とある原石の神造人形(エルキドゥ)   作:海鮮茶漬け

74 / 149
連日投稿いきます。

また伏線といいますか、原作のあれを匂わしていきます。あれを出せるのはいつなのだろうか……。


72.予測不能

「(くくくくっ、この時を待っていた……)」

 

 物陰に隠れるこの男は、削板に「根性が無いインテリ」と言われた小悪党の研究者である。

 

「(貴様を倒すほどの戦力を用意は出来ないが、何も武器が一つもない訳ではない。しかし、それが貴様に通じる事が無いことも知っていた。そして、そのための第七位だ。

 第七位とぶつかれば如何にあの女とはいえ必ず敗北する。

 私ととしてはそのまま第七位に奴を殺して貰う事が、最高の結果だったのだがな……。

 だが、第七位は私の策略に気付くかもしれないと、あらかじめ予測はしていた。そして、気付いた時には狙い通り、あの女に相当なダメージを与えた後だ。なら、後は私でも奴を殺すことができる)」

 

 男は手に持っていた鞄から、筒状の機械に幾本もの突起のようなものが付いた、不可思議な物を取り出した。その青白い金属の脚立と銃身の側面にはこう書かれていた。

 

 Model_Case_"Aero_Shooter"

 "Aero_Shooting_Gun"

 

「(暗部でも量産されなかった銃だが、いつかプレミアになると確信して入手しておいてよかったよ。この銃は風力使い(エアロシューター)の超能力を基にした銃だ。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が、それは今はどうでもいい)」

 

 まるでスナイパーライフルのような銃を、死角の陰から構える男。

 何故こんなことをしてもバレないかというと、オリ主が手当たり次第に科学者や研究者をしばき倒したため、警備員も昏倒しているかどうか見るだけでは見分けが付かず、さらには原石同士の戦いに意識を向けていたため、それぞれの確認作業へとまだ入れていなかったのが原因だった。

 

「(警備員が来たときは焦ったが、貴様達の戦いへと注意がそれたお陰で事なきを得た。後はこの銃で始末してしまえばそれで仕舞いだ)」

 

 カチャッ、と銃口をオリ主の方へと向けた。

 

「(この銃の飛距離は50メートルと拳銃程度しか無い上に、その大きさはスナイパーライフルと同じほどに大きく、さらに発射音もかなり出てしまうなど、比較すると遥かに拳銃の方が使い勝手がいい。

 そのため、本来なら使おうとする暗部の奴はまず居はしないが、逆に私のような素人にはこの銃は有り難い。

 何故ならこの銃は文字通り風と空気を使い、金属の銃弾を打ち出す武器だが、その反動が全く存在しないように設計されている。つまり、ゲームのガンシューティングと同じだということだ。

 この距離で都合良く射線も開いている。幾ら素人の私でもこれを外す事はない)」

 

 スコープからオリ主の額を覗きながら、男は自虐とも言える思考を回す。

 

「(ああ分かっているとも。第七位が貴様を殺さなかった時点で私の破滅は変わらない。

 だが、私だけ地獄に落ちるなど認めてなるものか。私を追い詰めた貴様がのうのうと生きていくなど許してはおけん。行くのならば諸共にだ。

 私も近いうちにそちらに行く。だから、私が行く前に貴様が先に行けぇッ!!)」

 

 引き金が引かれた青白い銃口から、金属の弾丸が飛び出した。畳を叩くような激しい音と共に、弾丸は1㎜もズレることなく正確にオリ主の額に突き進み、そして。

 

 

 

 ──着弾した。

 

 

 

 オリ主の髪が衝撃で扇状に広がる。幾ら回復系の能力を有していても、脳に弾丸を貫かれて即死ならば、能力を行使できないのは道理だ。

 

「……くっふふ、馬鹿めが。下らん正義感など出さずに見過ごしていれば、まだ長生きできたものを。これで後は───ん……?」

 

 爽快感で気持ちがこれ以上無いほどに高揚するが、その結果を再びスコープ越しに見るとあることに気付く。

 

 スコープに映っているのはあの女の顔ではない。それは例えるなら、まるで人間の手のようではないか?

