セシリア(偽)   作:刀祢凛子

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やあ、お久しぶりです。エタってましたが気が向いたので書きました。
例のごとく校正とか話の整合性とかは怪しい。これおかしいってのあったら教えてくーださい。
久々すぎて書き方忘れてるじぇ……(文体が変わってるかも)。
サブタイがネタ切れして迷走中。文章も迷走。


 前回のあらすじ

 私、セシリア・ウォルコット、12歳!
 まだ小学生なのに、国の陰謀で今日から外国で高校生の仲間入り。
 それに、クラスにはあの男性IS操縦者までいるんだから大騒ぎ!
 しかもその男の子とクラス代表を巡って試合をすることに?!
 新しい生活は、どうやら波乱がいっぱいみたい。
 私、どうなっちゃうんだろう……?

だいたいそんな感じ


私の安息の地はどこ?ここ?

 入学直後ということもあり、最初の一週間は授業らしい授業はあまりなかった。精々がISに関する基礎知識や、中学の学習範囲の復習程度だ。もちろんこの間まで小学生だった私は習っていない範囲である。しかも国が違うせいで学習カリキュラムまで違うという二重苦。前世知識というアドバンテージはあるが、如何せんほとんど忘れているので食らい付いて行くので精一杯だ。まあ、(くだん)の織斑何某は参考書を電話帳と間違えて捨てるなどという原作通りの大ポカをやらかしているようだったが。

 

 で、特にこれといった出来事もなく日々は過ぎていき、本日は土曜日、クラス代表決定戦の当日である。鬱だ……。おうちかえりたい。

 織斑先生(世界最強)に名指しされた以上逃げることはできないし、むしろ逃げたほうがひどい目に合うのではなかろうか。一応社長令嬢として男性IS操縦者のデータを取ってくるという仕事――よく考えたら社長令嬢の仕事じゃねーぞ――もあるわけだし、ちょうど良かったと言えばちょうど良かったのだろう。私の精神衛生はよろしくはないが。

 そんな今にも胃痛で倒れそうな私は現在、整備室へ向かって重い足を動かしていた。

 というのも、織斑何某と試合をすることになったと一応本社(実家)に報告したところ、本社から新型の武装が昨日届いたのだ。突貫作業で作ったとかいう不穏なセリフも一緒に届いた。私の精神がガリガリゴリゴリと削られていっている音が聞こえる。

 その届いた武装を私の専用機に装備するためと、織斑何某の専用機となるはずのIS「白式」は、ブレオンとかいう偏った機体だったはずなので、対ブレオン用にチューニングしておこうという魂胆である。まあ引き撃ちのためにバックブーストに推力を多めに振り分ける程度だが。

 なぜ当日というギリギリになってからそんな事をやろうとしているのだろうか私は。

 

 

 

 というわけでやってきました整備室。のある棟の横の空き地。

 いや、追い出されたとかではなく、単純に整備室の空間が足りなかった。IS学園に支給されているISは打鉄やラファールリヴァイヴといった通常の競技用ISのみで、当然のことながら軍用のネクストは配備されていない。

 で、そうなると整備室も競技用ISのサイズに準ずるわけで、天井までの高さが3メーターほどしかなかったのだ。

 私の専用機、アンビエントは元であるネクストよりは小さくなってはいるが、元がデカイためその全高は5メーター近くもあるし、肩部武装も展開すればとさらに全高は高くなる。

 とまあそういうわけで、整備室内で展開できそうもなかったので、一応近くにいた教員に許可を取ってからこの空き地を占拠した。

 なんか整備室のドアの陰から水色が見えているような気がするが、特に見られて困るようなものはないので問題はない。設計を盗まれたところで、ISのPICの制御可能質量を余裕でぶち抜いていくネクストの頭おかしい設計を盗んでどうするんだというのもある。

 さて、本社から送られてきた新型武装とやらはいったい何でしょうね。

 用務員さんにトレーラーで運んできてもらったコンテナを空いているスペースに適当に下ろしてもらい、電子錠を手早く解除する。

 

 解除。

 

 解除……。

 

 解除…………。

 

 いやロック多いな?!

