IS - 女装男子をお母さんに -   作:ねをんゆう

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そろそろシリアスくん入ります


22.過激な襲撃者

side奈桜

 

クラス代表戦当日、僕はアリーナの観客席に座っていた。

本来なら誘われていた故にピットに行ってもよかったのだが、一夏くんの訓練にロクに参加していない自分がそんな特等席に座らせて貰うことに抵抗を覚えたために断ったのだ。

 

あの日から2日ほど、一夏くんは地獄のような訓練をし続けたのだが、その甲斐もあって彼は何かを思いついたのか考えを纏める様な仕草を取り始めた。

どんなことを思いついたのか?何を悟ったのか?

それを遂に僕達に語ってくれることはなかったのだが、何かを掴んでくれたのなら頑張って厳しくした甲斐があったというものだ。

実際やっていて僕も辛かった。

 

1回戦から一夏くんと鈴ちゃんが戦うという最初からクライマックスな組み合わせとなったのだが、そのせいかアリーナは満員御礼だ。

それはもう夏前のこの時期でも暑苦しいくらいに。

観客席の一角に陣取った1組の女子生徒達に端の方の席を譲って貰ったおかげで大分楽はできているが、朝からこれだけ人が集まるのだからその注目度の高さが実感できる。

 

そんなことを考えながら試合が始まるまでの数分を手持ち無沙汰に待っていると、隣の席に座っていた何処かふわふわとした感じの少女が僕に話しかけてきた。

 

「ねえねえ、あやのんあやのん?」

 

「あ、あやのん?……ええと、布仏本音(のほとけほんね)さんですね。どうなさいましたか?」

 

「あやのんはしののん達みたいにピットで見ないの?」

 

「ええ、私は彼女達ほど織斑くんに貢献していませんから。ただ仲を良くさせて頂いているというだけでその権利を頂くわけには参りません。」

 

「うーん、考え過ぎだと思うけどなぁ……」

 

「いいんですよ、そのおかげで今日はこうして布仏さんのような可愛いお方とお話しできるんですから。」

 

「わー!あやのんに口説かれた〜!」

 

ぐあっとこちらへ引っ付いてくる彼女、どうやら彼女はスキンシップが激しいタイプらしい。

……まあ、少し触ったくらいで性別がバレることはないけど、こういうのは困るんだよなぁ。罪悪感が凄いのに下手に断ると傷付けちゃうし……

 

気が済んだのか布仏さんが顔を上げたところで、ちょうど一夏くんと鈴ちゃんがカタパルトから射出された。

互いに大声で色々と言い合っているが、それでもその雰囲気は決して悪いものではなく、どちらかと言えばライバル同士の様な熱血的な感じだ。

2人が自分の意思を溜め込むことなく向かい合えている様子を見ていると、自然と私まで嬉しくなる。

 

「あー、あやのんがまたお母さん顔してる〜」

 

「お、お母さん顔ってなんですか?」

 

「えっとね、じゃれあってる子供達を見るお母さんみたいな顔?すっごく優しい顔してるから、みんなお母さん顔って言ってるんだよ〜?」

 

「そ、そうだったんですか……」

 

自分の知らないところでそんなことを言われているとは思わなかった。

僕、そんな顔してたのかな……

 

衝撃の真実に僕が微妙な顔をしていると、2人の準備が整ったのか、試合が始まった。

 

始まりの合図と共に正面からぶつかり合う一夏くんと鈴ちゃん、2人はそのまま青龍刀と雪片を幾度もぶつけ合う。

戦術もへったくれもない2人の苛烈な様子にアリーナの歓声は増していくばかりだ。

 

「おー、なんか凄い。」

 

「ですね……でも、お2人らしい戦いです。」

 

2人は笑いながらその武器を打ち付け合う。

弾かれれば直ぐに体制を立て直し、弾けば全力で追い打ちをかける。

防御や回避なんてほとんど考えていない、ただひたすらに攻撃を加える。自分の感情を叩きつける様に。

きっと武道に精通している人達から見ればもどかしい光景だろうが、少なくとも一夏くんは昨日よりも良い動きをしている。互いに近接武器同士であるというのもあるだろうが、それでも代表候補生の鈴ちゃんと互角に渡り合っているのだから、素晴らしいの一言だろう。

