このすば カズマが冷静で少し大人な対応ができていたら。   作:如月空

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新たな緊急クエスト

めぐみんを背負って爆心地を確認する。

 

「倒せたよな?めぐみん確認できるか?」

 

「ええ、カードに大悪魔ホースト討伐と出ています!」

 

めぐみんの宣言で、その場にいる全員から安堵のため息が漏れる。

 

「う…っ…」

 

傷を負っていた男がうめき声を上げる

 

「大丈夫か?テリー。」

 

テリーと呼ばれた男がもう一人の男に肩を貸してもらい立ち上がる。

 

「怪我をしたのね?私に任せなさい!」

 

アクアが男の元に走り治療をしている。

 

「ゆんゆん、ダクネス。お前らは平気か?」

 

「私は大丈夫です!」

 

「私も平気だ…だが、先程の悪魔の攻撃はなかなかだった。出来ればもう少し味わっていたかったのだが…」

 

ダクネスがおかしなことを言い始める。

 

「今、味わいたいと言ったか?」

 

「言ってない。」

 

こいつはやっぱりドMか。癖強すぎるだろ!

 

「それよりもカズマ。先程は一体何をやったんだ?あの悪魔が動けなくなっていたが…」

 

「ん、ああ。中級魔法のライトニングを制御して、それでバインドスキルを使ったんだ。」

 

急に話題を変えてきたダクネスに馬鹿正直に説明をしてしまった。

 

「カズマ…」

 

背中にいるめぐみんが呆れたような声を出す。

 

「ライトニングでバインドだと!?」

 

「やらねーからな!」

 

馬鹿なことを言い出す前に釘をさす。

 

「なっ!!ここまで説明しておいて、お預けなんて酷いではないか!!」

 

ダクネスが俺に掴みかかってくる。無論背中にいるめぐみんも巻き込まれ

 

「くっ、カズマ!もう面倒です!やってあげてください!!…揺らさないでくださいいいいい!」

 

「わかったわかった!一旦離れろダクネス!!」

 

素直にダクネスが離れたので、俺はため息を付きながら

 

「『ライトニング』」「『バインド』」

 

威力を弱めたスキルでダクネスを縛る…こんなことする為に考えたわけじゃないんだがな。

 

「はぅ…!!あああっ!!し、締め上げられて…これは初めての感触だ…!!」

 

俺達が冷めた目で、ダクネスを見ていると

 

「あの?カズマさん?…流石にドン引きなんですけど…」

 

治療を終えたらしいアクアが戻ってきていた。

 

「こいつが望んだことで、やりたくてやったんじゃねーし!!それにやれって言ったのはめぐみんだぞ!」

 

「ちょ!この男はなんて事を言うんですか!!大体カズマが教えてしまったのが悪いんじゃないですかっ!!」

 

俺達が言い合いをしていると、勇者?パーティーがこっちにやってくる。

 

「何やら立て込んでいるようだけど、礼を言う。助かったよ。」

 

大柄の大剣使いがお礼を言ってくる。

 

「いや、礼はいいけどさ。勇者ならもうちょっと頑張ってくれよ。」

 

俺は皮肉っぽく男に伝える。男は不思議そうな顔をして、やがて笑う。

 

「ハハハ、何を勘違いしているが知らんが俺は勇者じゃないぞ。ただの冒険者だよ!

…俺は大剣使いのレックスだ。あっちにいるのがソフィとテリー、よろしくな。」

 

そう言いながら手を差し出すレックスに、カズマだ と挨拶をして俺も手を出す。

 

「勇者じゃなかったのか?」

 

違ったらしい。では王都で有名だとかいう勇者は何処に行ったんだ?

