IS - 女装男子をお母さんに -   作:ねをんゆう

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一人オリキャラとオリ企業が出ますけど、多分これから先ほとんど他には出ないのでゆゆして。



3.そろそろ僕も嘆きたい

 

『乙女コーポレーション』

 

通称『乙コー』

 

化粧品から洋服、アクセサリー、大人のオモチャ、果てはマッサージ、整形、ホテル経営など、様々な分野を手広く扱っている有名企業である。

【誰だって乙女になれる】という言葉のもと活動しており、とあるバラエティ番組では依頼者を全力で乙女にするという謎コーナーがあるほどだ。

しかし男であろうと女であろうと経営陣も含めて全力で取り組むことから、これがまた非常に人気のある企画となっている。僕もたまに妹達と共に視聴していた。

 

さて、そんな会社にどうして僕がいるのかと言えば……

 

「まあ、女装ですよね。」

 

むしろそれしかない。

 

「女装自体は今もしているのだがな。……くくっ、なかなか似合っているぞ。服装を変えただけだが、今の時点でどう頑張っても男には見えんほどだ。」

 

「……千冬さん、なんだか少し意地悪な先生風吹かしてますけど、それ膝枕されながら言う台詞じゃありませんからね?また徹夜したんですか?」

 

「……まあ、徹夜はさておきだな。どうにもお前の膝枕は心地が良い。あの後、真耶にもしてもらったが何処か物足りなくてな……何が違うんだ?」

 

「後輩の同僚に何やらしてるんですか……まあ膝枕に関しては昔から妹や弟達によくしてましたから。姿勢が悪かったりすると眠ってくれませんからね、頭の撫で方とか色々工夫した覚えはあります。」

 

「教え子と後輩に膝枕を懇願……後で冷静になった時の自分が今から怖いな。」

 

「3徹は仕方ないです、3徹は。」

 

人間3日も寝ずに働いていれば普通は発狂しそうなものだけれど、それはどうやら彼女ですら例外ではないらしい。きっと今頃、日本政府とIS学園には死体の山が積み上がっているのだろうなと思うと、凄く申し訳ない。

 

「ついでに耳掻きなんかもしちゃいましょうか。ホテルにあったので持ってきたんですよ。」

 

「くっ、嫁にしたい……」

 

「その発言は色々とおかしいですよね。」

 

「一夏の嫁でも構わん……」

 

「何も構わなくないです、むしろ問題が増えました。」

 

「一夏が自立するまで婚活はせんぞ……」

 

「最低でも3年以上かかると思うのですが、大丈夫ですか?この時代ですし婚活は早めの方がいいと思いますが……」

 

「……うぅ……」

 

「分かりました、この話題はやめましょう。大丈夫です、いつかなんとかなります。」

 

疲労している女性に追い打ちをかけてはいけない、僕は『あのブリュンヒルデと婚約しようと思う男性』という高過ぎるハードルを見て見ぬ振りすることにした。

お金のある独身女性ほど悪い男に騙されやすい、なんてマザーは言っていたけれど、彼女がその道を爆進している様に見えてしまったことも見て見ぬ振りをした。

 

大丈夫大丈夫、多分一夏くんがなんとかしてくれるでしょ、僕は知らない(匙投げ

 

 

 

 

千冬さんの婚活話から30分ほど経ち、ようやく始まった乙女コーポレーションとの会談。

ISの話とか男性操縦者としての話とか全部ふっとばして女装の話を進める日本政府には正直疑問しかないのだが、そんな疑問すら遥か彼方へと追い遣ってしまうほどの"ナニカ"がそこには居た。

 

「ぁっらぁ〜ん♡なかなかぷりちーな子じゃないのん♡あーしは乙女コーポレーション社長の彦星 乙女(ひこぼし おとめ)よん♡よ・ろ・し・く♡」

 

「……(目逸らし」

 

……これは、あれだ。

悩み事とか嫌な事があった時に空を見上げると、なんだか全部がちっぽけに思えてしまう時と同じ感じ。

それの不快なバージョンだ。

 

なに不快なバージョンって、なかなか無いよそんなバージョン。

 

現実逃避するかの如く視界を横にズラすと偶然にも千冬さんと目が合ってしまう。

 

「……綾崎、挨拶くらいしたらどうだ。初対面の相手から無言で目を逸らすなど失礼にもほどがあるぞ。」

 

「いや、目が合ったってことは千冬さんも逸らしたってことですよね?なに自分だけ逃げようとしてるんですか。その冷や汗は誤魔化せませんからね、死なば諸共ですからね。」

 

「うふふ♡あーしの美貌の前ではしょうがないわよ♡お姉さんもあーたもなかなか美美ッと来てるけど、まだまだネ♡早くあーしに追いつきなさい♡」

 

「「黙れ怪物」」

 

「んまっ♡美の怪物だなんて……あーしにとって最高の褒め言葉よ♡」

 

「なんだこいつ、最強か……?」

 

「世界最強にそこまで言わせるってことは間違いなく最強だと思います。事実僕の中の大切な何かが凄い勢いで削られていますし。」

 

「奇遇だな、私とてここまでの精神攻撃は初めてだ。」

 

