とある原石の神造人形(エルキドゥ) 作:海鮮茶漬け
76.夜食飯
「とうまっ!とうまっ!お肉っ!お肉なんだよ!」
「ああっ!我が家ではまずお目にかかれない羊肉だ!よかったなインデックスっ!先輩に感謝するんだぞ!」
「うん!ありがとうくさりっ!──慈悲深い彼女に主のご加護が有らんことを──」
肉でシスターさんのお言葉を貰っちゃったんだけど、それってどうなんだろ?賄賂なのでは?
よく分からんタイミングで急にシスター属性を出してきた、インデックスを眺めながら肉の下拵えをしていく。
何度も調理したキッチンなので、どこに何が置いてあるのかは全て把握していおり手早く調理器具を出す。
今日は上条の家で料理をする日なのだ。取り寄せていた羊肉が手に入ったので二人に食べるかと聞いてみると、「食べる!」と(暴食シスターが)即答したので、この日は上条の家で料理を振る舞うこととなった。
いろいろあって(チンピラ退治に迷子を
ちなみにだがいつもの気配を察知するあれを使えば、巡回している警備員に補導されるなどという心配はない。
えっ?今日は何月何日なのかって?めんどくさいし取り敢えずあの日からプレイバックだ!(眼鏡のガキンチョ風)
9月7日
一方通行のお見舞いとモブキャラ三人の襲撃。そして、八時間の無駄骨。
9月8日
その代わりなんか通路で不安そうに掃除ロボットの上で、ぐるぐる回っているいる土御門舞夏が居たので、話を聞いてみるとどうやらインデックスが赤く染めたロン毛の神父に誘拐されたそうだ。
それで上条が果たし状を突き付けられて、インデックスの元に向かっているらしい。
この時点で色々と察した。これはオルソラの事件ですね間違いない。
『法の書』は魔術師アレイスター=クロウリーが執筆した魔導書である。この魔導書が解読されれば十字教の時代、つまりオシリスの時代が終わってしまうという、十字教宗派の人間にとって破滅の魔導書なのだ。
それを解読したオルソラ=アクィナスは、ローマ正教の暗部に消されることになる。そして彼女から助けを求められ、ローマ正教の魔の手から彼女を守るのが今回の上条の役割なのだ。
事件解決後は当然の如く上条は病院に連れて行かれ、ベッドで目を覚ますこととなる。毎度の事だね。
あっ、もちろんお見舞いには行きました。
9月9日
この日はなんと言っても朝から怪奇現象が起きた。世界から色が消えたのである。世界がモノクロとなってしまい、てっきりあの神が何かしやがったのかと思ったがどうやら違うらしい。
そんで外を見てみれば、なんとそこには『
空中に魔術サイドの象徴みたいなやつがあって、かなり驚いたのを覚えている。
てっきり原作を変えたせいで予定より早まり、魔術サイドからの斬新な宣戦布告なのかと思ったが、すぐに消えてしまいその後魔術サイドからなんのアクションも無いことから、別にそんな大層なものではないのだ、という結論に落ち着く。
9月11日
この日はなんか道中で、いきなり前触れなく空間が爆発する事件が起こったらしい。だが、今回は確実に上条達が関わっているようだ。
小萌先生曰く「上条ちゃんは中間試験の追い込みのときに上の空ですし、チャイムと同時にシスターちゃんが教室にやって来るわで、てんやわんやだったのですよ!」と言っていたので間違いない。
「その上、電磁波の事を聞いてきたかと思ったら間違った解釈で納得されてしまったのです!シスターちゃんはともかく上条ちゃんは分かってしかるべき事柄だと思いますよね!?