 

「ああ、その勇者サマは悪魔の罠に見事にはまって、お仲間がテレポートのスクロールを使って撤退したぞ。」

 

マジか…どんな罠を食らったのか知らねーけど、油断しすぎなんじゃねーか?そいつ。

 

「俺達は、テリーが深手を負っちまって逃げ遅れたってワケさ。

…そういえばお前らは見たことないが、王都の冒険者じゃないのか?」

 

「?いや、俺達はアクセルの駆け出し冒険者だけど?」

 

「な、本当に駆け出しかよ!あんな悪魔を倒しちまったのに…」

 

「あ、ああ。俺はまだレベル8だぜ?」

 

「私は10…あ、さっきの悪魔でレベルが上がってました。12です!」

 

俺達のレベルを聞いて驚愕の様子のレックスだったが

 

「ねぇ、カズマー!そろそろ帰りましょうよー!私お腹ぺこぺこなんですけどー!」

 

この女神は本当に自由な奴だな。…まぁ戻るのは賛成だ。俺も腹減ったしな。

 

「そうだな。あーっとレックス達もそれでいいか?」

 

「あ、ああ…」

 

魔法が切れて地面でピクピクとしている奴をアクアが回収し、俺達はアクセルに戻った。

 

 

―――――――――…

 

 

 

ギルドに戻ると騎士達の姿はなく、冒険者たちが荒れていた。

俺達は報告のためにルナさんの所へ向かう。

事情を聞くとどうやら、白スーツの女性が王都へ報告に戻ったそうだ。

同行していた騎士達も王都の防衛任務があるようで一緒に戻って行ったらしい。

 

「皆さん、討伐の失敗で荒れているんです。作戦の要だった勇者さんが撤退をしてしまったそうなので…」

 

ルナさんが残念そう話す。俺は頭を掻きながら

 

「えっと、討伐目標は悪魔であってますよね?」

 

「え?ええ。」

 

ルナさんの返答を確認すると、ドヤ顔をしためぐみんが冒険者カードを提示する。

 

「フフフ、私達が討伐してきましたよ!」

 

ルナさんが驚愕してめぐみんからカードを受け取る。

 

「…本当に!?あ!確かにめぐみんさんの魔法であれば可能ですね!!」

 

ルナさんが大声でそう言うと、ピタリとギルド内が静まった。

 

「めぐみんさん、サトウさんそして皆さん!大悪魔ホーストの討伐おめでとうございます!!

そして、討伐に参加した冒険者の皆さん!報酬をお渡しします!!」

 

その場にいた冒険者たちが歓喜の声を上げる。

冒険者含めて俺達全員に20万エリスが配られた。

アレだけ強い相手だったのにパーティーとしては100万エリスか。

 

「そして、サトウさんには特別報酬の1000万エリスを進呈します!!」

 

「「「「「1000万!!?」」」」」

 

「ああ、カズマ!1000万エリスよ!5人で割っても一人200万エリスよ!!

あ~何を買おうかしら…欲しいお酒があったのよねー。」

 

一人で盛り上がっているアクアに

 

「いや、分けるのは8人だぞ?レックス達が戦っていなければ最悪逃げられてたんだからな?」

 

それでも一人125万だ。先程の報酬と合わせれば145万…十分だろう。

 

「い、いや、俺達は受け取れねえよ。こっちは助けてもらったんだぜ?」

 

「そうよ。そのお金はカズマのパーティが受け取るべきよ!」

 

「俺は治療までしてもらってんだ。金まで受け取れねえよ」

 

レックス達は俺達が受け取るべきだと言ってくれるが。

 

「此方としても全額受け取るのは気が引けるんだけどな。」

 

全員で話し合って、俺達が800万、レックス達が200万という分配で話がまとまる。

報酬が減って頬を膨らませてた奴も、最後には折れてくれた。

 

「カズマ。そろそろご飯にしませんか?空腹で倒れそうです。」

 

燃費の悪い。腹ペコ娘と女神が限界そうなので

 

「じゃあ、この話は終わりだな。飯にしよう!」

 

レックス達と分かれて、俺達は飯を注文する。

食事が運ばれてくる間に報酬の分配を済ませる。

俺達のテーブルに次々と料理が運ばれてくる。

 

「「「「「いただきます!」」」」」

 

5人で手を合わせていただきますを言う。…そういえば、この世界でも共通なんだな。

このステーキめちゃくちゃ美味しいんだけど!?料理に舌鼓を打ち、食事を続けていると

 

「しかし、本当にあのような大物を倒してしまうとは…」

 

ダクネスはしみじみと呟く。

 

「めぐみんの爆裂魔法って、今回みたいな大物相手だと有効だねー。」

 

「フフフ、流石のゆんゆんも爆裂魔法の偉大さに気づいたようですね。」

 

めぐみんは嬉しそうにゆんゆんに語る。

 

