このすば カズマが冷静で少し大人な対応ができていたら。   作:如月空

10 / 74
今回R15で平気なのかなとちょっと心配してます。


少年の心と女騎士

朝、目を覚ますとめぐみんの顔が近くにあった。

 

「――!」

 

そういえば…昨夜はアクア達が押しかけてきて、仕方なく一緒に寝ることになったんだった。

規則正しい寝息を立てているめぐみんから、そっと離れようとして――

 

「うへへ、かじゅまー」

 

めぐみんが抱きついてきた、というか絡み付いてきた。

寝起きという事もあり、なんとか冷静を保とうと頑張っていたんだが…

めぐみんの匂いと柔らかさで俺の意思に逆らって覚醒させてしまった。

 

「んんっ…!」

 

あたっている場所が悪かったのか、めぐみんが甘い息を漏らす…その声で余計に反応させ――

 

「ふわあああ。ゆんゆん、おはよう!」

 

「おふぁひょうごじゃいましゅ、アクアしゃん…」

 

同室にいる、二人が目覚めてしまったらしい…

 

「カズマさん、起きてるー?」

 

「あ、ああ。起きているよ…」

 

アクアにそう答えて、そのまま起きようとすると――

 

「ちょ、ちょっと!まだ起きないで!!」

 

アクアに背中から押し付けられて

 

「ゆんゆんが際どい格好になっちゃってるから、こっち見たらダメよ!」

 

そう言いながら、俺を押し込んでくる。

 

「…ん、ふぅ、…ぁ…!」

 

めぐみんは声を押し殺して、俺の胸元に顔を埋めてくる…

やばい!これ絶対に起きてる!この状況はまずいって!

そもそも、めぐみんに絡みつかれている状態だったし、離れるのも難しくて!

それでもなんとか離れようとして腰を引こうとしてると…

 

「私達着替えるから、絶対にこっち向かないでよね!動かないでよ?」

 

「見ねえよ!」

 

どうしよう、下手に動くとアクアに何されるかわからない。

だからと言ってこのままと言うわけにも…めぐみんが動いてくれれば解決なんだけど…

 

「あ、そうそう。ベッドの中に下着があったんだけど…これベッドの中に戻しておくからね。カズマ、見ちゃダメよ?」

 

ちょっと、まて…そういえば昨夜スティールで……えっと…めぐみんは今、穿いてない…!?

めぐみんを見ると…俺の胸元に顔を埋めたまま、浅い息を吐いていて少し震えている。

…俺の意思では覚醒は止められない……せめて、少しでもずらすことができれば…

…腰を少し引く、めぐみんはちょっと楽になったのか安堵の吐息を漏らす。後は体の向きを少し変えるだけ…

 

「よいしょっと。あ!ごめん!」

 

アクアがこちらのベッドに座ろうとしたのか、俺は思いっきりドンケツを食らう。

 

「――!!ひぅ…!ふ、んんっ……!!!!!」

 

めぐみんは体をビクッビクッとさせると、力尽きたようにクタっとなった。

 

「ああ!ごめん!!めぐみん…大丈夫?カズマさんに押しつぶされてない?」

 

めぐみんはプルプル震えながら、アクアに向かって手を上げる。

 

「本当ごめんねー?あ!ゆんゆんも早く着替えて!」

 

「ふぁーい…」

 

俺の背後でしばらくごそごそと着替えた二人は

 

「じゃ、じゃあ、私達先にギルドに行っているわねー!!本当二人ともごめんねー!」

 

二人が部屋をバタバタと出て行った後、俺はおもむろにベッドから降りると床に座り――

 

「ごめん!本当に悪かった!!」

 

土下座をした。

 

 

 

 

「…カズマ、一旦部屋から出て行ってもらえますか?」

 

毛布に包まっているめぐみんが赤い目を輝かせている。

その言葉に素直に従い、俺は部屋を出る。

 

「…不可抗力だったとはいえ、コレは流石に嫌われたかな…」

 

そう思うと悲しくなってくる。俺はめぐみんと過ごした時間を本当に楽しんでいたんだと思う。

相棒として、この世界の初めての友として…そして…?

