IS - 女装男子をお母さんに -   作:ねをんゆう

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自分が思っているより書いてるシリアスがキツめだったみたいなので、今回は思いっきり明るい雰囲気で書こうかなぁ♪って思ってました。


55.千冬先生の恩返し奮闘戦線 - 織斑一夏は運が良い -

臨海学校の準備。

そうは言っても準備などたかが知れている。

そもそも寮生活の学生に何かしら特殊な準備を求める筈もなく、当日の用意は教師陣やクラス代表、一部の物好き達が手伝って大抵が済ませてあるのだ。

 

そんなこんなで、彼等がわざわざショッピングモールに来てまで準備したかったことと言えば、それこそ趣味的なものしかないわけで……

 

「一夏よ、これはどう思う?」

 

「えっと、無難でいいんじゃないか……?」

 

「無難……これはないな。」

 

 

 

「ねえ一夏、こんなのはどぉう?」

 

「おまっ!布面積考えろ!あり得るか!」

 

「あはは、冗談よ冗談。あー、面白い。」

 

 

 

「一夏さん一夏さん、こういったものはどうでしょう?少しだけ挑戦してみたのですけど。」

 

「んー、セシリアと言ったら青のイメージだから暖色系はあんまりなぁ……」

 

「完全にブルー・ティアーズからの風評被害ですわよね……複雑な気分ですわ。」

 

 

 

「ねぇねぇ一夏、これとかはどうかな?」

 

「……なあシャル、お前それちゃんと見て持って来たか?」

 

「え?……うわぁ!これお尻の部分が紐だぁ!?一夏のえっち!!」「理不尽!?」

 

 

 

「おい織斑一夏。私の情報ではこう言ったものが母上の気を引くのに最適だということなのだが、貴様はどう思う。」

 

「……ラウラ、スクール水着はやめとけ。それは綾崎さんを困らせるだけだ。」

 

「ふむ、そうか。……これならばシャルロットかオルコットに選ばせた方が早そうだな。そこで待っていろ、次を持ってくる。」

 

 

 

 

「一夏!」

「一夏!」

「一夏さん!」

「一夏!」

「織斑一夏!」

 

 

「休む暇がねぇ!?」

 

 

次々と代わる代わるに一夏の前でローテーションする5人、様々な水着を持ってやってくるが一夏がこれだと選ぶまでこのループは終わらない。

そんな彼等であるが、実は裏でまた違うローテーションを組んでいることを一夏は知らない。

 

「ふむ……母さんは肌を出すのがあまり好きではないからな。水着とは言え、配慮は必要だろう。」

 

「ですが肌を出さない水着というと困りますわね。パレオでは足りないとなりますと……」

 

「だったら競泳用の水着とかはどうかな?……海にはあまり似つかわしくない気もするけど。」

 

「そこまで行くとダイビング用のスーツの方がいいだろう、最近はデザインを重視したものも多いと聞く。」

 

「普通の水着の上からシャツとショートパンツとかでもいいんじゃない?それなら水辺で遊ぶ程度なら脱ぐ必要もないし、下にビキニ着てても肌は見えないどころかそれがまた色っぽく見えるし。」

 

「それだな。」

「それですわね。」

「間違いないよ。」

「私も賛成だ。」

 

「決まりね。それじゃあシャルとラウラは下に着る水着、セシリアと箒は上に着るTシャツとショートパンツを、私は小物類を探すわ。一夏の所に行くのはいいけど、ママを1人には絶対にしないように。解散!」

 

「「「「おー!」」」」

 

 

「あ、あはは……ありがとうございます、皆さん。」

 

やる気に満ちた5人を前に、奈桜はされるがままになるしかなかった。

 

「本当は海に入るつもりは無かったので買うつもりはなかったのですが……」

 

「もう、何言ってんのよママ。女の子にとっての水着は、別に水に入る為だけの服装じゃないのよ?」

 

「え……?え?違うんですか……?」

 