 いつものPINコードに加えワンタイムパスワードが送られてきたのはまだわかるが、指紋認証に静脈認証、光彩認証に声紋照合と考えうる限りの生体認証がついてやがる。いったい何を送って来たんだ、あの紅茶ジャンキーな開発室は。というかいつの間に私の生体データを取ったんだ。コワイ。

 無駄に多い生体認証を解除し終えると同時にコンテナのドアが音を立てて開き、充填されていた炭酸ガスが噴き出し、あたりに薄く白い煙が漂う。

 これはあれだな、開発室の奴ら、ただかっこいいからとかいう理由でこんなひち面倒くさいシステムにしやがったな。無駄な予算使いやがって。後でお母様に言いつけてやる。

 どこからか「ヤメテお嬢様!」という声が聞こえた気がするが、そんな幻聴は頭の隅に追いやって肝心のコンテナの中身の確認に移る。

 

「型式番号067ANLR、アンビエント用試作レーザーライフル……ですか。」

 

 うちの会社はレーザー系技術はからっきしだったと記憶しているが、何か進展でもあったのだろうか。そういえば本国で開発中の第三世代、ブルーティアーズは偏向レーザーが主武装だったか。

 ……もしかして、私がこっち来た見返りにブルーティアーズのレーザー技術の開示を求めたとかなのか?うーん、陰謀を感じる。お母様は親ばかだけど、そういうところ抜け目ないというか容赦ないというか。

 まあいいや、ロック解除後に追加で送られてきた資料によれば、BT兵器の偏向能力とかいう要らん仕様は捨て去り、レーザーと言いつつビーム兵器みたいな特性だったのをレーザーの名に恥じない弾速に仕上げました。とのこと。意訳ではなくそのままそう書いてある。うちの会社の規律はどうなってるんだ。

 資料のカタログスペックを見る限りはまあ、私の知るリリウムレーザーとだいたい同じような性能と考えて問題ないか。

 で、案の定というかなんというか、バススロットが足りなかった。打鉄やラファールほどではないとはいえ、一応第二世代IS故にバススロットもそれなりの空間があったはずなのだが、例の装置がスロットを殆ど占有しているせいで武装をたった6種類積んでいる現状でカツカツだった。

 そこにこのレーザーライフルとかいう明らかにバススロットを喰いそうな装備である。そりゃあスロットも足りなくなるというものだ。

 例の装置を下すわけにもいかず――というかACコア下の空間に埋め込まれるように搭載されているので簡易整備で外せるような代物ではない――、結局、バズーカやらキャノンやらスナイパーライフルやら射突型ブレード―ーいつの間にこんなもの乗せやがった―ーやらといったブレオン相手に向かない武装をてすべて下ろし、実弾ライフル1丁とミサイルポッド1セットに試作レーザーライフルを加えて合計3種類だけという第二世代ISにあるまじき武装数となってしまった。

 まあ、例の装置は半ば第三世代兵器みたいなものだし、というかもう第三世代名乗っていい気がするんだけども。まあいいや。

 あとは武装を変更した分、各部のパラメータをちょこっと調整すればおしまいである。一応申し訳程度とは言え稼働データも送られてきているので、実射時にそこまで大きく逸れるなんてことはないだろう。

 

 開発部のイカレ具合に頭を抱えながらも、正午になるころには簡易整備を終え、私は昼食を取るべく食堂へと向かった。

 

 

 

 

 で、案の定出くわすわけですよ。これは発見される前に退散するしかあるまい。今日はお昼ごはん抜きか……。

 あ、目が合った。オワタ。

 

「あ、オルコットさん!珍しいな、オルコットさんが食堂に来るの。」

 

 いやぁぁあああ。話しかけられた、メス堕ちさせられる!いやぁぁあああああああ。

 ……失礼、取り乱した。

 しかもこの男、私の苗字(セカンドネーム)めっちゃ間違えたまんま連呼してやがる。これでは無視もできないではないか!というか隣のポニテ女子めっちゃにらんでくるぅうう!こわぁああい!