この感情はわからない…なので客観的に考えてみる…

多分俺は、めぐみんの事を好きなんだとは思う、何より一緒にいて楽しくて遠慮も要らない仲で。

今回のことでめぐみんに拒否をされればもう一緒にもいられなくなるわけで…

 

「…カズマ、次どうぞ…」

 

めぐみんが部屋から出てくる。代わりに俺が部屋に戻る。

嫌だ!今更めぐみんと離れたくはない!俺は涙をこらえて着替える。

どうにかして、めぐみんを繋ぎ止めておきたい…

着替えを済ませて外に出ると――

 

「じゃあ、カズマ。ギルドに向かいましょう!アクア達が待ってますよ!」

 

―――いつもの調子に戻っていためぐみんがいた。

 

 

 

――――――――…

 

 

 

 

≪めぐみん視点≫

 

宿を出てからも何度もカズマは謝ってくる。

だけど、私は実は怒ってはいない…不可抗力だったのは間違いないし。

…男性は朝そうなってしまうという話も母ゆいゆいから聞いたことがある。

私はただ、恥ずかしかっただけで…そうやっていつまでも謝ってこられるとこちらも堪らない。

 

「その、カズマ?もう平気ですからその話はその辺で…流石に恥かしいので…」

 

「え、いやでも…」

 

カズマが言い淀む、こちらの意図は汲んでくれるらしい。

 

「その、忘れましょう。事故なんですから!」

 

正直私はカズマと触れ合ったこと自体は好ましいと思っている。快楽が理由では断じてない。

アクアやゆんゆんが仲間になったことで、カズマが目移りしてしまうことに危惧もしていた。

事故とはいえ、私にあんなことをしてしまったカズマの罪悪感は見ての通りで、当分は私を意識してくれるはず。

カズマがずっと私を意識しているのは知っているので、早く私の気持ちに気づいて告白をして欲しい。

 

「では、仲直りです。私達は相棒同士なんですから!」

 

そう言って私はカズマの手を握る。カズマは戸惑っていたけれどしっかりと握り返してくれた。

嬉しくなって私はカズマの腕に抱きつく。カズマは顔を真っ赤にさせていた。やはりこの顔は好きだ。

 

「め、めぐみん?その、そろそろギルドに着くから…腕に抱きつくのはやめてくれねえか?」

 

この男はすぐにヘタレる!今朝は私にあんなことをしたのに…不可抗力だったでしょうけど…

 

「罰ゲームだと、思ってください!…嫌ですか?」

 

私が上目遣いでそう聞くと真っ赤になって顔を逸らす。フフフ、カズマをからかうのは楽しい!

でも、嫌われたくはないのでとりあえず腕からは離れた。

 

「あ、いや、嫌ってことはないんだからな!」

 

慌ててカズマが言ってきたので、私はクスクスと笑いながら

 

「冗談ですよ。私もそろそろ恥ずかしくなったのでもういいですよ。」

 

「…なぁ。」

 

カズマは呆れたような顔を向けてくる。なんでそんな顔されるのか理解不能だったけど

 

「魔性のめぐみんって呼んでもいいか?」

 

―――納得できない!

 

 

――――――…

 

 

 

 

≪カズマ目線≫

 

 

俺達はギルドの中に入り、朝食中だったアクア達と合流して、俺達も朝食をとる。

めぐみんは、今朝のことを許してくれたが…その後散々からかわれたので俺も気にしないことにした。

…出来るだけ

とにかく、今までどおりの関係でいられるんだから十分だろう。

めぐみんと付き合えたらなと思いもしたけど、今の心地よい関係も崩したくはない。

……正直、こいつは俺のことをどう思っているのだろうか。

嫌われていないのはわかった。でも俺のことを好きなのかというとわからない。

甘えてくるけど、それは俺の反応を楽しむ為にやっているようにも見える。

ただ、今朝のことを許したのは、それだけが理由では腑に落ちない。

めぐみんからしたら、眠っていたところを襲われたようなものだ。

それを許すということは……

俺はめぐみんの横顔を見る。

 

「ちょっとカズマさん、めぐみんが可愛いのはわかるけど。あまりジロジロと見るもんじゃないわよ?」

 

「え?いや…」

 

急にアクアに指摘されて挙動不審になってしまう。

 

「別に構いませんよカズマ。…アクア。私とカズマは相棒なのでカズマが私を気遣うのは当然です

きっと、私の体調を心配してくれたのでしょう。アクア達の所為で私達は寝不足なのですから。」

 

「え?そうだったの!?ごめんねカズマ!」

 

アクアが素直に謝ってくる。本当、最初の印象と変わったものだ。

天界にいたときは女神然とするために高圧的な態度をとっていたのか?それはそれで嫌なんだが。

 

「気にしなくていい、それよりもアクア。今日はクエストを受けるぞ。」

 

「クエスト?いいけど。あまり怖いのはやめてよね?」

 

