とある原石の神造人形(エルキドゥ) 作:海鮮茶漬け
吹寄が突然倒れるなどのハプニングがあったが、授業が終わった放課後。俺は上条にようやく話を聞くことができた。
「えーと、それでいろいろあって今ウチに新しい居候が居るんですよ。それで寝床は取られるわで、結局昨日は風呂場で隙間風に背中を撫でられながら眠ることになりましたし。
まあ、もう一人の方はインデックスとは違って噛み付かないのが救いですけど」
「へえ、君のところに新しい居候がね。そして、その子は女の子であると」
「まるで当たり前であるかのように言われた!?……いや、まあ事実なんですけど……」
へっ、爆発しろ(呪詛)
──おっと、いけないいけない今は女の子だった。口には気を付けないとね。
まあ、上条なら爆発なんてそもそも日常茶飯事か。近いうちに神様から数億回ぐらい殺されるわけだし、全然大したことじゃないな(感覚麻痺)
にしても、可愛くて女の子らしくて胸が大きい歌姫かあ…………これは
「屋根の下で女の子二人と共同生活。男の夢ってやつかな?」
「い、いや、そんなことないですって!さっきも言いましたけど俺の居場所減ってますし!そもそも、そうなった経緯も結構バイオレンスなんですから!」
あれー?なんかちょっと殴りたくなってきたぞー?(半ギレ)
はあ……、これだからハーレム野郎は。いやまあ、それでも上条になりたいかと言われると別の話なんだけどさ。
ぶっちゃけ上条に向けられる感情ってだいたい恩義とか親愛ばっかりで、実際に恋愛的に好きなのって5~10人ぐらいなんだよな。それでも多いとは思うけど、代償が週単位での瀕死の重傷とか割に合わないわ。新約じゃあ今までのがお遊びみたいに痛め付けられるし。
まあ、
「物は相談なんだけど、今日も晩御飯を作りに行ってもいいかい?」
「それはすごい助かりますけど。でも一昨日も来てもらいましたし先輩にそこまでしてもらうのは……」
「気にしなくていいよ。僕が君達に料理を振る舞いたいからそうしているわけだしね。それに、その新しい居候の女の子にも会ってみたいんだ」
いやー、このシチュエーションでアリサに会わないとか絶対無いわ。女の子らしいヒロインとか禁書では貴重だし(かなり失礼)
──もちろん、こんな打算をしているとは思わない上条は「年上の女の子ってやっぱすげえや!腹ペコ噛み付きシスターや出会い頭に電撃撃ってくる年下とは、根本からいろいろ違う……!」なんて感動しているが、残念ながらそれは見当違いにも程があった。
二人で並んで上条が暮らしている学生寮の前に到着すると、扉越しに女の子二人の可愛らしい声が聞こえてくる。
「ねー、見せてよアリサ~」
「ダメッ!恥ずかしいから……っ」
「……フッ、あいつ達……」
その声を聞いて上条は苦笑を浮かべる。平穏な日常が嬉しいんだろうな。確かアリサってステイルに狙われてたはずだし。
あれ?そう言えば何か大事なイベントを忘れているような気が……?
