綾崎ちゃんは押しの弱い子供の男性に強いです。
綾崎ちゃんは押しの強い子供の女性に強いです。
綾崎ちゃんは押しの弱い子供の女性に強いです。
綾崎ちゃんは押しの強い同級の男性に強いです。
綾崎ちゃんは押しの弱い同級の男性に強いです。
綾崎ちゃんは押しの強い同級の女性に強いです。
綾崎ちゃんは押しの弱い同級の女性に強いです。
綾崎ちゃんは押しの強い大人の男性に強いです。
綾崎ちゃんは押しの弱い大人の男性に強いです。
綾崎ちゃんは押しの強い大人の女性に滅茶苦茶弱いです。
綾崎ちゃんは押しの弱い大人の女性に滅茶苦茶強いです。
「た、束さん!?……え、えっと、これは一体……?」
謎のエレベーターに地下深くへと引き込まれ、投げ込まれた先にあったのは大きな大きな大浴場だった。
シャワーもあれば石鹸類も一通り揃っており、更に匂いからして天然の温泉が、最適な温度で、これでもかと言うほどに流れ込んできている真っ白な空間。
篠ノ之束はそこで湯船に浸かって踏ん反り返りながらニヤニヤと困惑する奈桜を見ていた。
「ん〜?ここかい?ここはね〜、束さんの秘密基地の1つみたいなものかな〜♪」
「ひ、秘密基地ですか……?」
「うんうん。束さん色んなところに拠点持ってるからさ、今日は箒ちゃんに誕生日プレゼント渡すついでに寛いでたんだよね〜♪
そしたらほら、なーくんがお風呂に入れなくて困ってたみたいだから拉致っちった☆ぶいぶい☆」
相変わらず軽く言っているが、この空間を作ったというだけで十分に現実的な話ではないにも関わらず、自分を拉致するためだけにこんな短時間であの謎のエレベーターを作ったというのだから、奈桜は唖然とするばかりである。
しかし束は相変わらず笑顔を絶やさない。
「え、えと……とにかく、ありがとうございます束さん。束さんのおかげで夢にまで見た湯船に入れました。……うう、本当に外で水浴びしようと考えてました……」
「あはは!いいのいいの。前にも言ったけど束さんはなーくんにゾッコンだからね♪君が困っていたら助けてあげるのは当然だよ。」
「それは……なんというか、また反応に困ってしまいますね。素直に嬉しいとは思うのですが……」
「恋愛的欲求による助け舟に対価として差出せるものがない、かな?」
「っ……そう、ですね。嬉しくとも今の私ではその気持ちに応えることはできませんから。心を偽るだなんて不誠実な真似はできませんし。」
「別にいいよ、束さんはそんなもの求めてないからね。束さんが君に本当に求めていることはたった1つだけ。もう一度言葉にして言ってあげた方が心に残るかな?」
「……いえ、大丈夫です。他の記憶が無くとも、その言葉だけは覚えています。例え自分の信念を捻じ曲げてでも私はきっとその約束を破れません。」
「……そう、ならいいよ。
ま!それを忘れてなければ、なーくんが誰と仲良くなって、どんな選択をしようが私は構わないからね〜☆おりゃー!」
「ちょ、なっ!危なっ!」
それまでのシリアスな雰囲気とは一転、束は突然前も隠さず湯船から立ち上がり、奈桜目掛けて飛び込んだ。
そんな不意打ちに一瞬反応が遅れてしまった奈桜は、束によって水底にまで沈められてしまう。しかしそのまま数秒、なかなか起き上がろうとしない彼女を見兼ねて、奈桜は渋々束を抱き上げて水面から顔を出した。
普段からなんとなく相手が考えていることを考えながら生活している奈桜であっても、束に関してはその思考が全く掴めない。
今も腕の中で全く動こうとしない彼女に完全に困惑させられていた。
「はぁ……束さん、湯船の中で暴れるのは危ないです。足を滑らせてしまいますよ。」
「でもほら、その時はなーくんが助けてくれるでしょ?実際こうやって助けてくれたし。」
「そもそも、年頃の女性が無闇矢鱈に男性に身体を預けるものではありません。確かに私の外見では説得力に欠けますが……」
「いやいや〜、束さん的には十分男の子の身体してると思うよ〜?こんなに細いのにちゃんと筋肉はあるし、私を抱えられるくらいには力強いし。」
「……そう、でしょうか?」
ジッと目線を合わせてそんなことを言われ、奈桜は顔を赤くしながら目を逸らす。
男らしい、などと言われたのは生まれて初めてではないかという程に珍しい言葉だったからだ。