というか何でシスターちゃんが、電子レンジの仕組みをいきなり知りたがったのか、先生には全く分かりませんっ!」と言っていたので電気系か念動力系の魔術師なのだろう。
と言っても、あくまでその話を聞いたのは後日だったため、その日俺は他の学生と同じように普通に過ごしていた。
強いていうなら暇だったため、
第二十三学区は『とある魔術の禁書目録』ではよく出てくる学区のため、一度来てみたいと思っていたからちょうどよかったのだ。
しかし、実際の打ち上げ場は宇宙開発のためか警備が厳しかったため、遠くから見ることしかできなかったのが残念ではあったけど。
そんな訳で、一応当初の目的は達したため、踵を返して帰ろうとしたところでそれは起きた。
いきなり極太のレーザーが地面に向かって、豪雨みたいに幾本も落ちやがったのだ。
エルキドゥの言動しかできないためどうなっているかは知らないが、前世ならば腹話術の人形のように、目を見開き顎が外れるほどに口を開けていただろう。
でもまあ、爆発が起きたとかそういう事もなかったので、そこまで気にする事でも無いのかもしれない。
「…………」
とは思ったのだが、訳が分からなすぎたのでインデックスと上条の二人にその話を聞いてみたところ、『天上より来たる神々の門』とかいう魔術結社が、『アグニの祭火』とかいう魔術使って学園都市を滅ぼすために暗躍し、最後には『ブラフマーストラ』何て言うのを発射したとかなんとか。
全く知らん。何だそいつ等。
9月14日
つまり今日である。一週間でとんでもない事が起きすぎでは?スパンが短すぎだろ。まあ、「学園都市ならしょうがなくね?」と言われればそれまでなのだが。
そんな波瀾万丈な一週間を乗り切った俺にあるものが届いた。ご褒美と言ってもいいかもしれない。
取り寄せていた羊肉が届いたのである。
もちろんマトンではなくラムだ。なぜラム肉なのかというと、羊肉の臭み成分は餌にある。そのため、年老いた羊肉であるマトンではなく年若い羊肉のラムの方が臭みが少ないのだ。
とはいえ、全く臭みがないわけではないので、水と重曹を入れたボウルに半日近く漬け込む必要がある。
リンゴやパイナップルで漬け込む方法やワインなどの酒で漬け込む方法があるが、水と重曹というお手頃な方法が一番楽チンなのだ。他の臭み消しだと臭いが移ることもあるし。
そんな訳で10時間漬け込んだお肉がこちらっ!見てくださいルビーのように光輝いています。美味しそうですね~。
あっ、ほーら、白い小型肉食獣も舌舐めずりをして、今か今かと眼光を鋭くしています。いやー、怖いです。
若干、臭いが残っておりましたので茹でていきましょう。骨付き肉を沸騰したお湯に投入し最後の下処理です。
そんな料理番組のようなテンションで調理していると、上条から声がかけられた。
おや、上条さんやどうしたんだい?え、何?自分も何か手伝いたい?
それじゃあ、そこにある明らかに旬が過ぎ去った菜の花を、塩を入れたお湯で下茹でしたあとに冷水にぶちこんでちょうだい。それにゆで卵を入れてサラダにするから一緒にやっといて。
えっ?何?「野菜はいらないんだよ?」
要るわ。めちゃくちゃ要るって。肉ばっかじゃ胃がもたれるでしょうが。この苦味がいい感じに胃の中をリセットしてくれんの。全く好き嫌いは…………え?違う?サラダだと腹は膨れない?
えぇ……。まさかの腹持ちの心配?君は一体どんな極限状態にいるのさ……(困惑)
そんな感じで調理を進めているとチャイムが鳴った。上条が「誰だこんな時間に……?」とか言いながら玄関の方を向くと扉が勢いよく開けられた。鍵ぐらい閉めとけって。
その扉を開けた張本人を見てみると、この場の誰もと面識がある人物だった。
「御坂?……あ、いや、妹の方か?」
「ミサカはあなたにお願いがあって来ましたと、ミサカはあなたの戸惑いを無視して真摯にお願いしてみます」
「お願い?」
こうして押し掛けてくるのは初めてなのだろう。上条が戸惑っている。そんな上条を置き去りにして、御坂妹はその言葉を言った。
「ミサカと、ミサカの妹
「──分かった。それで何があった?」
上条は御坂妹の懇願に一切の拒絶を示さず了承し、その内容を促した。
それを見て俺の背景に電撃が走る。
「(カ、カッコいい……だとぉ!?(驚愕)
マジかコイツ。明らかに地雷の案件をタイムラグ無しで了承しちゃったよ。何?主人公なの?……コイツ主人公だわ)」
目の前の魚介類頭が急にイケメンになって、その緩急に風邪引きそう。そんな俺には当然気付かず御坂妹は事の次第を話し出す。
「
「っ!?おい、ちょっと待てッ!樹形図の設計者って言やあ……!」
「はい。ミサカ達が生み出される切っ掛けとなった、
ああ、もうそんな時期か。流石に日付まで完璧に知っていた訳じゃないからなぁ。
「いやでも、インデッ──じゃなくて、あれは既に破壊されていたはずだろ?何で今さら?」
「『金星探査プロジェクト』をご存知ですか?と、質問に答える前にあなたに確認してみます」
あっ、あれかー。と思いながら11日の事を思い出す。あの量の流星が落ちてくるのは流石にビビった。でも、それが何の関係があるんだ……?