 そんな疑問を浮かべる男の思考に、根性が具現化したかのような少年の声が割り込んだ。

 

「ふー、危ねぇ危ねぇ。おい、無事か?」

 

「お陰様でね。ありがとう助かったよ」

 

「なーに、俺も間違ってアンタに喧嘩を売っちまったからな。これぐらい良いってことよ」

 

 そんな風に呑気に会話していることが分からない。片方は銃弾に撃ち抜かれて死んでなければおかしいのだ。

 

「(どういうことだ……?間違いなく弾丸はあの女を貫いたはずだ!!なのに何故生きている!?)」

 

 まさか誤射でもしてしまったのか?と男は考えるが、次の瞬間目を見開いて驚愕する。結果は思いの外簡単に見付けられた。

 

「こんなモンを使うたぁ、つくづく根性ってのが分かってねえらしいな」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「は、はあ!?何だそれは!?」

 

 削板の右手の中にある弾丸から、削板が天野に着弾する寸前に掴みきった事が分かる。これだけでもふざけた結果だが、男は万全を期して削板から見えない位置から射撃した。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 その事から、先ほどのあの女の髪が広がったのは、削板がマッハの速度で動いた影響だろう事が推測できた。

 

「こういうときの首の後ろがピリピリする感覚は馬鹿にできねえ。勘でしか無かったが動いたのが正解だったな」

 

「か、勘だと……?そんな馬鹿げた理由で私の渾身の一手が……っ」

 

 男は自分の理解が全く及ばない事態に茫然自失となる。まあ、だからといって容赦をする理由は全く無い。

 削板が男を睨み付けた。

 

「ヒイィィッッ!!ア、警備員(アンチスキル)!俺を早く捕まえて保護しろっ!お前達には俺を無意味な暴力から守る義務があるはずだ!!」

 

 男は飛んでくる銃弾を受け止める能力者を目の当たりにして、錯乱状態へと陥った。彼にとって削板は化け物以外の存在には見えなかったのだろう。

 馬鹿な男の自分勝手な発言を聞いた黄泉川は、端的に答える。

 

「お前は特殊な武器を所持しているから、不用意に近付くのは危険じゃんよ。

 本来なら私達でどうこうするのが筋だが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 それを私達が邪魔して逆に危険になる可能性もあるし、今回は傍観させて貰うじゃん。

 …………──子供に銃弾撃ち込んどいて、ただで済むと本気で思ってるのか?」

 

 その言葉を聞いて男の顔が青白くなる。この場から脱する方法がないと理解したのだ。

 ナンバーセブンは様々な感情を噛み締めるように、拳を握り締める。

 

「簡単に騙されちまった俺も俺だが、人の事を騙して動かして自分は高みの見物とはな。こんな根性無しは初めて見たぜ」

 

「ヒィイッ!?」

 

「そんなお前にこの俺が根性ってモンを教えてやる。歯ぁ食いしばれ!!」

 

 今まで最低でも十メートルは離れていたはずなのに、一瞬で目の前に現れた削板に男は悲鳴を上げる。

 腰を落とし振りかぶった拳を削板はそのまま振り抜いた。

 

「すごいパーンチ!!」

 

「な、何だそのふざけたネーミぐるぷぎゃ!?!?!?」

 

 削板から繰り出されたその一撃を受けて、男の研究者は切り揉み状に回転して飛んで行く。それはプロのフィギュアスケート選手でさえ、感心してしまうほどの回転数だったという。

 ドサッ!と地面に叩き付けられた男は昏倒し、無事そのまま警備員の御用となったのだった。




削板の描写をやり過ぎたかもしれない。本当にこんなことできんのかな?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。