 とりあえず苗字だけ訂正して逃げよう。

 

「Mr.織斑、オルコットではなくウォルコットです。お間違え無きよう。それにお二人のお邪魔をして馬に蹴られたくはありませんので、私はここで失礼します。」

 

 口早に苗字を訂正して、暗に人の恋路は邪魔しないと宣言してポニテ女子のロックオンを回避しつつ、この場から離脱することができるというまさに天才的なプラン。というかこんな早口でまくし立てたのは生まれて初めてかもしれない。よく噛まなかった、セシリア偉い。

 ちらりと横に立つポニテ女子を見ればまんざらでもなさそうな表情。よし、危機一つ回避。

 

「……?今日は競う相手とはいえ、クラスメイトなんだし、折角だから一緒に飯食おうぜ。俺も箒も邪魔だなんて思わないからさ。な、箒。」

「………………うむ。」

 

 おい、織斑ぁぁああああ!この、この唐変木!なんも理解してねえ!知ってたけど!

 ポニテ女子がすごい顔してる!すごい顔しながらしぶしぶうなずいてるから気づけよぉぉおおお!返事するまでにめっちゃ間空いてんじゃねえか、気づけよぉぉぉおおおおおお!

 しかもポニテ女子そこで頷くんじゃねぇよ!邪魔者は排除しろよ!断れよ!断ってくださいお願いします!

 ぐぬぬ、しかしここで断るのもなんか感じ悪いし、ぐぬぬ。仕方ない。

 

「……はぁ、仕方ありませんね。ではMr.織斑、ご一緒させていただいても?」

「おう!」

 

 ここは下手に断ることに労力を費やすより、さっさと飯食って退散が賢い手段というものだ。べつに諦めたわけではない。ないったらない。

 にしてもこの野郎、こっちの気も知らないで能天気にヘラヘラ笑いやがって。今日の試合、絶対ボコってやるからな、覚悟しとけよ。

 

 

 昼時よりすこし早かったからか、そう長く並ぶ事もなく食事の乗ったトレーを手にし、空いている席を探して歩きまわることもなくすんなり席に着くことができた。

 織斑何某は焼き魚定食、ポニテ女子はざる蕎麦、私はトマトソースのかかったオムライスに、デミグラスソースのかかったハンバーグのセットである。……おい誰だお子様ランチかわいいとか言ったやつ。これはお子様ランチではない。普通にメニューにあったオムライスハンバーグ定食だ。なんかあきらかにサンプルより量少ないしおまけでカットオレンジとパックのリンゴジュース乗ってるし、オムライスになぜか旗立ってるけど断じてお子様ランチではない。

 まあいいや、食事にも作ってくれた食堂のおばちゃんにも罪はない。おいしくいただくとしよう。

 

 ふむ、ただ単に市販のケチャップをかけたわけではなく、トマトピューレと香辛料でしっかりと作った酸味の効いたトマトソースに、薄焼きでありつつもふんわりとした卵がやさしく舌を包み込む。甘めに仕上げられたチキンライスが酸味強めのトマトソースと合わさることでトマトとトマトという具材被りも気にならない、むしろトマト同士だからこそのハーモニーを奏でている。うまい。

 ハンバーグもジューシーであふれるほどの肉汁をしたたらせているが、濃厚であるがくどくはない絶品のデミグラスソースが合わさり、舌に強烈なうまみを伝えてくる。このデミグラスソースの味、ルーを使っていない……?もしやフォン・ド・ヴォーから自作しているのか、何にせよすごい手間がかかってるのは確実。うまい。

 めっちゃうまい。

 

「ははっ。」

「ふふ。」

「……んみゅ?」

 

 なにやら笑われたので顔をあげてみれば、織斑とポニテ女子がこちらを見て目を細めていた。

 なんだ。

 

「むぐむぐ……んく。なにか?」

 

 なぜそんな「ほほえまー」みたいな顔してるんだ。殴るぞ。もしや口の周りにソースでもついてたか?

