とある原石の神造人形(エルキドゥ) 作:海鮮茶漬け
「
「ミ、ミサカはミサカは目をぐるぐるさせながら名前も知らない女の子の腕の中で、一切の抵抗もできずに捕獲されてしまったり~ぃ──ガクッ」
ひとしきり
それを見て一方通行は遠い目をして思う。
「(もう少し理知的な奴のイメージだったンだがなァ……)」
一方通行にとって天野俱佐利はそれなりに特別な人間だった。幼少期の出会いで幾らか救われもしたのだ。
だがまあ、基本的に幻想とは打ち砕かれるものなので、一方通行には甘んじて受け止めて貰うしかない。
すると、突然「それにしても」と天野は言って話し出す。
「何故か病院には無縁の何か香ばしい香りがむぐっ」
「わー!?ってミサカはミサカは半分飛んでいた意識を無理矢理覚醒させて、突然ネタバレをする曲者の口をすぐに塞いでみる!」
目を回して力尽きていた打ち止めがカッと目を見開き、背後に居る天野に万歳をする動きで口を塞ぐ。
「このふぁおりは、やふぃもふぉふぁい?もひぃかしてふぃっひぃ──」
「ふぎゃー!?この人、口を押さえてるのに構わずに言ってる!?ってミサカはミサカはこのいきなり現れた理解不能な暴走機関車さんに、驚愕しながらもさらに手を強く押さえ付けてみる!」
漫才のような事をしている二人を、呆れた目で見ているのは一方通行だ。ギャーギャー言ってる二人を止めないのは、優しさからかはたまた単純にめんどくさいからか。
何かは知らないが打ち止めは何かを隠しているらしい。別に興味は無いので一方通行は特に聞き出しはしなかったが。
医者が知ればまず怒られるだろうバカ騒ぎしている二時過ぎのことだ。
それは突然だった。けたたましくアラームが院内に響き渡る。この時点で異常事態だと分かるだろう。そして、次に院内放送でそれは確信に変わった。
───武装したテロリストが侵入してきました。院内に居る医師患者問わず、直ちに退避してください。
繰り返し放送します。武装したテロリストが侵入してきました。院内に居る医師患者問わず、直ちに退避してください───
アラームと共に放送された内容に、一方通行は僅かに片眉を下げた。
「(ほーら、来た来た。学園都市では大して珍しくもないテロリスト。一丁叩きのめしてきますか!)」
存分に打ち止めを愛でたオリ主は二人を置いて現場に急行していた。とても放送を聞いていたとは思えない行動だが、オリ主にとってはこれが必要な役目のような認識だ。
「(テロリストを叩きのめして、俺ができる子だという事を証明してやるっ!)」
なんだかんだ先ほどのカエル顔の医者と、布束に言われていたことを気にしていたらしい。自分がいらない子ではないのだと言うことを示すために、喜んでテロリストに突撃していく。
その噂のテロリストが侵入して来たらしい正面玄関に向かって行くと、見知った顔が居た。
「おや?愛穂じゃないか」
「あら?あなたの知り合い?」
「……はあ、またお前か天野」
午前中に出会った黄泉川がそこに居た。結局あれから他の事件が起きてしまい、休みだったのを返上したそうだ。もう少し休んでもいいんじゃない?
そして黄泉川の横に居るのは芳川桔梗。
彼女は一方通行が脳にダメージを負ったあの日、とどめを刺そうとした天井亜雄と拳銃を突き付け相討ちを謀る。しかし銃弾を胸部に受けて重傷を負った芳川を、気絶したまま一方通行は無意識下で能力を発動し、流れる血液を千切れた血管に無理矢理繋いで彼女を存命させた。
そんな彼女は当然の如く入院し、ここの患者となっている。
休日を返上した黄泉川の話だと、何でも対一方通行用の秘密兵器がテロリストの手に渡ってしまったらしい。いや、ザルゥ……。幾らなんでもザル過ぎるだろ……。管理能力皆無か。
まあ、アレイスターがそこら辺は甘くしているらしいし?決してそいつらが無能ってわけでも……あれ?確かアレイスターが甘くしているのは魔術サイドの介入だったっけ?…………ザルゥ……(しみじみ)
いや、ちょっと待て。
「(何盗まれてんだこの馬鹿ッ!普通に死ぬわそんなもん!ここら辺全部更地になるんじゃねえの!?
俺そんなの知らんのだけども。まさか、火野神作みたいに原作じゃあこの話があったのか!?
ヤ、ヤベェ、まさかこんなところに地雷が隠されてたとは……!!
何てこった。劣化した俺じゃあそんな化け者の相手なんか絶対無理だぞ!?)」
このまま一方通行が来るまで隠れてやり過ごそうか、という考えが浮かんだまさにその時、正面玄関から三人組がやって来た。
「あのぉー?一方通行くん居ますかー?」
三人組の真ん中にはなんか変な機械を背負った、そばかす女がそこには居た。その光景を見てオリ主は直感する。
「一方通行ちゃーん!手術の時間ですよォーー?キヒヒッ!!」
お前、さてはモブだな?