「この歌詞ができたら一緒に歌お?ね?」
「うん分かった!──約束だからね」
「おーす、ただい……マッ!?」
その扉を開けるとあら不思議。なんとそこは桃源郷だった。白の壁紙の寮の一室にもかかわらず、やたらと肌色が占める割合が多い。端的に言ってインデックスもアリサも全裸だった。
「と、当麻くん……!?」
タオルで髪だけ巻いたアリサは腕で身体を隠し、インデックスは目を尖らせた。
「とーうーまァーッ!!」
ガウウッ!と唸りながら歯を鳴らし、そのまま上条に飛び付くように接近してくる。その様子を見て上条は諦めたように「フッ」と笑い、いつものあのセリフを言った。
「不幸だああああああああっっ!!!!」
ガブリッ!と、頭蓋骨が鳴ってはいけない音を鳴らして、上条の頭部が銀髪少女に捕食された。そんな弱肉強食の惨劇を見ながら俺は思う。
「(鍵持ってる男の居候先の家の居間で、普通全裸でいるかね?)」
そんなぐだぐだというかショッキングな顔合わせというか、そんな出会いをした俺とアリサだったが、話してみればお互いに人見知りというわけでもなく敵意もないため、すんなりと挨拶を交わして自己紹介をした。
まあ、多少初めて会ったときの姿が裸だったこともあって、気まずそうにはしていたけど。
そして、そこら辺の段取りを終えれば俺がすることは一つ。
「「うまーいっ!!」」
がつがつばくばくっと、食べるいつもの面子を傍目に俺はフライパンを振るう。どんだけ料理作るんだよ俺。
まあ、料理作るためって理由で接してれば、確実に上条勢力には入れるからやめる理由はないし、俺に何かあったときに「最近、料理作りに来てないなー」的な些細なことで、救済フラグ立つかもしれないから、やめたらやめたで逆に不利益になりそうな感じはする。
本音を言えばこの二人より小萌先生の方が心配なんだよなー。酒の量が半端無いから、放っとくとマジで危ないのよ。
「すごい……!これって本当に豆腐なの?」
「肉を巻いて火を通すことで旨味が豆腐に移るんだ。溢れた肉汁をかけることをすればさらに肉っぽい味わいになるね。一般的にはヘルシー料理としても有名かな」
「がつがつばくばくっ、……ごくんっ、アリサ!アリサ!こっちの豆腐の料理もおいしいんだよ!」
「それは豆腐と挽き肉の味噌炒めだね。味噌他にみりんや料理酒で味付けするだけの簡単な料理だよ。ネギを乗せれば味も締まるから、お手頃で味にも妥協せずに済むのは助かるね」
すると、本来の台所を預かる家主は、パイナップルのように包帯を頭に巻いた状態で身体を震わしていた。
「う、嘘だろ……?俺の想定していた食費を大幅に下げている!?その上、味のクオリティも落としてないなんて……。しかも、相手はあのインデックスと意外にも健啖家のアリサなんだぞ!?その二人にこの立ち振舞い……これが高位能力者の実力なのかッッ!?!?!?」
「事件の中盤で今まで以上に相手の底知れなさを実感したみたいな迫真の反応をされても、僕には困惑することしかできないよ?」
ここまでで察することができる通り、今日のメインは豆腐である。それがジャンル問わずに6~7皿ほど。
本来なら料理のジャンルを合わしたいところなのだが、それにもちゃんと理由がある。
「(安上がりで腹持ちがいいってことを最優先にしてるから、和食も中華も洋食も出せるものはなんでも出す方針に変えたんだよな。そんなのに拘ってたらあの暴食シスターの相手はできんのだよ)」
そんなわけで、今晩の料理はめちゃくちゃ家計に優しいメニューになっている。
……まあ、あのちんまい先生のために考案した、ヘルシー料理という側面もあるけど。
「お料理もできるなんてすごいなぁ……。私はそんなにできないからすごく羨ましいです」
「うんうん、貧者に施しを与えるその姿は、まるで聖大アナスタシアだね!慈愛の心に懐の深さ、そして誰かのために懸命に行動するところなんかまさにその通りだよ!」
「褒められてるんだろうけど、誰なのか分からないからピンと来ないね。宗教に関しては学園都市の学問の外だから、そもそも知る機会が無いのが原因なんだけどさ」
「倶佐利さんって当麻くんの先輩なんですよね?学校だと当麻くんってどんな感じなんですか?」
「あ!それ私も気になるんだよ!」
「お、おい!やめろってっ!あと、インデックス。お前は俺の学校に一度来たことあるだろ?」
「あれだけじゃ、とうまの学校での様子なんて分かる訳がないんだよ。ここはくさりにとうまの学校での生活を教えてもらうしかないよね!」
と、二人に言われてしまったため、上条の学校生活を躊躇なく暴露していく。主にデルタフォースのことであったが、二人が笑顔だったからチョイスは良かったんじゃないかと思う。
そんな風に話しながら食事を終えた俺は、ご馳走さまを言うと皿を洗おうとするが、上条とアリサに止められた。
「先輩、それぐらいはやらさせて下さい。家主である俺がこのまま何もしないのは流石にダメですし」
「あ、それじゃあ私も。すごく美味しかったのでこれぐらいはしたいなって……」
おいおい、全く。それ以上インデックスの株を落としてやるなよ?(辛辣)
あれだよ、インデックスはマスコット的なやつだからね。まあ、だから何?えーと……仕方ないよね?