「それってあれだろ?小惑星の名前を命名権をもらえるかもしれないっていう」
「それはSNSでどの探査機が新発見をするのかを予測し、小惑星の命名権の抽選に参加する、あくまで利用者視点での認識であるとミサカはジト目をしてあなたを睨みます」
じーっと口に出しながら睨んでくる御坂妹に、視線を逸らして上条はたじろいだ。「上条当麻星と名付けたいっ!」と言ってたぐらいだし、そっちの方が印象に残ったんかね。
後ろでインデックスが「カロテン怖い、カロテン怖い……」と言っていて不気味だった。カロテンにどんなトラウマが?
そんな俺達を無視し御坂妹はその目的を説明していく。
「金星にある何かの死骸などの痕跡を見つけ出し、その痕跡から既存の生物などが居た証拠を見付けるプロジェクトです。
「表向きの題目?」
ん?あれって金星の調査が目的じゃなかったのか?俺達が知らないその隠された目的を御坂妹は話し出す。
「あの打ち上げられたロケットは金星の探査機ではなく、宇宙空間に残っている樹形図の設計者の残骸を、回収するための物だとミサカは答えます」
「道理で宇宙エレベーター建造の隠れ蓑だったにも関わらず、大々的に公になってもずっと大量にロケットを発射していたのか」
「時期的に考えてもおそらくはそうでしょうと、ミサカは
うげぇ。流石学園都市。謀略が渦巻いてるわ。
他国から宇宙エレベーター、通称『エンデュミオン』。これの影響は大きくそれは宇宙開発に留まらない。宇宙エレベーターに大量の爆発物を運び、軌道衛生上に放り投げれば世界のあらゆるところで空爆が可能となる。
そして、仮にエンデュミオンにミサイルなんかを撃ち込まれても、スペースデブリ(シャトル打ち上げなどで滞在する人工的な宇宙のゴミ)を操り相殺させることができるらしい。
つまり、学園都市という世界どころか日本でも僅かなエリアしか存在しない場所が世界の支配者となるのだ。
そして、それは科学サイドだけではなく魔術サイドにも影響を及ぼす。大量に生まれたスペースデブリのせいで、星が見えなくなってしまう事が起こり得るのだ。
魔術と星座は切っても切れないほどに関わりがある。神話の星座を取り扱った物は多くあるし、星座の並びや輝きを取り扱った事柄は歴史上でも多く記載されてきた。その全てが時代遅れの無価値な物へと変貌するのだ。
そのため、星座を使う魔術が使えなくなってしまったり、魔術を行使すると暴発してしまったりする魔術師が現れる。
そうなれば、科学サイド魔術サイド問わず学園都市一強の時代がやって来る。
宇宙開発という華やかな一面とは裏腹に、世界中の人々を空爆による恐怖のどん底に落とす悪魔の塔。それが、エンデュミオンの正体だ。
「(学園都市上層部が世界を取る気満々じゃん。そんなに戦争がしたいのか?聖人にも星座を使う奴とかいたら弱体化するだろうけど、アイツ等多分それを差し引いても化け物級だぞ?死にたいの?)」
ただの無知なのか、知っていて高を括っているのか。その「なん……だと……?」ムーヴに付き合わされるのは勘弁してくれ。魔術サイドにはガチの化け物ばっかりなんだから。
内心でそんなことを思ってる間に、御坂妹の話は終わりまで来ていた。
「その
御坂妹はそこまで言うと頭を下げて再び懇願した。
「まだ恩を返せていないにも関わらず、再び関係の無いあなたにこのようなお願いをするのは厚かましいと自覚しながらも、ミサカはあの実験に関わるのはもうまっぴらだ、と断言し改めてあなたに協力を仰ぎます」
まあ、そんな訳で人命救助優先のため晩御飯……というか、夜食に近いご飯はまたお預けとなった。インデックスとしては空腹で辛いはずなのだが、誰かの人生のための行動なのでどうやら上条を止める事はないようだ。
……ぐるるるるるると、お腹は鳴っていたが。
そして、体調が悪くなった御坂妹は上条の住んでいる一室で休ませることとなった。それも当然だ。
彼女はただでさえ寿命の短い体細胞クローンの体に、成長促進を与えられてさらに体のバランスが崩れてしまっている。
その上、10032号は一方通行によって痛め付けられていたため、他の
カエル顔の医者が治療しているがまだ安静にすべき段階であり、ここまでの無理な運動は体に大きな負担をかけるに決まっていた。
「お前はここで休んどけ。あとは俺がなんとかしてやる」
そう言ってカッコよく戦場に向かおうとする上条の手を、御坂妹は何故か掴んだ。何故に?
