とある原石の神造人形(エルキドゥ)   作:海鮮茶漬け

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この前外伝書庫が出ました。辞書かってぐらい厚い厚い。
そして、来月は創約の2巻が出ますし、再来月には外伝書庫2が発売とアニメが再開されます。ファンには堪らない3ヶ月です


77.バタフライエフェクト

 上条と御坂妹が事件の概要を話している傍で、この緑色の髪をした奇抜な女も当然その内容を聞いている。

 だが、その女の思考が不安や焦りによって、別方向に向かっている事には当然誰も気が付かなかった。

 

「(二つってどういうことだ!?そんな無かったはずだぞ!?まさか、アニメが火野神作の話みたいに内容をカットでもしたのか!?)」

 

 俺は予期せぬ突然の事態に大パニックだ。流石にこんなのは予想外も予想外すぎる。

 だが、ふと思い出した事があった。

 

「(……確かこの話はカットされた大事なシーンがあるとかで、かなり話題になった。

 それで、セリフの改変や動きの説明の不備は言及されていたけど、火野の話みたいなまるまるカットのとこは言われてなかったはず……。じゃあ、もしかして俺か?)」

 

 もし、この予想が合ってるとするなら、バタフライエフェクトを起こしたのは俺となる。だが一つ問題となる事が一つある。

 

「(いや、俺別に宇宙とは関係無くね?)」

 

 エルキドゥがやんちゃして宇宙まで行っちゃったら別だが、そんなことしてたら今頃アレイスターとおそらく対面しているだろう。

 それがないということはエルキドゥではなく、俺が原因ということだ。

 

「(宇宙そのものが原因じゃないとするなら竜の息吹(ドラゴンブレス)だけど、俺その場に居ないからなぁ。俺の可能性は逆に低くなるんだよ。なるほど、上条かステイル達のせいだねこれは)」

 

 オリ主は安堵の息を吐く。自分以外のせいならフォローという感じで対処すればいいため、心理的に結構楽だ。

 とはいえ、原作にない展開のため、無関係というわけでは絶対にないのだが。

 

「(にしても、何が原因でこんな事になったんだ?原作よりも前に首輪の破壊の情報があったから……?

 だけど、インデックスが魔力を行使できるかどうかは、自動書記(ヨハネのペン)が起動しないと分からなかったはず。事前情報から対処できるのは、ローラが仕掛けたであろうインデックスの発熱に対してだけだ。

 つまり、上条達の戦いはおそらく原作とそう変わらないはず)」

 

 うーん?ますます分からないぞ。戦い自体に差異が無いとするならどこでレールが変わったんだ?

 そこまで考えたところで、御坂妹が体調を崩しながらも懸命に話続ける。

 

「はぁ、はぁ、未確認高熱源は樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)()()()()()()()まとめて吹き飛ばしたそうです。……そのダメージのせいで今まで稼働することができず、ニュースの天気予報も度々外れていたのだと、ミサカはあなたに実感できるほどのスケールまで話を落として説明します」

 

 どういう事だ?アニメでも樹形図の設計者は中心ど真ん中を貫いていた。なら、同じように中心を貫くのが普通だ。どうして右側にスライドしたような結果に……。

 

「(()()()()()()()())」

 

 その言葉が浮かぶと同時にオリ主の額に大量の汗が流れ出した。

 ドッドッドッ!と心臓が脈打ち、俯いたまま視線が不自然に揺れ出す。予想通りならその理由がようやく理解できた。

 インデックスを首輪から解き放つときに、ある人物が「部屋は僕の部屋に移ろう。これ以上小萌に迷惑はかけられないからね」などと言い、原作の首輪を破壊する場所である小萌先生の部屋から出て、右隣の自宅へと場所を変えた奴がいなかったか?

 その結果、樹形図の設計者の中心から外れてしまい、複製中枢(バックアップ)なんてものが残ってしまったのでは?

 

 それでは、そんな事を言い出したアホは果たして誰なのか。

 

 

「(もしかして、俺じゃね……?)」

 

 

 お前である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、俺と上条は二手に別れてそれぞれ残骸(レムナント)を追うこととなった。上条はひたすら走っていたら美琴と出会うため、結標(むすじめ)の対処は任せて大丈夫だろう。

 だから、俺が追うのはその複製中枢(バックアップ)なのだが。

 

「(原作知識が使えねえ……!一体どこの誰が持ってんだ!?)」

 

 今までのような『ある程度の見当』が一切付けられない。

 残骸は今運搬されているのか。それは結標のような空間移動(テレポーター)なのか。それとも、車やバイクといったアナログな運び方なのか。

 それどころか、既にどこかに隠されたあとなのか。運ばれるのは学園都市の中なのか外なのかそれすらも分かってはいない。

 

「(上条じゃあるまいし、走ってたら偶然事件の取っ掛かりを見付けられるわけもないよな……。このままじゃ…………ん?)」

 

 夜の学園都市を走るオリ主のポケットから、携帯の着信による振動が伝わった。

 

『もしもし、先輩ですか?』

 

「おや?後輩かい?」

 

 電話を掛けてきたのは数分前に別れた上条からだった。

 

『御坂からの情報なんですけど、もう一つの残骸は外じゃなくて中に向かって運ばれたみたいです』

 

「(なるほど、監視カメラの映像か。ハッキングして見付けたって事ね。

 ……いや、ちょっと待て。君達出会うの早くない?運命の赤い糸で繋がってんの?)」

 

 もはや引力とも言えてしまうような巡り合わせに戦慄する。ちょっと怖い。

 