 

そんな状態がしばらく続き、一際大きな衝突があった頃、最初に攻防を制したのはやはり地力と武装のある鈴ちゃんだった。

 

『そこだ!!』

 

アリーナ中に響く様な声で鈴ちゃんは叫ぶ。

青龍刀に弾き飛ばされ体制を立て直すのに失敗した一夏くんがその瞬間に何の前触れもなく吹き飛ばされた。

まるで弾丸に撃ち抜かれたように。

 

「……反動?いえ、圧縮された空気……でしょうか?」

 

「多分だけど衝撃砲じゃないかなぁ〜」

 

「衝撃砲、ですか?」

 

足をプラプラとさせながらニコニコしている布仏さんに尋ねると、彼女は人差し指を上げて得意げに解説をし始めた。

どうやら彼女はISについて詳しいらしい。

 

「中国の次世代兵器でそんなのがあった気がする〜。空間に圧力をかけて砲身を作って、衝撃を撃ち出すんだって〜。360度全方向に目に見えない弾を撃てるんだよ〜♪」

 

「それはまた……すごい兵器ですね……」

 

「うん。でも空間圧縮兵器なんて燃費が良いわけないし、弾丸の威力も実弾やレーザーには劣るんだぁ〜♪」

 

「なるほど……布仏さんは詳しいのですね、とても助かります。」

 

「えへへ〜、もっと褒めて〜♪」

 

グイグイと頭を押し付けてくる彼女に苦笑いをしながら撫でてあげると、ふにゃっとした声を出しながらこちらに倒れこんでくる。

この子は猫か何かなのかな……?

いつのまにか膝枕の体勢になった彼女を撫でているとゴロゴロと喉を鳴らし始めた、なんだその特技……

 

ドンドンドンッとアリーナに3発の衝撃砲が突き刺さる。

一夏くんはなんとか複雑な軌道をすることで直撃は避けているが、やはり見えない弾丸に手を焼いているようだ。

鈴ちゃんも衝撃砲の燃費の悪さは分かっているのか、1発1発を無駄なく射撃している。

中国での訓練で満遍なく優秀だったというのは本当らしい。

 

しかしそれでも最初の一発以外を全て回避している一夏くん。

あの決闘の日から今日までセシリアさんの射撃を嫌という程受けていた彼だ、多少見えない程度でその感覚は揺らがない。

箒ちゃんと近接戦闘しながらセシリアさんに撃たれるというとんでも訓練の成果も、こうしたピンチや極限状態でこそ発揮されているのだろう。

 

鈴ちゃんの顔も楽しそうであっても余裕はなく、一夏くんに対して本気で向き合っているようだ。

 

「ん〜、おりむーどうしたら勝てるかな〜?」

 

「……気持ち、でしょうか。攻撃を受けている側は体力よりも精神力の磨耗の方が甚大ですから。敵が隙を見せるまで折れることなく集中力が維持できればまだ可能性はあります。特に彼には零落白夜がありますから。」

 

「お〜、なるほど〜。そういえばあやのんは攻撃受けるの得意だもんね〜。やっぱり辛い〜?」

 

「ふふ、それはもう。私の場合は反撃もできませんから、ただひたすら押されるだけなので毎回擦り切れるくらい精神力を使ってます。……まあ、最初から攻撃を諦めているので、これでも少しはマシなんですけどね。」

 

「……そっかぁ。」

 

???なぜか声を落とした彼女を不思議に思いながらアリーナの方へと目を向けると、丁度一夏くんが衝撃砲による土煙を利用して鈴ちゃんへと迫っているところだった。

土煙の中で軌道を変え、予想外の場所から斬り掛かる一夏くん。

以前までの彼ならば、間違いなくそのまま正面突破していただろう。

 

その予想をしていたからこそ、チャンスは訪れた。

 

鈴ちゃんは一夏くんのことをよく知っている。

それ故に必ず正面突破してくると踏み、青龍刀を構えて張っていたのだ。

目に見えるほどに動揺し、衝撃砲のチャージ時間も足りない。

 

一夏くんの奇襲は成功した。

 

刀身が光っている。

ここで勝負が決まると確信した僕は、身を乗り出して行方を見守ろうとする。

 

 

……しかしその瞬間、何故か思考とは別に、僕の身体は布仏さんを守るように身を屈めていた。

 

 

「あ、あやのん!?きゃっ!!」

 

バリィィンッッ!

