IS - 女装男子をお母さんに -   作:ねをんゆう

30 / 74
ラウラは制服で髪下ろしてる普段の様子が一番可愛い。
今作でもいっちーにパァンした事実はありますが、原作とは状況が異なる様で……


29.みんな大好き銀髪眼帯軍人少女

その日の放課後、私はセシリアさんに付き添われながら寮監室への道をゆったりと進んでいた。

 

「ごめんなさいセシリアさん。この車椅子でも動くことはできるんですけど、やっぱり誰かに押されてる方が安全で……」

 

「問題ありませんわお母様!それにようやくお母様と2人きりでお話しできる機会を得られたのですから、これ以上の誉れはありません!」

 

「ふふ、そう言って頂けると助かります。」

 

いくら最新鋭の車椅子と言えど、いつもより下がった目線で、自分の身体ほど自由には動けないので誰かに押して貰った方が安全性は高い。

例え自動ブレーキシステムが採用されているからと言って、今は片眼が使えず遠近感が乏しいこの身、曲がり角で誰かとぶつかる様な誰にも得のない結果だけは防ぎたい。

 

「……お母様、1つよろしいでしょうか?」

 

「???なんですかセシリアさん?」

 

先程まで笑っていたセシリアさんが突然神妙な顔つきになって私に声をかける。

その様子を不思議に思いながらも私は彼女へと顔を向けた。

 

「……お母様が対峙していたというお相手は、どのような機体だったのでしょう?」

 

「私と対峙していたっていうのは……あの時のことですよね?」

 

「ええ、もちろんですわ。」

 

……そういえば、その辺りの話は千冬さん以外にはしていなかった。

国家代表候補生という立場上、彼女も敵となる相手の情報は知っておくべきだと思ったのだろうか。

確かに、敵があれだけの戦力を持っていると分かった以上、ある程度情報を共有して注意喚起しておくのも手だろう。

 

セシリアさんの言葉に少しだけ考え込んでいた私だったが、そこにもう1人、噂の彼女が声をかけてきた。

 

 

「その話、私にも聞かせてもらおうか。」

 

 

「……!貴女は……!」

 

「……ラウラ・ボーデヴィッヒさん、でしたでしょうか?」

 

「そうだ、ラウラで構わない。」

 

銀色の長髪が特徴的な軍人気質な女の子、千冬さんがドイツに居た頃の教え子で、とても優秀な操縦士……

千冬さん曰く『非常に真面目な子』らしいが、転入初日に一夏くんをパァンッ!したと聞いている。

一部の倒錯した性癖を持っている人にとってはご褒美だろうが、一夏くんは彼女にかなりの苦手意識を持っていたようだった。セシリアさんや箒ちゃんも同様だろう。

 

……悪い子には見えないのだが。

 

「ええと、ラウラさんも敵となる可能性のある相手の情報を知っておきたい、ということで大丈夫ですか?」

 

「そうだ、話が早くて助かる。この学園に襲撃があったのは知っていたが、敵戦力についての情報を私は得ることができていないのでな。貴女が対峙した相手が桁外れの戦闘力を持っていたとは聞いた以上、最初に知るべき情報だと判断した。」

 

「そうですね、私が一番のハズレくじを引いてしまったのは事実でしょう。……セシリアさん、寮監室に行きましょう?そこでお二人にお話しましょうか。」

 

「よ、よいのですかお母様!?この方は一夏さんに暴力を振るった方なのですよ!?危険ですわ!」

 

「その件に関して弁解するつもりはない。……が、仮にも私は軍人だ。怪我人に手を出すつもりもない。なにより、私は彼女に一定の敬意を表しているからな。」

 

「……そうなのですの?」

 

「当然だろう。ISに乗り始めて1年にも満たない一般人が、突然のISによる襲撃にも冷静に対処し、多くの傷を負いながらも敵の最大戦力を押さえ込んだのだぞ?軍人ならば勲章もの……教官のお気に入りでなければうちの部隊に勧誘していたほどだ。」

 

「なりませんわ!!」

 

「今はそのつもりは無いと言っている。それより早くその寮監室とやらに案内をしろ、周りの視線が鬱陶しくて仕方ない。」

 

そう言って自然に車椅子を押す係をセシリアさんから奪い取るラウラさん。

突然のその行動に一瞬呆けたセシリアさんは意識を取り戻すと拳を握って『ぐぬぬ……』していた。

多分ここで騒がず我慢しているのは私のためなのだろうと思う。

後で改めてお礼を言おう。

 

 

ラウラさんからの意外な好印象を感じ取りながらも寮監室へと入ると、私は自分のベッドの上に身体を移す。

元々寮監室の玄関には段差があった筈だが、私が2週間ぶりに戻った時には完全なバリアフリーになっていた。

多分千冬さんが色々やったのだろう、やっぱり過保護具合おかしくない?