そんな訳で二人に洗い物は任せてインデックスと一緒にまったりしていると、上条がアリサに話し出した
「明日はどうするんだ?」
「明日はオービッド・ポータル社との契約をしに行くんだ」
「オービッド・ポータル社?」
何だそれ?そんなんあったっけ?
「あ!そうだまだ言ってなかったですね。アリサは歌を歌っててもうすぐプロになるんですよ」
「すごいよね!カナミンと同じになっちゃうんだよ!?」
カナミンとは別の意味で次元が違うと思うけどな。でも、なるほどそう言うことか。話の流れからしてそのオービッド・ポータル社は、レデリィーが社長してる企業なんだろう。
流石にいちいち細かいところの名前なんて覚えてないってば。
「あー、でも明日俺は補習だから行けないし、……そうだ!先輩アリサの付き添いで行ってもらってもいいですか?」
「ごめんよ、明日は僕も空いて無くてね。午後からなら大丈夫なんだけど」
実際にはそんな予定はないが、内容があやふやのため下手に介入することができない。能力が劣化してるというのはそれだけで躊躇させる要因になるのだ。
「なあ、アリサ。誰か居ないのか?信用できて頼りにできそうな奴」
「うーん、そうだなあ…………あ!彼女なら」
「おや、誰か心当たりがあるのかい?」
白々しくも誰かを知っていながら尋ねる。ここで尋ねないのは怪しい気がするし。
そんな打算を当然知ることもなく、アリサはその人物を話し出す。
「はい、彼女とはこの前あったばかりなんですけど、すごく親切で優しいんです。多分知ってると思うんですけど、学園都市第三位の御坂美琴ちゃんに頼んでみようと思います」
そして、当日。
結局、適当に時間を潰すことにした。万が一それでバレたらクズが発覚してしまう。そのため、髪色を変えて能力で変身した姿で移動しながら、特に用事もないのに
フェブリに会いに来たと知り、布束に馬鹿を見る目で見られたり、ついでに
まあ、一方通行のお見舞いと言えば楽に潜入──もとい、訪れることができるので、暇なときにはうってつけだったりする。
「もうそろそろかな」
正午になったためアリサに電話をする。ミコっちゃんと合流して既にオービッドなんとか社に着いているはずだし。
『もしもし、アリサです。倶佐利さんですか?』
「うん、こっちの用事が終わったからね。今から合流しようと思うんだけどいいかな?」
『はい、大丈夫「もしかして天野さんですか!?」わわっ!?』
急に入ってきたその声音に俺は聞き覚えがあった。
「もしかして、今の声は……」
『!はい、佐天です!天野さんですか?昨日ぶりです!』
元気に返事をする佐天さんに少し圧倒されるも、転生してから磨きあげた外面で対応する。
「君もそこに居るんだね。そっちは今どうなっているのかな?」
『あ、そうでした!天野さん助けて下さい!私、今すごくピンチなんです!』
!しまった。まさか、レデリィーの部隊やステイル達の魔術師達がアリサを狙ってきたのか!?映画の内容はうろ覚えだけど確か巻き込まれる描写があったはず。
もう少し遅い気がしてたけど、まさかこんなに早く行動してくるなんて……!
佐天さんを助けるために俺は行動を開始した。
「分かったすぐ向かうよ。場所は?」
佐天さんのヘルプに応え駆け付ければ、何故か眩しいフラッシュが瞬くステージが俺を待っていた。
ステージの一番中央ではアリサがフラッシュに負けないくらいの眩しい笑顔を浮かべながら、記者なのか一般人のファンなのかよく分からない相手に手を振っている。
その姿を見れば彼女が期待の新星であることは誰の目にも明らかだ。問題なのはそのステージに何故か俺まで立っていることである。
困り顔のミコっちゃんと吹っ切れて楽しんでいる初春の隣に、俺と恥ずかしがっている佐天さんの二人が、彼女達と同じ衣装を着て並んでいるのが今の現状だ。
何でこうなったんだろう?
俺はどっちかって言うと、あっちでこのステージ見ていたい側なんだけどなぁ……。
さらっと伏線を貼っていくスタイル。まあ、回収するのはずっと先なんですけどね?
そして、やたらと多い料理描写。どうしてでしょうかね?