んなもん、こちらからお断りだ。昨日の初心者殺しだって怖かったしな。

 

「とりあえず、アクアの能力を確かめたいだけだ。だから蛙を受けようと思ってる。」

 

「蛙ですか?流石に以前のような数はいないと思いますが?」

 

「ああ、だから今回は俺とアクアだけで十分だ。報酬は4等分するけどな。」

 

「ゆんゆんにお返しするチャンスね。」

 

アクアはゆんゆんに助けてもらったんだったな。

 

「私達は留守番ですか…仕方ないですね。カズマ、爆裂散歩には付き合ってもらいますからね。」

 

まだ、クエストがそんなに多くないので一日にいくつも受けることは出来ない。

 

「ああ、わかってる。弁当でも用意しておいてくれ。」

 

「フフフ、任せて下さい!こう見えても料理には自信があるので。」

 

それは楽しみだ。…フラグでないことを祈ろう。

 

「では、ゆんゆん。朝食後は私に付き合ってもらいますよ。」

 

「あ、うん。それはいいけど…カズマさんアクアさん、参加しないのに報酬貰っちゃっていいんですか?」

 

「問題ないぞ。」

 

「そうそう!」

 

「じゃあ、飯食ったら行こう。」

 

 

 

――――――…

 

 

 

俺達は牧場の近くで発見された蛙の情報を元に現場に向かっていた。

牧畜に被害が出る前になるべく数を狩ってほしいという話だ。

報酬は1匹に付き2万で成功報酬はなく完全に歩合制らしい。

めぐみんを連れてくればよかったと思ったが、場所が場所なだけに爆裂魔法を使えば被害が出そうだ。

 

「カズマ、私は何すればいいの?」

 

「支援能力を確認したい。だから各種支援魔法を掛けてくれればいい。」

 

俺が使う支援魔法より強力なのであれば、それだけでアクアがいる価値はあがる。

今回俺は剣を使おうと思っている。正直前に出るのは嫌なんだけど…

増えた仲間がどちらも後衛では仕方ない。前衛できるテイラーみたいなタンク型がほしいんだけど

いないものはしょうがない。当分は前に出ることになりそうなので、蛙は練習相手に丁度いい。

 

 

 

「『パワード!』」「『スピードアゲイン!』」「『プロテクション!』」

 

身体強化魔法を発動させた俺にアクアの支援魔法が乗る

…めちゃくちゃ体が軽いんだけど…正直驚いた。

流石は女神という所か。

 

「じゃあ、行ってくる。今のところ周辺にはいないけど、アクアも気をつけろよ?」

 

「だいじょうぶよー、心配性ねぇ。カズマさん!」

 

なんか今のフラグっぽかったけど、周辺は敵感知に何も反応ないし大丈夫だろう。

 

 

 

蛙を近接スキルとアレンジさせた斬撃で倒していく。

アクアの超支援が入っているとはいえショートソードでは1,2手では倒せず、練習にはなっていた。蛙の数が思ったより少なくて、慣れない自分には丁度いい。

アクアを見ると暇そうにしている。いや、もうちょっと緊張感出せよ。暇なのはわかるけど!

 

「思ったより敵が少ないわねー!暇なんですけどー!」

 

わかってるよ…

そう思ってアクアを見ると何かを思いついたように手をポンっと叩いた。

 

「『フォルスファイア!』」

 

何してんだあいつは!バカなの!?死ぬの!?

ボコボコっと蛙が現れる。

 

「やべ!デ『デコイ!』」

 

慌ててデコイスキルを発動させる。

 

「ひゃあああああああああああ!!!カズマさーん!!かじゅまさーん!!」

 

泣き叫びながら俺の所に走ってくる。トレインしてくんなっての!

俺は納刀して、構える…

 

「『ライトニング!!』」

 

まとめて数匹倒してアクアの元に走る。

敵感知スキルで確認すると、アクアの前方に…

 

「アクア!そこ迂回しろー!」

 

慌てて叫ぶも…

 

「へぷ!」

 

目の前にいきなり現れた蛙にアクアは呑み込まれた。

 

「食われてんじゃねー!」

 

結局俺は14匹も蛙を倒す羽目になった。

 

 

 

――――――…

 

 

 

 

テレポートでアクセルに戻った俺達は、大浴場に向かっていた。

蛙に食われたアクアはもちろん、何度も助ける羽目になった俺にもかなりヌルヌルが付いてしまった。

 

「アクア、お前アホだろ!フォルスファイアは術者に敵が寄ってくる魔法だろ?」

 

「ぅぐ!」

 