 

「……特殊な変形機構に条約禁止レベルの広域殲滅兵器、圧倒的な基礎性能に加えて国家代表レベルの操縦者、か。聞けば聞くほど目を逸らしたくなる話だな。」

 

「むしろわたくしはお母様がそんなものを相手にしていたという事実の方が恐ろしく感じますわ……」

 

一通りの内容を語り終えると2人はその表情を大きく歪ませて考え込んでしまう。

特にラウラさんは軍人であるからか、敵の強大さと異常さを誰よりも実感しているように思える。

私だって出来るならば二度と対峙したく無い。

 

「だが、ここまで馬鹿げた性能のISを造ることが可能な人間となると限られて来る。セシリア・オルコットと言ったか?貴様も確か戦闘に参加していたのだったな、その辺りについてどう思う?」

 

「……そうですわね、わたくしもラウラさんの意見に同意しますわ。

あまり大きな声では話せませんが、わたくし達が戦った機体は所謂無人機でしたの。それも、専用機持ち3人を相手に30分近く攻勢を保つだけの高水準のAIと機体性能を持っていました。そんなものを造れる人物は1人しか思い浮かびませんわ。」

 

「……やはり、か。このことについて教官は何か言っていないのか?」

 

「少なくとも私は何も聞いていません、知っていて黙っている可能性もあるかと。今回の件で私が大怪我を負ってしまいましたし、箒ちゃんが知れば色々と大変なことになることも予想できますから。」

 

「奴の妹か……面倒な、単なる一般人ならば切り捨てて話を進められたものを。」

 

ぶっちゃけ、どう考えても今回の首謀者はISの始祖と呼ばれる篠ノ之束だ。

どんな大国を想定したとしても現状の技術であれだけの破壊力を持つ兵器は作れないし、無人機だってそうだ。

例え無人機を作ることができたとしても、ISコアは使用されているはず。それを使い捨てのように扱う国なんてあるはずがない。

 

……そんなこと、誰よりも先に千冬さんが気付いていると思っていたのだけれど、一体どうなっているのだろうか。

箒ちゃんを気遣う、という訳でもなさそうだし……

 

「ちなみにだが、襲撃の目的は何だったのだ?」

 

「わたくしは知りませんわ、お母様は何か?」

 

「……一夏くん、だったそうですよ。本命は一夏くんと無人機を戦わせることだと、有人機に乗っていた女性は言っていました。自分はそれを邪魔する者を抑えるために来たというようなことも。」

 

「またあの男か。」

 

「ということはお母様はそれに反抗したんですの?それはなんと言いますか……」

 

「彼女の言葉に確信も持てませんでしたし、私も時間稼ぎ程度で終わらせるつもりでしたから。一夏くん達も劣勢でしたしね。相手方が思いのほか舞い上がってしまいまして、あんなことになってしまったのですが……」

 

「貴女の判断は間違っていない。戦場で相手の言葉を鵜呑みにするなど愚か者のすることだ。相手の力量を測れなかったことが致命的であったとしても、結果的に抑え込んだ上に敵の性能まで測れたのだから文句など言えまい。」

 

「……ありがとうございます、ラウラさん。」

 

ラウラさんのフォローが身に染みる。

自分でも愚かなことをしたと思っている。

きっとあのまま放っておいたとしても、彼女は傍観していただろう。

自分の判断は結果的に怪我人が自分だけで済んだものの、周囲にいた人間を危険に晒すものだった。

敵の戦力の大きさを知ることができたという利点があったとしても、その間違いの大きさを隠せるほどのものではない。

あの日から私はそれをずっと悔やんでいたのだ。

 

「……とは言うが、こちらに打つ手がないというのも事実か。話を聞いた限りでは私とて時間稼ぎが叶うかどうか、こちらの戦力が束になってかかっても纏めて焼き払われるのがオチだろうな。」

 

「相手が篠ノ之博士となれば、同じ程度の戦力を持つISが他に複数あっても不思議ではありませんわ。悔しいですが、無人機相手に苦戦していた様では戦力になれる自信はありませんわね……」

 

そう、結果的にそういう結論になる。

いくら悔やんだところで、恐らく篠ノ之博士の干渉は今後も間違いなく続く。

それに対応することを考えるべきなのだろうが、考えたところでどうにもならないのだ。

ラウラさんが言った通り、時間稼ぎすら満足にできないだろう。

 

「……とりあえず、情報の提供感謝する。突破口が見つけられるかどうかは怪しいところだが、有益ではあった。貴女とは今後も良い関係を築いていきたい。」

 

「ええ、私も同感です。ご覧の通り、私は寮監室に住み込ませていただいていますので、いつでもご気軽にお訪ねくださいね。夜は少々騒がしいですが、いつでも歓迎します。」

 

「そうさせてもらおう。……それでは、失礼する。」

 

そう言ってラウラさんは部屋から立ち去っていった。

話の最中はずっと険しい顔をしていたが、『いつでもお訪ねください』と言った時には一瞬だけど嬉しそうな顔をしていた。

きっとあれは私にではなく、千冬さんに会うことができるからだろう。

 

一夏君をパァンしたことはさておき、私自身は彼女のことを気に入っていた。

 

「さてさて、今日のお夕飯の支度をしましょうか。冷蔵庫には何がありますか……」

 

「お母様?そんなことを私が許すとでも?」

 

「……やっぱりだめですか?」

 

「心を鬼にしてでも止めさせていただきます。」

 

「悲しいなぁ……」

 

この身体が回復することをここに来て強く望んだ。

あれだけカップラーメンの空の容器が捨てられている光景を黙って見ているのは、なかなかに苦しいものがある。

 




ラウラと綾崎ちゃんの初対面。
ここからどうやって二人の仲は進んでいくんでしょう。

ちなみに戦闘などもちろん出来ない綾崎さん。
どうやら次のイザコザはイッチー達だけの力で頑張って貰うしかなさそうです。

【次回:30.あなたが求めるわたしはどっち?】

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。