とある原石の神造人形(エルキドゥ)   作:海鮮茶漬け

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78.戦闘直前

 夜の学園都市を並走している、紫色をした縦ロールの彼女に問い掛ける。

 

「それで、情報は何かあるかい?」

 

「はい、『私達』の調査によると現在駆動鎧(パワードスーツ)を動かしている警備員(アンチスキル)は居ないようです。つまり、何者かが駆動鎧を使っているのは間違いないかと。

 さらに、その条件に該当する痕跡を割り出していますが、おそらく芳しい結果は得られないでしょう」

 

 まあ、これは残念だが仕方ない事だと思う。暗部の深い人間なら、表の人間が知らないような方法で自分の痕跡を消すのは、難しい事じゃないだろう。

 彼女達が追えないのも無理はない。

 

「だからこそ私の出番って事なんだゾ☆私ならそういった痕跡を辿る事においては、御坂さん以上に利便性が高いわけだしぃ。

 監視カメラなんかの電子機器で追えない相手の場合、私以上に追跡力がある能力者は居ないんだから☆」

 

 そんな事を言ったのは現在縦ロールこと帆風(ほかぜ)潤子(じゅんこ)にお姫様だっこされている、常盤台中学一大派閥の女王食蜂操祈だ。

 

「それにしても、君まで表に出てくるとは思わなかったよ。君のことだからてっきり裏方に徹するものかと思っていたけどね」

 

「私だってそうしたかったけどぉ。電子機器からの情報は少なすぎてウチの子達も完璧に追うことはできないのよねぇ。だから、こうやって私自ら行動してるってわけ。

 でも、私のような存在に対処するためか、平面じゃなくて立体的な動きで時間を稼ごうって魂胆みたいだし、今回の敵はなかなかやるみたいねぇ。

 まあ、私と帆風のタッグならそれぐらいの事は何て事はないんだけど」

 

「光栄です『女王』!全力を尽くします!」

 

 うわぁ、嬉しそう(小並感)

 

「それより私が気になるのは、全力ではないとはいえ帆風の天衣装着(ランペイジドレス)のスピードに、平然と着いてくるあなたの身体能力よぉ。

 帆風は能力で生体電気に介入して底上げしてるけど、あなたのそれって素のものなんでしょう?本当に天野さんの身体ってなんなのかしら?」

 

「原石だからね。これぐらいは当然さ」

 

「……多分だけどあなたと噂の第七位以外は、そんな身体能力を持った原石はきっとないと思うわ」

 

 まあ、そうだろうな。だってこの身体ってエルキドゥのものだし、どっかの七位とはまた違ったベクトルでぶっ飛んでると思う。

 ……それでも全く歯が立たなかったけど。

 

「あ、帆風。次はそこのビルの屋上よぉ」

 

「はい!『女王』、お任せください!」

 

 なんかめちゃくちゃ嬉しそうな声を上げて、非常階段を掛け上がるというより、階段を無視して踊り場に跳び移るように上がっていく縦ロール。

 掴まってる食蜂は彼女を信頼はしているのだろうが、その余りのスピードに恐怖を感じてるようである。どうやらテンションが上がった縦ロールは、食蜂が顔をひきつらせていることには気付いてないようだ。

 

 頼られるのが嬉しいんだろうなぁ……。

 

 そんなワンコ系お嬢様の縦ロールと女王様のみさきちという、巨乳コンビの百合百合しい光景を肴に階段を掛け上がれば、先ほどみさきちが敵の触れた場所を読心能力で読み取った、次のポイントへと辿り着いた。

 近くにあった手すりにリモコンを押し当てたみさきちは、今までとは違った反応を示した。

 

「あらぁ?ここに来たのはついさっきみたいねぇ。ということは、次でご対面よ。覚悟はいいかしら天野さん」

 

「もちろんだとも。さあ、すぐに終わらせよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なーんてふざけたこと考えてンなら、流石に暗部を舐めすぎってモンだ」

 

 活気づいている大型の複合施設の中に彼女達は入り込んでいた。シルバークロース=アルファも着ていた駆動鎧を脱いで人混みに紛れている。しかし、これでは今までのような立体的な動きはできないだろう。

 駆動鎧は彼の武器である。それを装着していないということは、戦場に丸腰で挑むなど自殺志願者でしかない。

 だが、その愚行こそが彼女達に勝算を生ませるのだ。

 すると、丸腰と言っても過言ではない彼が、不安を隠すように話し出した。

 

「念のため仕込んでおいたカメラで動向を探ることができたが、それがなければ何の準備もなしに立ち会うところだった。

 第三位と関わりがあり、あの事件にも介入していた天野(あまの)倶佐利(くさり)は想定していたが、第五位まで出てくるとは当初の想定からは大幅にズレている。

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「いや、まだその段階じゃない。いろいろ細工をしなくちゃいけなさそうだが、超能力者の中じゃ食蜂操祈は俺達と一番相性がいいんだ。

 戦略の組み立て方次第では、奴を打倒することも残骸を回収することも不可能じゃないだろう?なら、今は私達の計画を続行して目的を達成するために行動するべきだ」

 

 学園都市の学生230万人の頂点である超能力者(レベル5)を、まるでついでのように扱う彼女が、どれだけ異常なのかは今さら語るまでもない。

 無謀としか言えないような事を言う彼女の表情には、高位能力者達を打倒する絶対的な確信があるようだ。

 彼女は口を歪ませて言った。

 

「──天野倶佐利。ここで心理掌握(メンタルアウト)共々殺してやるさ」

 

 人混みに入り込み二人の人間が特定できなくなるその瞬間、人々の賑わいに紛れながらもその言葉は確かに発せられた。

 

 

 

「せめてそれなりには楽しませてくれよ?『模範生』サマ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とある高級ホテルの一室に彼女達は集まっていた。ブラックカードがなければ足を踏入れることさえできない場所がここだ。

 そんなセレブ御用達のこのホテルの一室を、アジトの一つとしかカウントしていないことから、彼女達の財力がどれ程凄まじい事が分かる。

 彼女達がここに集まっている理由は()()()()()()()()()()()()()、まだここに全員居るのは別に理由がある。

 その理由は目の前の画面から聞こえる音声からなのだが、『SOUND ONLY』としか画面にはなく、通信者の顔が分からなくなっていた。とはいえ、これは彼女達には見慣れたものなので大して気にはならない。

 そして、話すべき事は終わったのか通信が途切れる。それと同時に彼女達のリーダーが立ち上がり言った。

 

「アンタ達仕事よ。準備しなさい」

 

「えぇっ!?やっぱりこの仕事受けることにするの~!?さっきまで別の仕事してて、もう全身くたくたって訳よ!」

 

「フレンダは愚痴言ってないでさっさと準備してください。今までとは違って報酬も格段に良いですし、ポイントにもなります。

 受けないのはデメリットにしか超なりません。麦野の判断は正しいですよ」

 

「……前の仕事で珍しく頑張ったフレンダを私は応援してる」

 

 彼女達の所属する暗部組織の名は『アイテム』。彼女達の役目は学園都市にある不穏分子の削除・抹消である。

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