アクアは泣きじゃくりながら道を歩いている。正直目立つのでやめてほしいんだが…

遠巻きで見ている人たちは俺達を見ながらヒソヒソと話している。

その後、大浴場で体を洗い流した俺達はギルドに向かっていた。

 

「ねぇ?なんか騎士の人多くない?」

 

「確かに多いな。何か面倒ごとか?」

 

ギルドに戻るといつもより多くの冒険者が滞在していた。

報告ついでにルナさんに事情を聞いてみると、何やら大物賞金首がアクセル周辺に潜伏しているらしい。

 

「では、報酬の28万エリスです。…さっきの話もありますのでカズマさん達も気をつけてくださいね?」

 

「わかりました。」

 

俺はめぐみん達のところに戻り、報酬を分配しながら

 

「…というわけだ。悪いが爆裂散歩は控えようぜ。」

 

めぐみんが頬を膨らませるが

 

「今日中に解決したら、夜でも付き合ってくださいね?」

 

まぁ、撃って戻るだけなら、例の湖畔にテレポートで行き来すればいいだけだ。

 

「ま、夜なら解決してなくても行ってやるよ。撃って即帰るけどな。」

 

「流石カズマです!話がわかります!」

 

「でも、大物賞金首ってどんな相手なのかな?」

 

ゆんゆんの疑問は俺も思ったことだけど。

 

「まぁ、気にしていても仕方ないんじゃないか?駆け出しの俺達は出る幕もないだろうさ。」

 

「その大物とやらが、私の前に現れてくれれば爆裂魔法の餌食にできるんですけどね。」

 

「そう、都合よくはいかねーだろうよ。そもそもまともな前衛もいない状態で大物と戦えるわけないしな。」

 

「そうよねー、カズマさんは色々できるけど。ステータス的にはアークウィザードだもんね。」

 

俺達が会話をしていると、ガチガチのフルプレートメイルを着込んだ金髪ロング女騎士のような人が近づいてきた。

その女騎士は以前の俺の理想の女性像をしていて、思わず見惚れそうになってしまった。

 

「失礼、少しいいだろうか?」

 

「え、あ、はい?何か?」

 

俺は緊張から声が上ずってしまった。

 

「カズマ…」

 

横にいためぐみんがジト目をしたまま、俺の腕に抱きついてくる。

 

「…失礼しました。其方のご用件は?」

 

俺は女騎士さんに促す―

 

「貴方達はパーティーメンバーの募集はしていないか?失礼かと思ったが先程の会話が聞こえていてな。どうやら前衛職がいないという話だが、よければ私を入れてもらえないだろうか?」

 

女騎士さんの提案に

 

「よかったじゃない、カズマー!念願の前衛職よ!」

 

「おともだ…じゃなかった。お仲間が増えるのは嬉しいです!」

 

アクアとゆんゆんは乗り気なようだ。さてどうしよう、戦力を考えるなら入ってもらうのは歓迎だが…

 

「私達は駆け出しですけど、問題はありませんか?」

 

めぐみんが女騎士さんに確認を取る。

 

「無論問題ない。私はクルセイダーではあるが、レベルは同じく駆け出しレベルだ。

それに恥ずかしい話ではあるのだが、不器用すぎて敵に攻撃があたらないのだ。貴方達は火力はあるのだろう?」

 

「ですね、ステータスだけで考えるのならアークウィザード3人とアークプリーストですから。

カズマはアークウィザードではありませんけど。」

 

まぁ、俺は冒険者だしな。さて攻撃があたらないか。タゲは取れるのか?

 

「えっと、不器用なのは置いておくとして、スキルは何もってます?」

 

「防御系スキル全般だな、物理耐性魔法耐性、状態異常耐性に後はデコイが使える。」

 

ふむ、デコイ持ちのガチタンか。確かにこのパーティーには相性良さそうだな。

両手剣スキルか何か取ってくれれば、更に良いんだが…

 

「武器の習熟スキルをとる気は?」

 

「ない!私は体が丈夫で力もあるんだが、これは私のこだわりみたいなものだ!」

 

なるほど、めぐみんと同じようなものか。だとすれば断るのも悪いな。

 

「わかったよ!よろしくな!えーっと?」

 

「ダクネスだ。よろしく頼む!」

 

後衛ばかりの俺達のパーティーに新たな仲間が加わった。

 

 




ようやく、メンバーが揃いました。
2話で入れた伏線が次の話で回収できそうです。

前半部分大丈夫ですかね(汗)
出来る限りぼかしましたけど…

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。