり前になっている。
ならば逆説的に、悪事をするならこれ以上の組織は無いのではないだろうか。
それに木原幻生の権力を加えると、無実の人間を罪人へと変えることも容易いのでは?
「(えーと、そうなったらまず間違いなくあの爺いの
……あれ?もしかして、俺詰んだ?)」
木原幻生とはこの学園都市に来たときからの付き合いである。彼が原石の事を長年知りたがっているのをオリ主はよく知っていた。
「(ヤっっベェ!弱みを見せたら水を得た魚のように、活発に動き出す奴へ理由を与えちまった……っ!
今まではそれぞれの組織で対立構造がなるようにしてたけど、警備員に捕まったら、最悪あの爺いの独壇場!そうなったらあれよあれよと出荷される豚と変わらんぞ!?
それに黄泉川も今来たばっかだから、俺の無実を証明してくれない。もういっそのこと逃げたとしても、削板を振りほどける気が微塵もしねえ!!)」
「──なあ、お前って本当にここの科学者か?」
「(いーやぁぁああああ!!そんな事になったら木原の爺いに、垣根工場長みたいに
木原幻生の姿を思い浮かべ、恐怖にビビり倒しているといきなり削板から声をかけられた。
削板は腕を組んだまま思案するかのように眉根を寄せている。
「なんつうか真似っ子ではあるが、お前の戦い方には卑怯さがねえ。全部真正面のガチンコだ。
その上、子供は人質には取らねえし、攻撃も周りに被害が出ねえようにしてるみたいだしよ。なーんか違和感ばっかなんだよなぁ」
そう言った削板はどこか釈然とした様子ではなかった。話に聞いていたマッドサイエンティストとは、どうにもイメージが繋がらないのだ。
「僕は自分の事を科学者なんて言った覚えは無いよ。全部君の勘違いさ」
「つってもよぉ。じゃあ、その姿はなんだよ」
「僕が他の人間に変身ができることは、君はもう知っているはずだよ。ここの科学者に変身して施設に潜入し、内部からここを壊滅させたんだ。
その証拠と言ってはあれだけど、僕以外の科学者は全員倒れているだろう?」
そのセリフを聞いて削板が目を丸くする。
「ってことは何だ?お前もここをぶっ潰しに来たのか?」
「うん、そうだとも。勝手に僕の名前が使われて悲劇が引き起こされていたんだ。流石に見過ごせないから、こうして単身乗り込んだのさ」
「マジでか」
「マジだよ」
全く意味の無い戦闘でしかなかったが、どうやらこれで終止符が付いたようだ。
エルキドゥの言動がオートでされるためスラスラ言葉が出てくるが、実際は「マジよかったぁ……!今回ばかりは詰んだかと思った。まだ上条にすら会ってないのに、解剖コースにならなくて本当に良かった……っ!」と、内心めちゃくちゃ安堵してたりする。
和解した二人に、一人の女性が近付いた。
「二人だけの空間を構築されても私らは困るじゃん。どういうことなのか私達にも説明して欲しいじゃんよ」
「せ、先輩っ!危ないですよ!彼らは数秒前まで戦闘をしてたのに……っ」
「子供から逃げてるようじゃ教師はやれないじゃん。どんな高位能力者であっても、いつでも大人としての対応をすることが大切じゃんよ」
それが黄泉川の矜持なのだろう。どんなに強大で軍隊を相手取れるような力を有していても、子供であるなら媚びへつらったりしない。
それは子供に舐められたくないとかいう理由ではなく、自らが子供が不安を抱かないように、大人として泰然としたいという気持ちの現れなのだ。
そして、原石の二人はそんな黄泉川に、嫌悪感を抱くような人間ではなかった。
「アンタなかなか根性入ったセンセーだな!俺の名前は
「僕の名前は
「……まあ、さっきまで戦闘をしてたんだ。敬語云々をここで言うのは酷って話じゃん。二人には事情聴取に付き合って貰うじゃん。
このままだと不法侵入でしょっぴかないといけないしな。」
この時黄泉川は、この決断が現在まで響いてくるとは全く思わなかったのであった。
とはいえ、先程とは打って変わって和やかな空気が流れ始める。事件は終わったのだ。今さらピリピリする理由もない。
そんな皆の緊張の糸が切れた間隙にそれは起きた。
スパァァアアアアン!!と畳を叩くような音と共に、オリ主の長い髪がいきなり扇状に広がったのだ。
7000近く書いたのに終わりませんでした。……このオリストーリーはさらっと終わるつもりだったのに。上手くはいきませんね。
それはそうと65話ってどうでしたか?TS要素出してみたんですけどやっぱりやり過ぎでしたかね?作者の立場だとよくわからないので、感想を頂けると嬉しいです。