IS - 女装男子をお母さんに -   作:ねをんゆう

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いくら世界最強と言えど、ガッツリ働きながら2徹もすれば頭がおかしくなると思うのです。


2.織斑千冬も嘆きたい

 

「……あー、IS学園で教鞭を執っている織斑千冬だ。これから3年間、君を含めた問題児達の集まるクラスを受け持つ予定なのだが……」

 

「あはは、そうですよね、大変ですよね、女装して学園に通う問題児とかいますもんね、完全に変態ですもんね、普通近付きたくもないですよね、ゴメイワクヲオカケシマスホントゴメンナサイ。」

 

「……君も大変だな。」

 

真剣な顔で女装を懇願してくるダンディーなおじさまに了承の意思を伝え、軽い現実逃避をしていると、今度は目つきの鋭いレディースーツを着た美人さんが部屋へと入ってきた。

 

どうやら彼女が巷で人気のブリュンヒルデこと織斑千冬さんらしい。たしか孤児院にいる妹の1人が大ファンだと言っていたが、こうして実際に会ってみると妹が熱を入れていた理由がなんとなく分かるというもの。

 

世界最強であるほどの実力を持っているにも関わらず、容姿に優れ、かつ彼女の人柄もかなり硬派な印象を受ける。

異性よりも同性に愛されるタイプというか、色々な意味でブリュンヒルデとしての期待を裏切らない人物であり、第一回モンド・グロッソから数年の時を経た今でもファンが増え続けるのも当然と言えるだろう。

 

……そんな彼女の同情は身に染みるなぁ。

 

 

「あの、これから僕はどうなるんでしょう。」

 

「……そもそも今回君が、その、女装をだな?して入学してもらう理由なのだが。」

 

「はい……」

 

「あー、私の愚弟がISを動かしたという話は聞いているな?」

 

「織斑一夏くんでしたか。報道で何度も名前を聞きましたが、やっぱり弟さんだったんですね。」

 

「ああ、そうだ。それ故にあいつは一応私の弟として、ある程度の立場が保証されている。

……君は男性操縦者の価値というものについてどう思う?」

 

「ISの謎の解明、女尊男卑主義の行末を握るとっても貴重な存在ですよね♪各国の研究者と女性権利団体、果ては身代金目的の小犯罪集団からも狙われる可能性のある超重要人物です♪一人で外を歩くことすら難しくなると思います♪」

 

「……そんな超重要人物になった感想はどうだ?」

 

「死にたい、今すぐ過去をやり直したい……。僕はただ子供達の世話をしながら笑って暮らしたかっただけなのに……。」

 

「……なんかすまん。」

 

最早ヤケクソである。

初の男性IS操縦者である織斑一夏が公表された夜に孤児院の経営者であるマザーと討論した彼の行末が、まさか自分のものにもなるなどと誰が思うだろうか。

いや誰も思うまい。(反語

 

ただ、ここまで来れば目の前の悪戯な表情が一瞬で掻き消えた彼女が言いたいことはなんとなく分かる。

その解決手段が女装というのがなんとも言えないが……

 

「……要は僕には"ブリュンヒルデの弟"みたいな肩書きもなく、支えとなるようなバックも無いので、今はその存在すら誤魔化すべき、ということですよね。」

 

「加えて言うなら学園と日本政府がパンク寸前だということも理由の1つだな。私の弟ということで一夏はある程度世間に受け入れられているが、それでも我々は連日徹夜仕事が続いている。ここに何の後ろ盾も持たない一般人である君の存在が知れ渡るとなれば……」

 

「……死人が出ますね。」

 

「運営に支障が出るのは間違いないだろうな。つまりそういう理由で君の存在は君がある程度の立場を確保し、世間が落ち着くまでは秘匿しておきたい。それでも身柄の安全と監視のためにIS学園には入って貰うがな。完全にこちらの事情で申し訳ないのだが、君の存在がバレない限りは一般生徒と同じくらいの自由は保証できる。悪い条件では無いはずだ。」

 

「今日の結果を無かったことに、とかは無理ですか。」

 

「無理だな、なんだかんだと言っても君のように秘匿されていなければ世界で2人しかいない貴重な男性操縦者だ。手放すには価値が高過ぎる。」

 

「ですよね……」

 

色々と文句はいったが、それでもモルモットにされるよりは比べ物にならないくらいの高待遇であることに変わりはない。

所詮は織斑一夏のような強力な後ろ盾もない孤児院暮らしの1学生だ、その記録を消す程度のことなら容易に行えるだろう。

そうしないのが単純な善意なのか打算なのかは分からないが、女装さえしていればいいのだ。

そう、女装さえしていれば……!

 

くそぅ!

 

「正直なところ、我々は君の容姿に心から感謝している。初めて君の学校の教師から写真を送られてきた時にも思ったが、正直ここまでとは思わなかった。もし君が一般的な男性の容姿をしていれば私は今頃栄養ドリンク漬けになって死にかけていただろう。」

 

「……褒められてるのでしょうけど微妙な気分ですね。」

 

「安心しろ、女装のスペシャリストは既に確保してあるそうだ。君ならきっと素晴らしい女性になれる。私も完成が楽しみだ。」

 

「壊れてません?もしかして貴女もう壊れてません?多分普段は真顔でそういうこと言うキャラじゃ無いですよね?」

 

「まだ2徹目だ。」

 

「寝てください!30分でいいから!」

 

「膝を貸して欲しい……」

 

「いいですから!好きにしていいですから!どんだけブラックなんですかIS学園!?」

 

「真耶、すまない……君に書類仕事を全て押し付けて私は美少年の膝の上で……」

 

「早く寝ろ!!」

 

もしかしてあのダンディーなおじさんも徹夜で頭がおかしくなっていたのでは?

そんな疑問を持ちながら世界のブリュンヒルデを膝枕するという貴重な体験をした。入学したら少しくらい先生の手伝いをしようと心に決めた。




女装系のゲームだと"つり乙"、"おとボク"あたりも好きです。

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