IS - 女装男子をお母さんに -   作:ねをんゆう

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キリが悪いので2話連続します。
2話目なこの5分後に投稿します。


69.楽しく危うい臨海学校編 - 暗雲 -

「ナターシャ!私達はどうすればいい!?」

 

着実に迫ってくる危機に対し、あまりにもノンビリとした態度をとるナターシャにラウラは次第に業を煮やし始めていた。

 

「何もしなくていいわ、そのままアレが落ちてくるまで気長に待っていればいいのよ」

 

「そんな悠長にしている場合か!以前の様に撃ち落とせば問題無かろう!」

 

『あー無理無理、あれは実体化するまでは完全に無敵だから。実体化する条件は分かんないけど、着水着地後が多いのかな。そういうことだから諦めて準備でも整えててよ。』

 

「……ということよ。」

 

「以前のものとはまるで違うでは無いか!!」

 

「だからそう言ってるじゃないの。前の奴より厄介なのよ。ほらほら、敵は7体。人数的には1人1殺くらいの覚悟じゃないと勝てないわよ。」

 

「篠ノ之束!相手の戦闘力はどの程度だ!」

 

『ん〜、万全のくーちゃんでも3体相手にギリギリ勝てたくらいだし……君達に分かりやすい様に言うなら、1体当たり代表候補生3人分ってところかにゃ?』

 

「「「「勝てるかァァァ!!!」」」」

 

最早情報を引き出せば引き出すほど絶望しか湧いてこないこのやり取りに、生徒達のモチベーションは地の底にまで沈んでいた。

 

篠ノ之束が勝てないと断言する様な黒幕、恐らくその尖兵と思われる者すら自身の3倍は強い、それが7体も同時にこれからやって来るという。

これならばまだナターシャを倒せと言われた方が幾分もマシだったろう。何故今も彼女がニコニコと余裕そうな顔をして居られるのか、この場の誰も分からない。

 

「……勝算はあるのだろうな?」

 

「貴方達には最低でも2人で1体は対処してもらうわ。一夏くんと妹ちゃん、グッドコンビネーションの候補生ちゃん達に、とっても愛らしい金銀ペアちゃん、これで3体はどうにかなるでしょ?」

 

「あとの4体はどうするのだ、米軍が動くのか?」

 

「いいえ、あとの4体は私と奈桜ちゃんで何とかするわ♪心配なんていらないわよ?私強いから♪」

 

「……おい、本当に勝てるんだろうな?」

 

「勝てるわよ。束の予想では、私達の中で最低でも2人以上二次移行できれば今回の作戦は問題ないらしいもの。」

 

「だから世間一般ではそれを絶望的だと言うのだ!!何故この戦力で勝てると思うのだ!!さっさと米軍なり教師陣なり呼んで来い!!」

 

「それは無理ね、今回の作戦は周囲への被害を極力抑えることを学園と米軍から条件にされてるのよ。しかも事件隠蔽なんて名目で限界まで少人数で編成させられちゃってる……つまり、1人もこちらに割ける余裕なんてないのよね。」

 

「だからそもそもの作戦が破綻していると何度言えば……!」

 

「ほらほら!もう来るわよ!」

 

「おのれぇ!!」

 

ラウラの必死の抵抗も虚しく時間切れとなり、遂に彼等の合間を縫って着水した7つの飛来物。

これ以上の口論は最早足を引っ張るものでしかないと諦めたラウラは7つの着水地点を把握し、直ぐにペアと対象を振り分けた。

 

敵は未知数、分かることは一体一体が恐ろしく強いということだけ。こんなことならばもっとペアでの戦闘を想定した練習を積んでおけば良かったと思うのは今更であり、鈴とセシリアは先見の明があると言わざるを得ない。

 

だが、少なくとも同部屋であるだけラウラとシャルロットの相性は悪くない。実際に今回組ませたペアはどこも悪くない、どころか鈴とセシリアの相性を見るにあのペアが敵を始末してさえくれれば、直ぐに戦況はこちらに傾く。

あのペアがキーだ。

 

……問題は、ナターシャと奈桜のペアがそんな化け物4体を相手に本当に立ち回れるかどうか。

あそこが崩れてしまえば、こちらが終わる。

どころか4体のうち1体でもこちらに向けば、その時点でそのペアは終わる。

こうして問題点を見てしまえば、どれだけこちらに不利な条件なのかが分かるというものだ。

 

今からでも千冬か真耶を援軍に寄越して欲しいものだが、2人には2人の役目があるという。

なぜこれで行けると思ったのか、天災の考えることは本当に分からない。

 

(……あとの懸念は……)

 

先程から一言も話さない奈桜だろうか。

普段の奈桜からは想像も出来ないくらい険しい顔をしてただひたすらに飛来物を睨みつけている。着水した今でさえも海の水を通して何かが見えているかのように見つめていた。

普段とは違う"彼女"がまともに戦えるのか、ラウラはそれが心配だった。

「来るわよ!!」

 

「っ!!」

 

「……っ、なんなのよ、こいつら……!」

 

物思いに耽っている暇もなく、ラウラはナターシャの声に引き戻される。

水面から浮かび上がる銀色の7つの生物……それを見た鈴の第一声は困惑と驚愕、そして恐怖の入り混じった極めてマイナスなもの。

 

まるで生物の骨の様な彼等は、しかし肋骨部分が反り返っていたりとあまりにも攻撃的過ぎる姿をしており、その全てがISをモチーフにした様な形態をとっていた。

 

どれも2m近い大きさがあり、重力の影響を受けていないのかブースターの稼動もなく当然のように浮き上がっている。先端の尖った骨の様な武器をカチカチと鳴らし、剣の様な翼や槍や鎌の様な手足を見ていると、まるで拷問器具を相手にしているような気分になる。

見ているだけで身体を覆い隠したくなるそんな姿は、正に生物を殺す為だけに特化しているように見えた。

 

『あ、そういえば言うの忘れてたけど、そいつらISのバリアを中和してくるから気をつけてね☆あんまり攻撃食らうと貫通して死んじゃうよ?』

 

「「「「「それを先に言え!!!」」」」」

 

満場一致だった。




なお、この無茶苦茶な作戦に一番ブチ切れているのは束さんの模様。

次の日常パートについて(1)

  • 一夏+αと買い物デート
  • 箒と負けない花嫁修行
  • セシリアと優雅にティータイム
  • マドカとドキドキお泊り会
  • 千冬の奮闘恩返し

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