なるべく束の身体に触れない様に、なるべく束の身体に目を向けない様に気を付けながらも、奈桜は少しだけ笑みを浮かべた……
「それに、下の方もちゃんとあったしね☆」
「なっ!なっなっなっ!!どさくさに紛れて何を見てるんですか貴女は!?」
台無しである。
「ぐへへ♪なーくんも束さんの身体、もっとじっくり見てくれても構わないんだぜ?ほらほら、箒ちゃんに負けてないでしょ☆触ってもいいんだよ☆」
「も、もう離れてください!これ以上は本当にダメですから!!」
「やれやれ、相変わらず硬いなぁなーくんは。あっちの方は全然硬くならな『束さん!』……てへ☆」
話しているだけで体力と精神力をガリガリと削られていくこの感覚は、きっと篠ノ之束と関わった人間の誰もが一度は味わうものだ。
箒や千冬の様な物理的反撃ができない奈桜にとっては特に疲労感は溜まるもので……
「いやぁ、本当になーくんは弄りがいがあるなあ♪育った場所のせいなのか、大人の女性の体には全然免疫ないもんねぇ?」
「……あったらむしろおかしいと思います。」
「うへへ、それもそっか。弱点が無さすぎるから普通のことも弱点に見えちゃうんだね。いやぁ束さんとしたことが当たり前のことを忘れてたよ、しまったなぁ♪
……ま!弱点なことに違いはないけどねっ!」
「やっ……!もう!!束さん!!!」
つい先程ダメと言われたにも関わらず、またザバァッと目の前で湯船から立ち上がる束。いくら水深があるとは言え、彼女の身長で立ち上がれば胸がモロに見えてしまうので、そんなものをド至近距離で見せつけられた奈桜は叫びながら顔を背けた。
「もう!もう!!今だめって話をしたばかりじゃないですかぁ!!」
「にゃははは!なーくんに意地悪するのは本当に楽しいなぁ♪」
そんなことを心底楽しそうな顔をして言うものだから、いくら奈桜と言えど両頬を膨らませて無言で束の顔を睨み付ける。しかしそんな反応もまた束にとっては面白くて、満足げな笑みは更に深まった。
「はぁ、スッキリした!束さんは今日はもう満足です☆……じゃあ束さんはもう出るから、なーくんも飽きたら勝手に帰ってね?あ、着替えと帰りのエレベーターはそっちだから。」
「……あそこにはマス○ーハンドみたいにウネウネしている大きな手しかありませんよね……?」
「行きも帰りも同じ道を通るんだから、同じ帰り方をするのは当たり前じゃん☆」
「……私あの内臓が浮く感覚、あんまり好きじゃないです……」
「内臓が焼かれる感覚とどっちがキツかった?」
「……束さんがそれを私に聞きますか……?」
「束さんがそこまで相手のことを思いやって会話してると思うのかにゃ?」
「……お風呂、ありがとうございました。束さん。」
「否定しないのかぁ〜、人でなしみたいに扱われて束さんは悲しいなぁ♪」
「だったらもっと悲しそうな顔をしてくださいよ……」
最後までそんな会話をしながら束はその空間に唯一存在する扉の向こうへと消えていった。その後、扉はどういう原理なのか床の下へと沈んでいき、やはり上に戻るにはあのウネウネとした手に捕まるしかなくなってしまった。
「……あと5分、いや10分待ってください……うう、帰りのことはもう忘れちゃいましょう。」
お風呂はとっても気持ちが良かったので、奈桜は考えることをやめた。
別に奈桜ちゃんは不能ではありません。
そこに至るまでのハードルが高過ぎるだけです。
次の日常パートについて(1)
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一夏+αと買い物デート
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箒と負けない花嫁修行
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セシリアと優雅にティータイム
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マドカとドキドキお泊り会
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千冬の奮闘恩返し