イキった雰囲気を撒き散らすソバカスのチビ女が、小馬鹿にしたような口調でさっきから「ヤバイヤバイ」言っている。そんなテロリストを見て俺は思った。
「(何て言うかコイツ等パッとしねえ……。本当に鎌池先生とはいむら先生のキャラクターか?何て言うかクセが足りないんだよなぁ。
いや、まあこれが『ブロック』的な大人の暗部組織ならまだしも、その手に『対一方通行用の秘匿兵器』を持ったキャラクターだぞ?絶対重要なキャラじゃん。それが暗部キャラの劣化みたいな奴とかあり得なくね?
もしかして、いきなり力を得てしまった新約の加納神華とかの一般人枠か?それならあの地味というか普通過ぎる、両隣の奴らは何とか理解できるけど、それだと逆にあのソバカス女がやたらと主張してくる……。
……
そこでオリ主は思考を巡らす。
「(ハッ!まさかそれが狙いか?つまり奴らはやられ役なのか。
奴らは
いや、それこそ全部が
次々と憶測を積み重ねていくオリ主。暗部の謀略が張り巡らされた作戦では解決しようとすることで、土壺にハマることもあるのだ。考えすぎということは無い。
だが、状況は当たり前のように動く。
「それじゃあ、無理矢理出させるしかないじゃん!!」
ソバカス女が声を出すと同時に、青色のレーザーのような物が警備員を襲う。その結果は一目瞭然だった。
「ぐあああッッ!!!!」
そのレーザーは警備員の盾を両断しその隊員の腕を切断したのだ。「全員直ちに下がれッ!」という黄泉川の声と共に、戦線が後退してくる。
そのときに素早く斬られた隊員に近寄って掴み、切断された腕も掴んで同じく離脱した。
「それじゃあ、先生のところに行ってくるよ」
重傷者を担いで動き回るのもあれなので、黒子の
そう言って去って行く天野を見て、目の前のテロリストに警戒しながら隊員の一人が言った。
「なんというか本当にこういうときにアイツは動揺しないな……。ああも冷静に動けるものか?」
それは黄泉川も思った。応急処置をすぐさま済ませあの医者に見せる。それが最適解だとは理解できる。
「(だが、それが目の前で腕を切断された人間を見て、すぐさまできるかは別の話じゃんよ)」
腕が切断されるなどのショッキングな光景を見れば、普通は思考が空白になるものだろう。そして、次に来るのはその凶刃が自分に襲い掛かるかもしれないという恐怖だ。
そのはずだが、
「(アイツは事も有ろうに、切断されたその腕を何事もなく平然と掴んだ。そんな芸当がただの女子高生にできるはずもない。まさか、見慣れているはずもないしな。
……天野、お前は今まで一体どんな環境で何を見て来たんだ?)」
ふとしたときに現れる天野俱佐利の異常性。黄泉川は他の警備員よりかは彼女と接してきたつもりだが、いつになっても慣れる気がしない。
「ッそんなこと考えてる暇は無いようだ!後ろには重篤で動けない患者が居る!これ以上は退けないぞ!」
そうここから先は重篤な患者が居るエリアだ。何人避難したかは分からないが襲撃が突然起きた事を踏まえると、おそらく全員ではないだろう。
「あれー?何々逃げるの止めちゃうのー?それじゃあ、真っ二つになりたいのは誰かなー?」
そんな風に挑発してくる子供に警備員達それぞれは目を合わせた。
「黄泉川……」
「ああ、今から三人で突入して斬られなかった奴がアイツを取り抑えるじゃん」
「なるほどな。じゃあ、誰が斬られたとしても恨みっこ無しだ」
「ヤバイヤバイ!三人位一振りで斬れちゃうってばっ!」
決死の突入をした三人に向かって、少女の手に繋がれた兵器から青いレーザーが襲いかかった。このままでは間違いなく誰かは両断されるだろうその未来がやってくる。
しかし、幸運なことにもレーザーなどとは比べ物にならない存在が、彼らの前に現れる。
ドゴオオオオンッ!!という破壊音と共に、三人組の大男がその人物が登場した拍子に吹き飛ばれた。
「ッ何!?」
破壊されて壁から出てきたのは、アルビノ特有の白髪赤目をしている学園都市最強の能力者。
彼は戦場こそがまるで居場所とでもいうように、なんの気負いなく靴を鳴らし歩く。
「オマエかァ?俺に喧嘩を売りに来たっつゥ自殺志願者は?精々俺のリハビリ程度には足掻きやがれ」
寝ていた白い怪物が再び動き出す。
「ヤバッ!もう会えちゃったじゃん!──それじゃあさっさと斬られちゃってよ!!」
