IS - 女装男子をお母さんに -   作:ねをんゆう

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生まれた時から周りの女の子達に愛されまくってたら、普段との違いが分からずにイッチー並みの鈍感になるのか誰かに実験して欲しい。


4.織斑一夏は嘆いてる

side一夏

 

(……つれぇ……)

 

俺こと織斑一夏は、現在10数年生きてきた人生の中でも、3本指に入るほどの危機的状況に立たされている。

いや、実際は座っているのだけれど、そういうことが言いたいわけではない。

 

IS学園 1年1組

 

未だHRの5分前だと言うにも関わらず教室は静けさに包まれている。それはもちろん只の静けさではなく、緊張感の漂う方の静けさだ。

そしてその原因はもちろん俺である。

なにせクラスの30人中29人が女生徒であり、それはつまり男子生徒は俺1人だということを示している。

 

『世界で唯一ISを動かすことができる男性操縦者』

 

そんな肩書きが付いて以降、さまざまな視線に晒されてきたが、これは特に酷い。

教卓の目の前という位置も悪いのだろうが、自分以外の29人分の視線が一挙にこの背中に突き刺さっているのだ。

指先1つ動かすだけでザワリとし、その度に冷や汗が止まらないくらいには心に悪い。

 

(帰りたい……)

 

この先ずっとこのままなら1ヶ月保たない自信がある。

入学初日から既に今後の3年間を憂いていた。

 

……ちなみに29人分の視線とは言ったものの、正確にはそれは間違いである。実は俺の左隣の席の主は未だに来ていないらしく、同時に教室の外には俺を一目見ようとたくさんの女生徒が集まっていた。

 

つまり、実際に向けられている視線の数は29ではなく、(29-1+約30)というわけで……

 

(……増えてるじゃねぇか!

両目あるから×2すればもっと凄いことになるよ!

ってやかましいわ!半分でいいから誰か引き受けてくれよ!)

 

 

もちろん誰かが引き受けてくれるはずもなく、身動き1つ取ることすら戸惑われるような状態でHRが始まる時間まで、亀のようにうずくまりながら待っていることとなった。

人生で初めて甲羅が欲しいと思った。カニニナリタイネ!

 

それから数分が経ち、無理な姿勢で段々と肩が痛くなってきた頃、廊下にいる生徒達が突然ザワつきだした。

 

恐らく担任となる先生が来たのだろう、できればもう少し早くきて欲しかったがこの状況から解放されるならば問題はない。

 

(助かった……)

 

ようやく一息をつけると思い、担任となる先生を確認するために扉の方へ視線を向ける。すると……

 

「……!?」

 

あまりの衝撃に言葉を失った。

 

 

「はい、ここが綾崎さんのクラスですよ。担任は私なので!いつでも頼ってくださいね!」

 

「あ、あはは……ありがとうございます、山田先生。」

 

とある部分が異様に豊満な眼鏡の先生(……先生だよな?)に連れられてやってきた1人の女生徒。

俺の目は彼女に釘付けとなっていた。

 

所謂モデル体型というのか、そして自身の姉によってある程度美人に耐性のあるはずの俺でも見惚れてしまうほどに整った容姿。ほんの少しの動作にすら気品に溢れ、見過ぎるのも失礼だという理性に反して自然と目が彼女を追ってしまう。

 

「「「ひぇっ……」」」

 

教室中から女生徒達の悲鳴じみた声が聞こえてくる。

俺に集まっていたはずの視線が一気に霧散し、彼女へと集まっていた。先ほどの悲鳴染みた声を考えるに、やはり同じ女性から見ても彼女は異質らしい。

それでも彼女はそんな生徒達の反応に対し、少し驚いただけで軽く会釈をして席へと着く。

 

そう、俺の直ぐ隣の席に。

 

(……なんか、すげぇ)

 

腰のあたりまで長く伸ばされた髪はよく手入れされているのか非常に美しく、目は自身の姉とは対照的に大きな垂れ目で優しい印象を受ける。

垂れ目と言えば姉の友人に一人印象的な人が居たが、彼女が持つ溌剌とした類のものではなく、むしろ『物静か、お淑やか』といった言葉がよく似合う。

幼い頃から身近に騒がしい女性が多かった俺からすれば、初めて見るタイプの女性だった。

 

(……弾。IS学園って、マジでとんでもない美女がいるんだな。)

 

この時、俺は生まれて初めて弾の馬鹿な言葉に共感を持った。

『IS学園の女の子は美少女ばっかなんだろ!?羨ましいぜ一夏ァァ!!』と割とガチめな雰囲気で親友は嘆いていたが、あの時言っていた言葉も今なら分かる。

 

(俺、ここに来て初めてよかったと思えることがあったよ……)

 

心の中で今は亡き親友(生きてる)に向けて敬礼をした。

そんなことを考えているからだろうか。突然、自身の頭頂部からしてはいけない音がし、次の瞬間俺の顔面は机に打ち付けられていた。

 

ドパンッ

 

「ぎゅぶっ……!」

 

「「ひぇっ……」」

 

さっきとは違った意味合いでの悲鳴が聞こえた。

 

「教師の挨拶を無視するだけでは飽き足らず、初対面の女性をジロジロと……なかなかの問題児のようだな?織斑。」

 

「ち、千冬姉!?……いや、呂布か?」

 

「誰が三国志史上最強の武将だ!織斑先生と呼べ!」

 

ドパンッ

 

「ぐぶぇっ……」

 

IS史上最強なんだから似たようなもんだろ、そんなことは口が裂けても言えなかった。

 




綾崎くんちゃんはこの数ヶ月徹底的に女性としての立ち振る舞いを学ばされ、彼の才能(女)もあって下半身中央部以外の全てが完全に女の子になっています。
その成長速度には変態社長も度肝を抜かれたそうです。

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