 

アリーナを囲んでいたシールドが弾ける。

真っ赤な光の柱が突き刺さる。

風と土煙と衝撃波、光の嵐と共に様々な破片がアリーナ中に吹き荒れた。

 

「あぐっ……!」

 

突如として熱を持つ左腕、見れば何かの破片が二の腕に突き刺さっていた。

もし行動を起こしていなければ布仏さんに刺さっていただろう、今ばかりは勝手に動いた身体に感謝をした。

 

「あ、あやのん……?何が起きたの……?」

 

「っ……ぐっ……布仏さん、今すぐクラスの人達をアリーナ外に避難させて下さい。外部からの侵入者です、早急に行動しなければ犠牲者が出ます。」

 

「あ、あやのん!?怪我してるの!?」

 

「問題ありません、私のISにはナノマシンが搭載されていますから、放っておいてもどうにかなります。……恋涙!」

 

ISを展開し、ナノマシンを散布する。

治療用のナノマシンと精神鎮静用のナノマシンを、自分にではなく周囲に向けて見境なく。

パニックを起こしている生徒達を落ち着かせ、出口へ向けて誘導する。

布仏さんも僕の怪我を見て一瞬だけ硬直していたが、直ぐに気を取り直して誘導を手伝ってくれた。

 

アリーナ内では鈴ちゃんと一夏くんが謎のISと対峙していた。シールドを抜いたレーザー兵器は気になるが、鈴ちゃんがいるなら一夏くんに無茶はさせることはないだろう。

 

……だが、2人のエネルギー状態が気になる。

それに、増援は多い方がいいに決まっている。

せめて避難が完了するまでの間だけでも、あのレーザーが射出されないように敵の撹乱をしなければならない。

 

「布仏さん!ここは任せます!」

 

「あやのんは!?」

 

「織斑くん達の増援に向かいます!シールドの穴が閉じる前に入らなければなりません!」

 

「……!気をつけてね!!」

 

布仏さんに手を振り、アリーナ中にナノマシンを全開で散布しながら穴の開いたシールドへと向かう。距離と修復速度から考えてギリギリだろう。

あと十数mというところでペルセウスを取り出し、瞬時加速を準備する。

中では2人が話し合っている姿が見えるが、やはり混乱している様子はない。どちらも冷静に話し合って、作戦を立てているらしい。

 

今の一夏くんはとても頼もしい。

 

向かって最初に贈る言葉はこれにしよう。

 

そう思って今やギリギリの大きさになってしまったバリアの穴へと手を伸ばす。

これならば間に合うだろう、そう確信した瞬間だった。

 

シールドが目前まで迫ったその時、今度は突如として目の前に現れた二本のブレードによって僕は吹き飛ばされた。

あまりにも早く、あまりにも重いその一撃に、僕は体勢を立て直すこともままならずそのままアリーナの屋根へと叩き込まれる。

 

「うぁっ!?」

 

「あやのん!!」

 

布仏さんの声が聞こえた。

アリーナの屋根に突っ込んだ僕だったが、ブレードの攻撃自体はペルセウスで防いでいる。シールドエネルギーの損傷は最低限で済んでいた。

ただ、これほどの出力は、例え一夏くんの白式がエネルギーを全てパワーに振ったとしても出せないだろう。

それほどに異常な一撃であった。

 

 

「はっ!所詮は学生かと思ってたのになかなかやるじゃねえか、今のを防いだのは褒めてやるぜ?」

 

 

何の前触れもなく背後に現れたあのフルアーマー型のIS。

恐らくではあるが自分の手に負える相手ではないだろう。

 

……もちろん、他の人の手に負えるかどうかはまた別の話で。

どう考えても自分がこれを抑えなければならない役割にあることも間違いないのだが。




レーザー兵器の威力は原作の2.5倍くらいです。
もちろんバリバリ怪我人も出てます。
散布されたナノマシンのおかげで多少はマシですが。

難易度も跳ね上がってます。
原作レベルでは確実に勝てません。

【次回:紅蓮の世界】
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