「そ。正しくは水辺で遊ぶ時の私服ね、水に濡れても良い私服でも可。普段とは違う空間で、普段とは違うシチュエーションで自分を魅せられるんだから。ここで気合を入れないでいつ入れるのよ。」

 

「はぁ……言いたいことは分かりますが私は特に着飾らなくても……」

 

「そういうのが今時の女の子なの!ほら、今回は私達に任せて大人しく飾られてなさいって!」

 

「あわわ……!」

 

グイッと麦わら帽子を押し付けられた奈桜は結局そのあと5人に着せ替えの様に様々なものを押し付けられるハメになった。

流石に服を着替えるのも一苦労なのでそう言ったものは上からあてがわれるだけだったが、その度にきゃーきゃーと騒ぎ立てる女子特有のテンションには流石の奈桜もタジタジであった。

 

その一方で……

 

 

 

「……何をしているんですか?織斑先生。」

 

「……観察だ。」

 

「いえ、あの、声を掛けに行けばいいじゃないですか……」

 

「……観察だ。」

 

「えぇ……」

 

柱の陰からこちらを覗くストーカー達がそこに居たのをまだ誰も気付いていない。

 

 

 

水着選びが一段落した頃、ようやく5人の質問責めから解放された一夏は適当に買った海パンを手に壁に身体を預け、大きな溜息を吐いていた。

 

「あー……女の買い物は長いって弾から聞いたことはあるけど、あれ本当だったんだな。

千冬姉はそういうタイプじゃないし、中学の頃に鈴と出かけた時はあいつなんか慌ててたからなぁ……」

 

完全にデートだと思い込んでいたが故の鈴の反応である。ちなみにこの後、一夏の予定通りに弾と合流した時の鈴の様子と言えば……弾曰く『本気でちびりそうになった』である。彼が全力で蹴り飛ばされたのも仕方のない仕打ちであると、後に誰もが口を揃えてそう言った。

 

「完全なイメージだけど、綾崎さんはあんまり買い物とか長そうなイメージ無いよなぁ。例え長くても苦痛には感じなさそうだし、自分の為の買い物より他人の為の買い物に時間使ってそうだ。例えば……」

 

(『一夏くん一夏くん!これ、すっごく鈴ちゃんに似合うと思いませんか♪買っちゃってもいいですかね?買っちゃいましょうか?買っちゃいますね♪買っちゃいましょう♪わぁい♪』)

 

「……なるほど、何時間でも付き合えるな。」

 

自分で勝手にした想像で口元を覆いながら顔を真っ赤にして頷く一般的な男子高校生の姿がそこにはあった。

実際には『わぁい♪』と言うほどにテンションが高くなることがあるのかという話もあるが、そこは健全な妄想ということとして……

 

 

 

「一夏くん、水着は決まりましたか?」

 

 

 

「んぁっ!?あ、ああっ綾崎さん!?」

 

噂をすれば影がさすなどという言葉はあるけれど、実際に目の前でそれが起きてしまえば本人にとってこれほど恐ろしいものはない。

 

「?もしかして、何か大切な考え事の最中でしたでしょうか……?」

 

「い、いや!そんなことない!全然暇してた!全然OK!大丈夫!問題なし!」

 

「そうですか?それならよいのですが……」

 

不思議そうな顔をしてこちらを見つめてくる奈桜。そんな彼女を先ほどの妄想を思い返しながらこうして目にしてみれば、やはり自分の想像なんかよりも何倍も彼女は綺麗な顔をしていると一夏は思った。

しかしあまり見つめ過ぎるとまた鈴に気付かれて殴られると思った一夏は心の中でパシリと頰を叩いて気を引き締める。みっともない格好を、この人相手にはあまり見せたくないという一心であった。

 

「えっと、水着だよな。俺の方もなんとか決まったよ、無難なやつだけどさ。……あれ?そういえば他の奴等は?」

 

「皆さんあそこでレジャー品を見ていますよ。ふふ、ちなみに私は暇そうにしていた一夏くんに声を掛けに来ただけです。」

 