「でも、大物がいなかったら扱いにくいだけだよね。」

 

言うな、ゆんゆん。範囲が広すぎて防衛などでは使いにくいって俺も思ってるんだから。

というか、ダンジョンとかじゃ更に使えないからなぁ。

ゆんゆんと喧嘩になりそうだったので、めぐみんをなだめる。

 

「ねーカズマさん。」

 

「ん?どうした?アクア。」

 

「あの時なんだけど、めぐみんの爆裂魔法じゃなくて、私の魔法でもよかったんじゃない?」

 

「あ!」

 

忘れてた…

 

 

―――――――――…

 

 

 

 

≪めぐみん視点≫

食事を終えた私達は解散となり、お風呂の後に部屋に戻った。

ダクネスは実家がこの町にあるようで、そこへ帰っていったのだけど…アクア達は

 

「「ごめんなさい!もう一晩とめてください!」」

 

どうやら、王都からやってきた冒険者の影響で馬小屋さえ、埋まってしまったらしい。

カズマはそんなアクア達を渋々と迎え入れて、私達は昨日と同じく一緒に寝ることになった。

カズマがベッドに横になったので、私はカズマに抱きつくようにベッドに入った。

 

「お前何してんの?今朝のこと忘れるって言ったけど、コレはまずいだろ!?」

 

カズマは困惑しているようだけど、昨日ほど慌てておらず私に文句をいってくる。

 

「私がこうしたいと思ったからですが、ダメですか?」

 

カズマの胸元に顔を埋めてた私は、少し顔を上げてカズマに聞いてみる。

 

「ダメっつうか、その…」

 

言いながら、徐々に顔を赤くしていくカズマ。やっぱりカズマのこの顔は可愛い。

 

「先程の話ですが、やはりカズマは私の相棒ですよね。アクアではなく私に撃たせてくれたんですから。」

 

嬉しくなった私は、思いっきり密着して抱きしめてあげた。

するとカズマが反応してくれたみたいなので、私はまたカズマの顔を見る。

 

「…不可抗力だからな、これは…。」

 

私のことを意識してくれているのは、やはり嬉しい。

 

「わかってますよ。では寝ましょうか。」

 

そろそろ私の気持ちに気づいて告白して欲しいなとそんなこと思い…カズマの温もりに包まれながら私は眼を閉じた。

 

 

 

―――――――――…

 

 

 

 

≪カズマ視点≫

 

 

翌日、ギルドでダクネスと合流して朝食を取った後。今日の予定を話し合っていた。

 

「まだ、クエストが少ないんですよね。」

 

昨日、報奨金が入った俺達には仕事が回ってこなかった為、暇になってしまった。

結局そのまま昼頃までギルドでのんびりとしていると

 

『緊急!緊急!街の中にいる冒険者の各員は、至急冒険者ギルドに集まってください!

 繰り返します。街の中にいる冒険者の各員は、至急冒険者ギルドに集まってください!』

 

「なんだ!?また昨日みたいな奴が来たのか!?」

 

不安気な俺とは対称的に、ダクネスとめぐみんはどことなく嬉しそうな表情だ。

 

「多分、違いますよ。時期的にそろそろなのでキャベツの収穫だと思います。」

 

ゆんゆんが説明をしてくれるが

 

「は? キャベツ?…キャベツって名前のモンスターなのか?てか収穫??」

 

俺が呆然とそんな疑問を告げると、何故か皆が可哀想な人でも見るかのような目で俺を見つめる。

 

「キャベツとは、緑色の丸いやつです。食べられる物です」

 

「噛むとシャキシャキする歯ごたえの、おいしい野菜の事だ」

 

「そんな事は知ってる!だが何で緊急クエストなんだ?冒険者が農家の手伝いをするってことか!?」

 

「あー……。カズマは知らないんでしょうけどね?この世界のキャベツは飛ぶのよ!」

 

「はぁ!?」

 

この世界の食材はなんでちょくちょくずれてんだ!?バナナが川で取れたり、サンマが畑で収穫できたり!

 

「皆さん、突然のお呼び出しすいません!もうすでに気付いている方もいるとは思いますが、

キャベツです!今年もキャベツの収穫時期がやってまいりました!キャベツ一玉の収穫につき

1万エリスです! すでに街中の住民は家に避難して頂いております。では皆さん、

できるだけ多くのキャベツを捕まえ、ここに収めてください!