「はぁ、はぁ、ミサカは重要な事をまだ言っていませんと、あなたの手を必死に掴みながら言います」
はて?他に何かあっただろうか?あとは
そんなことを考える俺に御坂妹は衝撃の事実を告げた。
「
は……?何?……破損だって……?
この事件で知らない単語に困惑してしまう。破壊と破損で何で訂正する必要があるんだ?
背中に嫌な汗が流れた。まるで、水面下でとんでもない事が起きているような……。
そして、そんな俺の予想は的中する。
「つまり、樹形図の設計者は超高密度の熱源によってその機能を停止しましたが、主要なところは依然として残ったままなのです。
『
もし、他国で回収されていれば外部組織の手によって、今頃
えっ、ちょっ!は、はあ!?ま、待て待て待て待て!!それじゃあ何か!?まさかバックアップってことは──!
「つまり、樹形図の設計者の開発を阻止するためには、二つの『核』が入ったそれぞれのキャリーケースを破壊しなければなりませんと、ミサカはその事実を告げます」
「いやぁ、イイね。実にイイ」
そこには風が吹くビルの屋上の
白のコートを風に靡かせて、トランシーバー片手にその少女は夜の学園都市の街並みを眺める。
「仕事内容は大した事は無いパシリ同然で当時はムカついたもんだが、依頼を出すときに感じた依頼人の、不審さから調べておいて良かったぜ。
いやー、分かってないね。警告なんて分かりやすすぎるアクションを出しちまった事が、逆に私の興味を引いちまうだろうと想像できない時点でボンクラとしか言いようがない。
暗部の掟は絶対に守るもんだと決め付けてるからそうなる。
私が警告されたぐらいで、本当にこんな面白そうな事を確認しないのかと思ったのかにゃーん?」
『本来なら喜ばれる事ではないぞ。最悪ただ無意味に消された可能性もある』
「ハッ!何のために透視能力者をわざわざ引っ張ってきたと思ってる。確証はもちろんあったが、その辺の安全策は当然取っているに決まっているだろう」
暗部で運び屋をするならば、その物品について詳しく知ろうとしないのが当然の常識だ。言ってしまえば今回の事はルール破りであり、制裁をされても文句は言えない。
しかし、そのタブーに触れたのだとしても強行する価値がそこにはあった。
「まあ、これでコイツの重要性は理解できたな。コイツがあれば私達が暗部の天辺に立つことも不可能じゃねェってわけだ。
そういや、もう一つの方は外部に運ばれているらしいな。
結標は外部の組織と手を結んでいるだけで、暗部として活動しているわけではない。『案内人』としてあの『人間』と関わる事はあったが、それだけしか接点と呼べるものがないのだ。
つまり、暗部としての生き方に身を落としているわけではない。だから知ることすらできなかった。自分達の計画の裏で別の意思が動いている事を。
「
『
※オリ主は外伝書庫の話をを一切読んでいません。なので、そこら辺の知識が一切無いのです
◆裏話◆
『とある科学の一方通行』の事件が具体的に何日と書かれていないため、オルソラの事件が解決した日に自己解釈でそうしました。
この日は昼まで上条は気絶していたので、朝に起きたモノクロの世界には気付く事ができなかった。
そのため、世界がモノクロになって生命の樹が空に浮かんだにも関わらず、上条やインデックスがその場に来ない理由だと考察しました。もし、実際に見ていたらその話題を二人がしていないのはおかしくないかな?と思ったしだいです。
◆作者の戯れ言◆
18話の伏線をようやく回収できました。58話もかかるとは流石に思いませんでしたね。
導入回のくせに長くて申し訳ない。キリがいいところがなくて伸びてしまいました。