「あはは、それは嬉しいな。……えっと、その、よかったらそこの自販機にでも行かないか?ジュースくらい奢るしさ。」

 

「あら、いいんですか?ふふ、それでは一夏くんの好意に甘えてしまいましょうか。」

 

「!!あ、ああ!任せてくれ!!」

 

いつもの5人がレジャー品に夢中になっており、こちらが何かしら騒ぎ立てなければ特に何か言ってくるような雰囲気ではないことを確認した一夏はチャンスとばかりに奈桜を誘う。

とは言うものの、基本的に奈桜に対してはDTな彼である。そこまで考え付いて行動に移している訳でもないため、奈緒が笑顔で承諾した瞬間に嬉しさのあまり舞い上がってしまった。

 

……実はこう言ったところも奈桜の他者を誑かす癖の1つである。

基本的に彼女は他者の誘いを断らない。

そして意外にも他者からの施しや好意は確認することはあれど断らず受け取り、それに対して相応の感謝の気持ちで返すのだ。

相手に対して好意の提案をしたものにとって、これほど心地の良いことはあるまい。

 

そんなこんなでベンチの横に車椅子をつけ、2人で肩を並べてジュースを啜る。一夏としてはそれだけで落ち着かない空間であり、隣で飲み物を飲むだけであるにも関わらずそれだけでなんだか色っぽく見えてしまう。

ゴクリと彼女の喉を通る液体の音が異様に大きく聞こえてしまって、彼女の首筋や濡れた唇、薄く開いた瞳や少しだけ紅潮した頰が一夏の思考をどんどんと侵食していき……

 

「つめたっ!?」

 

当然のように缶を手元から落とした。

 

「っ!だ、大丈夫ですか一夏くん?……ああ、これじゃあ染みになっちゃいます。」

 

「えっ!あ、いや!ちょ、それくらい自分でやるから……あ、綾崎さんダメだって!!そこは自分で拭くから!!」

 

「もう!動いちゃダメですよ一夏くん、これくらい私に任せて下さい。こんなところに染みが出来てしまったら目立ってしまいますからね。」

 

「いやいやいやいや!!ほんと!ほんとダメだから!!誤解されるから!誤解されたら殺されるから!!もう既に周りの目線が痛いから!!一回離れよう!お願いだから!!」

 

箒にバレたら→木刀で刺される

セシリアにバレたら→軽蔑の眼差し

鈴にバレたら→カバンでカチ割られる

シャルにバレたら→軽蔑の眼差し

ラウラにバレたら→ISで殺される

 

さて、どれがましでしょう?

 

(どれも嫌に決まってんだろうがぁぁ!!)

 

実はこの中で最もましなのは鈴であったりする。

セシリアとシャルロットの選択肢は物理的な被害が無いので一見良心的に見えるが、そこには信用の失落という恐ろしいマイナス要素があるのだ。

その分、箒と鈴は物理的なダメージは受けるが、それだけで終わらせてくれる。多少白い目で見られたとしても、物理があるぶん精神的なマイナスは少なくて済むのだ。

 

……ちなみにラウラに見つかった場合は全てが終わる。ISでなくともその場で射殺、または社会的に殺されること待った無しである。容赦はない、仕方がない。

 

さて、基本的に女運の悪い一夏くんが引いてしまった今回の結末は……

 

 

 

 

 

 

 

「貴様は綾崎に何をさせているんだ……?

なぁ……愚弟よ……?」

 

 

 

SSR 『鬼の教官』織斑千冬 を 引き当てた!

 

 

 

 

(……死んだな、俺。)

 

一夏は意外にも晴れやかな顔で千冬を迎えた。

 




そういうことなので、意味が分かると楽しい話でした。

次の日常パートについて(1)

  • 一夏+αと買い物デート
  • 箒と負けない花嫁修行
  • セシリアと優雅にティータイム
  • マドカとドキドキお泊り会
  • 千冬の奮闘恩返し
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