女性用のV字水着にミニスカート、ぱつんぱつんのニーソックスにナース帽を被ったスキンヘッドの筋肉ダルマがそこには居た。

無駄に脱毛しているのと化粧が濃いのが更にキツイ。仕草もクネクネとしたぶりっ子染みたものも拍車をかけ、"ソレ"と一緒にやって来た一人の男性社員が顔を真っ青にして今にも倒れそうになっている。

 

この空間に長時間いると不味い

 

まだ対面して2度目の千冬さんとアイコンタクトでそう通じ合えるほどに僕達は追い詰められていた。

 

「……あー、そうだ千冬さん!確かこの後も予定があるんでしたっけ!?忙しい立場ですもんね!?」

 

「そ、そうだな。男性操縦者の件で学園に連絡が殺到しているからな、早めに戻らねばならない。」

 

「あっらぁ〜ん、そうなのぉ?せっかくたぁくさんお話しようと思ってたのにぃん♡」

 

「「遠慮させていただきます」」

 

パシッと千冬さんと机の下でハイタッチを交わす。

世界最強をここまで追い詰めるとか何者だ、クネクネと動くのをほんとにやめて欲しい。

時々見たくも無い乳首がポロリしそうになるのが心底キツイ。

座っているせいでミニスカの中身が見えそうになっている事実を必死に意識外へと押しやっているだけで限界なのに、下手な神話生物よりSANチェックが厳しい。

 

話を進めるために千冬さんが顔を真っ青にした社員さんに簡潔な説明を求めると、社員さんもまた「助かった」といった表情をして視界から奴を消し去る様にして僕達2人に説明を始めた。

段々と彼に生気が戻っていることを考えると、目の保養というか、千冬さんの様な美人は見ているだけで心が休まるということだろう。あんなのを見た後なら尚更だ。

 

……まあ!こっちはバリバリ視界の端に映ってるんですけどね!

何故かソファの上で女豹のポーズを取り始めた変態の姿が見えてしまっているんですけどね!マザー助けて!!

 

「……ふ、む。要は綾崎の女装生活における必要物資から資金提供、教育、助言まで全てそちらで行なって貰えるということか。資金に関しては政府からもそれなりに出るとは思うが、少し話が良すぎないか?事情は知っていると思うが、彼女を広告塔として利用するのは難しいぞ?」

 

「ええ、それがですね……「あーたにはウチのISに乗ってもらおうと思ってるのよん♡だから女性のままでも十分な広告塔になりうるわん♡」

 

「……なに?」

 

ISという言葉にピクリと反応した千冬さん、対して女装期間中はこの怪物と深いお付き合い()をしなくてはならないという事実に魂を失った僕、そして再び始まる怪物のターンに社員さんは泣きそうになっていた。

絶対あなたはこの会社を辞めた方がいいと思います。

 

「乙女コーポレーションがISだと?そんな話は聞いたことがないが……」

 

「えー、近頃ISに関する依頼が他の企業や国家から多くてですね。主にISのデザインやペイントに関するアイデアが欲しいというものなのですが、担当者達が思いの外ハマってしまいまして……」

 

「だから思い切ってIS部門作っちゃった♡コアも1つ確保して現在鋭意作成中♡もちろん、このことは政府からOKGOGOサインも出てるわん♡あとは綾崎ちゃんの意・思・次・第♡」

 

知らないうちにどんどん周りが固められている件について。これ今後、自分の身に降りかかるであろう危険を考えると拒否なんてできる訳がないんですけど……

でもここで拒否しておかないと女装期間が終わっても一生この会社でお世話になることになるという、うーん板挟み。

 

貴重な男性操縦者なのだからISを提供したいという会社は多くあるだろうけれど、そもそもそれを隠さなければいけないわけで。政府に頼んだとしても降りてくるのは所謂量産機だろう。

本当に自分に合った、自分だけのISを手に入れておくならこの機会しかない……

 

メリットは確かにある、それはもうたくさんある。

けどデメリットが強過ぎる!

毎日のようにコレと会わないといけないって!

絶対この人いろんな種類の変態装備持ってるもん!

この一種類だけなわけないもん!

毎日違った変態を見せつけられるに決まってるもん!

 

やったね綾崎ちゃん!飽きがこないね!

 

せめて飽きさせて欲しかった!!!

 

「綾崎さん、ご安心ください。社長の衣装は毎日がこのレベルな訳ではありません。今日は少し張り切ってしまって……その、えらいことになってますが。普段はまだ見られるレベルなのです。」

 

「ほんとですか!?ほんとなんですよね!?信じてもいいんですよね!?」

 

「……はい。」

 

「なんですか今の間は!?絶対裏があるじゃないですかぁぁ!!」

 

一瞬だけ期待させておいて一気に落としてくる素晴らしい投げっぷり、涙目になって社員さんを問い詰めるも彼は必死になって目を逸らす。

そんな私達を見て他人事のような雰囲気で見ている千冬さんが恨めしい。心底恨めしい。

 

「……綾崎、諦めろ。」

 

「うぅ……毎日写真撮って千冬さんに送りつけますから……!」

 

「やっ、やめろ!」

 

こうして対ブリュンヒルデ用決戦兵器第1号が生まれた。

後にこの決戦兵器をIS学園中の監視カメラの前に貼り付けることで、対天災用決戦兵器にもなり得ることが判明したのだが、それはまた後の話。




この辺りでプロローグは終わり!閉廷!
次からは学園生活開始まで数ヶ月ほど飛びます。

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