くれぐれもキャベツに逆襲されて怪我をしない様お願い致します!」

 

俺が呆気に取られていると

 

「カズマ!行きましょう!」

 

そのまま、めぐみんに手を引かれ町の門まで移動した。

 

 

 

 

「きたぞー!」

 

「今年は…荒れるぞ!」

 

「マヨネーズもってこーい!!」

 

俺はその光景を見て呆然と立ち尽くしていた。

 

「なんだ?ありゃ!?」

 

遠くの空から無数の緑色が流れてくる。

 

「カズマカズマ、トルネードは撃てますか?」

 

「え?…ああ、そうか。空飛ぶ相手には効果的か。」

 

めぐみんから杖を借りて詠唱に入る。

 

「暴虐の風よ!裂刃と成り彼の者達を悠久の眠りへ誘え!」

 

「『トルネード!』」

 

第一陣のキャベツたちが軒並み巻き込まれる。

制御重視で弱めに撃ったが結果は上々のようだ。

 

「アクア、みんなに支援を頼む!みんな回収しろー!!」

 

「「「「おー!」」」」

 

 

 

 

―――――――――…

 

 

俺はギルドの中で出されたキャベツ炒めを食いながら、呟いた。

 

「何故!たかがキャベツの野菜炒めがこんなにも美味いんだ!?納得いかねえ!」

 

キャベツの野菜炒めは5000エリスもする、高級料理だったのだが…

 

「食べるだけで、結構経験値を貰えますから、それで高いんだと思います。」

 

ゆんゆんが説明をしてくれる。それで高いのか…

 

無事キャベツ狩りが終わった街中では、あちこちで収穫されたキャベツを使った料理が振舞われていた。

 

「しかし、やるわねダクネス!さすがはクルセイダーね!

あの鉄壁の守りには流石のキャベツ達も攻めあぐねていたわ!」

 

「ん…、アクアの支援や回復魔法も凄かった。

カズマの指示で私達の支援をしてキャベツの回収を行った後

傷ついていた冒険者達に強力な回復魔法を飛ばして大活躍だったではないか。

そして、めぐみんも凄まじかった。キャベツの群れを追って街に近づいてきた

モンスターの群れを、爆裂魔法の一撃で消し飛ばしていたではないか。」

 

「フフフ、我が必殺の爆裂魔法の前において、大悪魔であろうとも抗う事など叶わず。

そして、カズマは魔力切れした私を素早く背負ってくれましたね。

私を背負ったまま、スティールを利用してキャベツを次々と回収していきましたね。」

 

「…うむ、突出した私がキャベツやモンスターに囲まれ、袋叩きにされている時も、

カズマは颯爽と現れ、襲い来るキャベツ達を収穫していってくれた。助かった、礼を言う。」

 

「潜伏スキルで気配を消して、敵感知で素早くキャベツの動きを捕捉して、

背後から強襲するその姿はまるで鮮やかな暗殺者の如しでした。」

 

キャベツの報酬は後日渡されるという事で、俺達が回収した数を考えると思わず顔がにやけてしまう。

夕食を終えた俺達は少しゆっくりしていたが

 

「今日は早めに帰って休もうぜ?」

 

「そうですね。では3人ともまた明日です。」

 

俺とめぐみんは3人と別れ、大浴場に寄ってから部屋に戻る。

 

「カズマ、お休みなさい。」

 

「ああ、お休み。めぐみん。」

 

今日はアクア達がいないからベッドは別々だ。それを少し寂しいと思ってしまう。

こんなこと考えていたらダメだな。寝よう…。

…めぐみん




しかし、人数増えてくるとキャラを喋らせるのが大変ですね(汗)
設定的にかずめぐの会話がメインになってしまうので、自己主張の強いアクアは勝手に台詞が出てくるのでいいのですが、ゆんゆんとダクネスは自主的に考えないといけないので大変です。(苦笑)

追記。なんか、日刊で上げないとという、謎の使命感がありましたけど
もうちょっと、練りこもうと思います。正直、雑になってる気がします。

上げるとしたら文章量半分位になると思います。

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