「(俺的には仲の良いみさきちを応援したいんだけど、こういうのを知るとやっぱりミコっちゃんもヒロインなんだよなぁ)」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「車ごと?」

 

『はい。なんか御坂がえーと、演算中枢(シリコランダム)……?と平行で、複製中枢(バックアップ)の運搬経路を調べているときに、そいつらが見えにくい物陰でひしゃげた車と一緒に気絶していたみたいですよ』

 

「何か特徴はなかったかい?例えば能力を使用した痕跡とか」

 

『御坂どうだ?……─ええっと、そうね。能力かは分かんないけど何かしらの武力を持っている事は確かよ─……それ、本当か?じゃあ、先輩と代わるな。……え、ちょっ──っておい馬鹿っ!いきなり携帯投げんな!』

 

 電話越しで漫才でもしてんのかってぐらい、二人は盛り上がっていた。いや、あの、割りと切羽詰まってるから、笑ってる余裕ないんだけど……。

 上条から電話を変わったミコっちゃんがしゃべり出す。

 

『……始めに言っとくけど今回の暴れてる奴達は相当の腕利きよ。それでウチの後輩も痛い目をみてる。

 以前の事でアンタにはもう十分に助けられた。もう関わっちゃったみたいだけど、今ならきっとどうにかなるわ。

 ──手を引くなら今しかないわよ』

 

「全て覚悟の上さ。実験が再開したとしてもそれをまた食い止めるのは変わらないしね。防げる手があるなら事前に打っておくのは当然だよ」

 

『…………はぁ、アンタといいコイツといい。お人好しよね本当に』

 

「君ほどじゃないさ」

 

 流石に本編でヒロインしたり番外編で主人公したりはできんわ。どんだけ戦ってんだって話しだし。

 

「(負い目やら原作崩壊を防ぐっていう理由が俺にはちゃんとあるから、ただ助けたいって理由だけで命掛ける上条と比べられるのは、ちょっと荷が重いです)」

 

 奴は打算無しで助けに行くので、同類に扱われてしまうと胃に穴が空いてしまう。エルキドゥの身体だから空かないだろうけど。

 

『それじゃあ、簡潔に伝えるわね。その壊された車体の近くに人間の足の三、四倍くらいの窪みが二つできていたわ。多分駆動鎧(パワードスーツ)がアスファルトを踏み締めたときに、陥没したんだと思う』

 

駆動鎧(パワードスーツ)?という事は、もしかして相手は警備員(アンチスキル)かい?」

 

『確かに、上から命令されて警備員が残骸を運んでいるとしても可能性は普通にありえるわ。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 おっと?まさか、断言されるとは思わなかった。何か根拠があるようだ。

 

「何か確信があるようだね」

 

『やり方が警備員らしくないのよ。普通、警告ぐらいは最初に飛ばすものでしょ?

 そのはずなのに近くに居た人は()()居なかったみたいだけど、それでも離れていても拡声器の音や避難指示の声は聞こえるはず。

 それなのに、破壊音が突然聞こえたってこと以外の情報が得られなかったってことは』

 

「注意喚起すらせずに強行したということだね」

 

 確かにそれは警備員らしくない。その何者かは警備員の駆動鎧を持っていたのなら、警備員の振る舞いをして撹乱すべきだったろう。なのにそれをしなかったのは明白だ。

 

「騒ぎを起こして少しでも注目されるのを避けたかった、というところかな」

 

 つまり、残骸を運んでいるのは後ろ暗い奴等だということ。ということは、

 

「(絶対に暗部じゃんこれ)」

 

 暗部堕ちしたくないから、ちょっと関わりたくないなぁ~と内心思っていたが、そんな心配をしなくてもいいことに気が付いた。

 

「(別に人道に反する事をしなければいいんじゃね?確かアレイスターとしても絶対能力進化(レベル6シフト)計画は再開されない方がいいはず。エイワス出せないし。

 なら、関わること自体は構わないのでは?)」

 

 なんかいい感じの免罪符が完成すると共に、ミコっちゃんが『それと……』と付け加えて、何故か続きを少し言い淀んだ。

 なんかまだあるん?個人的にいい情報がそろそろ欲しいです。

 

『…………今回ばかりは一人じゃ手が回りそうにないから、断腸の思いで()()()に頼んでるのよ。あとはそっちから聞いた方がいいと思うわ』

 

「あの女?」

 

 疑問に思って聞き返そうとしたところ、いきなり横から声を掛けられた。

 

「──あらあらあらぁ?こんなところで何をしているのかしらぁ?まさか、お節介力を全開にして今回の事件にも介入したりとかぁ?

 ……あなただと普通にありえるから怖いわね。ていうことは、もしかして、あの人も出てきたりしてるのかしらぁ?」

 

 見たことのないスーツ姿の妙齢の女性が、「さ、流石にその年齢でそのポーズはどうなの……?」と、逆にこちらが心配してしまうような、あざとい格好をしながら言葉を投げ掛けてきた。

 本来なら「学園都市にいる人間はやっぱり個性的だなぁ」で、見てみぬフリをするのだが、その言葉使いと瞳の椎茸は余りにも見に覚えがありすぎる。

 

「(なるほど。そりゃあ頼りたくはなかっただろうなぁ)」

 

 苦虫を噛み締めたような声音の理由が理解できた。確かに頼るならこれ以上ない人選だけど、仲が致命的に悪すぎる。

 そして、俺がよく知っているその人物の名前が、電話口から明かされた。

 

『食蜂操祈。アンタの友達よ』

 

「詳しく聞かしてもらうゾ☆」

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