 ……ついてないな。じゃあなに?

 

「いや、ウォルコットさんってなんていうかさ、クラスのみんなも社長令嬢だ最年少代表候補生だって言ってたから、てっきりもっと、住む世界が違う人なのかなって思ってたけど。おいしそうに飯食ってる姿は年相応だなって思ったら急に身近に思えてきて、なんか勝手に話しかけづらいって思ってたのがバカらしくなってさ。」

 

 おう、いきなりなんだ。めっちゃ喋るではないか。私に話しかけてないでさっさと飯食べろ。……ってもう食べ終わってる。はっや。

 というか話しかけづらいと思ってた相手をいきなりご飯に誘うお前の精神構造どうなってるんだ。コミュ力お化けかよ。

 で、隣の貴女は?という意味を込めて視線を向ければ、ポニテ女子もなんか喋りだした。いや、私が催促したんだけども。

 

「まだ一週間とは言え、常に不機嫌そうで笑っているところなんて見たこともなかったし、クラスメイトが話しかけても事務的に返事をするだけだったし、こちらを見下しているような暗い嫌な目をしていたから、てっきり嫌な奴だとばかり思っていたんだが。今のお前を見ていると、そういった態度がすべて警戒して気を張っている子猫みたいに思えてきて急に可愛らしく、ふふ、いや、すまない、バカにしているわけではないんだが。」

「あはは、確かに!」

 

 めっちゃバカにしてるだろそれ。おい、笑わずにこっち見ろよおい。おい織斑、笑ってんじゃねえぞ、伸すぞこの野郎。確かに、じゃねえよ。事実不機嫌だったんだよ、おなか痛くて。その暗い目ってのは現実に絶望して打ち上げられたマンボウのようになっていた目のことだな。主にお前のせいだぞ織斑。

 なんだかふつふつと怒りが湧き上がってくると同時に、原作のトラブルメーカーコンビと一緒にご飯を食べてることを思い出したとたんにおなか痛くなってきたじゃねえかちくしょう。しかも緩みに緩んでいたであろう巷でいうメシ顔なるものをがっつり見られたらしい。なんか無性に恥ずかしい。

 幸い残りあと一口だけだったオムライスを手早く掻き込み、オレンジとリンゴジュースを引っ掴んでテーブルから離れる。そして二人に指を突き付けて一言。

 

「こ、この屈辱は今日の試合で晴らさせていただきます!首を洗って待ってなしゃい!」

 

 噛んでない。噛んでないから。ちょっと発音がネイティブすぎてそう聞こえただけだから。

 あっけにとられている二人をしり目に、脱兎のごとく逃げだすセシリアであった。

 

 

 

 

 あ、オレンジとリンゴジュースは中庭の木陰でいただきました。とてもおいしかったです。

 




唐突なグルメリポート!
書きたいこと書きなぐってたら文字数増えた。
伏線いっぱい張ったけどたぶん続きません(三度目の正直)
ぶっちゃけアンビエント出せたので満足してる感ある。
あとメシ顔ロリセッシー。ぜったいかわいい(尊死)だれか描いて?(強欲)

◇どうでもいい豆知識
デミグラスソース(ドミグラスソース、ドビソースとも)
古典的なフランス料理でよく用いられる。
フランス語では煮凝りや氷菓子を意味する。
小麦粉とバターを炒めて作るルーを使ってとろみを出すのが一般的だが、ルーを使わなずにとろみが出るまで煮詰めるタイプもある。もちろんその場合は通常の倍では済まない手間がかかる。

ハヤシライスとかめっちゃ好きです。

PS.2019/08/19 ちょっと気になったところ加筆修正。内容は変わってないので読み直す必要はない。

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