そう言って両手の兵器から一方通行に向けてレーザーを発射した。その二つの青は一方通行へと到達し、
蛇のようにうねり見当違いの方に向かって行った。
その不可思議の光景を見てソバカス女の声が僅かに低くなる。
「……へぇ、アンタを倒すのは簡単じゃ無さそうだね」
「お前を倒すのは簡単そォだけどなァ?」
そう言って睨み付ける両者。ぶつかり合うその数秒前に場に似合わないソプラノが響いた。
「あー!こんなところに居た!ってミサカはミサカはこんなところに居るあなたに声を掛けてみたり!」
「あン?」
振り向くとそこには何か小包を持った打ち止めがそこには居た。そして、近寄ってくる打ち止めの居るところから異常な音が響く
ピシッ!ピシッッ!!と天井から聞こえてきたのだ。どうやら先ほどの戦いで脆くなっていたようだ。
「チィッ!」
崩壊を予測し、すぐさま近寄ろうとする。だがまたしても変なことが起きた。崩落箇所に居たはずの打ち止めが消えたのだ。
「なッ……!?」
天井を見ていた一瞬あとに打ち止めの影も形も消え失せた。まさかの事態に一方通行も驚愕する。
何が起きたのかその優秀な頭脳で理解する前に、その理由は簡単に提示された。
「うわわっ!?ってミサカはミサカは突然変わった景色に驚いて声を上げてみたり!」
「『全く、お転婆が過ぎますわよあなた。戦場にトコトコ歩いていくなど能天気にも限度がありますの。危機感を持って下さいまし』」
打ち止めは黄泉川の居る辺りまで移動していた。見てはいないがこの事実から推測するに空間移動系の能力だろう。
打ち止めの隣に居る人物に心当たりは無いが、その髪色で一方通行は誰であるのかを理解した。
「パクリ女か」
「『全く、
……まあ、今回はよろしいでしょう。彼女は私にお任せ下さいな。あなたはあなたのすべき事をしてくださいませ』」
そう言って訳知り顔をしながら、打ち止めが動かないように再び抱き寄せる天野。
突然掴まれ「ふぎゃあー!?」などと打ち止めは言っているが、この場で一番安全なのがそこであることは明らかだ。
言外に一方通行の懸念事項を無くしておくと言っているのを察し、様々な感情が浮かぶがその全てを無視した。今は目の前の存在に意識する。
「釈然としねェが、これでオマエらだけに意識を向ければいいわけだ。
さァて、──何秒持ってくれンだ?オマエ?」
後顧の憂いが無くなり、一方通行は改めて目の前のテロリストにその赤い目を向けた。
それを見たにも関わらずテロリストに怯えの感情は見えない。「キヒヒッ」と笑いそのレーザーを再び一方通行に向けた。
「こっちにはアンタ用の兵器用意してるんだっての!!余裕ぶっこいたまま倒されろッ!!」
そして、それから十八秒後。その三人組は無事拘束された。
えぇ……。
「なるほどねぇ。あのレーザーの正体は窒素を溶かしたウォーターカッター。でもそれはフェイクで本命は、空気を窒息させる濃度の窒素へと変える能力。
確かに、細工をしたのが目に見えない空気だから分かりづらいし、彼の能力はあらゆるベクトルの向きを操作する埒外の能力だけど、空気を吸って吐いている私達と同じ人間。
当然空気が窒素ばかりになれば窒息してしまうわね」
「それを僅かな情報で分析してしまうアイツも大概じゃん。流石学園都市第一位ってところかね」
……いや、確かにそうだけどショボくねえ?そんなんで本当にあの一方通行を倒せるとか思ったの?
ファイブオーバー(
「それじゃあ、芳川。さっさと病室に戻るじゃん。治療してもらったとはいえ、お前も重傷じゃんよ」
「ええ、そうさせてもらうわ。あなたも早く帰りなさいね」
そう言って芳川と黄泉川は病室に向かって行った。一方通行と打ち止めも戻ったためここには俺しかいない。
本来なら帰るところだが、俺にはまだやるべきことがある。
「(さあ!まだ出ぬ黒幕よ!俺が見つけ出して成敗してやる!)」
人知れず気炎を上げる少女は平穏な日常から背を向け、一人戦いに向かう。多くの人間が血を流す最悪な状況を回避するために。
八時間後。黒幕の痕跡一つ見付けられず、とぼとぼ帰った奴が居るらしい。
皆さん大丈夫でしょうか?あんまりにも話が進まなくて辟易してない?作者は書きたいところ書けなくてちょっとイライラしてます
でも、伏線とか大事なところばかりなので短縮できなかったり。
新約どころかこのままだと、100話までに大覇星祭いけないのではなかろうか?